人生、勝ったもの勝ちよ
クレアよ。
人生はね、最初から決まってるってよく大人が言ってるわ。
もちろん、私はそんなこと思ってないわよ。
まあ、いいわ。
そろそろこの物語も折り返しになるから、目を離すんじゃないわよっ。
「お姫様、戻ってきたよ。なにすんの」
リュカが遠くからこちらに呼びかけてきている。ちょうど、ゲームも終わり
Q なにこれ?適当過ぎない?
私 いや、あんたが望んだことでしょ?勝手に止めないでよ。
Q それは言い訳じゃないの。確かに、このまま人生ゲームやってるの見なけりゃいけないのかな、って思ったから飛ばしたけど、なによ。拗ねてるの?
私 違います、別に。大人しく続きを見といて下さい。
Q ふん。まあ、いいわ。
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片付けをしていたところだ。
「あんたたち、遅いわよっ」
私は、口に両手を当てて、声が遠くまで届くようにする。
「お姫様が、途中で俺達を呼んだから集会も長引いたんだよ」
人のせいにしやがって。あんたらが仕事できないだけでしょっ。
「へ、良いわ別に、あんたたち、帰りなさいっ。こっちは、もう終わったし、二日間も徹夜していて疲れたのっ。たまには、休ませなさいっ」
私がそう言うと、リュカが自分が引き連れてきたガキ達に大声で「帰れだってさ」と言っていたのが聞こえた。
人のせいにしやがって。自分で戻ってきたんだから、臨機応変に考えずに大して早くもないくせに戻ってきたそっちが悪いんだわ。
結局、最後まで人のせいにしてっ。こっちは、最初っから準備できていたのにっ。
「これ、あんたに返せばいいの?」
リリカに投げつける。
「早くよこしなさいよっ」
「なによ、せっかく付き合ってあげたのに。見てよ、私たちこんなにボロボロなのよっ。なんなのよ、このゲームはっ」
Q ちょっと待ってください。なんで彼女たちはそんなにボロボロなんですか?
私 あらあら、現実は早送り出来ませんからね。
Q だから、そういうことじゃなくて、なにがあったか説明してくださいよ。
私 だから、早送りしたから現実がわからなくなったんじゃないのっ。そんなこともわからないの。
Q だから、そういうことじゃなくて、ホント話通じないわ。あんたの言ってることがおかしいんでしょ?現実見ていないから頭がおかしくなったんだわ。
私 そこになんの因果関係があるか言ってみなさいよっ。
Q そっちこそ、さっきからあなたと話が通じないんですけど。それと、あんたを見れば因果関係があることくらい一目でわかるじゃないのっ。これだから、話の通じない人は嫌なのよ。
私 通じてるじゃないのっ。そっちが諦めるからでしょ。そっちが逃げているからよ。なんにもしていないわ。
Q だって、話が通じなければこっちだって話す気になれないわよ。当たり前のことでしょ?そっちこそ、馬鹿みたいにいちいち怒るのをやめたらいいんだわ。どうせ、頭のおかしいあんたには無理でしょうけど。
私 話通じてないのはそっちの方でしょ?話が通じないと思ってもなんで諦めちゃうの?ちゃんと聞けばいいじゃないの?あんたの仕事はそれじゃないの?
Q あんたが先だったじゃないの。あ〜あ、現実見てないからそんなことを言えるのよ。話の通じない相手と喋るなんて疲れるだけだわ。こっちは、仕事があるから忙しいの。あんたは、遊んでるだけなんだから文句言わなければいいじゃないの?なに、羨ましいの?本当は真っ当に働きたかったんでしょ?
私 あんたこそ、本当はもっとちゃんと勉強してアナウンサーとかになりたかったんじゃないの?今のままで満足しているわけ?
