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2 先輩が来た

一日置いて、照明石はようやく少し利口になった。


少なくともあんなに暗くなったり明るくなったりと点滅し続けることはなく、ただたまに居眠りでもしたかのようにわずかに暗くなり、すぐに正気に返ったように明るさを取り戻す、まるで失敗を咎められた子供が必死に知らんぷりをしているかのようだった。団長のペン先は決算表を削り、数字と数字、金額と金額を合わせていく、経文を写すように退屈だった。視線を上げて休憩に一秒取れば、机の角のあの茶染みの乾いた輪の縁がわずかに反り返っているのが目に入り、色は昨日より一段濃い色合いになっていた;さらに横に一寸行ったところは八千代が座ってできた椅子の座布団の凹みで、少し戻りはしたものの完全にではなく、中間にまだ曖昧な弧度が残っていて、まるでその椅子も昨日座っていた人の臀部の形を記憶しているかのようだった。酥餅とソースが混ざった匂いはもう散ってしまい、ギルドの中には木と古い紙の匂いだけが残り、静かでペン軸が虎口に当たる微かな摩擦音まで聞こえるほどだった。


それから団長の耳に靴の踵の音がもう一つ加わった。


力の込め方は重くもなく軽くもなく、しかし清脆にギルドの中で弾け、このボロギルドが設立されてから今まで、誰もドアをノックしたことがなかった。八千代は昨日直接ドアを押して入ってきたし、以前の依頼人もそうだったし、隣の商会から家賃を催促に来た小太りの老人でさえドア枠を二回叩いただけですぐに声を張り上げて叫んだ。団長は元々「鍵はかかっていない、入るなら入れ」と言おうと思ったが、言葉が口から出る前に、ドアの外が三秒間静かになった。


ドアが肩幅ほどの隙間だけ開けられた。まず半分の光が廊下から漏れ込み、次に人影が横向きにそのちょうど通れる隙間から滑り込んできた。ドアを押す手は、中の様子を確認したその一秒でドアの重さを完全に受け止め、壁にぶつからないようにしていた。ギルドの薄暗い照明石の光が彼女を捉えたとき、団長のペン先は決算表の上で半拍止まり、虎口の薄い汗でペン軸が微かに滑る角度になった。


彼は頭を上げなかった、視線は依然として第三欄に固定されていた。しかし余光の中であの横向きに入ってきた輪郭は、それでも取り込まれてしまった。廊下の逆光が彼女の全身を輪郭で枠取ったときには、ただ長い髪と肩の線しか見えなかったが、照明石の光が上から注がれて初めてその輪郭に内容が詰め込まれた。わずかに垂れ下がった目尻が顔全体に生来の倦怠感のようなものを与えていて、まるで永遠に寝不足なのに何もかもはっきりと見えているような人だった。深紅色のニットが体にぴったりと張り付き、布地は胸の二つの豊満な弧に内側から押し広げられ、表面が滑らかな曲面を描き、最上部の織り目が他の部分より広く引き伸ばされていて、呼吸のたびにその布地の張力が「持ちこたえている」と「もう持ちこたえられそうにない」の間で微妙に揺れ動いていた。張りつめて、代わりに息をさせてやりたくなるほどだった。腰は細く絞られていて、細すぎて上と下のボリューム感がさらに強調され、スカートの裾は膝の上、ちらっと余分に見てしまいたくなるが言い訳が見つからない位置で止まっていた。


ギルドの空気が何かに押されたかのように、密度が変わった。まるで一杯の透明な水に何か色のついたものが一滴落ちたように、もう元の透明な水には戻れなくなった。


「こんにちは。ここはギルドですよね? 掲示板でまだ人を募集しているのを見ました。」


彼女の声は低く沈み、わずかに掠れていて、尾音に少し笑みが混じっていた。まるで一つ一つの言葉を舌の上でゆっくり転がしてから放ったかのようだった。ドア口に立ったまま急いで入ろうとはせず、一方の手はまだドア枠にかけていて、視線はゆっくりとギルドの中の三度傾いた任務掲示板、机に積まれた決算表、隅の凹んだ椅子を掃き、最後に視線が団長の上で一拍留まった。


団長は頭を上げなかった。ペンは紙を削り続けていた。


彼女の口角がわずかに上に向いた。


「一人ですか? それなら私の運が良かったわ、並ばなくていいもの。」


言い終わると中へ二歩進んだ。踵が古い木の床に二つ短い清脆な響きを立てた。歩く方向はテーブルに正対するのではなく、わずかに角度をずらして、最後に団長とドア口の両方が見える位置に止まった。テーブルから一歩半の距離。見知らぬ人が立つべき距離より半歩近かった。体重の中心を片足に置き、もう片方の足をわずかに曲げていて、この立ち姿で腰のラインの細く絞られた弧がよりはっきりとし、ニットの裾が臀部の弧に押し上げられて横に開いた小さなテントのようになり、布地が腰のくぼみの位置で浅い凹みに沈んで、まるで身体の曲線が服を一口食い込んだかのようだった。


