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Chapter.7 ラスト・スタンド

危機襲来!FBIを通してロス・ビソンテスにCLAWの暗殺指令が下った!抵抗するCLAWと、それ追うビソンテス。二つの組織の戦争の火蓋が今切って落とされた。

FBIの副長官によって胸部を撃たれた満身創痍のエヴァだったが、運よくその銃弾は心臓を掠めるだけに留まり、その熱い銃撃を受けた瞬間に異様に頭が冴えた。


脱力した状態で複数の思考が駆け巡り出した答えは〝生き残る〟ことだった。


FBIで積んできたあらゆる訓練の教訓が彼女を生き延びさせるために機能していった。


彼女は副長官の持っていた銃のスライドを一瞬にして取り外すと、相手が気を取られている隙にラップトップに差し込まれたUSBを取り外して腹部に蹴りを入れた。


他のFBIの職員はシートベルトを外してエヴァを殺すと動き始めた一瞬、エヴァは死に物狂いでフロントがクラッシュしたクロウのズィー・カーに辿り着くと、先ほど拾ったタイラーのキンバーをサバーバンに向けて銃撃し、キャブを上手く作動させるとそのまま急発進させた。


しかし、最後の銃撃でまたしてもキンバーは弾詰まりを起こし、やはりオートはダメだと心の中で思った。


「クソっ、やられた!おい、奴を逃がすな!」そう副長官が叫ぶと、サバーバンに乗り込んで運転席側を叩き、ズィー・カーを追うためにアクセル全開で動き始める。


いくらスポーツカーとはいえやはりズィー・カーは旧車でそれほどスピードの出ないサバーバンの一瞬にして追いつかれてしまう。


「あいつを殺してUSBを奪うんだ!」という声が後ろで聞こえ、ズィー・カーのテール部分を何度も何度も突かれてどんどんと金属が凹む音が聞こえてくる。


そんな最中にバイクの音があたりから聞こえ始める。


〝逃げる為には最大限使えるものを使え〟と過去にエヴァは今追ってきている副長官から教えられていた。


エヴァは直感を信じてバイクの音が聞こえる方向に車を移動させると、あたりにはバイカーギャング集団であるデビルエンジェルスが街中で大規模なツーリングを行っていたのだ。


「おい、ボス!見てくださいよアレ!ボロボロの車のケツをバンが叩いてますよぉ~っ!」


「なんだぁ!?パーティでもしてんのか!?おい、お前ら、挨拶してやれ!」


デビルエンジェルスを総括しているボスであるクロスボーンがそう指示すると、何人かのバイカーが二台と並走し始める。


「おぉいそこのお前ら、なんで車で突きあってるワケ?お熱い関係なのかい?」とバイカーの一人が言うと、満身創痍のエヴァは大声で「そんなことあるわけないだろ!今こいつらに殺されかけてるんだーっ!私は警官だ!」と必死そうな声を上げるとアニマル市警のバッジを見せた。


近寄ったクロスボーンの腹心であるタンジェリンは「アニマル市警?なんだお前シバサンの仲間か?」と話すと、チャンスと思ったエヴァは大声で「そうだ!」と返した。


それを聞いたタンジェリンはクロスボーンに「あいつはシバサンの仲間ですぜ!」と報告する。


「何!?シバサンの仲間だと!?こうしちゃいられない!お前ら、後ろの車に攻撃をかけるんだ!」とクロスボーンは号令し、バイクに挿してあったウィンチェスターのレバーアクションライフルを空へと放つと、FBIの防弾製のバンに対してサタデー・ナイト・スペシャルで一斉砲火を開始する。


「クソ、なんだこのチンピラどもは!お前たちFBIの精鋭の癖にやり返すこともできないのかッ!」


「しかし副長官!この状況下で窓を開ければ我々はハチの巣です!いくら粗悪品の銃と弾丸とはいえ、銃は銃。副長官の身も危険だ!」


「クソ…クソ、クソ、クソ、クソ!クソがぁ!お前らに与えた税金で買ったM4カービンは一体何のためにあるというのだ!使えないゴミどもめ!」


「一旦体勢を立て直しましょう!こうなっては我々でも不利です!」


「クソ…こうもあっさりとUSBを逃すことになるとは…」


サバーバンの運転手はスピードを減速してエヴァの駆るズィー・カーと距離を離していくと、バイカー集団を避けるように右折して逃げていった。


クロスボーンは指示を出して数人の部下にサバーバンを追跡させると、エヴァに対して自分の方へ来るようにハンドサインを出し、見つかりづらい路地へと誘導してバイクを停めた。