Q 別に、やってます。たまにですけど、現地のリポートとかしてますし。
私 あら、一番くだらないかついらない仕事じゃないの。良かったですね。みんなの憧れですよ。雨の日は女性の生足ばっかり映して、傘が飛ばされる人ばっかり映して。みんなの憧れじゃないですか。すごいな、アナウンサーって人の心が無くてもいいのねっ。
Q あんたこそ、人呼びつけておいて「帰れ」って言ったりめちゃくちゃじゃないのっ。それに、何度も言わせてもらうけど、あんたが先に私の話から逸らしたんだわ。自覚しなさいよっ。
私 私は、姫だからいいんです。はい、残念。
Q だから、それはズルでしょ?教えてあげてるのよ、こっちは、ホントに、あんたは毎回毎回うるさいわね。もういいからさ、少し、静かにしていなさいよ。
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「まあ、次は隣よ。テト、あんたサイコロ振りなさいっ」
私 なに?戻したの?
Q あ〜、うるさいうるさいわ。あんたがうるさいから戻したんでしょうが。黙って見ていなさいよ。というか、そもそもあんたが見せてきたことなんだから。
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「まあ、次は隣よ。テト、あんたサイコロ振りなさいっ」
テトがサイコロを振る。
Q ここはいいわ。人の死因なんか考えて趣味が悪いわ。
私 ・・・せっかく考えたのに。
Q こっちだって流せるのと流せないのがあるの。コンプラとか関係なく。
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「なんなのよ、これは。意味がわからないわっ!!」
さっきまで大人しくしていたリリカが、金切り声をあげる。
「なによ。いっつも文句ばっかりで、人生楽しくないわよっ。それに、ゲームなんだから仕方ないじゃない。別に、狙ってなんかないわ」
こっちは、二日も徹夜して考えたことなのだ。それを馬鹿にするなんて、人間として許せないわ。
「まあいいわ。じゃあ、始めるわよ。死に方で人生が決まってるのっ」
出た目は、テトと私が二、リリカが三、お兄ちゃんが五で、アユが六だ。それぞれ死亡保険ということで、三ターンごとにお金がもらえる。まあ、本来の死亡保健も理解してはいるのだが、生まれた瞬間からお金をもらうことを説明するために必要だったのだ。紹介し忘れていた、というか王族はなかなかお金を使う機会がないので出番が無かったのだが、この世界では、通貨の単位はベル、という。五ベルで普通の食パンが一つ買えるくらい、らしい。参考程度に、私の作ったブラは三〇ベルで売られている。
私とテトには十万ベル、リリカには一五万ベル、兄には二五万ベル。アユには三十万ピル、おっと、三〇万ベル三ターンごとにもらえることになっている。
「で、人生だけど、私とテトはえっと、スローライフ系ね。で、リリカが冒険者系で、お兄ちゃんは内政系。で、アユはハーレムよ」
一応、死因なりの転生後の人生を結びつけてみたのだが、私が死んで転生じてきたときはランダムだったわけだ。たまたま、運よく人間の悪役令嬢として生まれ変わることが出来たが、現実はそうではない。
「えっと、最初にサイコロ振ったのはだれだっけ?」
「ていうか、字が小さくて読めないわ。この四角の中にはなんて書いてあるの?」
リリカが、彼女の一番近いマスを指さして言う。確かに、六パターンの生き方が一つのマスに詰め込まれているので、読みづらくはある。
「お兄ちゃんは読めるでしょ?」
「ああ、もちろん。僕は問題無いし、なにせ愛しき妹が書いた文字を読めない兄がこの世にいるかい?」
そんなことは知りません。
「そうね。確かにそうだわ。だから、リリカ。あんたも我慢して読みなさいっ」
不満そうにぶつくさ言いながら、彼女は自分の駒をスタートのマスに置く。彼女には、紫の鉱石を渡した。名前は知らないけれども、こんな暗い色をしているんだから、きっと他人に渡せば呪ってくれるんじゃないか、と思ったので彼女はこれにした。
