私は夢見る乙女なのよ!!
クレアよ。
例え、やらなきゃいけないことがあっても、私は自分のやりたいことをやるんだわっ!!!
ちゃんと見ておきなさい!
「あ、起きたわね」
ようやく、カイくんが目を覚ます。
眩しそうに、瞼を手の甲でこすっている。
「カイくんが起きるまで、四時間三〇分一二秒かかりました」
彼は、目をこすりながら周囲をキョロキョロと見回す。
「カイくん、おめでとう。私と二人きりよっ」
カイくんはそんなに嬉しくなさそうだが、私が嬉しいからいいのだ。
やっぱり、アニメとかで見るメシマズキャラのくせに自分の不味さの自覚がなかったり、恋人に楽しんでもらってると勘違いしてでも結果的に嫌なことを強要させている、というのはどうも現実感がない気がするのだ。
そう、つまり、私が楽しければそれでいいのよっ。
優しさなんか、微塵もいらないわ。
「変なこと、してないですよね?」
疑われるのは、心外だわ。
「それに、ここどこなんですか?」
「まあ、いわゆるレンタルスペースみたいなものよっ」
前世で見たことのあるような部屋の間取りに、それに、ソファとかが完全に現代の工業製品っぽいやつだわ。
わからないけど、私もあまりの高所で気を失っていて、気がついたらここにいたのだ。
兄が私が目を覚ましたのを確認して「じゃあ、いつでも呼んでくれよ」と言って出ていってから、なかなかカイくんが目を覚まさなかったので、四時間半も経ってしまった。
トイレがあったお陰で、なんとか時間を潰すことはできたけど、トイレがなかったらどうなっていたことか。
それに、トイレもよくみる白いちゃんとした洋式のやつだったし。
城のトイレは最悪だわ。
なんか、和式っぽいやつで、水で流すなんてできないから、匂いが溜まっていて本当に酷いものだ。ハエとかもめっちゃ飛んでるし。
「さあ、カイくん、遊びましょうっ」
ドレスでハイヒールを履いたままだけど、関係ないわ。
「本当に、遊んだらこっちにちょっかいかけないでもらえるんですよね?」
カイくんが、いつもよりは堂々とした態度で私にそう言い放った。
「レイにはちょっかいかけないわよ。もちろんっ」
「いや、俺にもですよ」
それは、困るわよ。なんとしても、ちょっかいかけさせてもらわないといけないのに。
「は?なんでよ。それじゃ、釣り合ってないわ。こっちだってね、あんたらが泣いたせいで悪役扱いよ。それなら、一生私に体を差し出しなさいよっ」
「・・・あの、俺はお姉様のこと嫌いなんで、やめてもらいたいです」
「だから、私は好きだから関係ないのっ」
「じゃあ、なんで俺のこと好きなんですか?」
「可愛いからよっ」
「可愛いって、なんですか?バカにしてるんですか?」
「いい、カイくん。一つだけ注意しといてあげるわっ」
私は、唇を突き出し、カイくんの顔に自分の顔を近づける。
「「バカにされてる」と思うのは、バカだけよっ」
あんまり分かっていなさそうだ。
意味がわからないということを、自分の不機嫌を相手に伝えることでごまかそうとしている。
「私の大好きなカイくんには特別に、私の夢を教えてあげるわっ」
「聞きたくなんか、ないですよ」
カイくんはソファに座って私から顔を逸らした。
「私の夢は、カイくんと結婚することよっ」
そんなカイくんの両耳を掴んで、無理やりこっちを向かせた。
「俺は、お断りですよ」
「いいから、少しは黙って聞いてなさいよっ」
私は、椅子に彼を座らせる。
なんだか、いつもはレイの後ろに立っていることが多いので、彼が座っている姿はかなり新鮮だ。
ちょこんとしていて、可愛い。
ムスッとしている表情も、可愛い。
「だから、私は世界を征服するわっ」
「・・・なんの話ですか?」
「カイくんと結婚するために、世界を征服するのよっ」
ポカンとしているカイくんを見て、どうも私は自分のうちなる泉がキュンキュン反応しているのを感じるし、なんなら下着を突き抜けて床に垂れているような気さえするのだが、気にせずに続けた。
「私、カイくんのためになんでもするわっ」
カイくんの両手を握る。
カイくんは、訝しげな目でこちらを見ている。
「どう、私の夢はっ」
「いや、別に、・・・そうなんすね」
まあ、城という環境においては、私みたいに夢見る方がマイノリティではあるのだろう。
だって、将来やることなんて決まっている。生まれたときから、不自由ないわけだ。自由ではないが、不自由は全く無い。
だからこそ、見失ってしまうのだろう。
レイだって、私から言わせれば簡単なことだ。
不自由に縛られすぎたのだ。
それに、私は、ずっとこのままいけば私が女王になるものだと思っていたのに。
そもそもレイが女王になろうと思っていたこと自体がかなり衝撃的だったのだ。
ただまあ、レイが私の言う通りにするかどうかはわからないが、それでも彼女が女王になるために色々やるというなら、邪魔はするつもりはない。
彼女が死ぬのを待つのが、一番楽だろう。
ただ、それは夢とか目標ではなく、消極的な選択肢なわけだ。
別に、死ぬ前でもいいからどこかで女王になることができればいいのだ。
私は、そういうものには全く価値がないと思うのだが、それはそれで極論である、という自覚はあるわけだ。
「じゃあ、カイくんの夢を聞かせてよっ」
「夢、ですか、・・・まあ、このままレイ様の執事として」
「なによ、それはっ。そんなの、普通にしてれば叶うことじゃないのっ。私の願いを聞いたでしょ?」
「だから、クレア様はクレア様で、俺は俺ですよ」
「だから、カイくんの夢は、・・・はっきり言わせてもらうわっ。しょぼいわっ」
Q あなたは、カイくんのことが好きなんじゃないの?
