分け合う美味しさ、焼き付けるわ
クレアよ。
また兄がめんどくさい登場をするから、それにつきあわされるだけの話よ。
ホント、人の都合とかを考えない人で困るわ。
私だって、暇じゃないのよ。
まあ、あんたたちは何が何でも見なさいね。
翌々日
「お兄ちゃんっ」
さっそく兄を呼び出す。
prrrrr prrrrr prrrrr prrrrr
聞き馴染みのある音。
ただ、聞きたくはない音。
私の都合の良い現実を邪魔する音。
そしてなにより、誰よりも現実をわかっていない音。
「もしもし」
Q いや、なんでスマホ出てきてんのよっ。説明してちょうだいよ。
私 あとでツッコむから大丈夫です。
Q いや、だからなんで持ってるのよ。
私 だから、大丈夫だって。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おい、お前の兄を攫った。返してほしければ、俺のいう場所まで来いっ」
「・・・あの、お兄ちゃんだよねっ」
「ち、違う。というか空気を読んでくれっ」
それは、さすがに言っちゃ駄目よ。
って、そもそもなんで私は携帯なんか持ってるのよっ。
私 ほら。
Q いや、だからなんで持ってるのよ。
私 それは、多分兄が私のポケットに入れたんだわ、きっと。
Q あんたドレスじゃないの。どこにポケット付いてるのよ。
私 別に、そんなのいちいち考えてたら頭が持たないわ。気にしなくていいのっ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「続けるぞ。お前の兄を返してほしければ、ここまで来いっ。URLを送るから」
URLでわかるのか?異世界だけど。
ピロン、
あ、LINE入ってる。
すると、黒いアイコンの謎の人物から確かに、URLが送られてきていた。
一応、そこにも「お兄ちゃん?」と送ったのだが、こちらは既読スルーされた。
URLを開いてみる。
なんか、なぞなぞみたいなのが。
頭を柔らかくするのは苦手だ。
まあ、もちろん「そんなわけないだろ」と思う人がいるのは当然のことだが、その、文字で出されるとどうも考える気力を失ってしまうのだ。
実際、考えるのにも体力は必要なわけだし、毎日遊びまくっている私は、体力が足りないのだ。
その、いつも使っているからってこと。
というわけで、兄に頼れないということなので、私は他の人に頼ろうと思った。
とはいえ、誰に頼るべきか。
まあ、せっかくなんだし、大人に頼るべきではないだろう。
まあ、使えそうなのは、リュカとかでもいいけど、彼らを巻き込むのもなんだか忍びない。
とすると、アユかテトだな。
というわけで、私は珍しく、というかこの物語内では初めて、父のいる部屋を訪れたわけだ。
もちろん、一番最初に一回だけ登場、そして、レイの隣国編でもほんの少しだけ登場していたわけだが、ようやくここに来て三回目の、初めての本格的な登場になるわけだ。
コンコンコン
就活のときとかも、こういうのは言われるんだろうな。
「失礼します。クレアです。お父様はいますか」
すると、国王の部屋なだけあり、私やレイの部屋とは比べ物にならない荘厳な扉が開く。
もちろん、みなさんが見ていないときにはときどき来ているのだけれども、見せるのは初めてですからね。
部屋の間取りなどは、あまり私の部屋とも変わらない。
まあ、女性と寝るための大きなベッドが部屋の中心にあって、隣の部屋はまるまるクローゼットになっている。そこに、またこの部屋にも変わらずスピ台があって、三面鏡の縁には色とりどりの宝石が散りばめられている。で、引き出しの中にはきっとパワーストーンみたいなのが入っているのだろう。
違いといえば、この部屋は窓が二重になっていることと、もう一つ部屋の窓側の方におそらく寝る用のベッドがある。
まあ、そのくらいだ。全体的に赤い部屋なのは、私の部屋と変わりない。
「ああ、クレアか。どうしたんだい」