団長が第四欄を計算している頃、鼻の中にこのギルドに属さない匂いがもう一つ混じっていた。薄すぎて香水ではなく、シャワージェルや洗剤が体温の中に残ってゆっくり蒸発してくるようなものだった。道を歩いてきた後の首筋の小さな薄汗の微かな塩気と混ざり、旧い木と乾いたインクの匂いを中間から割り開いた。


「私は薇です。学院の上級生で、前に別のギルドに少しだけいたんですけど、今は……ええと、環境を変えようと思って。」


その「ええと」が微妙な長さで引き伸ばされ、隙間を残して自分で埋めさせるようにしていた。言い終わった後、彼女は低頭して机に広げられた決算表を一瞥し、数字の上を滑る視線の速度はただ見るだけでなく読んでいるかのようだった。


それから彼女はわずかに首を傾け、長い髪が肩から一筋滑り落ち、ニットが一番張りつめているあの弧の横に垂れた。髪先の濃い茶色と深紅色の布が触れ合った。


「忙しそうですね? 改めて来た方がいいですか~」


語尾の上がった音が柔らかく曲がり、全体の文は穏やかで思いやりがあるように聞こえた。しかし彼女の足は一歩もドアの方へ動いていなかった。しっかりと立ち、中心は依然としてあのわずかに曲げた足にあり、全身は自分の骨格の中に緩く寄りかかっている、まるで木の幹に腹ばいになった猫が「もう行くわよ」と言いつつ爪はすでに木に食い込んでしまっているかのようだった。


団長のペンが止まった。


彼女のせいではなく、決算表の第三欄の数字が合わなかったからだ。


その未決の差額はドア口のどんなものよりも彼の注意を引いた。彼は視線を上げて彼女を一瞥した。


薇はテーブルの斜め前方、高い踵のために空けられた角度の線上に立っていた。鎖骨より下の、「この頻度で話すと鳥肌が立つ」ために用意された皮膚はすでに先に緊張し、喉の中で今にも出そうだった低い笑いが喉仏の上で詰まっていた。彼女は相手の視線が紙面から這い上がってくるその零点数秒を数え、筋肉の記憶の中の「相手の視線は襟の弧の上で半拍留まってから顔に上がる」という古い軌道をすでに一度予行演習していた。


しかし視線はただ彼女の方向を掠めただけで、彼女の顔の上で一秒も留まらず、落点は彼女の顔にすら正確に合わず、彼女とドア枠の間のどこか曖昧な領域で回収され、短すぎて彼女がわざと垂らしてニットの弧の横に重ねたあの髪の房さえ気づかれず、そして紙面に戻り、ペン先が再びマスの中に押し込まれた。


「環境を変えると言ったが。前のものはどうした。」


語気は質問というより、表のどこかの欄を確認するようなものだった。


薇は目を瞬いた。


先ほどの一瞬の視線が彼女の上で留まったマイクロ秒数が、彼女のデータベースの中のこの区間に男の視線が落ちた時に通常起こる事と合致しなかった。彼女は何百回と数えていた。誰かは襟の弧の上で零点数秒余分に留まるし、誰かは「あえて見ない」硬直した反応を示す。眼前 のこの人の目はそんな欄を開いていなかった。耐えもせず、避けもせず、本当に見ていなかった。喉に詰まっていたあの低い笑いには行く場所がなく、彼女は食道に沿ってそれを飲み込んだ。


あの三秒かけて重力に自然に垂れ落ちさせ、髪先がちょうどニットの最も豊満な位置の横に落ちるようにした長い髪は、今静かにその場に掛かっていて、観客のない演技を一度終えていた。


彼女は口角の弧を上に押し上げ、元の位置に掛けた。


「ええ~どう言えばいいのかしら、つまり……あまり適切ではなかったのかしら。私はいた時みんなよく面倒を見てくれたけど、どう言えば、ギルド内部の関係が少し複雑になってしまって?」


尾音は柔らかく引き伸ばされ、「複雑」という二文字が喉の奥からゆっくり転がり出て、声は低く掠れていて、少し気まずさと少しどうでもよさが混ざっていた。彼女はこの言葉の後に半秒の間を残して相手に繋げさせたが、半秒過ぎても誰も繋げず、彼女は下顎を横にわずかにずらしてその笑いの角度を維持した。


しかし団長は頭を上げなかった。


ペン先は紙の上を行き来し、同じマスの中で数字を一つ直した。


薇はわずかに首を傾け、目尻を少し下げてから下からすくい上げるように、その少し仰がなければ相手の顔が見えない角度で彼を見た。この角度は彼女の目を普段より一回り大きく見せ、同時に視線をまつ毛の下から溢れ出しているようにした。


団長は一枚の表をめくった。


「もしかすると私がおせっかいすぎたのかも。こちらの世話、あちらの世話をして、結局誰か機嫌を損ねてしまって。」


語気にはちょうど良い自嘲が混じっていた。声を少し低くし、胸腔の共鳴から出る振動が一つ一つの言葉を一層のベルベットで包み、彼女はこの周波数で発する言葉は、十分近くにいる人の鎖骨より下に細かい鳥肌を立たせることを知っていた。


