やりたいことをやるの
レイです。
外はまだ怖いです。
家族は、ずっと嫌いです。私の味方は、カイだけです。
まあ、そんな私でよければ、見てください。
「な、なんなのよ。結局、あんたはクレアの味方なのねっ。わかったわ。絶対に、絶対に許さないからっ。ホントに、嫌いっ。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い。あんたなんか、死ねばいいんだわっ。もう、近寄ってこないでっ」
兄はもう見えなくなったけど、それでも私は暴言を言い続けた。
嫌いだ。
意味もわからないし。
「あ、少しは見てもよかったのでは?」
カイの声だ。
あれ、元に戻っている。
本当に、兄は都合がいい。
だから、嫌いだ。あんなの、おかしいじゃない。
「カイ、今度からお兄ちゃんには、絶対にここに来させないでねっ。絶対によ。すぐに、追い払って」
「・・・別に、少しくらい、いいんじゃないんですか?」
「なに、私が言ってるのよっ」
私はカイを睨みつける。
「・・・わかりました」
「絶対によ」
「・・・どうかしたんですか?」
ああ、ムカつくムカつく。
兄も、嫌いだ。未だに、妹にどう思われるかばかり気にしている人間なんだ。自分勝手だ。それに、姉の味方をするし。
「どうしようもないわよっ」
私は、とりあえずの怒りをカイにぶつけた。
「あ、痛い。ちょっと、落ち着いて」
「・・・もう一回、抱きしめてっ」
「はいはい、大丈夫ですよ」
「気持ちが籠もってないわよっ。やり直しっ」
毎日、こんなことをしていても仕方がない。
でも、きっとこのまま行けば、姉は女王になるし、私はよそに出せない娘になるはずだ。
いや、なれないか。
まあ、いい。
きっと、こうしていれば、この部屋の中に私たち二人の楽園が作り出せる。
「今日は、ご飯食べますか?」
怒ったからなのか、いつも以上に食欲が湧いてきた。
ここ一ヶ月、あまりまともに食事を摂ることも出来ていなかった。
元から便秘気味だったのに、トイレに行く回数が一気に減って、なぜだか不健康になった気分になる。
「大量に持ってきてちょうだいっ」
「・・・持ってきますね」
カイも、久しぶりに嬉しそうな顔を見せてくれた。
カイが食事を取りに行くために部屋を出る。
私は、ベッドから出た。
たまには、着替えくらい一人でするか。
最近は、なんでもカイにやってもらっていた。さすがに、乙女としてよろしくなかったかもしれない。
窓の外は、やっぱり見たくない。
なんか、姉がドヤ顔でこっちを見てきているんじゃないか、と思えるのだ。
ドレスも、たまにはこの赤いやつを着てみるか。
それにしても、さっきの兄の言葉はなんだったんだ。「クレアには言うな」ですって。
信じられないわ。こんな、面倒くさい仕掛け、というか魔法なのか?変な魔法でそんなことをして二人きりにさせたのに、結局はクレアの味方だなんて。
もう私の体とほぼ同化していた白いドレスを脱ぐ。
試しに鼻を近づけてみると、脳まで直接届くような臭いだ。あとでカイに洗ってもらおう。
私は、そのドレスをクローゼットの奥の方に押し込んで臭いを隠す。
そして、赤いドレスを当ててみる。
金髪に赤いドレスは、そんなに似合わない、というか、白い方が似合っていなかったかもしれない。
まあ、いいわ。とりあえず気分転換よね。
そういえば、この胸につけてるのは、あいつが発明したとか言っていたよな。
私は、胸につけるこの、・・・名前がわからないけど、胸につける布を脱いで、丸めて、思い切り投げた。その布は飛んでいく途中で広がってしまい、広がったせいでそのままひらりと落ちていった。
そして、私はパンツを履き替える。まさかだけど、こっちもあいつの発明だ、なんてことはないでしょうね。
さすがに、この胸を覆うやつは一〇歳くらいのときに初めて着けたものだけど、パンツはずっと履いていたしな。
大丈夫よ。
「レイ様、持ってきましたよって、・・・あれ?なにしてるんですか?」
私は、ほぼ全裸の恰好でカイを出迎えることになってしまった。
「・・・えっち」
カイの押しているカートから美味しそうな臭いがしてくる。
「あれ、お着替えですか?手伝いますか?」
もう、エッチとか言ってもなにも気にしないくらいの関係になってしまったみたいだ。
前の方が良かったのだろうか。
私がちょっかいかけようとしたら、恥ずかしがりながら拒否してくれた方が良かったのだろうか。
でも、結婚すればそんな恥ずかしがることなんてなくなるのだろう。
結婚できればの話だが。
「大丈夫よ。一人で着替えるわ」
私がそう言ったのだけれども、カイはカートを置いてこちらに駆け寄ってきた。
心配してくれているのか、それとも、
・・・・・・・
そんなのは、考えたくないわ。
現実から、目を背けていたいもの。
「あれ、・・・なんか、臭くないですね」
カイがクンクンと私の臭いを嗅いできた。まあ、多少は自覚はあったけれども、さすがにそうも堂々とやられると傷つく。
「ちょ、少しは気を使ってよっ」
正直な、男の子だ。
「あれ、でもクローゼットの方から臭いが、」
「ああ、あとで洗っておいてもらってもいい?」
「わかりましたよ。でも、先に夕食を食べておきましょう」
ああ、今は夕方なのか。
まあ、時間なんて私の意思に関係なく進むのだ。
時間が止まるなら、こうやって部屋に閉じこもっていることも無駄にはならないのに。
「あ、服だけ着ますか、」
そういえば、さすがに乳首丸出しで食事するわけにはいかないわね。
「じゃあ、着るのは手伝ってよ、」
「その、赤いやつですか?」
「そうよ。・・・たまにはね」
「じゃあ、手挙げて下さい」
そこからは、私はカイの言う通りに体を動かした。カイは、すっかり慣れた手つきで私を着替えさせてくれた。
「今日は、豪華ですよ」
いつもはベッドの上で適当に食べていたが、せっかく豪華だというなら、ということで私は部屋でお茶会をするために、とずっと昔から置かれていた机を取り出す。楕円形のテーブルに白いクロスをかける。
カイが、クローシュを開ける。
私 あ、すいませんけど、説明なんですけど、あの高級なレストランとかにありそうなイメージの、銀色の丸い蓋のついたやつです。なんか、温度を保つためにあんな形をしているみたいですね。じゃあ、どうぞ。
Q 別にそんくらいいいから、邪魔しないでちょうだい。
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結構、量が多いかもしれない。
「カイ、隣に来てっ」
カイが遠慮気味に私の横に座る。
「やっぱり、一人じゃ食べ切れないかも。手伝って」
「・・・いいんですか?俺、執事ですよ」
執事と私の食事なんて、区別する必要なんてないのに、と思う。
私が女王になったら、そんな差別は無くすわ。
・・・・・・・
でも、もう、いいわ。別に。
「なんか、・・・不思議な気分です。俺、」
カイは、目の前の豪華な食事に目を輝かせている。
「なんか、こういうのを幸せっていうんですかね?」
私の中の内なる姉が、「そんなのつまんないわっ」と言っている気がする。
いいのだ、姉なんか気にしなくても。だって、私も今同じことを思っているんだもの。
「じゃあ、俺も、いただきますっ」
別に、ずっとこれが続いたっていいじゃないの。
文句なんて、言わせないわ。
また見てね