なんだか、疲れ切っている様子だ。
ベッドから立ち上がり、いかにも王様が座りそうな背もたれが異常に長い椅子に座り直した。
もしかしたら、レイのことなのかもしれないが、自分で撒いた種という自覚があっても、それに自分で触れるのは少し心苦しかったのだ。
「あの、リリカがいる部屋ってどこなんでしょうか?」
「えっと、ジュンギ(この国の将軍)の娘か。えっと、あ、ここの真下だよ。二階のここの位置にあるよ」
「ありがとうございます」
出番が少なくて、ごめんなさい。
「あの、クレアは最近レイと話したか?」
「いいえ。あまり、近づかない方がいいのかな、と思いまして、」
「その、・・・女王になるつもりはあるのか?」
・・・・・
レイは、どう思っているのだろうか。
彼女の努力は、女王になるためのものだ。女王としてふさわしい人になるための努力だ。
ただ、彼女はそれを不当と感じ、努力の不安を私にぶつけてきたわけだ。
きっと彼女だって、本当は女王になりたいんじゃないか、と思う。でなければ、そもそも努力なんてしないじゃないか。
「お言葉ですが、」
これ、使い方あってんのかな?わかんないな。少なくとも、娘が父に使う言葉ではない気がするんだけど。
「私に、女王を継がせるつもりはあるのですか?」
まあ現代の感じで考えれば、今の女王だって私の母親に当たるのだろうか。元カノみたいな感じか?
「まあ、レイかクレアのどちらかになってもらうのが順当なんだけど、他に手がないわけではないが、それはそれで、あまり他国から恩を買うようなのは好ましくはないが、」
「・・・そうですね。もう少し考えさせて下さい」
「そうか。・・・レイとは、話すつもりはないのか?」
逃げさせてくれないみたいだ。
「・・・その時が来たら、話しますよ」
そうだな。
「まあ、私もレイとクレアが喧嘩したってことしか伝え聞いていないからな。その、まだ子供だし色々あると思うけど、まあ、時間が解決してくれるのは間違いないけど、でも、早めに仲直りするのも大事だから」
「・・・承知しましたわ」
「そういえば、なんでえっと、リリカ?の部屋の場所が気になっているんだい?あんまり、仲が良いっていう話は聞いてないけど」
あんまり会わないからか、父からどんどん質問が来る。
「まあ、ちょっと野暮用ですよ」
「あ、そう。それで、勉強はどうなんだい?」
「・・・ええ、最近は講義もちゃんと受けてますわっ」
「そうか。それは良かったよ。フレイは、どうだ?」
「お兄様は、まあいつも通りというか、だいたいのことは自分でやってますし、まあそうですね。・・・助かってはいますわよ」
「ああ、そうか。なんか、気になる男子とかいるのか?」
クソ親父がっっ。
なんなんだよ、これは。
「まあ、そういうのはまだですわね」
「ああ、そうか。なんか、不満とかないか?」
こんなに質問してくるくせに、まだ疲れ切った顔をしている。
それに、玉座みたいなところから徐々に滑り落ちている。
「ええ、大丈夫ですわ」
「ああ、そう。その、講義は楽しいか?」
「まあ、苦手ですけれども、頑張ってはいますわ。楽しいかと言われると、あまり楽しくはないですけど、必要なことですから」
「それは、いいことだな。えっと、友達とか、どうなんだ?」
あああああああああああ。
なんやねん、これは。
仕事帰りの父親みたいな質問を、何回も何回も。
全く手応えがないから、いつ終わるかもわかんない。
「まあ、最近は結構できましたわよ」
「そうか。その、ちゃんと食べてるか?」
それは、だいたいいつも一緒に食べてるやんけ。まあ、距離があるからあんまり見えてないのかもしれないけど。
「そうですね。体型維持のためにも、沢山食べてますわ」
「そうか」
「じゃあ、ちょっと、失礼しますわね。では」
「ああ、気をつけてな」
私は、小走りで扉のところまで走って、そのまま急いでお辞儀して部屋を出た。
また見てね