団長の鎖骨より下はテーブルに隠されていて、彼は計算石で第四欄の小計を合わせていた。


薇のまつ毛が一瞬震えた、それは彼女がこの人の周波数を再測定している校正だった。


「だから出てきたの。自分から出たので、追い出されたわけじゃないわ。少し……単純な場所を探したかったの。ここは見た感じなかなか」


彼女の視線は団長から離れ、ゆっくりギルドの大広間を掃いた。四つの空の椅子の座面には薄い埃が積もり、窓際のものは座布団が歪んだまま誰も直していなかった。照明石は壁に埋め込まれていて、そのうち二つは光が暗くなってオレンジ色の底光だけが残り、最後の息で持ちこたえているかのようだった。掲示板には五枚の依頼書、一番上のものは紙の端がすでに巻き上がっていた。釘の周りの木は何度も打ち直されていて、穴だらけだった。


「静かでいいわ。」


「静か」という二文字が彼女の口から出たとき、微笑みの弧を帯びていた。


団長は受けなかった。彼は第四欄の数字を直し終え、次のページをめくった。


薇は半歩前に進んだ。


重心を後ろの足からゆっくり前の足へ移し、踵が木の床の上でとても軽く、少し引きずるような音を発し、全身が水のように前へ半歩流れ出た。深紅色のニットの襟元が彼女の胸の上下につれてわずかに一ミリ沈み、布地が鎖骨に触れ直した瞬間に一塊の温かさが胸の前に押し戻された。これは彼女が練習した距離で、もう半歩近づけば団長は頭を上げざるを得なくなる。


団長は頭を上げなかった。


「後輩が会長なの? 一人でこれら全部を管理してるの?」


彼女が俯いて彼の伏せた横顔を見下ろしながらこの言葉を言ったとき、声は上方から落ちてきて、息に混じったあのほのかな香りのシャンプーの、午後体温で温められた後の残りのニュアンスが、机に広げられた紙の端を撫でた。「後輩」という二文字は柔らかく噛まれていて、半粒の飴を舌の上で溶かしきれずに口を開いて話しているかのようだった。


団長は計算石を横に押しやり、もう一枚の表を取った。


「ん? どうして私が後輩だとわかったんだ。」


彼がこの言葉を言ったときでさえ紙から目を上げず、語気は「今日は何曜日だい」と聞くように平坦だった。


薇は一瞬固まった。


頭の中に並べていた次の三つのセリフがこの質問に穴を開けられ、半秒間空気が穴から漏れ出していった。彼女の指は元々耳元の髪を巻こうとしていたが、動作が中途で止まった。


「……え? 掲示板に書いてあったじゃない、会長の名前と学年。私は来る前に見てたのよ、下調べは基本でしょ~」


瞬き。笑みが再び掛かったが、掛かった位置はさっきより少し低かった。指先が耳元に再び落ちたとき、髪を撫でるリズムが半拍ずれていた。


「でもまあ、確かに掲示板より少し多く調べたわ。学院のギルド登録資料は公開されてるし。会長、メンバー数、評価、設立時間……」


彼女は手を伸ばし、人差し指で一つ一つ空気を指し示した。爪は丸く整えられ、透明な光沢が塗られていて、一つ指すごとに指先が空中に留まる時間が話す速度より半拍遅く、まるで何かの貴重なものを数えているかのようだった。


「メンバー数の欄には、一と書いてあるわ。」


この言葉はとても軽く、ほとんど唇の隙間から漏れ出るほどだったが、一つ一つの文字は確実に机の上に落ちた。


「一人のギルド、まだ人を募集していて、掲示板の募集告知は唯一期限切れていない紙。どう言えばいいのかしら」


彼女はわずかに頭を低くし、視線が通常の水平視から、目尻の上方の弧を使って相手の視線をすくい上げる角度に変わった。まつ毛が軽く押し下げられて一度持ち上がった、この半秒の間に彼女の首のラインがすべて伸びた。


しかしドアの後ろには誰もいなかった。


団長は第五欄の合計を計算していた。


「私たち、もしかするとお互いに必要かもしれないわね~」


彼女は切り札を投げ出し、舌で上顎を軽く突いて相手の反応を待った。


団長の耳は紙の後ろにあり、赤くなったかどうかは見えなかった。しかし彼はペンを置いた。


その言葉のせいではなく、第五欄がようやく計算し終わったからだ。彼は書き終えたその表を左側の完了済みの山に置き、次の枚を取り上げた。持ち上げるのと置くのとの間に短い間があり、彼の視線がちょうど薇の方向を通り過ぎた。


「どういうことだ、一般の人間はこの私のギルドに興味を持たないはずだが。」


薇は髪を弄る指が止まった。


鼻から笑い声が漏れ出た「……ふ。」 息の音の方が声より多く、胸がその言葉にむんむんとぶつけられ、張っていた気が防げなかったところから抜け出し、鼻翼が震えたのを彼女は聞いた。この笑いは想像より乾いていた。


