リリカと二人っきり。
クレアよ。
なんかわからないけど、リリカとカラオケに閉じ込められたわ。
まあ、いいわ。とりあえず歌を聞かせ続けるだけだわ。
あんな奴と話すことなんてないもの。
リリカ、あんたは私が女王になったとき、覚悟しておきなさいよっ。
「哀れみをくださ」
Q その適当な返事は、なんですかっ。
私 まだ、私が歌ってる途中でしょうがっ。
Q 誰も、あんたの歌なんか聞きたくないわっ。
私 Fateの歌ですよ。アニメの、映画の、
Q ふん、アニメなんて見ませんから。私。
私 だから、あんたはバカなのよ。
Q 関係ないでしょうがっ。こっちは、アニメも漫画も見ずに勉強頑張ってきたのよっ。
私 そうやって、ずっと過去に引きずられてるからですよ。勉強したけど役に立たなかったのを、アニメとかを見て勉強をしてこなかった人を見下すことでなんとか正当化しようとしているの、丸わかりですから。それに、勉強もアニメも、どっちも真っ当にやってましたから、私は。
Q でも、人の気持ちは考えられないみたいですね。
私 ある意味、あなたを怒らせるためにこうやって言ってるんですから、人の気持ちは考えられていますよ。もしくは、あなたが正しいとするなら、私は確かに人の気持ちを考えられてないですけど、あなたはその自分より格下の言葉に敏感になりすぎじゃないですか?
Q そ、・・・は?もう、意味わかんない。
私 説明しますかwwwあなたにわかってもらえる程度の説明をするのは、ちょっと難しいかもしれないですけどwwwww
Q ・・・・・。
私 あれ、どうしたんですかwww時間かけてゆっくり考えてるんですかね?それなら、私は二度目の人生であなたと違って余裕がありますから、ゆっくり待たせてもらいますわwww
Q ・・・・・ホント、嫌いだわ。
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「い、落ちた小鳥が、そっと触れるよ〜な、悲しみを下さい」
私 やっぱりすいません。さすがに飛ばしますね。その、「かんなぎ」のアニメみたいに、一話丸々カラオケ回に出来たら、きっとそうなってますから。
Q ・・・・・・・なんの話ですか?
私 まあ、あなたには関係ないですから。えっと、・・・あ。じゃ、再生、と。
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「あのさ、あんたと私がいつ出会ったのか、覚えてる?」
確かに、詳しくは覚えていない。
まあ、物心ついたときからずっとこんな感じだったけれども。
「子宮の中かしら」
「・・・なんなのよ、それ。そういうの人前では、やめなさいよっ」
へいへい。
「小学校のときでしょ」
コンカフェというか、現代語訳版みたいな解釈が一番しっくりくるかもしれない。
なんとなく、世界観を合わせた。
「私たち、ずっと一緒のクラスよ」
まあ、一つしかないもんな。それに、すっかり私の方が歩み寄らないと駄目なんだと思っていたけれども、やけにあっちから話かけてくる。
「正直ね、私あんたのことが気に食わないのよ」
また出た。気に食わないだって。
・・・
あ、前に言ってたのって私か。
すいません。お恥ずかしい。
「いつも、遊んでばっかりで気に食わないわ」
「不平等だから?」
まあ、私は私で、真面目に勉強に取り組めなかった引け目があるので、勉強をしている連中はどうも、気に食わないのだけれども。
「まあ、そうね。それに、あんたは王様の娘だから、いいわよね。努力なんてしなくても、いいんだもの」
「ええ、そうね」
異世界における現実と混同してきた。
実に、ややこしい。都合の良さと現実との摩擦というべきだろうか。
「私の父は、将軍で、あんまり帰ってこないのよ」
おいおいおいおい。
登場人物を増やさないでくれよ。それに、将軍なのに帰ってこないのか?意味がわからない。ずっと国にいてくれよ。戦いっぱなしなのか?その間に、攻められたらどうしてくれるんだよ。
・・・。
まあ、兄がいるからなんにも問題ないな。
「母は、誰なのかもわからないわ。だから、私にはお目付け役として、アユとテトの二人がずっとついてくれているの。あんたもそうだけど、あんたの妹も気に食わなかったわ」
「そうなの」
