兄のことが好きな十三歳なんていません!!
体を間違えられて転生してしまったクレアがけれども、ようやく本来の体に戻って、これから私の異世界ライフが始まるんだわ。
そうね。
それにしても、なんでこっちの執事?メイド?わかんないけど、なんで兄なのよっ。
向こうが同い年の男の子なのに、なんでこっちは兄なのよっ。おかしいわ!!
よし、お兄ちゃん!!全部、どうにかしといてっ!!!!
「お嬢様、大丈夫ですか?」
少し離れたところから聞こえてくる。この声は、分かる。体の中心に響いて、頭の中でずっと反響し続ける。
目が覚めてみれば、先程までの白いドレスに、ちょっと土埃がついた私の姿が少し離れたところに見える。
「お嬢様、大丈夫ですか。私が来ましたよっ」
どうも、この国には語尾が跳ねる人間が多いみたいだ。
「あの、その人を部屋まで運んで上げて下さい」
カイくんが、私の方を指さして言う。入れ替わったというべきか、元に戻ったと言うべきか。急に十年分の記憶が流れ込んでくる。私は、まあ、悪役令嬢らしい。まあ、あんなに快活な人はいないよな。不器用さとかは、悪役令嬢っぽい気もしたけれども。
というわけで、悪役令嬢で姉のクレアです。みなさん、どうぞよろしくお願いします。で、今私を担いでいるのは執事のフレイです。私の、義理の兄らしいです。一八歳くらいです。私は、レイの双子の姉なので一〇歳です。
「どう?もう、具合は悪くないかい?お兄ちゃんが、なんでもするよっ」
義理の兄のくせにしゃしゃりやがって。あ〜、カイくん来てよ。まあ、イケメンではあるけど、兄は冷めるわ〜。
私は兄の肩に担がれたまま自分の部屋まで運ばれていった。
「うん、別に大丈夫よ」
どうやら、私はおしとやかな令嬢らしい。さっきは、体の記憶に引っ張られすぎたんだろう。いや、そういうことにしておこう。
「あのさ、」
「どうしたんだい?」
「執事って交換できないの?」
「え?どうしたんだい?」
「カイくんがいいっ」
「カイくんは、レイの執事なんだ。僕がいるじゃないかっ」
「嫌よ、お兄ちゃんなんかっ」
「そ、そんなぁっ」
「なんで、年上なの?」
「お兄ちゃんだからさっ」
「じゃあ、なんでお兄ちゃんなのっ」
「運命さっ」
「じゃあ、私は運命から逃げられないの?」
「大丈夫さっ。僕が、クレアを運命でくるんであげるんだっ。だから、心配しなくていいっ。お兄ちゃんであるこの僕っ、守ってあげるのっさ〜」
「お兄ちゃん、私、好きな人が出来たのっ」
「もちろん、僕は応援するっよっ」
「じゃあ、交換してよ」
「それはできない。僕が、ずっと守ってあげるって、約束したじゃないかっ」
「そんな約束、私知らないもんっ」
「大丈夫、クレアが忘れても僕っが、覚えているんだっ」
「約束なんて、忘れてしまえばいいのに」
「一生、忘れないよっ」
「私、カイくんがいいっ」
「そうして、あんな奴がいいんだっ。僕がいるじゃないかっ。僕は、誰よりもクレアのことを愛しているっ、の、さっ」
「なんで?私とお兄ちゃんは血が繋がっていないじゃないっ」
「それでも、愛してしまったんだっ。クレア、僕の気持ちは本当なんだっ」
「やだ、そんなの」
「まだクレアは十歳じゃないかっ。大丈夫さっ、まだ、大丈夫さっ」
「お兄ちゃん、時間っていうのはあっという間に過ぎていくものなの」
「分かってるっ。だからこそなんだ。僕が、愛するクレアと過ごす時間もあっっっっっっっっという間に過ぎていくんだっ」
「あ、が長いわ。全然あっという間じゃないじゃない」
「そっれっは、いいのっさ。愛するクレアには、僕が紹介してあげようっ。幸せな結婚ができるようにしてあげようっ」
「そんなのは、幸せじゃないっ。私は、カイくんがいいの。全身余すこと無く舐め回してほしいの」
「大丈夫さっ」
「何が大丈夫なのよっ、お兄ちゃんが舐め回してくれるわけじゃないでしょっ。それに、普通に嫌だし。一緒にお風呂入るのも嫌だし。もう、私十歳だわよ」
「まだ十歳なんだ。知っているか?子供の頃って、結構事故とか病気とかで死んでしまったりするんだっ。だから、僕がなんとしても守らなければいけないんっだっ」
「大丈夫、私にはカイくんがいればいいの。彼となら、一人じゃないし、彼はきっと私を守ってくれるわ」
「・・・そうなのか?僕じゃ駄目なの?」
なんだか、可哀想に思えてしまう。私がカイくんに舐め回されたいのと、このキモ義兄の気持ちも、一緒ってことなのか?