彼女の腕が上がって胸の前に抱えられ、小腕が下方から腕の内側を支えるようにニットに触れた瞬間に、胸のむんむんとした熱が押し返してきて、織り目が皮膚を擦って痒くなり、その熱の中に彼女がまだはっきりさせていなかった何かが隠れていて、まるでこの必殺技が今回こそ読み取ってもらえることを願っているかのようだった。布地は交差した腕の上でより深い谷を押し出していた。あごがわずかに上がり、口角には初めて「この問題は準備していなかった」という表情が掛かっていた。


「後輩ったら、話すときにそんなにストレートじゃなくてもいいじゃない。ちょっとくらい演じられないの? 例えば『ようこそようこそ』とか?」


ため息をついた。気がわずかに開いた唇の隙間から送り出され、ため息は美しく、胸腔の共鳴を帯びて沈み、尾に少し笑みが引っかかっていた。


「わかった。本当の話を聞きたいの?」


彼女は一本の指を立てた。指腹を団長に向け、爪の上の透明な光沢が照明石の薄暗い底光の中で一瞬光った。


「第一、私は前のギルドに追い出されたの、『自分から出た』わけじゃないわ。先ほどのは社交辞令で、あなたが受けなくても仕方ないわ。」


「自分から出た」の四文字に彼女は引用符のニュアンスを加えた。二本目の指が弾け出た。


「第二、メンバー一人、評価は丙下、登録抹消寸前、募集告知の手書きの紙はもう黄ばんでる」


彼女の視線は自分の言葉に従ってドア横の掲示板へ漂い、その手書きの募集告知の上で一瞬留まった。紙は確かに黄ばみ、端がわずかに巻き上がっていたが、上の字は一画一画丁寧に正しく書かれていた。


「字、なかなか綺麗ね。あなたが書いたんでしょう?」


この言葉の尾は上がった弧に本心が混じっていて、一連の切り崩しの中で突然手を伸ばして切り崩されたその人に触れた。


「前の人の。」


団長は頭すら上げず、三文字で彼女の伸ばした手を弾き返した。


薇は下唇の内側を軽く舐め、用意していた次の言葉を置き換えた。


「ここがなかなか静かそうに見えたのよ。ちょうど私も少し厄介事から離れたいと思っていたところだし。」


「私が厄介事じゃないとどうしてわかる。」


二つの言葉の間にほとんど間がなく、二番目の文が直接薇の言葉の後ろから続いた、まるで同じ表の次の行のようだった。


薇は彼を見た。入ってから今まで一度だけ頭を上げて一秒にも満たない時間しか与えられず、彼女のすべての精巧に設計された接近と探りを背景ノイズとして吸収してしまったこの人を見て、口角の筋肉がまず片側緩み、もう片側はまださっきの掛け方を覚えていて、半秒待ってから追いついた。あの十分間維持していた余裕の弧が「掛けていたもの」から「生えてきたもの」へと変わった。


「あなた一人でここに座って何時間も表を埋めていて、茶が冷めても替えず、ドアの外に誰かノックしても応じず、私が入って五分で頭を上げたのも一度だけで、しかも半秒しかくれなかった。」


彼女の視線は団長の顔から机に広げられた決算表へ、横のあの杯の茶の色がすでに深く褐色がかったものへ、杯壁に薄く水の跡が凝結しているのは液面が蒸発して残したものへ、そして広間の中のあの椅子たちへ、どれも乾いていて綺麗で、座布団に圧し出された凹みなど一つもなかった。彼女の人差し指で自分のこめかみを軽く突いた。


「厄介な人はこんな風じゃないわ。厄介な人は私がドアから入って三秒以内に話しかけてきて、どこから来たのか聞き、そして二十分かけてギルドがどれだけ素晴らしいかを紹介するものよ。」


「あなたはようこそすら言わなかった。」


この言葉が出たとき、彼女の視線は団長が机の上に動かさずに置いているあの手に落ちた。ペンを持つ手、指の節がはっきりしていて、余計な動作はなく、彼女が入ってから今までしてきたことはただ字を書く、ページをめくる、計算石を押すだけだった。テーブルに手をついて立ち上がって迎えることも、椅子を押して座らせようとすることも、ペンを置くことさえなかった。


彼女はその手を見て、視線は淡かった。


「それに、本当に厄介なら、私が居られなくなったらまた出ていけばいいじゃない。また出ていったことないわけじゃないし~」


最後の五文字の語速が少し速くなり、小さな石が指の間から滑り出たかのようで、彼女は受け止めたが、受け止める動作は投げる動作より半拍遅かった。口角にはまだ笑みが掛かっていたが、後頭部の小さな皮膚が突然涼しくなったのは、さっきまで張っていた筋肉が緩んだ時に血流が引いていったからだった。指先が髪からゆっくり離れ、今度はもう巻こうとしなかった。