「…助かった。君たちはなんていうんだ?」


「俺たちはデビル・エンジェルス。ここら辺一帯を仕切ってるバイカーギャングだ。お前、シバサンの仲間みたいだな?なんだって追われてた。」


「詳細は口外できないが…連中はFBIだ。」


「FBIだって!?クソ、とんだ面倒に巻き込まれちまったってことか。」


「…申し訳ない。だが、私は罠にかけられたみたいだ…」


胸元から出血しているエヴァを見たクロスボーンは頭に付けているバンダナを取り外すと、エヴァに渡した。


「それで縛って止血しろ。…ところであんた、バイクは運転できるか?」


「…あぁ。どちらかといえば四輪の方が好きだけど…」


それを聞いたクロスボーンは自身の乗っていたバイクのキーをエヴァに投げ渡した。


「コレは…?」


「そのボロ車じゃ目立つだろ。俺のナイトスターを使って逃げろ。ただし、後でちゃんと〝傷つけずに〟返してくれ。」


「だが、私はお前らと別に友達なんかじゃないんだぞ?なんだってそこまでしてくれる?」


「シバサンの仲間だからだ。友達の友達は友達さ。それと…警官に媚びを売っておけば切符切られた時に見逃してもらえるしな!」とクロスボーンは少し気恥ずかしそうに照れ隠ししながら笑った。


「こんなところにもお人好しってのはいるんだな…ありがとう。ところでそのボロ車だが…」


「なんだ?証拠隠滅の為にスクラップにしとけってか?」


「いや、その車も…今はべこべこだけど、このバイクと同じくらい愛着を持ってた人がいるんだ。だから、壊さずに私が取りに行くまでどこかに残しておいてほしい。」


「へっ、りょーかい。四輪は趣味じゃねえが、宝物だっていうなら断れねぇ。」


「助かった。それじゃあな!ナイスガイ!」そうエヴァが言ってハーレーにエンジンをかけると、手を振りながらアクセルを握って走らせ始めた。


「ナイスガイ…か。悪くない響きだ。人に良いことするってのもいいもんだな。さあて、この車をアジトに持ってかないとな…アレ、エンジンかかんないぞ…おい、タンジェリン!コレどうやって動かせばいいんだ?どうも四輪はさっぱりわからん…」


「へへっ、それはキャブ車ですぜボスぅ──」






「オッドホーン、FBIからの情報です。CLAWのメンバーの詳細と本部の位置取りを掴みました。多額の報酬も約束されています。」そうリディアが耳打ちすると、オッドホーンは小さく微笑んだ。


「これで連中は一網打尽というわけだ。総攻撃の準備をしろ。」


「マム、これでようやくリベンジができるね。」とマヌエラが言うと、同調するようにヒトキリも頷いた。


「連中に煮え湯を飲まされ、クルティードには侮辱された…この雪辱を晴らすためにも奴らの本部を今日で叩く。」


「それとオッドホーン。このエイヴァ・バットリー・キャンベルというFBIの捜査官を消せとの指示が出ました。」


「わかった。如何にFBIとはいえ、たかが一人粉砕してくれる。」そうオッドホーンが言うと、ビソンテスの幹部の面々に指示を出した。


リディアとマヌエラとジュリアはCLAW本部への集中攻撃、アランは逃げた面々の追跡、ヒトキリはエヴァの抹殺を命令された。


「いいか、お前ら一人一人は殺し屋の中でもプロ中のプロ…誰一人として生かしておくんじゃない。全員の首を持ってあたしの前に献上しろ!ケツはFBIとクルティードが持ってくれる!法治国家の中枢でド派手に暴れるんだ!連中を消した社員には報奨金で五十万…いや、百万ドルをボーナスとして出してやろう!」そうオッドホーンがビソンテスの社員に告げると、全員は「オッドホーン万歳!」と一斉に喝采を上げた。


他の幹部たちはそれぞれにビソンテスの社員を割り振ると、装備を着て戦闘の準備を開始する。


「ヒトキリ、これがお前の注文通りの車だ。オッドホーンがわざわざ新しく用意してくださったんだ大事に使え。」


ヒトキリは無言で頷くと鍵を受け取り、他の装甲車の横に並べられたトヨタ・スープラMk4の鍵を開け、室内からボンネットを開けると中には日産・GT-R用のRB26DETTエンジンが搭載されていた。