いや、そんなはずがない。
「じゃあ、カイくんを呼んでくるかい?」
「お兄様、素敵ですわ!!呼んできてくださいまし。お兄様、だーーーーーい好き、チュっ」
「わかった。僕が、呼んでこよう」
「ちょっと、待ったっ!!!!わよ」
「その声は、!!?」
「ちょっと、親愛なるお兄様、一度部屋に二人だけにさせていただきたいですわっ。私、クレアにお話がありますのん」
「ああ、そうかいレイ。わかった。お兄ちゃんは一回部屋から出よう。クレア、なにかあったら、大好きなお兄ちゃんを呼んでくれよっ」
「ちょっと、いいですのん?」
コツコツというレイの足音が絨毯に吸収されていく。
そして、レイが「クレアーっ」と私に掴みかかってきた。
「カイから聞きましたわ!あんた、何してくれてるんですかっ」
「ちょっと、淑女とは思えませんわその言動。一回落ち着いてみたらどうですの」
関西弁と間違えたな、と思いつつ。あ、その、人間は機嫌が悪くなると関西弁になる、という習性があるからね。
レイは掴んでいた私の衣服を離して、ベッドに座るように私に促した。
「あのさ、入れ替わってた間、あんた私の体で何してくれてんのよっ」
「なんのことよ」
私たちは双子のわけだけれども、別々に育てられてきたのだ。なので、そんなに仲が良くない。
「私、カイに自分の体なんて見せたこと無いわよっ」
「でも、あれは彼が望んだことだから」
私は、逆らえないのだから。
「何よ。私の人生どうしてくれるのっ」
「私だって、カイくんのことがこんなに好きなのに、あんただけカイくんにお世話してもらってさ、こっちの変態兄と入れ替えればいいじゃない。それで、気まずくなくて全部解決でしょ」
「それは、あんたが代わってほしいって思ってるからでしょっ。もう、私、これから」
これから、私が悪役になるってことか、もしかして。
まだ、微妙な立ち位置にいるみたいだけど。
「なに、あんた。カイくんのこと好きなの」
「ち、違うしっ。そんなんじゃないもんっ。そっちこそ、」
まあ、私と彼女では、精神年齢に二〇以上の差があるのだ。
「じゃあ、交換してよっ。あのお兄ちゃん嫌だっ」
「私だって嫌よ。絶対に、カイは渡さないんだからっ」
「なんでよ。好きじゃないなら、いいじゃないのっ。そんな意地悪しなくてもっ」
「意地悪じゃないし。とりあえず、あんたのこと絶対に許さないから」
「カイくんに全部見てもらえてよかったじゃん。カイくんも、じっと見てたよ」
「あ〜、ムカつくムカつくムカつく」
レイはそう言って、どんどんと床を踏みつけながら部屋を出ていった。部屋の外にいたロリ兄がレイのことを「大丈夫」と心配と声をかけたけれども、レイはそんなロリ兄の足を踏みつけながら部屋を出ていった。みたいだ。
兄の悲鳴が聞こえてきた。
兄が部屋に入ってくる。
「レイは怒っていたけれども、大丈夫なのかいっ」
「大丈夫大丈夫。お兄ちゃんさ、あとで絶対にカイくん連れてきてよねっ」
「ああ、もちろん。連れてくるよ」
「お兄ちゃん、この服なんなの?重いし疲れる」
私はドレスを兄に見せつける。
「お兄ちゃんの服でも着るかいっ」
「嫌だ。薄くて丈夫なやつ作って」
「もちろん。明日には、渡すよっ」
「あと、胸を支える、あー服みたいなのを作ってよ」
それにしても、この体は胸が小さいみたいだ。
ちょっと前かがみになると、服のたるみで乳首まで見えてしまいそうだった。
「もちろん。でも、どういうのを作ればいいのかいっ?」
「考えたくない、私。お兄ちゃんが考えてよ」
「わかったよっ。お兄ちゃんにまかせてねっ」
「お兄ちゃん、あと、ゲーム作ってよ」
「ああ、もちろん。お兄ちゃんが、何でも望みを叶えようっ」
「わーい」
私はベッドに寝転がる。
暇になった。午前中だけで、あんなに遊び倒して、午後は何もやらないのはどうも、バランスが悪い。
「お兄ちゃんっ!!」
あまり気に入ってはいないが、面倒くさいことは全部こいつに任せようと思ったのだ。
あれ、返事が聞こえない。
「お兄ちゃん!!!」
部屋を見回すと、誰もいなかった。もしかすると、すでにいろんな物の開発に取り掛かっているのかもしれない。
ああ、なんか異世界転生って感じがするな。
家事なんて、誰もやってくれなかったし。
ああ、カイくんカイくん。
会いたい。どうしても。一人でするだけじゃ、満足できない。
よし、会いに行こう。そうしよう。
また次回もお願いします
見て下さい