私 好きですよ。
Q あんま、忖度しないタイプなの?
私 大人には、忖度してますよ。
Q そんなのあった?
私 ちょっとだけだったけど、講義を受けた後に「ちゃんと来い」と叱られた時は、私は普通に謝ってたじゃないですか。
Q ああ、そんなのあったわね。
私 まあ、カイくんが年下だからですかね。それに、元から人間関係は苦手でしたから。
Q まあ、あんたみたいなのは嫌われるでしょうね。
私 そうやって、勝手に人類全般の評判を下げないでくださいよ。今の子達は、みんな優しいですよ。
Q あんたこそ、過剰評価しているじゃない。
私 あなたが下げた分ですよ。
Q あ、そう。まあ、いいわ。早く続きを見ましょう。
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「別に、いいじゃないですか。そもそも、夢という程の野望はありませんよ」
「いいわ。私が、あんたに現実を教えてあげるわっ」
なんとなく、いつも悲しいと思っていた。ネットとかでも、確かに、いわゆる勘違い女と言われる人たちが「三高じゃないと無理」とか言っているのを目にする。し、それをバカにする人たちも沢山見る。
「鏡見てから言え」とか。
誰だって、白馬の王子様を夢見ていいんじゃなかったのか?別に、見た目が悪かろうがなんにも努力をしていなかろうが、夢は見ていいはずだ。
別に、叶わないのはわかってるし、こっちはその代わりに死ぬまで待つつもりなのだから。
ただまあ、私としても彼女たちに言いたいことは沢山ある。
「いい、あんた。現実的に実現可能なことは、夢じゃないわっ」
「だから、そんなこと言われたら、夢は無いです。なんでもいいから言えって言われたから俺は言ったんですよ」
「別に、誰も夢をバカにしたりしないわっ。カイくんは、私の夢を馬鹿にしてるの?そんなことはないでしょ?」
バカバカしい、という感じでカイくんは手作なを始めてしまった。
「あんたは、やりたいことはないの?レイのことが好きなんでしょ?」
私は、カイくんの手を握る。
「べ、別に、そ、そんなことはないですっ!!勘違いしないで下さいっ!!!」
まあ、中学生男子なんてこんなもんか。
まあ、付き合ってるんだろうな。どのくらいまで進んだのかは知らないけど。
「お兄ちゃんっ」
「どうした?なにかあったのか?」
トイレの扉がバンと勢いよく開き、兄が出てきた?
え、そんなとこにいたの?
私の、見られてた、わけではないよね?
「お兄ちゃんの夢を聞かせてっ」
「それは、妹二人に囲まれて死ぬことだよっ」
「何か、そのために努力している?」
「まあ、妹を愛すことで忙しいからねっ」
「ほら、こういうことよ」
カイくんの、兄もポカンとしていた。
「夢と現実は、確かに別だわ。まあ、カイくんは男だけど、私は、乙女として死ぬまで夢を追い続けるわっ。死ぬまで諦めないわっ。お兄ちゃんのその夢は、正直意味がわからないけど、」
静かに兄の瞳から一筋の涙が流れたが、そのときの私には気づかなかった。
「確かに、私は現実的に考えてカイくんと結婚できるなんて思ってないわっ」
「じゃあ、夢を諦めたってことなんですか?」
「夢は、追うから儚いのよ。届かないから、儚いのよ。儚いっていう漢字を知ってるでしょ?」
以前に説明した通りだが、この世界では普通に日本語が使われているんだ。漢字なんて、ものすごく複雑だけど、都合よくこの世界でも漢字がそのまま使われているから、気にしないでくれ。
「人偏に夢よ。人が、夢を追っているのよ。夢を叶えてしまうなんて、もったいないわっ」
「なんですか、それは?」
もちろん、こんなの自分でもくだらないと思った。人が夢を追うから儚いだなんて。
兄は、笑顔で私のことを見守っている。
一方カイくんは、まだポカンとしていた。
私は、もう一度カイくんに近寄り、今度はカイくんの足の上に自分の尻を乗せた。
そして、一度立ち上がり、振り返る。そして、カイくんと向かい合うように彼の膝の上に座り直す。今度は、私の尻の辺りに彼の膝が当たる。
なんか、当たってるな、と思いつつも私はカイくんに声をかけ続ける。
「なんか、濡れてませんか?」
あ、ごめんカイくん。
まあ、男の子なら喜んで当然よね。
「だから、もっと大きな夢を追いなさいっ。大きければ大きいほど、バカにされなくなるわっ」