「で、さっき最初にサイコロ振ったのは誰、ってリリカね。恥ずかしがらなくてもいいのよ。じゃあ、早く振りなさいっ。もっと、楽しんでれくれてもいいんだからねっ」
彼女は上にポンと投げるタイプらしい。前世なら、確かに無駄な転がり防止のためにもそういう投げ方は必要だったが、今は地面の上だからさほど関係無いはずだ。まあ、いいのだ。おそらく、どの土地でもどの国でも、人間は人間だな、ということを表したいのだろう。
「五ね。やるじゃない」
意味もなく褒めたのだが、リリカはちょっとうれしそうに前髪をかきあげて「普通よ、」と言った。
「じゃあ、そこから五つ進めなさいっ」
「ここでいいの?えっと、「初めてモンスターに遭遇して、おしっこをもらす」って、なによっ。あんた、漏らすの好きだわね」
また文句を言って。
「あんたらしい、無様な人生だわっ。次、テトでしょ?」
テトがサイコロを振る。そういえば、なんでサイコロを振る、というのだろうか。確かに、なんとなく投げる前の予備動作として振ることはあるけれども、振るだけでは出た目を確認することはできないではないか。
そもそも、投げるという言葉もサイコロには似つかわしくない。
異世界に来てまで、言葉の使い方で悩まなければいけないなんて。それこそ、こんなに悩んでいたら胸が膨れてしまうわ。
「一ね。えっと、「母乳を卒業する」だってよ。良かったじゃない」
Q ちょっと一言いいかしら。
私 またですか?
Q なによ、お金はどこに行ったのよ。
私 そんな、リリカやアユとテトだって馴染みのないものですから、省いたんですよ。作るときに。
Q こんなの、人生ゲームじゃないわっ。
私 そりゃ、全部パクったらダメだからこうやってるのよ。
Q でも、漏らすのも母乳を卒業するのもなんにも関係ないじゃないの!
私 これだから効率厨は、
Q なにが、「やれやれ」よ。おかしいと思ったから言ってるだけじゃないの。
私 まあ、見えてればわかりますよ。
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「ちょっと、これずっとこんな感じなんじゃないでしょうね?」
「あんた、赤子の頃からお金を稼げるわけがないでしょ?順々に成長していくんだから、仕方ないわよ。いい?一周で一年よ」
「じゃあ、私のおもらしだって変に強調することないじゃない。そりゃ、生まれたばかりならするわよっ」
「じゃあ、文句言わなくていいじゃない。リリカは、おもらししちゃったんだね。バブバブ」
「今度はあんたの番なんでしょ?早くやって。もう、こんなのに付き合ってられないわっ」
そうやって彼女は立ち上がろうとしたが、なぜだかアユとテトの二人がリリカの手を引っ張って座らせた。
すると、リリカも観念したみたいで大人しくなったので、私は
「いいわ、投げるわよ。ほら」と言って、ムカついたのでリリカに向かって投げつけたけど、狙いを外してどこか遠くへ飛んでいってしまいそうになったサイコロを、兄がキャッチしてすぐにこちらへ戻ってくる。
というか、私が投げようと振りかぶった時には兄は私にサイコロを差し出していたようにも思える。
「あら、どうも」
もう一度、今度は仕方ないので普通に転がした。
「あら、私と一緒だわ。あんた、本当によく漏らしていたものねっ。あんたにぴったりだわww」
三の目が出た。リリカは鬼の首を取ったように私のことを馬鹿にしてきた。
この体になってからは、他人に放尿姿を見せた覚えは無いのだが、そうもまだ物心つかない頃はよく漏らしていたらしい。リリカは、いつもいつもそのことばかりイジってくる。きっとこいつもおんなじくらい漏らしていたんだわ。
そうに違いないわ。絶対に、そのコンプレックスなんだわ。
「いや、あんたと同じ場所でも、内容は、・・・あ、」
考えるのがめんどくさくなって、ちょうど内容をどの人生でも同じになるようにしていたマスだった。