団長は新しい一枚の表をめくった。


薇はテーブルから一歩離れた場所に立ち、深紅色のニットが静かに彼女の体に張り付いていた。この距離なら彼女が呼吸をする時の布地の繊維の微かな摩擦音まで聞こえた。団長がページをめくる音が静かな広間の中でさっきより大きく聞こえた、あるいは彼女自身の耳が敏感になっただけだった。


廊下の奥で何かが鳴っていた、ちん、ちん、金属が骨に当たる音、細かく、不規則なリズムで、まるで誰かが小さな鈴の連を怠惰に散歩する猫の足首に縛り付けたかのようだった。その音は遠くから近づき、一つ一つの間の間隔が縮まり、混じって入ってくるのは足音、軽い、急いでおらず、靴底が石板の廊下を踏む音には完全に方向を確認する必要のない確信があった。この道は彼女が何百回と知らず歩いたものだった。


薇の視線は団長の紙面からドア口へ移り、眉が動いた。


彼女がまだこの音が訪問者かメンバーかを判断する前に、ドアが押して開けられた。ノックはなく、押す力は強くなかったがとても滑らかで、自分の家のドアを滑らせるように。


「ん、今日は新しいのを買ってきたわ。あのお店のおやじは限定品だって言ってたけど、私はただの値上げの言い訳だと思うけど」


紙袋を提げた手がドアの隙間から先に現れ、それから全身が現れた。銀白から桜色にグラデーションする長い髪がドアを押す動作とともに肩から流れ落ち、口には言いかけの言葉を半分含んだまま、足首の銀の鎖が敷居に当たってちん、と清脆な響きを立て、そして彼女は薇を見た。


足が止まったが、驚いたからという種類の止まり方ではなかった。八千代の上半分のピンク色の虹彩の中に何かが突然生き生きと動き出し、まるで猫が今まで見たことのない、毛並みのとても綺麗な同類を見たかのようだった。視線は薇の頭頂からゆっくり鎖骨の下のあの弧の上へ滑り、半拍余分に留まり、それからハイヒールの先へ、元の道を戻って顔へ戻った。薇はあの視線が弧の上で留まった半拍の時間が他の場所より長いと感じ、皮膚が指腹で隔空で撫でられたかのように感じた。全体で二秒もかからず、その二秒の間に八千代の口角はすでに「ん?」の疑問の弧から「ん~」の愉快な弧へと曲がっていた。


彼女は首をひねって団長を見、顔の表情が正確に一種の小動物のような告発へと切り替わった。まるで自分の台所に入って、テーブルに今まで見たことのない良いものが置いてあるのに誰も教えてくれなかったと発見したかのようだった。


「え、客がいるのに一杯のお茶も出さないの?」


団長のペン先は止まらなかった。


八千代はすでに茶器棚の方へ歩いていき、薇の横を通り過ぎるときに足取りが半拍遅くなった。わざとではない、歩いている途中で頭を回して顔を上げたからだった。百六十四センチの身長にハイヒールを履いた薇に対しては、わずかに仰向けなければ彼女の目が見えず、その仰ぐ角度で銀粉グラデーションの長い髪が重力に従って薇に近い側の肩から滑り落ち、髪先の最もピンクの部分がわずかに薇の腕に触れそうになった。八千代の鼻腔の最も奥のその一拍で、薇の体温で温められたシャンプーの残りのニュアンスを捉えた。それは彼女が見たことのないブランドだった。薇の腕の外側のその層の産毛は、一筋の空気が運び去られた時に一瞬涼しく感じた。


「こんにちは~ 私、八千代よ。ここによくお茶を盗みに来るの。新メンバー? それともお茶を盗みに来たの?」


薇の口角は弧を維持していたが、彼女の脊椎の中で場を支えていた一本の弦がわずかに歪んだ。


「お茶も出さない」の五文字がテーブルに落ちた時の重みは、自分の家の食卓に落ちた時と同じだった。薇の口角は元の弧に戻り、呼吸が半拍止まってから追いつき、指先が太ももの横で押してから離した。


「私は薇、新しく来たところ。加入しようと思ってるの。」


簡潔。綺麗。多くも少なくもない。彼女は素早く八千代と団長の間を一往復見た。八千代はすでに背を向けて茶缶を漁っていて、物がどこにあるか探さずに知っていて、手を伸ばして取るとき肘の角度に筋肉記憶の流暢さがあった。


八千代は三つのカップを取った。運んでくるときの歩みは安定していて、一杯を団長の手元に置き、杯底が机の上で昨日の茶染みの位置に正確に重なり、円と円が重なる、まるで判を押すかのようだった。一杯を薇に手渡した。


