私の力、舐めんじゃないわよっ!!
勉強なんて、しなくてもどうせ私は女王になれるんだから、問題ないわっ。
それに、なんで異世界に来てまで勉強しなくちゃいけないのよ。
私、ちゃんと義務教育受けてきたわよっ。
勉強なんて、もう散々だわっ。
そんなことより、カイくんっ。私と遊びましょう!!
翌日
「ちょっと、あんたたち」
いつもは割愛していたのだが、私たちは午前中は勉強の時間なので、いつも城の中にある講堂のようなところに集まって、講義を受けている。もちろん、私にはここよりよっぽど学問の進んだ場所での勉強の経験があるので、さほど問題は無い。
大学の講義の方が、よっぽど難しかった。と言いたいが、全然勉強ができない。なんだろう、常識が違うからなのだろうか。
同世代は、いつも会うリリカ達三人と、レイとカイくんと私を合わせて六人しかいない。
なんのために教育を受けているのかはいまいちわからない、というか、こちらに意図を教えずにただただ勉強をさせる、というのがこの国のやり方だ。その、いい意味でなのだ。
やっぱり、私は前世での学校というものは、ものすごく嫌いだった。だから、今の理由もなく勉強させられる状態の方が、好感が持てる。
どうせ神から与えられた二度目の人生なのだから、めちゃくちゃにしてやろうと思った。
あと、シンプルに受付のエルフにムカついたから。
私はリリカたちに声をかけた。
「あら、いつもみたいに外で子供達と遊んできたらwwねえ、お姫様www」
いつもは、先に喧嘩をふっかけてくるのは彼女の方だ。
「せっかく、昨日あんな素晴らしいゲームを遊ばせてあげたじゃないっ。たまには、人に感謝しなさいよっ」
貴族のくせに、くだらない人間だわ。
昔から、人間関係は苦手だった。
でも、気がついたのだ。私が嫌いな人たちは、ひとり残らず人間関係というものを大切にして、それは切っても切り離せないものだ、と嘘をつく。
嘘は言い過ぎかもしれないが、じゃあ、なんで私は彼らのことが嫌いなのだろう。
簡単だ。
友達というものは、自分を堕落させてくれる道具だからだ。
「いっつも三人で歩いて、たまにはオリジナリティを出しなさいよっ」
私がいつものようにそうやって口撃すると、彼女は自身の周りをアユとテトで固めて「あんたとは違って、私には二人がいるからいいのよ」と言う。
ああ、そうか。
結局、異世界も現実だ。
だから、いつまで経っても人間は愚かなのだ。
「まあ、いいわ。今度付き合いなさいっ」
「はあ?もう懲り懲りだわ。それに、あんなくだらないことして遊んで、なにが楽しいのかしらっ」
楽しいじゃないか。
別に、昨日楽しかったでしょ?後ろの二人くらいは、私を擁護してくれてもいいじゃないか。
私は、彼女がどのような出自なのか知らないけれども、それでも彼女は常にあの二人を従えて、それに彼女たちはそれなりに護衛としての技術も備わっているわけだ。
「あんたさ、夢とかないの?」
ちょっと、後頭部にジャブを打ってみる。
「急になんの話なのよっ。夢だなんて、子供だわっ」
ここは、結局どこまで行ってもディズニーランドなのだろうか。
「ちょっと、クレア君。こっち来なさいっ」
突然、先生が私の名前を呼んだので、優先順位を変えて私は先生のところへ行く。彼は、今では白髪に頭頂部の薄いおじいさんだが、昔はこの国を戦争で勝利に導いたものすごい軍師だという。
やっぱり、誰でも、こんな姿は見たくない、と思ってしまう。私にとっては、先生は初めて会った時からこの姿だったから、特に違和感や失望のようなものは感じないが、昔の彼を知っている人は、この姿を見て絶望するのだろう。
「あの、ちゃんと講義に出席するように。あなたの母親も父親も、あなたの将来のことなんか、一ミリも考えていないんだから、なんでも自分でやらないと、駄目ですよ」
親なんかに、将来のことなんて考えてもらいたくはない。
「そうですわね。申し訳ございませんわ」
私はそう言って、先生に頭を下げた。
もちろん、自主的に下げたのだ。決してパワハラなどではない。
「いずれは、この国を引っ張っていくことになるんですから。ちゃんと、講義を受けに来てください。サボらないで」
私の親、つまりはこの国の王様なのだが、私に関心が無いわけではなさそうだが、特に教育方針のようなものはなさそうだ。母親も同じだ。二人は、普通に王としての業務をこなしたり、他の貴族たちと毎晩のように宴会を開いているが、まあそれはそれで必要な業務なのだろう。
朝くらいしか、父親や母親には会わない。
前世でだって、ずっと働けとか鬱陶しかったのだ。是非、考えてもらいたい。多くの人はきっと、働いてないと生きていけないし友達がいないと生きていけないのだ。
前世において、私たちは、その必要不可欠だと思われた二つが無くても生きていけてたのだ。まあ、死んでしまったがゆえに説得力に欠けるとは思うのだが。
親とは、あまり会わないのだから、今は楽しい。もちろん、不条理だと思うことや、異世界のくせに私にとって都合の悪いことがあることは許せないが、都合の良い部分は十分にあるから、まあ、楽しめてはいる。
「明日も来てくださいね」
「わかりました。それでは、ごきげんようっ」
私は講堂から出る。
城も、住み慣れればただのデカめの家でしかない。
「あら、また叱られていたの」
性格が悪いのかもわからない。意地悪のつもりでなのか、リリカは出口で待機していた。
「サボっているんだから、そりゃ叱られるわよ」
私が開き直ると、彼女は肩透かしを食らったようで「ふんっ」と言って帰っていった。
面倒くさい女ね。乙女心は、単純だから面倒くさいのよ。
仕方がないので、友達のいない私はそのまま一人で自分の部屋に戻る。
部屋の窓からは庭が眺められる。子どもたちが遊んでいる。ていうか、あいつらも死んだら転生するのかな。
うわ、なんか嫌だな。私だけの特権じゃないのかな。まあ、あんなに並んでいたし、他にも列は沢山あったわけだから、こっちでも転生は適用されるのかもしれない。
だとしたら、他にも沢山異世界があるってことか?ていうか、そう考えないとおかしいか。少なすぎてしまう。
そもそも、転生ってどういう仕組みで起きてるんだ。
と、いけないいけない。考えるな。
Q ・・・・・
私 ・・・・・・・・・・
Q なんで急に止めたんですか。なんか、リモコンポチポチいじってません?