エンジンをかけて空ぶかしをすると、重厚感のある音がヒトキリの心を躍らせる。


外装のラッピングはカワサキグリーンをベースに赤・黄の二色が使用されており、漢字で〝紫電〟というロゴが刻まれていた。


「アラン、久しぶりにこんな大仕事をするな。SWAT隊員の皆殺しなんて映画みたいだ。」


「そうだなジュリア。だが俺は補欠だ。逃げた奴を追うだけ。」


アランは愛用のH&K・G36Kライフルに三十連のマガジンを挿入した。


「ドイツ陸軍が誇る特殊戦団<KSK>のティア・ワンに追われたらどんな奴だって逃げれっこない。オッドホーンの指示はいつも的確さ。」


「まあ俺はクビになったんだけどな…ナチスなんて興味もないのにネオナチ扱いされて追い出された。お陰で今はダーティワークまで追い込まれてしまった。この仕事を終えたらしばらくは休みたいもんだ。」


「だな。まあここは実態はブラックだがホワイト企業だし、オッドホーンに頼めば有給ぐらい使わせてくれるだろうよ。今度酒でも飲もう。」


「ああ。」


「リディアはどうだ?プライベートじゃあまり話さないが。」


「私はオッドホーンに仕えるのが生き甲斐だ。オッドホーンが飲むというなら私も参加する。参加しないなら参加しない。」


「ヒトキリは?」と声をかけると、親指でサムズアップを返した。


ヒトキリは喋れないだけで呼べばパーティーにはいつも来るが、リディアはいつも釣れない。リディアはかつてオッドホーンに命を救われ、それ以来彼女に対して異常なまでの忠誠心を持っているが故に二十四時間オッドホーンに身の安全が無いかを常にチェックし、命の危険が迫ればいつでも盾になれるように覚悟をしている。


そんな戦いの前の束の間の雑談を繰り広げている中でオッドホーンはただゆっくりとマヌエラに近づく。


「マヌエラ、この大仕事終えたらお前の…家族の仇を教えてやる。けどな…」とオッドホーンがマヌエラの頭を優しく叩く。


「私はお前が大好きだ。私は麻薬戦争に従事しすぎたせいで薬物の微量接種が重なって子を産めなくなってしまった…だから、お前が一番大事なんだ。こんな仕事をさせてホントに申し訳ないと思ってる。復讐を終えたら、こんな仕事はもうやめて一人の年相応の子供として生きてほしい…実の娘だと思ってる…だから、復讐を終えて殺しをやめても私の娘でいてほしい。」


そういってオッドホーンはマヌエラを優しく抱きしめると、愛おしそうに頭を撫でつむじの匂いを嗅いだ。それと同時にオッドホーンの付けた香水の香りがマヌエラを落ち着かせていく。


「…マムがそういうなら私は、実の家族の仇を始末したらこの仕事を辞める…」


「それとな…自分勝手なことはわかっているが…終わったら私のことを〝お母さん〟と…呼んで…くれないか…?今度は殺しを依頼する〝オッドホーン〟ではなく、お前の母親の〝カレン〟として…」切ない表情でオッドホーンがマヌエラに優しい声で語り掛けると、マヌエラも呼応してゆっくり頷き、二人は目をつぶって額を合わせた。






タイラーはエヴァとの殴り合いの末に昏倒した二時間後に目覚めると、地面に落ちていたエヴァのS&W・R8リボルバーを拾い上げると、ズィー・カーを衝突させたことによってほぼ半壊状態となったシビックに乗ってCLAWの本部へと帰還した。


「おいおい、なんだそのシビックはお前の愛車だろ?ぼっこぼこじゃないか。」


「訳は後で説明する。今はとにかく情報共有だ。ところでブルーはどうしたんだ?」


「クロウの家に行ってからセンチメンタルな気分になったみたいで、お前がズィー・カーで出ていった後、家の中で思い出に浸って香水持ってノスフェラトゥと一緒に半休取って帰ったよ。というかズィー・カーはどうしたんだ?」


「取られたっ!」


タイラーはそういうと状況説明の為に皆を一か所に集めた。


「エヴァはFBIがCLAWを解散させるために潜り込まれたスパイだった。」と告げると、他のメンバーはショックを受けているようで皆一様に悲しそうな表情をしていた。


「で、その国家機密が入ったUSBってのを狙って、最終的にクロウの家に辿り着いた…と。」


「そうだ。彼女を逃がしてしまった以上、CLAWの存続は危ういと思う。彼女は本署にも知られてないこの本部の位置まで知っているし、私たちは同じアニマル市警の仲間に追われるかもしれない。」