私 あ、補足というか、最初に出たサイコロの目によって人生が決まってて、で、その人生ごとに違うマス目になってるんです。すいませんね。
Q あなたも、だいぶややこしいことをしたのね。
私 まあ、仕方ないですよ。作ってる時ってわかんないですもん。
Q あ、そう。じゃあ、早く進めて。
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「まあ、あんたとは違って私のおもらしには意味があるし、理由があるのっ」
そう言って私は腕を組む。
「まあ、なんでもいいわよ。じゃあ、次アユね」
と勝手にリリカが仕切りだしたので、仕方なく従い、サイコロをアユに手渡す。
アユは手からサイコロをそのまま重力に従わせて落下させた。
コロコロと二回ほど転がって、止まった。
「六ね。いいじゃない。えっと、隣の街で女の子が生まれる、よ」
「あの、クレアちゃん。これは、なんの意味があるの?」
突然、アユが喋りだした。
「あんた、喋るなんて珍しいじゃない」
話しかけられたのは初めてかもしれない。
「あんまり人前で喋らないでって、命令してあるの。まあ、いいわ。別に、あんたに対してなら」
ああ、そうだったのね。まあ、テトの方の声は聞いたことがない気がするけど。
「そのマスは伏線よ。最後の方で回収されるわ。じゃあ、リリカね。ほら、早くしなさいっ」
もちろんそんなことはないけれども、適当に答えておいたのだ。
それから私たちは、結構長いことゲームを続けた。結局、最終的に一〇〇人以上のハーレムを築いたアユが勝利して終わった。なんか途中で「あの、僕は、」という男の人の声が聞こえた気がしたのだが、気のせいだったのだろう。
「お姫様、戻ってきたよ。なにすんの」
リュカが遠くからこちらに呼びかけてきている。ちょうど、ゲームも終わり
Q やっと戻ってきたのね。
私 結局割愛してたでしょ?
Q でも、なんなのよ。マスも意味がわからなかったし。それに、なんで最後にアユが勝ったのよ。あと、どこで三人がボロボロになったのかわからなかったわ。
私 あれは、配偶者の数で勝ち負けが決まるの。
Q そんなの、最初から決まっているようなものじゃない。
私 だって、それが現実じゃないの。でも、お金が多ければ多いほどモテやすい設定にはなってるのよ。あんたみたいにね、最初から勝ち負けは決まっている、って言ってるくせに「生きている意味が欲しい」なんて贅沢なこと言うやつがそんなこというんじゃないわよっ。
Q そんなの、面白くないじゃない。なにがゲームよ。楽しくないわ。それに、あんたはずっとずるい場所にいるんだから黙ってなさい。誰も、あんたなんかに説教されたくないわ。
私 だから、現実に寄せた結果ですよ。
Q そういうことではないでしょ。そんくらい、わかるでしょっ。
私 そうやって、都合が悪くなったら逃げるんですね。現実を見ている皆さんは。
Q だから、それとこれとは話が違うって言ってるじゃない。もう、しつこいわね。あんたのつまんない人生見てあげてるのよ。ほんと、あんたとは話が通じなくて困るわ。
私 ホント、あんたムカつくわ。ほらほら、黙って見てなさい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「お姫様、戻ってきたよ。これから、なにすんの」
リュカが遠くからこちらに呼びかけてきている。ちょうど、ゲームも終わり
Q そこはもういいわ。・・・そういえば、なんであの三人はボロボロになっていたのよ。
私 知らないですよ。自分で考えて下さい。
Q はいはい。そうですか。じゃあ、もうこの日はいいですよ。次に飛ばして。
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これからもよろしく。
無責任で申し訳ないけど、そろそろ面白くなってくる頃合いだから、許してぴょん。(作者)




