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女王になるんだから、街のことも知っておかないとね!

クレアよ。

辛気臭い話は、当分お預けよ。

これからは、話の本筋に戻って私が世界を征服する話になるわ。

まあ、見てなさいよ。

 「なによ、お兄ちゃん」


「ああ、すまないね。我が愛しき妹よっ」


 よくわからないけど、私のお目付け役でありながら、あまり私の周りにいない兄だが、今日ばかりは、遊びから帰ってきたら兄が私の部屋で、勝手に読書をしていた。


「いやはや、僕の夢について話をしたくて、」


 やっぱり、こいつ性格が悪いわ。

 また私に「レイと仲良くしろ」というのだろう。

 元々、私も前世で同じようなものだったのだ。

 というか、どちらかというと、私の主義としては無理やり外に出そうとする人間も、「ゆっくりでいいよ」という人間のどちらもを否定する主義なのだ。


 そう、人間関係という私たちが生きていくのに必要不可欠なものがなにもない状態で生きていけるなんて、実は人間として一段階上なのではないか、という考えなわけだ。

 

 ただ、一つ否定するなら、あいつはずっとカイくんといるわ。

 許せない。そんなの、ずるいじゃないのっ。私がバカみたいだわ、というと以前の自分の発言に潰されてしまうので、やはり言葉は慎重に使うべきだな、ということがわかる。

 正直者がバカを見るんじゃなくて、バカを見るのは、バカだけだと。

 ついこないだの私がレイに言った言葉だ。

 思い出したくないな。


「夢の話って、なによ」


「だから、仲良くしてほしいんだけど、」


「それは、多分無理よ」


「まあ、絶対にそんなわけないんだけど、言わせてもらうよ」


 兄が私に何か言うなんて、珍しい。いや、いつもこういうときは兄がちゃんと言ってくれていた。

 なんだかんだ言って、面倒見が良い兄ちゃんなわけだ。

 でも、そういう面を見せるのはホントにたまにだから、知り合いのお兄ちゃんみたいな感じなんだよな。


「レイを治せるのは、クレアだけだ」


「そんなわけないじゃないの」


「だから、そうなんだけど、僕はあえて言わせてもらうよ。たまには、レイと話してやってくれ」


 まあ、叱りに行く必要はあると思っていたのだ。

 引きこもりのクセに、決意が生ぬるいわ。

 そんな引きこもりは、誰にでもできるわよっ。

 私とほぼ同じ遺伝子だっていうなら、一人っきりでずっと部屋から出てこないで一生貫きなさいよ、と思うわけだ。


 少なくとも、私はその目標を前世で達成したわけだ。

 まあ、早死というズルはしたのだが。

 それはまあ、仕方ない。今では、死因なんて覚えてないけど、不運な事故だったんだわ。


「あの子は、きっと話したがらないわよ」


「いつもみたいに、「なんで無視するのよっ」って蹴りでも入れてくればいいじゃないかっ」


 よくも、そんなことを言えるわね。

 まあ、いいわ。蹴りくらい入れてやるわよ。


「あ、そう。お兄ちゃんは、レイと会ったの?」


「会ったよ。それに、最近は毎日レイの部屋に行ってるんだけど、やっぱり入れてくれないね〜」


 自分のことなのに、どこか他人事だ。わざと、他人事っぽく見せているのかもしれない。

 とりあえず、兄の思惑はほぼわかる。

 問題の解決を私にやらせようとしているわけだ。

 まあ、面倒くさい兄だ。それに、やっぱり性格も悪い。

 どこの国から来た王子様なのか知らないけど、自分が言えば何でも都合よく動いてくれると思っているのだろうか。

 いや、違うだろうな。

 わかっているんだろう。ずっと、後回しにしているということを。


「お兄ちゃん、じゃあ勝負とかどう?どっちが、本当に妹のことを思っているのか、」


「それなら、僕の勝ちじゃないか」


「違うわよ。どっちが、先にレイを部屋から出せるかよ」


「北風と太陽みたいに?」


 兄がニヤリと顔を歪める。

 なんで、それを知っているんだよ。キッショ。


「それだと、私が北風になるわけ?」


「まあ、そうだろうねっ」


 この人は、普通に妹に冗談を言うタイプだったんだ。

 初めて知った。


「じゃあ、やっぱ無しよ」


「え〜、僕、最後が余計だったの?」


「まあ、いいわよ。蹴りくらい入れてやるわっ」


「良かったよ。それでこそ、我が愛しき妹だっ。じゃ、頼んだよ」


 そう言って、兄は、先ほどまで読んでいた本を手品みたいに手の甲に隠すと、そのまま部屋を出ていった。

 それにしても、面倒くさいことになったな。


Q いや、あんたが原因なんだしさ、あんたがやれば解決、というかあんたが少しくらいは気にかけてあげるべきですよ。


私 でも、あなた達のせいで外に出れなくなった人、いっぱいいますよね?


Q 今、その話関係ないでしょうが!!