「マズいですわ。今はナギサさんもココで匿っているというのに…」


「今はビソンテスを追っている場合じゃないかもね。」


「とにかくマズい状況だ。いつ連中が襲撃をかけてくるかもわからない。武装している連中と相手が知っているならば、殺す気で来るはずだ。武器庫の銃器を集めるんだ。銃と弾薬、それとあの時作ったブルー手製の手榴弾、ありったけだ。相手はFBIだ。警官の装備でやれるだけやるしかない。家に帰るのもマズい。一人でいるところを狙われれば不利だ。ブルーが心配だな…とにかく、今は自分たちの心配をしよう。武器庫の銃を取れるだけ取ってくるんだ。」


タイラーは指示を出すと、武器庫の中に眠っていた多数のガイズリー・スーパーデューティやスタッカートを取り出し、弾倉に弾をマグプル製のローダーを使ってパチパチと詰めていった。


「ここってこんなに新品の銃が眠ってたのか。油まみれで状態最高のM4とスタッカートがこんなにあるなんてな。」そう呟きながら、アンジーは愛用のダニエルディフェンス・デルタ5狙撃銃に三○八ウィンチェスターマグナム弾を装填していく。


「遠距離を覗ける武装はここには相棒のコレしかない。だから、コンテナの上に登ってあたり一帯を監視してほしい。これはカンだけど…もう日暮れだ。見通しの悪い夜に襲撃をかけてくるはず。ナイトビジョンと防弾メットを忘れないようにした方がいい。それとシバサン、劣勢になったら直ぐに逃げれるようにグルカのエンジンをアイドリング状態にしてくれ。ナギサもそこに匿ってほしい。そこが一番安全だ。」


「わかった。ナギサ、一緒に逃げるよ。」


「ダッジやステージア、それとあのオンボロのシビックはどうしますの?」


「バリケードにして使おう。ここは周りに森があるから見通しこそ悪いが、射線が通るところが多いから少しでも遮れた方がいい。場合によっては爆薬を仕込んで爆破することも考慮しないと。車は金を貯めればいつでも買えるが、命はそうはいかないからな。」


「僕、ダッジとステージアにお別れを言った方がいいかな?」


「そうだな。私も心苦しい気持ちは同じだ。」


「それと…これは怪我の功名だがエヴァが残した盾がある。これがあればある程度の弾も防げるはずだ。各自持ち場に付け。」


タイラーの指示を聞いた面々はそれぞれの配置で銃器を構えながら待機し、アンジーも階段の手すりから屋上に登って、直ぐにでも降りられるようにロープを括り付けると、ナイトビジョンとスコープを通してあたりの監視に入った。


息を潜めながら数十分が経過すると、遠くの道路に車列が通るのが見えてくる。


「各自、こちらアンパサンド3。遠くの方に車列が見える。」


「車種は?」


「待ってくれ…暗くてディテールがイマイチ見えない…ん!?」


アンジーはスコープ越しに車の姿をハッキリと捉えると、それは警察用の装甲車やバンではなく軍用のハンヴィーだった。それを見た瞬間にアンジーは襲撃をかけてくる連中はFBIではなく、ロス・ビソンテスであることを悟った。


「おいおいおい、マズいぞ。相手はFBIじゃなくてビソンテスだ!こっちの装備で太刀打ちで来るかわからな──」


アンジーが驚いた次の瞬間だった。別の方角からスコープが反射するような光が見えた。その光を瞳で捉えた瞬間にはもう遅かった。痛みにも気づかぬ間にデルタ5にかけていた右手の人差し指は鮮血を噴き出しながら宙を舞うと、後には熱い痛みだけが残った。アンジーは冷や汗をかきながらのたうち回り、吹き飛んだ指の出血を必死で抑えた。


「うあ…うあああああああああああっっっ!」


「どうした、アンパサンド3!しっかりしろ!おい!相棒!」


そして遠くで狙撃銃を覗くマヌエラが「あーあ。やっぱりバイタル外しちゃった。ロングレンジじゃ七・六二はダメだな。」呟いた。


アンジーの生存本能が爆発し、その場からロープで降りるが右手の感覚がおかしくなっていることで手を離してしまうと、軽く二メートルはある高さから落下して砂に塗れた。幸い、スワットで教練されていた受け身を取れたお陰で大事には至らなかったが、体にジンジンとした衝撃が響き続けた。