ま、現実は違うけど。
でも、そんなことを言う人達は本当の意味で現実と夢の区別ができていない人たちだ。
「夢を持ちなさいっ。そして、抱えたまま死になさいっ。それが、人生よ。それが、乙女であり、私なのっ」
「押し付けないで下さい」
カイくんの膝の上に乗っていた私だったが、カイくんが立ち上がったので、自然と落とされる。
「ちょっと、なんで急に立つのよっ」とカイくんの肩を揺すったけれども、彼が「離してください」と言ったので、仕方なく私は彼の肩から手を離す。
「じゃあ、俺はレイと結婚して、幸せに暮らすんです。執事と、結婚できるかわからないですけど」
あ、そういえばそうじゃん。
つい、現代的な感覚でいたわ。
レイが女王になったら、王子とかと結婚しなければいけなかったりするものなのか。
「いいじゃないっ。そうよ、夢はそうでなくちゃっ」
「え、じゃあ、僕も、夢を持っていいのかな?」
「ええ、もちろんいいわっ」
「じゃあ、僕は妹二人が仲良くなること。それで、三人で楽しく暮らすことっ」
あ、
「あ、まあ、確かにそうね。いい、夢だわ」
こいつ、性格悪いな。
一三年間と、昨日で、だいぶこじれてしまったのだ。ずっと、妬み合ってきたけど、それでもなんだかんだ悪口を言い合ったりはしていたじゃないか。
まあ、夢の一つに加えてもいいかもな。確かに、このまま仲良くなるのは、現実的に無理な気がする。
さすがに、兄にも申し訳ないとは思うのだが。
「賛成してくれたってことは、お姉様は俺と結婚する気はないってことですよね?」
カイくんは、ちょっと嬉しそうな顔をしていた。
私は、唇の端をに、と上げ、
「そんなことないわよっ。いつでも、大歓迎よ」と言った。
そうよ。
別に、周りからは死ぬほど嫌われている私だけど、夢を持ってもいいじゃない。
勘違い女だなんて、言わせないわ。
どうよ、夢を諦めた羊たち。
あんたらは、夢を持つことを諦めたのよ。夢を諦めたなんて、大層なことを言うんじゃないわよ。夢を持つことを、諦めたのよ。
現実的に出来ないとか、言うんじゃなく、現実的にできないからこその、夢なんじゃないの。
いい?!
「人生に明確な価値なんて、ないのよ。理不尽もあれば、不平等もあって、私たちは貴族に生まれたけど、それでも自由ではないの。夢なんて、教わらないまま死んでしまうんだわ。いつの時代も、どこに住んでいても、関係ないわっ」
なんだか、ディズニープリンセスの映画みたいに、このままカイくんと手を取って踊りだしそうな雰囲気だけれども、私は、歌詞としてではなく、そのまま思っていることをぶちまけた。
「人生は、夢を持つためにあるのよっ。現実を見て、それでも夢を持てる人が、本当に強い人よっ。だから、いいわね。私たち乙女は、夢に向かって、スカートがめくれないように、手で抑えながら走り続けるのよ。転ばないように、ずっと走り続けるのよっ。それが、人生なのよっ。人生が儚いって言うなら、人の命が儚いって言うなら、それは夢があるからなのよっ」
夢なんて、願望でしかないのだから。
みんな、もっと言っていけばいいのよ。夢を持つことほど、素敵なことはないわ。
現実を見ているからこそ、夢を見なさいっ。
「我が妹よ、一応、そろそろ時間になるんだっ」
兄が私の方を向く。
時間?
「五時間でレンタルしたから、もう時間がないんだよっ。すまないね」
「は?あ、ちょっと、カイくんっ。あんた、ずるいわよっ。約束したじゃないのっ。これから、遊ぶのよっ」
Q あれ、戻ってきてるんですか?
私 現実、というか、異世界から戻ってきてるってことですか?
Q そうですよ。それとも、レンタルスペースみたいなのが、異世界にもあるってことですか?
私 ここらへんは、リスペクトというかオマージュですから。異世界系でもときどき元の世界に一瞬だけ戻ることがあるじゃないですか。
Q そうなんですか?
私 そうですよ。まあ、私が見たものの中には、ありましたよ。他の作品がどうなのかは、実際のところはわからないですけど。
Q へ〜。
私 じゃあ、早く再生してくださいよ。良いところなのに。
Q はいはい。すいませんね。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
また見てください