私 そうやって逃げるんですか?ああ、はいはいそうですか、


Q なんで、今、ここであんたに言われる必要があるのよ。


私 ・・・ハア、


Q ・・・・・。


私 バカみたい。


Q ・・・・・。


私 あら、喋らないつもり?人には、何が何でも喋らせようとするのに。


Q なんですか、急に!!はいはい。すいませんね。謝りますよ。


私 謝るなら、全然いいですよ。謝っても許さない人は嫌いですからね。


Q あなた、嫌われてたでしょ?


私 そんな、必死にマウント取らなくていいのよ。それに、嫌われているのは現在進行形ですし。


Q あ、普通に忘れてた。


私 ・・・・・・・。まあ、再生しますよ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


翌日


 「あら、やっと来たのねっ」


 いつもの三人が、家でみんなで遊ぼうと言っていたので、私は彼らがここまで迎えに来るまで庭で彼らを待ったのだ。


「あれ、だいたい外に出る時は、なんかよくわかんない服着てるよね?今日は、その、ザ・貴族みたいな服なの?」

 

 ドレスという名称は、あまり庶民には広まっていないのだろうか。


「まあいいわ。あんたたちの親にも見せつけてやろうと思ってね」


 でも、ちょっと緊張もしている。

 友達の家だからなのか。それとも、支配階級として被支配者に会いに行くからなのだろうか。


「まあ、クレアちゃんは私たちについてくればいいわ」


 彼らの後ろを歩くのは不本意だが、まあ道もわからないのだし、仕方ない。

 それにしても、城の外に出るなんて、久しぶり

 ・・・・・

 じゃないな。だいたい二ヶ月くらい前に、カイくんを追って隣国まで歩いたんだったわ。

 まあ、異世界だからなのか、作劇上なのか、時間が経つのは変な気分だ。

 こっちは、一ヶ月も経っていないつもりなのに。


「そういえば、お姫様は街とかに出かけないの?」


 ついこの前、私が女王として期待されていなくて、女王業務というか、次期女王業務を全てレイがこなしていたことにショックを受けたのだが、そうつまり、きっと、私が女王候補筆頭だったならば、今頃旅行三昧にお出かけ三昧だったわけだ。

 いつも、自分の城の庭で、下級生を束ねて女のくせにガキ大将みたいなことをやっていたせいで、せっかくの異世界探訪の機会を逃していたわけだ。

 実に、もったいないことをしてしまった。


「街に出るなんて、もう何年ぶりかしらね」


「あ、あれ私の家なのよ」


 ミンスが城の門を出てすぐのところにあった酒場を指さす。

 酒場の娘か。

 ドラクエとかなら、なんかモンスターの回復とかしてくれた気がするんだけど、・・・もう三〇年くらい前の記憶になるのか。うろ覚えで、せっかく本物に会ったというのに気の利いたセリフが思い浮かばない。

 というか、異世界作品自体も、よくよく思い返すとゲームにあんまり馴染みの無い私にはいまいちピンと来なかったりしたのだ。

 スキルとか、アイテムとかいまいちわからん。

 きっと、これからは異世界もどちらかというとソシャゲ要素が増えてくるのではないだろうか。

 まあ、わからないし、私はあんまりゲームっぽい要素を入れてくつもりはないしな。


「酒場って、何をする場所なの?」


「まあ、いい大人が子供みたいにみんなで集まって騒ぐ場所だよ」


「そうなのね」


 ほら。

 どこの世界にも、こうやって大人になったくせに友達作ったり、仲間と遊びたがったりする輩はいるものだ。

 それに比べれば、家のレイはよっぽど立派に思える。

 子供なのに、家に引きこもっているのよ。

 すごいわよね。よくよく考えてほしいのよ。いあ、本気で。


「ていうかさ、今日は俺達でお姫様に街を案内してあげればいいじゃん」


「リュカ、それはナイスアイデアかも」


「確かに、いいんじゃない?私も賛成」


 勝手に決めやがって、と思うのだが、まあ街の様子は知っておくべきかもしれない。


「じゃあ、案内しなさいっ。私が女王になったら、あんたたちの思う通りにしてあげるわっ」


 ということで、私は家臣も護衛も引き連れずに街を同い年の男女三人と探検することになった。


「ここが鍛冶屋なんだよね」


「鍛冶屋なんて、物騒だわっ。私が女王になったら、鍛冶屋は全部潰すわっ」


「それは困るって。というか、ときどき城の衛兵みたいな人も来ているぜ」


 というか、衛兵なんていたんだ。

 庭で遊んでても、見かけないけどな。

 ・・・・・あれ、なんか前まで居たような気がするけど、いつの間にか居なくなってる?