「まあ、あんたの妹はつまんないのよ。こっちが何か言っても、なんにも返してくれない。でも、あんたとはずっと言い合ってるじゃない」
妹よ、よくやったぞ。
そうだ、こんなやつ無視すればいいんだ。
「なんだろう。羨ましかったのかもしれないわ」
まあ、なんか二人だけになると、本音みたいなのを喋りたくなるよな。
「あら、そうだったの」
「あんたは、いつもテストでビリのくせにさ、堂々としてて」
まあ、勉強してないもん。それに、異世界のことなんてわからないし。大学に通っていたんだから、こんなの楽勝だと思って久しぶりにテストを受けてみて、失禁するかと思うほど出来なかった。
「私は、結構頑張っても真ん中くらいで、だからコソコソしてるのに」
まあ、こっちはテストで低い点を取った分、その経験を無駄にしたくないだけだからね。別に、羨ましがることではない。
「その、あんたはこっちが言ったら何か言い返してくるじゃないっ。なんか、面白かったというか、構ってほしかったのよ」
「あっそ」
「今だって、そうじゃない」
「なんか、やっぱりあんたは正直だものね」
二人っきりになった瞬間、こんなにも内面を吐露してくるとは思ってもいなかった。
「別に、私は、普通のおとなしい女の子よ」
そっちの方が、よっぽどいいわよ。
私がいいと思うかは別として。世間体としては、そっちの方がよっぽど正直よりも立派だわ。
「あんたは、なんのために生きてるの?」
「夢を追うためよ」
「どんな夢なの?」
「カイくんと結婚する」
「最近は、あんたの妹に付きっきりじゃない」
「これから、なんとかするわっ」
「じゃあ、もし結婚できたらどうするのよ」
「そんなこと、考えないわ」
「・・・なんで?」
リリカは不思議そうにこちらを見てくる。
「夢だからよ。夢は、いつ叶ってもいいようにしておくものよ」
リリカは、手持ち無沙汰か、タッチパネルを操作している。
「どういうことなの?」
「あんたにも説明してあげるわ。夢はね、追うためにあるもので、叶わないから儚いのよ。そして、その夢を死ぬまで追い続けるのが乙女なのよ」
「乙女ねえ〜」
「あんたは、全然乙女じゃないわ。あんた、人生の価値ってなんだと思う?」
「・・・幸せだったかとか?」
「価値なんて、ないのよ」
「ひっかけは、ずるいわよ」
私も人にはそう言うだろうけど、自分ではひっかけやりたくなるものだ。
「じゃあ、人生をどう過ごせばいいか、教えてあげるわ」
そう、その答えはもちろん
「一生、夢を追い続けるのよ。叶わない夢でいいわ。叶うなら、それはそれでいいわ。ただ、乙女なんだから、もっと夢見ていなきゃ駄目よっ」
「でも、それで幸せなのかしら?」
ふっ、
そんなの愚問だわ。
「じゃあ、あんたはそれを夢にしたらいいじゃないっ」
あんたは知らないと思うけど、私は人生二回目なのよ。
それは、きっと、前の人生でやり残したことがあるからじゃないわ。人生の価値なんてないから、一回でも二回でも、人生なんて変わらないからよ。
私は、私だけで自分の人生を、優雅にするの。価値にも意味にも囚われない。夢を見ることは、現実を見ていてもできる。なぜなら、夢は叶うものではないからよ。
人生なんだから、夢見て生きなきゃ駄目なのよ。
「あんたたちは、人生の価値を見出そうとするから、人生無駄にするのよっ。だから、夢だけ見て生きなさいっ。でっかくて、可憐な夢よ」
「まあ、あんたはそれでいいんでしょうけどね。そう思っていれば、いいじゃない。でもね、ほとんどの人は、生きる意味を見つけたがるのよ。生きていてよかったって思いたいのよ。夢じゃなくて、目標と目的を見つけたいのよ。で、たまにその目的とか目標が「夢」だったりするのよね」
「あら、案外いいこと言うじゃない」
リリカが「フフ」と軽く笑う。そして「舐めてもらっちゃ困るわよ」と言った。
「みんな求めすぎなのよ。でも、結局みんな、夢を見たがっているものよ。いつの時代も、どこに住んでいても。あんたの夢を、聞かせなさいよっ。叶いそうな夢はダメよっ」
「夢ね。まあ、なんでしょうね。考えたこともないわ。まあ、イケメン王子と結婚するとか、」
「良い夢ね。女子なんだから、そんなもんでいいのよ」
リリカは「そんなのでいいのかしら」と笑った。
夢なんだから、なんでもいいじゃん。
それに、どうせあんたはイケメンとなんか結婚できないわっ!!