「はい、お茶どうぞ。ここのお茶は私の私物で、ギルドの福利厚生には入らないわよ。」


彼女がこの言葉を言ったとき、笑って目が細くなり、その笑いは喉の奥のどこかから顔の上に直接咲いた。彼女はテーブルを回って一つの椅子の前に歩き、腰を下ろした。お尻が座布団に落ちたその瞬間、太ももの後ろ側のあの陥没感がちょうど彼女が何度も座ってできたあの凹みを受け止め、彼女の身体の形にぴったりと合った。椅子がぎし、と鳴り、団長のものと全く同じ調子だった。銀の鎖が椅子の脚に当たり、ちん。


薇は自分の手の中のカップを低頭して一瞥し、湯気が鼻先の一番高いところに触れた。彼女は一口啜り、温度が喉の奥で半秒留まってから下へ落ちていった。使われた茶缶は棚の上のあのものだった。


「ありがとう。」


視線はカップから八千代の椅子の座布団の凹みへ。長期に座ってできたもので、形が彼女の座り方に合っている。茶器棚へ、彼女は見なくても正しい位置と杯数を取れた。団長の手元のあの杯へ、ついさっき置かれたばかりのもの、彼は頭を上げもしなかった。


「八千代……先生? あなたもギルドのメンバーなの?」


「違うわ~ 私はただ盗みに来てるだけ、彼が追い出さないからずっと来てるのよね、そうでしょ?」


八千代がこの言葉を言ったとき、わずかに首を傾けて団長を見て、眉尻を半拍上げ、返事を待たずに頭を回した。団長は反応しなかった。


「私は学院で歴史を教えているの、外から招かれた講師よ。精霊族だから、歴史を教えるのは普通のことなのよ。」


「学院が精霊族の講師を招けるなんて、珍しいわね。」


薇の語気には一層の適切な賛嘆が置かれ、厚さはちょうど良かった。


「いいえ、ただ長く生きてて覚えてることが多いだけよ。」


八千代は言いながら紙袋の口を机に向かってひっくり返し、じゃらじゃら、零食の包装がテーブルに一面に転がり出た。昨日より一袋多かった。分類もせず、並べもせず、じゃらじゃらとひっくり返しただけ、酥餅の包装が団長の書類の端を押し開いた。


「ほら、あなたも食べなさい。新入りは飢えさせないのよ。」


零食がテーブルの真ん中、団長と薇の間の位置に押し出された。


薇は手を伸ばし、指先が酥餅の包装の縁に触れてから止まった。


「いいの?」


彼女が聞いたときに見ていたのは団長だった。


「食べなさい食べなさい、彼はこういうの気にしないわ。」


八千代が団長に代わって答えた。語気は全く当然のことで、まるで隣の隣人に「彼の家は鍵かけてないから、直接入って」と教えているかのようだった。


薇は一口酥餅を噛んだ。小さな口で、門歯がきれいに切り落とし、酥皮が舌の上で熱い甘い油に砕け、クリームの味が門歯の根元で溶け、欠片は一つも唇の外に落ちなかった。八千代の方は歯で封口を噛んで直接引き裂き、頰を膨らませて噛み、欠片が服に落ちたら指で弾き飛ばす食べ方で、口に物を詰め込んだまま話していた。


「おいしいわ。どこで買ったの?」


八千代は何でも半時間は話せる、学院の食堂がまた値上げしたとか、時間割を組む事務がいつも間違えるとか、語速は興奮度につれて上がり、面白いオチに出会うと自分で先に笑い出し、口の中の欠片が飛び出しそうになり、手の甲で口を塞ぐが笑いが指の間から顔いっぱいに漏れた。薇が言葉を返すタイミングはちょうど八千代が息を継ぐ合間に落ちた。


団長は彼女たちの声の中で決算表を書いていた。八千代は時折首をひねって関係ない一言を投げた。「ねえ、あの評価変わったの知ってる?」団長はうん、と一声、ペンは止めず、彼女は振り返って薇に話し続けた。その「うん」の言葉がその言葉を受け止めて返してくる速度は、薇が予想していたより零点数秒速かった。


八千代があの笑いのひとしきりを終えると、広間には団長のペン先が紙を削る音だけが残った。


それから。


八千代の手が自分の側からテーブルを越えて伸び、指が器用に団長が今書いている指の間からペンを抜き取った。指先がペン軸を挟んだその瞬間、団長の体温が木の軸に残していたあの部分を、彼女自身の指腹より少し高い温度で、温かく捉えた。


ペン軸が食指と中指の間から滑り出たとき、その二本の指の内側が突然空になり、長年ペンを握っていた位置が一瞬空気に触れた。団長の指が一度開き、元の姿勢で閉じ直し、頭は上げなかった。八千代はそのペンを指先で一回回し、また一回回し、指腹に楽器で磨かれた薄い繭がペン軸を彼女の手の中で安定して滑らかに転がした。二回。そして彼女はペン先を下に、ペン尾を上にして、正確に団長の指の間に差し戻した。木製のペン軸が彼の指の間の内側の皮膚を擦り、さっき一瞬空気に触れていたあの部分が再び埋め戻され、温度はさっきと違っていた。食指と中指の間、取り去る前と全く同じ位置、全く同じ角度。


