走れば、きっと全部解決するわ
クレアよ。
めんどくさいけれど、よくよく考えればアユとテトに頼る必要なんてなかったじゃないの。
まあ、いいわ。
一人でも、見つけ出してやるわよ。
見ておきなさい
「じゃあ、でも、一つ目のヒントなんか正確に調べないとじゃないの?」
まあ、なぞなぞなんだし、適当で大丈夫だろ。
「それはいいのよ。だからまあ、街の方だわ。とりあえず、外に行きましょっ」
ということで、謎解きが始まった。
アユとテトは、護衛として剣やら弓やら、なんかすごい拷問器具やらを持って私たちをいざというときは守ってくれるらしい。
そんなに装備をしなければいけないなら、前にリュカたちと勝手に外に出たのは、かなりよくないことだったんだろうな。
まあ、過ぎたことだ。
「お兄ちゃんっ」
一応、さっきのヒントが合っているか電話をかけた。
「あ、あの、かけすぎだ。ちょっと、あと二回だ。いいか」
「そんなの許さないわよ、お兄ちゃん」
まあ、私に兄を懲らしめられる手段があるのかわからない。なにしろ、本気で金的を蹴ってもダメージが入る気がしない。
「どうしたんだ」
「一つめのヒントだけど、城下町にいるってこと?」
「ああ、そうだ。って、そこで?まだ一つ目じゃないか。それくらいは全然わかることじゃないかっ」
「だって、書き方が曖昧じゃない。王様から見えるとか、実際に見ないとわからないことを変な風に書くんじゃないわよっ」
「え、でも、」
「まあいいわ。またかけるからね」
そういって、私は電話を切る。
一人で勝手に話していることを不審に思われているようだったが、まあ別にいい。というか、現代でも道端ででかい声で電話をかけているやつがいたら不審に思うのは変わりない。
「フレイ様が攫われてるんじゃないの?」
「ええ、そうよ」
「フレイ様と連絡を取ってるの?捕まってるのに?」
「ええ、そりゃそうよ」
あまりリリカは納得していなさそうだったけれども、街に降りてきてから彼女は私の手からスマホをぶんどって、使い方もわからないのにじっくりと睨み続けているのだ。
「お兄ちゃんが、街にいるって」
「もう、普通に探したほうが早いんじゃないのっ?」
リリカがそう言った。
私が言い出すセリフだと思ってたんだけどな。
というわけで、私たちは街に出かけた。
それにしても、こいつらと来るとは思っていなかったな。
「じゃあさ、アユ、テト、あんたたちこの電話つないだら、相手がどこにいるか魔法でわからないの?」
いわゆる、逆探知というやつだ。魔法でそれができるのかは知らないが。
二人は首を振る。
さすがに、無理か。
「ちょっと、二人とも、」
リリカが、二人になにか耳打ちしている。
アユとテトの二人が、顔を見合わせながら頷いている。
私がそれをなんとなく見ていたら、リリカは突然走り出した。
「・・・え?ちょっと、」
リリカたち三人は、街の中に消えていった。
prrrrr prrrrr prrrrr prrrrr
スマホが鳴る。さっき、リリカに持ち去られたと思ったのに、なぜかスマホの音が聞こえると思ったら、その音はドレスの中から聞こえていた。
「もしもし」
「あの、なんか、スマホがクレアの場所と違うところにあるんだけど、・・・何があったの?」
電話かけてるんだから、わかってるんでしょ、と思うのだが。
「さっき、リリカに取られたのよっ。お兄ちゃん、あいつ捕まえてきてっ」
「いや、まあそれにもう一回送るから、それで頑張って探してくれよ。頼むよっ」
「もう、いちいち面倒くさいのよっ」
「あの、僕隠れているから、早く見つけてね、とお前の兄が言っている」
もう、直接普通に言われましたよ、と言い返そうとしたところで、電話が切れた。
まあ、いいわ。あいつらより早く見つけてやるんだからっ。
というわけで、もう一度ヒントを確認しよう。
一つ目のヒントは、城下町のどこかにいる、ということで合っているらしい。
そして、二つ目のヒントだ。
私は、道の端っこに移動して考えることにした。
「人が暮らす場所にある。けれど、そこに住む人はいない」ということは、まあ人のいない。まあ、日中いたとしても夜はいない見せとか、他はどうなるんだろう?馬小屋みたいなのもあり得るかもな。前、街を見せてもらったときは、そこまでちゃんと見れていないんだよな。
そして、三つ目だ。
「森の中ではない。しかし、森から来たものが、必ずそこを通る。」というと、門とか?
