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万能悪玉令嬢ですが、王命に従い世直し奉仕旅に出ました!【完結済】  作者: 有理守
第6話 悪玉令嬢 山賊の一味に加わる
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其の四 宴のはじまり

 本日も閲覧ありがとうございます。

 お楽しみいただければ幸いです。

 村名主は馬車を降りると、代官所の手付頭(てつけがしら)に無事に娘を届けたことを報告に行った。


「姐さん。お代官様って、ずいぶん立派なお屋敷に住んでいるんだね。これじゃ、ご領主様と変わらないじゃないか!」

「そうですね。でも、ここは役所の建物で、これとは別に代官屋敷というものがあるのです。お見廻り様のもてなしは、代官屋敷の方で行われるのではないでしょうか?」

「へえっ! お屋敷は別にあるのかあ! すごいなあ!」


 ギーと話をしながら、馬車の横で待っていると、村名主が一人の若い役人と一緒に戻って来た。

 わたしは、フードを被り直しうつむいた。ちらちらと、上目遣いに二人の様子をうかがうことにした。


「連絡はすんだから、わしはこれで村に戻る。こちらの手代殿が、おまえたちを仕事場へ案内してくださるそうだ。村のためにも、しっかり働いてくれよ。帰りは、代官所の馬車で送ってもらえるそうだ。

 ネレアの帰りは、明日の昼頃になるかもしれんがな、フフフフフ……」


 嫌らしい笑いを浮かべた村名主を、ギーが怖い顔で睨んだ。何を言っているのかはよくわからなくても、笑い声に不穏な雰囲気を感じ取ったのだろう。

 おや? 村名主の隣に立つ手代も、険しい目つきで村名主を睨んでいる。目が合いそうになったので慌てて顔を伏せたが、どうやら、この手代はこういう状況を不愉快に思っているらしい。


「わたしは、代官所の手代で、オレステと申します。代官屋敷へご案内しますので、ついていらしてください」


 わたしたちを見下した態度をとることもなく、オレステは先に立ち、代官所の奥にある代官屋敷へ連れて行ってくれた。ギーは、調理場での下働きを命じられ、キッチンメイド長に預けられた。


 わたしは、広い客間に通された。そこにはすでに、同じ役目で別の村から集められた3人の娘がいた。代官屋敷のハウスメイド長が、二人のハウスメイドを伴い、わたしたちの身支度のために準備を整えて待っていた。


「オレステ殿、ご苦労様でした。これで、全員揃いましたわ。あとは、わたくしたちで失礼がないようにお支度いたします。あなたは、次のお仕事の準備をなさってください」

「いえ、メイド長。仕上がり具合をきちんと確かめるように、上役から言われておりますので、わたしはお支度が終わるまで、隣の部屋で待たせていただきます」


 そう言うとオレステは、さっさと扉を開け、隣の小部屋に下がっていった。

 メイド長は、ちょっと呆れ顔で彼を見送った後、わたしたちの方へ向き直り、腕まくりをしながら、にっこり笑って言った。


「さあ、娘さん方! 湯浴みに着替え、化粧にマナーの指導まで、このメイド長のビオンダが、しっかりとお世話させていただきますよ!」


 そして、あっという間にわたしたちは、上品だが幾分みだらな女給仕に変身した。「みだら」の原因は、肩を丸出しにしたドレスである。胸元をフリルで覆い、腰の線をやや強調したつくりになっていることも、「みだら」を後押ししている。鏡に映る自分を見て、恥ずかしさのあまり涙ぐんだ娘もいた。


 ビオンダに呼ばれて、客間に入ってきたオレステは、眉をひそめて渋い顔をした。


「まったく似合っておりませんね。村の娘たちは、日々の仕事で日に焼けています。薄紅色のドレスの色味に合うように、顔や首はもっと白く塗ってください。

 それから、肩周りに白いレースのショールを着けさせましょう。光を反射して、もっと顔が白く見えますから」

「オレステ殿、お言葉ですが、これ以上厚塗りにすると、まるで仮面のようになってしまいますわ」


 ビオンダの反論に、おまえは何もわかっていないな、と言わんばかりの冷たい視線を向け、オレステはきっぱりと言った。


「それでいいのです。誰だかわからないような顔にしておけば、後々、偶然どこかで、お見廻り様やお代官様に会ったとき、娘さんたちが嫌な思いをしなくてすみます。簡単には剥げないように、たっぷりと白粉を塗り込んでください」