 いや、思い出せないな。まあ、いいや。

 それか、この城もといこの街全体を囲む壁の方にいるのかもしれないが。

 なんか、本当に私は異世界に来たと言いつつ、狭い世界に閉じこもっていたのかもしれない。


 まあ、それはそれで快適だと思うんだけどな。

 所詮は、外の世界だって知ってる世界の拡大図でしかないじゃないか。冷静に物事の本質や構造を見ることができれば、なんとなく他のことにも適応できるはずだ。 

 まあ、知らない知識とかは外に行って知るに限るけれども。


「街ってどのくらい広いのよっ」


「え、どうなんだろう?リュカは分かる?」


「わかんないけど、まあ端から端まで歩いて一時間とか、そのくらいじゃないか?」


 一時間歩くっていうと、まあ六、七キロメートルくらいだろうか。

 案外、古代建築だって大きいもんだしな。古代ギリシャのポリスとかも、きっと私の想像するよりは大きいのだろう。


「結構広いのねっ」


「でも、この俺達の住んでる中心区以外は、治安も悪いからさすがに、俺達だけじゃいけないな」


 こう見えて、私はこの国から隣国へ行く道を安全に通れるようにした功労者なのよっ。そのせいで、人口流出に繋がったらしいが、そんなのはどうでもいいのだ。

 きっと、この街にはいずれ私とカイくんの血を流した子供が大量に供給されるはず。

 そうすれば、この街の再興にもちゃんと繋がるわ。

 完璧よ。


「あ、ここがユウの家ね」


「そういえば、あんたの家は何をやってるのよっ」


「俺の家は、仕立て屋なんだ」


「服を作ってるってこと?」


「そう」


 仕立て屋なんて、現代日本ではあまり聞かない名前だもんな。


「でもさ、なんか最近安くて品質がいいっていう布がどこかから入ってきてるみたいでさ、」


 安くて、品質の良い、、、、


「それって、なんなの?」


「市場で売られてるんだけど、その、おっぱいをさ、ミンスも着けてるだろ?」


「な、・・・あ、これのこと?」


 ミンスは着ているシャツのネックラインを引っ張って、私たちに身に着けているブラを見せてきた。


「あ、そうそう。それ。家でも、そんなレベルじゃないんだけど、女性用の下着みたいなの作ってたから、これのせいで大変なんだよ」


 私のせい?

 いや、国のせいね。


「私も、もちろんそれ着けてるわよっ」


 男子諸君に見せつけてやろうかとも思ったが、やはり私のプレミアムヴァージンを狙われるわけにはいかない。

 護衛は、一応お兄ちゃんがいるけど、お兄ちゃんが能動的に守ってくれるのかわからないので、なるべくリスクの高い行動は避けるべきなのだろう。と言いつつ、興味本位で街を練り歩いているわけだ。


「そもそも、街に仕立て屋なんていっぱいあるしね」


 そういうものなのね。


「じゃあ、あんたの家はどこなの?」


 私はリュカに尋ねる。


「俺の家は、治安の悪いところにあるから、さすがに案内できないね。それに、お姫様が攫われたりしたら、さすがに責任取れないし」


「じゃあ、なにをやってるのよ?」


「家は、パン屋だよ。こっちの市場まで持ってきて、パンを売ってるの」


「市場?今日はやってないの?」


「いつもはやってるんだけど、今日は定休日っていうか、」


 ふーーん。

 ・・・・・・・

 なんか、退屈だわ。


「なんか、楽しいところないの?」


「ちょっと、こっち来てよ」


 リュカがそう言って、私たちを建物の影に呼ぶ。


「あのさ、結構お姫様が目立っちゃってるよな、」


「まあ、確かにそうかも」


「なんか、私も見られてるみたいな感じはある」


 三人がなにやら話し込んでいる。


「そりゃ、私はお嬢様よ。目立たないわけがないわっ。顔くらい知られていて当然よっ」

 

 私は彼らの方にひょっこりと顔を出して、会話に混ざり込む。


「まあ、そうは言っても。ていうか、俺達は城のこととか王族がどんな生活してるとか、前お姫様から聞いただけなんだけど、そもそも、こんな格好で街を歩いてよかったの?」


 え?


「それはそうだけど、友達を遊びに来るんだから、一番オシャレな格好するわよっ」


 前世では経験できなかったことなのだ。

 前世なら、きっとウケ狙いの変なTシャツとかを着てくるタイプなのだが。

 この世界では、そこら辺のガキには、おしゃれと呼べるほどの服のバリエーションなんてない。

 あ、そうよ、アパレルよ。

 アパレル世界征服だわ。服で、世界を征服すればいいのよ。

 さっき、ユウの父親が仕立て屋だとか言ってたけど、私が雇えばいいんだわっ。


「まあ、一旦お城に戻るか」


 私は合意するつもりはなかったのだが、他の二人の意見も一致したようで、城に戻ることになった。


「は?なんでよ?別にいいじゃないっ。あ、ちょっと、」


 男子二人が、私のことを抱える。彼らに抱えられて、私の体が地面と平行になる。


「よし、戻ろう!」


 まあ、そんなに面白くはなかったけど、これは屈辱だ。別に、こんなことをする必要はないじゃないのっ。


「ちょっと、こんなことしたら余計に目立つだけよっ」


 ホントは、「こんなことしたら、処刑するわよ」と言うつもりだったが、庶民に処刑するとか言うのは、さすがに良くない気がしてきたのだ。

 というわけで、私は抱えられていつもの城の庭に戻ってきた。


また見てね

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