三秒。抜き取ってから差し戻すまで、三秒。


団長の手が閉じ、ペンが紙面に戻って書き続け、まるであの三秒間で何も起こらなかったかのようだった。


薇が酥餅を噛む動作が一瞬止まった。


門歯が酥皮に切り込む力道が中途で止まり、欠片が割れず、歯の噛み合わせの圧力の中に懸かっていた。彼女の視線は団長が閉じ直した指の上に落ち、そのペンが差し戻された角度の上に落ち、それからとてもゆっくりとてもゆっくり八千代がすでに振り返って食べ続けている横顔へ移った。その顔には「さっき何か特別なことをした」という痕跡は全くなく、彼女は口の中で新しく開けた酥餅を噛みながら、包装の裏の成分表を研究していた。


薇はその一口の酥餅を噛み切り、飲み下すときに喉が動いた。


彼女は低頭して自分の手の中の半分噛んだ酥餅を見、指腹に少し酥皮の油が付着していて、親指と食指で軽く擦った、とても軽く、無意識の動作、まるであまり噛みにくい何かを消化しているかのようだった。十分前彼女はこのテーブルの前に位置を整え、笑みをちょうどに調整し、一つ一つの言葉の中に糸の端を埋め込んでいた。今あのずっと後頭部に頂いていた緊張がなくなって、後頭部が涼しくなり、彼女はすぐにそれを押し戻さなかった。


彼女の酥餅は食べ終わった。指で包装紙の端を摘み、折って、きれいに整えた。


団長は背後の木の棚から一枚の表を引き出し、紙面に薄い埃がかかっていて、彼は掌の側で軽く拭い、掌の側の一拭きで少し埃の乾いた匂いが立ち上り、棚の古い木の匂いと混ざって薇の鼻に漂ってきた。埃は完全に拭き取れず、彼の指紋の紋様の中に残り、下に薄黄色の欄線と手書きの欄名が露出し、インクが均等に褪せておらず、一部の字はまだはっきり読め、一部は輪郭だけが残っていた。この紙は棚の中に一年以上横たわり、誰も触れなかった。彼はその表を薇の方向に押し出し、紙の端が反り返って机の上でとても軽い沙沙という音を立てた。


「書き終えたらここに置け。」


「わっ! 加入するのね!」八千代が椅子の中から弾け上がり、上半身をテーブルに乗り出すように探り、銀粉グラデーションの長い髪が肩から滑り落ちてテーブルを掃き、彼女の目はプレゼントを見た子供のように輝き、音量が突然半段階跳ね上がり、手はすでにその表に触れようと伸ばしていた。団長は動じずに紙を薇の方へ二センチ押し、ちょうど八千代の指先の射程から外した。


「彼女が書く。」


「わかってるわよ! ただフォーマットが変わってないか見たかっただけ!」八千代は大げさに椅子の背に寄りかかり、口を尖らせておやつを取り上げられた子供のように不満げだったが、身体はすでに「それじゃあ見てるわ」の観客の姿勢に切り替わり、両手を胸の前に抱え、あごをわずかに上げ、どこへも行かない構えをはっきりと示していた。


薇は低頭してその薄黄色がかった紙を一瞥し、指先が欄線に沿って滑り、手書きの文字に触れたときに一瞬止まった。筆跡は掲示板のものとは違い、より気軽で、インクが滲む具合は書いた人がこの表を誰かに見られるかどうかを気にしていなかったかのようだった。


「……本当にレトロね。手書きの欄名、この字は掲示板のものと違うの?」


「前の人の。」


薇のまつ毛が動いたが、顔には何も表れなかった。


「ペンある?」


八千代が即座に渡した、団長の机から取ったもので、動作は速くまるでこの機会をずっと待っていたかのようで、指でペン軸の中ほどを摘み、ペン先を薇の方向へ差し出した。


「……八千代。それ私のペンだ。」


「ちょっと貸してあげるだけよ。」八千代は団長を一瞥もせず、語気は天気の話をするように当然のものだった。


薇は手を伸ばして受け取り、指先が八千代の指腹に触れた。あの指の温度は彼女が予想していたより半度低く、指腹には薄い繭があり、触感は乾いていて柔らかかった。八千代は全く気にせず、手はすでに縮めて第二の袋の零食を開けていて、紙袋の音がじゃらじゃらじゃらじゃらした。薇はペンをしっかり持ち、親指でペン軸にまだ残っていた温度を軽く撫でた。ペンを渡したこの手は、さっき団長の指の間に差し戻し、酥餅を奪ったのと同じ手だった。


彼女は視線を逸らし、低頭して最初の欄に狙いを定めた。


名前。薇のペン先が落ちたときにはためらいがなく、二文字は安定して速く書かれ、収筆はきれいで、まるで自分の名前を何度もサインしてきた、考える必要のないものだった。種族、人族、同じく速く、筆画は簡潔。前のギルドの欄で彼女のペン先が一拍懸かり、紙面から一ミリも満たない距離で懸かり、その隙間は短すぎて八千代は気づかなかったが団長は見た、それから筆を落とし、字跡は前と同じく安定していた。離れる理由「個人因素」、四文字、二秒で書き終え、筆画はほとんど感情を帯びずに連ねて書かれた。八千代が身体を寄せてこっそり見ようとしたので、薇の左手が何気なく前に少し移り、手首がちょうどあの欄を遮った。八千代がちっ、と舌打ちして椅子の背に寄りかかり、口を尖らせた。