その落下音を聞いて驚いたタイラーはすぐに外へと飛び出すと、地面に落ちて泥まみれになったアンジーを見てすぐさま容体の確認を行った。


「おい、相棒!しっかりしろよ、おい!」


「だ、大丈夫だ。命に別条があるような怪我じゃない。それよりも、私のプレートキャリアのポーチから酒とヘロインを取ってくれ…」


「でも相棒…指が、右手の人差し指はどこへ!?」


「いいから早く…!」


タイラーは焦りながらウォッカとジッポーを取り出すと、アンジーはウォッカを傷口に塗って消毒した後にジッポーで火をつけて、人差し指の断面を強引に焼却止血した。


「はぐっ…うああああ゛ああああああああああああああああ゛ああっ!はぁっ、はぁっ……」


冷や汗が止まらなくなりこれほど痛みに苦しんでいるアンジーの姿をタイラーは見たことが無かったため、心の底から不安でいっぱいになっていった。


だが、その不安は遠くから聞こえ始める銃声によって吹き飛ばされる。


五・五六ミリ弾の銃声があたりに響き始めると、ビソンテスの連中は銃撃を開始し始めた。


「お、おいマズいぞ相棒?先にグルカに乗っとくか?」


「いや…この程度…手数が足りない方がマズい。私も戦闘に参加する…」


「死ぬなよ、相棒。」


「へへっ…あたぼうよ。」


「二人とも!雑談をしている暇はありませんわ!はやく加勢してくださいまし!」


「二人だけじゃ火力も全く足りない!相手には凄腕のスナイパーもいるから手を出せないんだ!」


「相手の人数は!?」


「三十人ぐらいですわ!ビソンテスの一個小隊が私たちたった四人を殺すために送り込まれたんですわ!」


「クソ、連中は本気だな!こっちにはマシンガンすらないっていうのに!」


タイラーと満身創痍のアンジーはトレーラーハウスを挟みながら移動すると、SCAR-Hとデルタ5を使用して側面攻撃を仕掛ける。


ビソンテスの兵士はきっちりと防弾装備を着こんでいるが、大口径の弾薬の応酬を受けると、被弾した数人の兵士はそのまま動かなくなった。


その銃声に気づいたビソンテスの兵士はそちらへと銃撃を行うと、タイラーは倉庫に残っていたブルーのパイプ爆弾に火をつけ、車の方向へと投げるとそのまま爆発がガソリンへと引火して火と煙が夜景色の中で煌びやかに輝いた。


「あーあ。もう三人も殺されちゃった。やっぱり舐めてかかるとだめだね。」


「たかだが四人如きに怯むんじゃないっ!グレネードランチャーの使用を許可する。ネズミを吹き飛ばせ。」


ジュリアの指示を受けた数人のメンバーは持っているスタンドアローンタイプのMk13グレネードランチャーに四十ミリ榴弾を装填すると、タイラーとアンジーがいる方向のトレーラーハウスにめがけて発射し、炸裂した弾によって大きく爆発炎上を起こした。


身をかがめて榴弾の応酬を躱すと、今度は武器庫とプレハブの間まで移動して暗闇からアンジーは床に転んで相手のスナイパーを探した。息を殺して索敵していると、アンジーの瞳にマヌエラの顔が見えた。


だが、それを見た瞬間にアンジーは銃口を反らして狼狽えた。


「おい、何やってるんだ相棒!」


「無理だ。」


「はぁ!?お前らしくないぞ!」


「あのスナイパーは子供だ!私は子供を撃つことなんでできないっ!」


「例のあの子か!?クソ、こんな時に──」


アンジーが狼狽えていると、デルタ5のスコープ部分にマヌエラの撃った弾薬が着弾し、レンズが割れて狙撃銃としては使い物にならなくなってしまった。


苦し紛れにホルスターからフルオートスイッチを装着したグロック19を乱射するが、小口径弾を照準もせずに片手でばら撒いただけでは当たるわけも無かった。


「ルフィナかシバサン!アンジーにライフルを一丁持ってきてくれ!火力が圧倒的に足りてない!」


「了解ですわ!」


「ルフィナ、弾薬は!」


「まだ全然ありますわ!」


「ブルーの416が残っててよかった。フルオートがあると大分楽だよ!」


「シバサンはここで留まっててくださいまし!私はスーパーノヴァで二人の援護に行ってきますわ!」


ルフィナはスーパーノヴァが空になっていることを確認すると、弾倉の中にドラゴンブレス弾をフル装填して一丁のスーパーデューティを拾い、後ろ側のガラスを破ると、そのまま釘付けにされているタイラーとアンジーの援護へと向かい、相手側に向かってスタングレネードを放り込むと、相手が怯んでる隙にドラゴンブレス弾で一人、また一人と焼き殺していった。