私 いや、別に。
Q じゃあ、再生してくださいよ。
私 そうですね。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日
Q え、もう翌日なの?あれ、本当にあの日の続きはあれで終わりなんですか?こっそり飛ばしたでしょ。
私 別に、あのあとなんにもないからいいんですよ。
Q そんなことあるの?まあ、いいですよ、じゃあ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
気を取り直して翌日。
「ちょっと、開けなさいよっ」
一昨日と同じく、私はレイの部屋の扉をどんどんと叩く。
いちいち扉に鍵なんてかかっていないので、普通に押せば開くのだが、私は扉を毎回どんどんと叩き、レイに開けさせる。
「あの、クレアお嬢様」
後ろから声がした、と思ったらこの城に住んでいる他の貴族だ。
「どうしましたか?」
「レイ様にご用事でしたら、レイ様は今外出されていると思うのですが、」
「あら、そうなんですね。わざわざ、ありがとうございます」
深くお辞儀をしたあと、スタスタと自分の部屋に戻り、外出するために着替えをする。
あいつ、外出ってなんなのよ。外出するときは、私に声くらいかけなさいよ。
むりやり脱ごうとしたので、ドレスが顔にひっかかるが、ビリビリという音を無視してそのまま強引に脱ぎ捨てる。そして、せかせかともうだいぶ着古したジャージに着替える。別に、また作り直してもらえばいいことなのだが、どうもそういうことにはやる気がおきないし、見た目にあまり頓着がないからこそ、休学したりするのだ。
中身が変わらないのだから、外見がいくら幼くなったからって行動には差がない。まあ、前世でも自分が貴族の娘とかに生まれていたら、今と同じような生活をしていたんだろうな、とは思うが。
靴も履き替えて、一刻も早くレイ、というかカイくんを捕まえに行きたかったので、窓を思い切りバン、と開く。少し、ミリ、というような音が聞こえたが、直すのは私の仕事ではないので、そのまま豪快に飛び降りた。
私の部屋は、城の二階部分になるので、飛び降りたところで大して問題はない。
しっかしと、足を痛めながら着地する。まあ、このくらいなら兄にでも治してもらえば大丈夫だろう。
私は、そのままきっとレイがいるであろうところなど皆目検討もつかないけれども、とりあえず走った。走れば、全てが解決できる、とつい最近映画化して話題になった漫画に教えてもらったのだ。
とりあえず、城を一周してみたけれども、いつものようにガキどもが遊んでいるだけだ。ガキどもは、一瞬こちらを見て、私の存在を脳で認識する前にそっぽを向いてしまう。
まあ、いいのよ。お姫様なのだから、嫌われている自覚くらいはあるわ。
だって、お姫様なのだから。お姫様である以外は、嫌われる要素なんてないもの。
城の正門まで戻り、私は地面に顔をこすりつける。やはり、何かを追うには顔にある感覚器官を使うことが重要だわっ。
唇というものは、かなり人間の体の中でも敏感なところらしい。双子なのだから、本気になればどこにいるかなんて分かるはずだ。だって、私は異世界に都合よく転生してきたお嬢様なのだから。絶対に、見つかるはずよ。作劇上、双子という属性になにか特殊な意味が無いなんてありえないわ。輪るピングドラムみたいに、最後の方で、(*ネタバレ注意)双子が血のつながった双子じゃなかった、とか、呪術廻戦なら、真希が完全なフィジギフになるには真衣の死が必要だったみたいに。こっちだって、それに負けず劣らずの大きな仕掛けがあるはずだわっ。
唇は、土の味しか感じない。ザラザラとしていて、唇で触れると、土も元は石だったんだな、と改めて実感することができる。今度は味覚よ、と思い舐めてみるけれども、やはり変わらない。鼻をクンクンさせてみると、・・・・・あれ、これってもしかしてカイくんの匂いなのではないだろうか。
なんか、ていうか、これって。
私は舌を器用に使い、地面の土の中にあった細い糸のようなものを掘り出す。そして、糸だけを残して土を綺麗に舐めて拭き取ると、一本の髪の毛が出てきた。
これは、絶対にカイくんの髪の毛よっ。そうよ、そうだわ。絶対にそうだと言えるわよっ。
ついに宝を発見した私は、その髪の毛に含まれている沢山の情報を、根性だけで見つけ出す。
「ペ、・・・・・なるほどね。レイは、このまままっすぐ進んだ隣国にいるわねっ」
確信を持った私は、その髪の毛を頬袋にしまい込み、痛んだ足に思い切り力を入れて踏み出した。
次回もよろしく。
次は、レイの話になるよ。