地図を見る限り、門は二つだもんな。二つのうちどちらか、か。
でも、夜も見張りはいるだろうし、人が住まない、という点では違うかもしれない。
では、ここは後回しで次だ。
こういうのは、優先順位が大事なんだ。
「火は使わない。それでも、昼も夜も回り続けるものがある。」これって、この地図の右の方にある、まあ東側にある水車じゃないか?こんな、簡単に?確かに、一にも二、三のヒントとも矛盾はしない、・・・いや、これは街の外の判定になるか?
いや、勝つためにはこのまま突っ走るしかないっ。
お兄ちゃん、今度はもっと難しめのお願い。さすがに、大学に入学したことのある私には、簡単すぎるわ。
ということで、ホントもう何十年ぶりに、私はスマホを持って全力疾走した。
一応、以前リュカたちから教えてもらった治安の悪い西部を避けて、私は水車小屋に向かう。
今は、この街のシンボル的な噴水広場にいる。街の中心だ。
ということは、このまま東に突っ走ればいけるはずだ。いくら、あっちがアユとテトの力を借りて早く進めるにしても、このような謎解きは素人なのだから、最後までヒントを活かそうとするだろう。
ということで、私は靴を脱ぎ捨てて全力で地面を踏みしめた。
街は、中心の方には人がいるが、離れれば離れるほど人は少なくなる。
私は、姫であるという身分をはぎ捨てて、走る。
前世では、運動なんて大嫌いだったのに。
そういえば、なんで私はこんなに走ってばっかりいるのだろう。体を動かして。
動かしたかったのか?
なんだろうか。自分の力で生きたかったとかなのだろうか。
別に、そんなつもりはなかったんだけどな。
私が人生をやり直した理由。
それは、なんだ。
いや、何を言っているんだ、私。
意味なんかいらないって、自分で言ったじゃないか。
価値がないから、私たちは人生をやり直すんだ。
零が二つで、零だ。
それなら、みんな納得だろう。別に、ずるくなんかない。
そうだよな、私。ただ、みんなに納得してほしかったんだよな。別に、ずっと家に引きこもっていたって、友達のままでよかったはずだし、家族のままでいいはずなのに、なんか、違う関係みたいになってしまうんだ。
心配してほしかったけど、その気持ちはただ、みんなと遊びたかっただけだったじゃないか。
だから、引きこもってたけど、それが悪いとかいいとかじゃなくて、外に出さなきゃとかこのままだと社会に取り残されるとかじゃなくて、そんなことより一緒に遊ぼうよって言ってほしかったんだよな。
前世は、幸せじゃなかったよ。後悔とかも、きっとあったよ。なんで死んだのか、あんまり覚えてないけどさ。
現実を見ろって言われるのが一番キライだったじゃん。ある人は善意でそう言う。ある人は、悪意でそんなことを言う。ある人は、私のことなんかどうでもいいんだけど、でも私が外に出てくれないと自分の名誉とかに関わるから、そんなことを言う。
ある人は、善意というか、使命感でそんなことを言うんだ。正義の心で、そんなことを言うんだ。
足で、大地を踏みしめて、そして、思い切り蹴りつける。
お前ら全員嫌いだったよ。
別にというか、怖かったけど、寂しかったけど、なんか、優越感とかもあったけど、でも、結局私、遊びたかっただけなんですけど。
その、ただ私を見てほしかっただけなんですけど。
現実じゃなくて、私を見てほしかっただけなんですけど。
そろそろ、門に着くか。って、これもしかして、これ門じゃなくて櫓か?これ、出口無い。
急いで方向転換する。
スマホ、小せえよ。
街を囲う塀に沿って進む。
走る。
ああ、こんなに走るの初めてだよ。いつもは、庭で遊んでたからさ。
確かに、世界はデカいよ。でも、庭でも走れるし、異世界に来なくても走れたし。
別に、どこでだってやりたいことはできるよ。
夢を追うのだって、どこでもできたよ。
現実を見るのも、現実逃避っていう言葉は嫌いなんだけど、現実から逃げるなんて、どこでもいつでもできる。
というか、現実はそもそも待ってくれねえよ。逃げてる暇なんてねえよ。
現実を見るのなんて、誰にでもできるし、つまんないよ。
それにさ、みんな頑張って現実から逃げる方法を探したがるじゃん。アニメとか、漫画とか?