「あんたこそ、カイくんと結婚する準備はできてるの?」
愚問だよ。
「そりゃ、あとでするわよ」
「いつ叶ってもいいようにするんじゃないの?」
「そうよ。処女もとっといてあるし、なんにも問題ないわ。いつ、準備を始めてもいいようにするのよ」
「ハハ、それだと間に合わないじゃないの」
リリカは、案外普通に喋れるのね。
「そういえば、アユとテトはどうなの?私、全然あんたたちのこと知らないのよ」
「確かに、私もあんたのこと全然知らないわ」
転生してきてからも、ただ理由もわからず喧嘩してただけだったもんな、私たち。
「あの二人はどうなんでしょうね。でも、アユなんかは結構面白い子なのよ。あんたは知らないと思うけど」
あの金髪の方ね。
まあ、どっちも喋るわけでもないから、キャラがわからなくてどっちがどっちなのかややこしいのよね。
「テトは、見た目通りというか、ただただ真面目な子なのよね。確かに、二人は将来どうするつもりなのかしら」
まあ、どうせもっと強くなるとかそんな感じじゃないか?
「いつも、三人で遊んでて飽きないの?」
「飽きたら、あんたのところにちょっかいかけに行ってるのよ」
今きっとまともな状態じゃないからだろうけど、正気にもどったとき、後悔するぞ、絶対に。
そこまで、正直になっちゃ駄目だよ。
まあ、飽きたら私に来てた、ということまではわかんなかったけど、「かまってほしいんだろうな」というのはなんとなくわかってたから。
「まあ、二人にも言っときなさいっ。夢を持てって」
「まあ、二人は現実的ですからね」
「乙女なら、夢を持たなきゃ駄目よっ。絶対によ」
「まあ、伝えとけばいいのよね。わかったわ」
人生というのは、手段なのだ。
夢を追うための。
もしくは、道具なのかもしれない。
「・・・あのさ、」
「なによ」
エアコンがガンガン効いているのに、彼女の顔が少し赤くなる。
さっきから、互いにあまり目を見ずに話していたけれども、リリカは首を捻って完全に私と目が合わないようにしていた。
「その、・・・さっきは、ごめんなさいね」
「は?なんのことよ」
彼女が後ろを向いているのをいいことに、私は彼女の顔をじっと見る。
「あんたの妹のことよ。その、プライベートな内容じゃない」
まあ、リリカもまだ一三歳だしな。多分。
なんか、下ネタ言いたくなったり、過激なことを言いたくなったりする年頃だ。
で、大人になってから後悔する。
でも、そんなもんだ。その青春みたいなのがかけがえのないものだった、なんてあまりその記憶を美化したくはないのだが、なんにしろ、そうやって成長していくものだろう。
「別に、気にしてはいないわ」
まあ、彼女のことを考えると、心がモヤモヤとする感覚はある。
ほっとけない、というか。結局、私たちは双子なのだ。家族なのだ。それ以前に、同じ人じゃないか。
まあ、この世界に来てから私はずっと「庶民」とか「下民」とか言ってきたけど、まあ今はそれは少し目をつぶってくれ。
それに、庶民にもちゃんと人権のある国ですから。
「・・・大丈夫なの?あんたの妹は、頑張り屋だったからどっかでプツンと切れる瞬間が来てもおかしくはないと思っていたのよ」
まあ、レイが頑張り屋だなんて全然わかってなかったもんな、私は。
「まあ、レイだってまだ子供だもの」
私だけが、大人なんだ。
心がね。
「大人は、別に助けてくれないわよ」
それが、現実とでも言うのか。
「それが、現実よ」
やっぱり。
私は大人だから、さすがにあんたたちより現実が見えているよ。
別に、助けてくれる大人はいるさ。
ただ、結局は自分を救うのは自分しかいない。
彼女は、結局は自分の努力を信じられずにいたわけだ。
あの日も、私は彼女に「信じられない努力なんて、しなければいい」と言ったはずだ。