 言いたいことを言い、オレステは、再び隣の部屋に戻ってしまった。メイドたちは、大きなため息をついた後、レースのショールや大量の白粉を手に入れるために、こちらも急いで客間を出て行った。


 へえ! オレステって、なかなかいい人かもしれないわね。見た目も悪くないし――。わたしが、オレステが消えた扉をじっと見つめていることに気づいて、一人の娘が声をかけてきた。


「オレステ様は、わたしと同じ村の出身で、働きながら苦労して領都の研学院を卒業したんです。村の暮らしをよくしたいと言って、領都から戻って、今年から代官所で手代として働いています。

 真面目で優しい人なんです。だから、わたしたちに同情して、気を配ってくれているんですよ」

「そうですか。お役人様にも、いろいろな方がいらっしゃるんですね」


 オレステ――、何かの時、味方になってくれるかもしれない人物として覚えておこう。


 メイドたちが戻り、わたしたちはきっちり白粉を塗り込まれ、肩に白いレースのショールをはおり、再びオレステの審査を受けた。

 オレステは、ビオンダから頬紅を借りると、わたしたちの頬にクルクルと伸ばし、


「これで血色も良くなりました。いいでしょう」


と言って、ようやく、わたしたちの支度に納得したのだった。ものすごくたくさん頬紅をつけられた気がする! さっき、話しかけてきた娘の顔を見ると、頬全体が濃い桃色に染められていた。これでは暗い灯りの中でも、かなり面白い顔になっている気がするのだけれど……。


 しばらくして、わたしたちは、もてなしが行われる大広間の隣の部屋へ移動した。酒や料理は、調理場からここへ運ばれてきて、わたしたちが大広間に運ぶ。


 この部屋とは反対側の控えの間から、代官、手付頭、王領御見廻り役とその執事ら四名が、大広間へ移動してきた。

 王領御見廻り役は、セスブロン子爵といい、今回、初めて、この役職を命じられたそうだ。二十代半ばのようだが、非常にやせていて目ばかりギラギラさせている。年齢相応の若さは感じられない。

 どうやら、初めて代官からのもてなしを受けるようで、これから待ち受ける夢のような時間を想像してか、ときどきニヤついている。「助平」かもしれないけれど、「親父」ではないわね!


「では、まず、乾杯用の果実酒をカップに注ぎ、皆様に運んでください」

「はい」


 オレステは、この宴席のしきり役を務めていて、わたしたちと一緒にこの部屋にいる。

不安な気持ちを抱えていた娘たちも、オレステがついてくれたことで安心したようだ。もう、涙ぐんでいる者はいない。

 彼は、料理の毒味役も兼ねている。小皿に酒や料理をほんの少し取り分けて、安全かどうか口に含み確かめていた。オレステの許しが出たものを、ワゴンに乗せて広間に運び込むことになっている。

 いよいよ、宴が始まる。


 四人は、丸テーブルに一人ずつ着席し、わたしたちの給仕を待っていた。わたしの担当は、代官のモントロン男爵。オレステと同じ村の出身だと言っていたピアという娘が、王領御見廻り役のセスブロン子爵にあてられた。


 手付頭や執事は、主の手前もあって、節度のある態度を保っていたが、代官と王領御見廻り役は、遠慮なくわたしたちに触れようと手を伸ばしてきた。

 こんな仮面顔のどこに魅力を感じるのだろうと思うが、ジリオラ神官の言った通り、顔などどうでも良いらしい。わたしは、「あら、いけませんわ!」とか「まあ、悪戯な手ですこと!」とか言って、上手く身をかわし代官から逃れていたが、ピアは、王領御見廻り役にしつこく絡まれていた。腰に抱きつかれて頬ずりされたり、指を掴まれてなめられたりして、半泣きで隣室に下がっていくのを、王領御見廻り役が涎を垂らしそうな顔で眺めているのが、またしゃくに障った。

 一度ぐらい、つまずいたふりをして、熱い汁物を頭から掛けてやろうかと思っていたが、突然、太鼓の音が響き、オレステがわたしたちを呼び戻した。


「これから、余興が始まります。その間は、給仕はしません。余興を十分にお楽しみいただくためです。あなた方も少し休んで、良ければこちらの部屋からこっそり余興をご覧なさい。

 王都から来たという、それは美しい異国の踊り子です。一見の価値はありますよ」


 太鼓、馬齢、立て笛を演奏する三人の男が、反対側の部屋から大広間へ入ってきた。そして、最後に登場した踊り子に、わたしは目を奪われた。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 本日、100部分目を投稿できました。

 まだ、続きます。

 

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