ゲームとか疑似恋愛だとか。
なにが、現実逃避だよ。
一つだけ言えるよ。
現実逃避は、確かにどこでもいつでもできるけど、一人じゃ出来ねえよ。
ようやく、門にたどり着いた。
水の流れる音が聞こえる。
昔の私も、今の私だって、十分現実は見ているさ。
夢も、ずっと見ているさ。
こんなヒラヒラのドレスで街を突っ走っても恥ずかしくないくらいに、現実を見ているよ。
その程度に、現実を甘く見ているよ。
井の中の蛙、大海を知らずだっけ?
別に、井の中と変わんねえよ。
知ってるよ。私は。生まれてこの方、城から出たことなんてほとんど無いけど。前世でも、ほぼ家にいただけだったけど。
中にいても、外にいても、言われる言葉は一緒でも、向けられる感情は同じだ。
ようやく、水車小屋にたどり着いた。
「お兄ちゃんっ」
水車小屋の扉を押し開ける。
「ようこそ、我が愛しき妹よっ」
それにしても、汚い小屋だ。ビチャビチャのドロドロ。別に、氾濫したわけでもないのに。小屋の中には、木製の歯車があって、それで製粉をしているみたいだ。
それに、時間もかかったし。
「それで、なんの用なんだいっ」
ああ、そうじゃないか。別に、すぐに来てくれればいいものを。
「フレイ様っ、」
バン、と扉が勢い良く開き、その衝撃で粉が舞う。
「あっ、なんでもういるのよっ」
リリカが私を見て、地団駄を踏んだ。
「ヒントなんて、四つで十分だったからよ」
と私が言うと、アユが「ほら、私もいましたよね、これで行けばいいって」とリリカに詰め寄っていた。
リリカは、案外慎重なんだな。
「あれ、これはリリカ様じゃないですか」
いつもはそんなことしないのに、兄はリリカに対してお辞儀をした。なぜか兄の服が水で濡れていて、それからほんの少し飛沫が飛んでくる。
「じゃあ、せっかくですから答えも送りましょうかっ。まあ、簡単でしたかね?」
「お兄ちゃん、今度はもっと難しくしていいわよっ」
ピロン、と一枚の画像が届く。
先程の地図に、ヒントの解説が乗ったものだ。
まあ、別に必要ではないな。
「あの、リリカ様」
兄の方が立場は上だと思うのだが、一応兄は変態紳士なわけだ。
まあ、性欲の次に礼儀が大切なのだろう。
「正々堂々が、あなたのお父様のモットーじゃないですか」
なんか、意味がなさそうな言葉だ。その、兄の言っていることが、意味がなさそう、ということだ。下手なのかなにも狙っていないのかわからない。
「いや、その、私一刻も早くフレイ様を見つけたかったのですよ」
「まあ、いいわ。お兄ちゃん、そんなことより私の願いが先よ」
そうそう。ずっと、このために一日探していたわけだ。
もう、夕日が見えなくなりそうだ。
「あの、お兄ちゃん、ブラ工場がどんな感じか見させてよ」
Q そういえば、ちょくちょく言ってましたね。
私 そうですよ。もう、一日探して、結局次の日に持ち越しですよ。
Q へ〜。
私 というわけで、次はブラ工場見学編です。見てね〜。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
また見てね。
高評価ヨロシク