「問題の本質に気がつければいいのよ。もしくは」
ただ何にも気づかずに、突っ走るか。
私は思うのだ。
きっと、夢を叶えてしまう人は、現実を見ていない。
自分が現実だと思うものを全て信じきれれば、夢は叶う。
それは、天賦だ。
夢見る乙女は現実主義者なのよ。
だから、現実を全て信じきれないなら、夢を追えばいい。
叶わなくても、ただただ人生をそれに費やせばいい。
「もしくは、なんにも見ずに突っ走るかよ」
兄はきっと、というか絶対に、私にどうにかしてほしいから「クレアにしか治せない」と言ったのだろう。
一番手っ取り早いのは、カイくんがレイになにか言うことだ。
絶対に、そっちの方がいいに決まっている。
「アユとテトが言ってたわよ。カイくんが、結構きつそうにしてるって」
彼もまた、まだ子供だ。
現実が何かもわからなければ、これまたレイと同じように、この不平等な現実、不条理な真実に不満を抱いているはずだ。
城は狭い。
狭いから、ストレスが溜まる。
周りの人間が気になり、自分のことが不安になってくる。
けど、外は広いだけだ。
広いだけで、なんにも変わらない。
城の中だって、別に快適ではない。ただ、外よりは安心できるよな。
「リリカ、」
「・・・あ、呼んだの?あんたに名前を呼ばれるなんて初めてだわ」
そりゃ、言った本人にも初めての自覚はあるのだから、いちいち言わなくていい。
なんて思うと、どうしても私の方が後出しみたいに見えてしまうんだよな。まあ、どうでもいいことだけど。
「そんなことよりも、あんたとこんなに喋る方が初めてよ」
「あ、確かにそうよね」
「まあ、どうせあっちに帰ったらまたいつも通りよ、私たち」
「そうね。アユとテトの前でこんな風にあんたと話せるとは思えないわ」
まあ、恥ずかしいし。急に仲良くなるのも。アクアとルビーじゃあるまいし。
「二人は、いつもどう思っているわけ?」
「・・・どうなんでしょうね」
「きっと、あんたのこと迷惑がってるわよっ」
「あんたが言うセリフじゃないわよww」
もう二年くらい前なのだろうけど、二人と鬼ごっこをやって、そのあとなんか、色々あって私は吹き飛ばされたんだもんな。
子供だったな、私。
「言い方悪いかもしれないけど、あの二人は忠誠心が高いわよね」
リリカは、少しうれしそうだった。
「昔、私があんたの服を剥げって子供に命令したときは、結構怒ってたみたいだったし」
「まだ一〇歳とかでしょ?そりゃ、嫌よ。羞恥心も芽生え始めるくらいの年齢だもの。二人だって、きっとそう思ってくれていたのよ」
羞恥心なんて、どんなものだったことか。
「それに、私は二人とずっと一緒にいるんだもの。おんなじ乳を飲んで育ったのよ。まあ、あんたには悪いけど、そりゃ仲良くなるわよ」
「私は、レイとはそんなに一緒じゃなかったんだよ」
リリカは、何かを思い出そうとするような仕草をする。顎に手を当てて、輪郭を何回もなぞっている。
「まあ、確かにそうだったかもね。でも、逆に仲悪すぎじゃないの?」
「まあ、私としてはカイくんを取られたのが気に食わないから」
こればっかりは、運が悪かった。
鳥のヒナみたいに、最初に見た男の子を好きになってしまったのだ。
場所とかシチュエーションが違えば、禁断の恋だったかもしれない。いかにも、少女漫画っぽいものだ。
「まあ、一応言っておくわ。仲直りは早めにしなさいっ。あんたこそ、逃げたら駄目よ」
わかってますよ。
・・・・・、わかってるつもりなんですけどね。
まあ、どっちかが謝らないとなにも進まないのは確かだ。
あまり、気が進まないのだ。
まあ、所詮は言い訳だがな。
「お二人とも、そろそろ時間ですぞっ」
また見てね