特技の欄で、薇は書く速度を落とした。ペン先が紙面の上で二度止まった、書く内容を考えていたのではなく、どう書くかを考えていたからだった。最後に三つの言葉を落とした。情報収集、チーム協調、後方管理。書き終えると彼女はペン尾で紙面下方の空白を軽く点いた、まるでインクが乾いたことを確認するかのようだった。


ペンを表の上に置き、軽く団長の方向へ押し戻した。


「他に何か必要なものは? 面接とか?」


「面接? 彼は今やっと」


「ようこそ加入を。」団長の声はとても平坦で、まるで今日の天気が良いと言っているかのようだった。彼はその表を手に取り、一通り目を通し、頭から終わりまで、視線が中段のどこかで零点数秒余分に留まり、それから背後の棚の書類の一番上に収めた。あの山の書類の下はすべて埃で、新しく置かれたこの一枚は白さが目立ち、端が下の山より一ミリ高かった。


薇の口角が動いた。その弧には計算がなく、とても小さく、唇の端の筋肉が彼女が反応する前にすでに上がりまた落ち、彼女は口を結んでそれを収め、きれいに収めた。


「じゃあ、私は席ができたってこと?」彼女の視線がギルドの中の空の椅子を一回りし、語気は軽やかで、どの席が窓際か聞いているかのようだった。


「好きなところに座れ。」


「ここここ!」八千代が自分の隣の椅子をぱちぱちと叩き、掌が木の肘掛けに当たってぱちぱち鳴り、表情は薇本人より興奮していた。


「ありがとう~」薇は立ち上がり、スカートの裾が垂れ落ちるとき彼女の指が自然に布地の縁を少し引き、太ももの上に押し、斜め向かいのあの椅子へ向かった。八千代が叩いたあの席ではなく。壁に寄った位置、背後は実の壁で死角がなく、座って頭を上げれば正対するのがドア口、首を回せば団長のテーブルと八千代の椅子が見えた。彼女は椅子を引き出して座り、指でスカートの裾に沿って布地を脚の下に押し込み、動作は流暢で何度もしてきたかのようで、適当なものではなかった。


「ちっ、新人って恩知らずなのね。」八千代は冷遇された空の椅子を見て口を尖らせ、首を回して団長に告げ口しようとしたが、団長は書類をめくっていて彼女を見ていなかった。彼女は振り返って薇を見、視線が薇の顔の上で二秒留まり、それから自分で笑い、笑うときに目が細くなり、銀粉色の髪先が肩とともに少し揺れた。「まあいいわ、あっちも悪くないわ。少なくともあなたはドアが見える。人が怖いの?」


「ただの癖よ。前のギルドは……人が多かったの。背後に人が行き来するのはあまり心地よくなくて。」薇の語気は気軽で、口角には適切な笑みが掛かっていた。「人が多い」という二文字の中には何かが詰め込まれていて、それ以上は言わなかった。


八千代の「うん」はとても長く引き伸ばされ、まるで何かを噛んでいるかのようで、目は薇を見ていたが口角に少し笑みが混じり、からかいではなく、ただ聞いたが突かないという感じだった。彼女は立ち上がって自分の茶杯と紙袋を取り、団長の横を通り過ぎるときに手の中の最後の開けていない一袋の零食をテーブルに放り投げ、それから声を低くしたがその音量は全く低くなく、薇にははっきりと聞こえる程度に:


「この袋はあなたと新人に分けるために残しておくわ、ちゃんと人を接待してね、会長。」


彼女は薇に向かって手を振った、銀の鎖が手首でじゃらじゃら鳴り、足首の鎖が一歩ごとに細かい金属音を立てた。


「薇~ また明日ね、私毎日来るから、すぐに慣れるわよ~」


ドアが閉まった。銀の鎖の音がドア板の後ろでまた何歩か鳴り、どんどん遠く、どんどん細かくなり、最後に廊下の空気に飲み込まれた。


ドア板の振動が床を伝って団長の椅子の脚に届いたその一拍でやっと止まった。


昨日のこの時間、照明石の光は空の椅子、誰も触れていない棚、机の上で動かされなかった茶杯を照らしていた。


今、斜め向かいに誰かがギルドの古い資料をめくっていて、紙ページがめくられる音はとても軽く、数秒ごとに一ページ、時折ペン先が紙の上で短い沙沙という音を立てていた。彼が書類をめくる手が一拍止まり、斜め向かいのあの呼吸が自分と半拍ずれた。机の上に開けていない一袋の零食が増えた。棚の一番上に一枚白さが目立つ表が増えた。


照明石がまた暗くなった。

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