するとプレハブ小屋側に榴弾が着弾し、階段が吹き飛んで消え失せた。


「やっばかったぁ~!あと数センチズレてたら死んでたよ。もう弾切れだし、僕もそろそろ降りようかな!」


シバは持っていた416を地面に置き、放置されたフル装填状態のスタッカートを二丁拾うと、プレスチェックを行ってそのまま三人のもとへと合流した。


「そろそろグルカで逃げたほうがいいな。何人倒した?」


「私たち全員の合計でも六人か七人ですわ…」


「クソ、手練れだな。あと二十人以上も残ってるのか。」


「…そうだ。いいアイディアがある。私の人差し指を奪ったあいつらに復讐してやる最高のチャンスが。」


「みんな、私の指示を聞いてくれるか?かなり無茶だが逃げるだけの時間は稼げるはずだ。」


「今はそれに賭けるしかない!」


「いいか、私は正面からプレハブに入って〝ちょっとした仕掛け〟をしてくる。私が行って逃げるまでの間に連中に集中砲火して引きつけてくれ!あと、グルカのエンジンはかけておいてくれ!出たらすぐに距離を取らないとマズい。もしも私が撃たれて倒れたら構わず逃げろ!」


アンジーはグロックを再装填し、スーパーデューティを構えると、走りながら乱雑にビソンテスに向かって銃撃していく。


そしてその注意を反らすようにシバサンはスタッカート二丁を、ルフィナはスーパーノヴァを、タイラーはスーパーデューティをそれぞれ乱射して撃ちまくった。


一分ほどたった後にアンジーはプレハブ小屋を出ると、そのままグルカに乗る様に指示して全員はそれに従って乗り込んだ後、ブルーのパイプ爆弾の残り一つをプレハブ小屋に向かって投げ、そのままグルカを出すよう指示した。


「ふぅっ、ヤバかった…まだ追ってくるかもしれないから気を付けろ…ところで相棒、一体何をやってたんだ?」


「プレハブ小屋のキッチンに隠したヘロインをありったけを部屋中に撒いてきたんだ。」


「…つまり?」




「粉塵爆発さ!」




パイプ爆弾が起爆した瞬間、その爆風はプレハブ小屋内に撒かれたヘロインに触れると、派手な衝撃波を轟音をまき散らしながら建物を丸ごと吹き飛ばした。


その破片はビソンテスの一団を軽々しく蹴散らして黒焦げにしていく。


「危ない!」とジュリアは叫ぶと、近くにいたリディアを庇って爆風を浴びて数メートル吹き飛ばされた。


「ゲホ、ゲホ、大丈夫!?リディア!ジュリア!」距離を取っていたマヌエラは爆発が落ち着いた後に近づくと、ジュリアは瞳孔が開ききっていて、背中は丸焦げになり、いくつものプレハブ小屋の鉄片が背面に突き刺さって即死していた。


リディアはそのジュリアの死に顔を数分間動けないまま直視していた。


「何故だ…?何故私を守ったんだ!ジュリア!」


リディアは叫ぶが何一つ返事は帰ってこない。ただ、瞳孔が開いて虚ろな目をした遺体が揺れ動くだけだった。


「目を開けろっ…!開けてくれ、おい、なんで私、私はお前の誘いを一度だって…何故だ、何故私を守った!?理解できない、理解が…」


「…マム、ジュリアが死んだ…」


マヌエラが無線連絡を入れると、オッドホーンは酷く動揺した様子だった。


震えた声で「そうか…」とだけ受け答えをすると、座っていたデスクの周りにあったものを片っ端から壁に向けて投げつけていった。無線越しからガラスの容器が次々と破壊されていく音が聞こえると、マヌエラはそのまま通信を切った。


「安らかに…眠ってくれ…」と小声でリディアはつぶやくと、証拠隠滅の為に時限式のC4爆弾を遺体のプレートキャリアの間に挟み込んだ。


「…リディア、連中を追わないと。」


「…ああ。連中を消さなきゃ私の気が済まない!全隊車両に移動しろ!連中を地獄の底まで追いかけてやるんだ!」


リディアの号令と共に三台のハンヴィーはグルカの痕跡を追った。


そして背後で証拠隠滅の為のC4爆弾が起爆されると、CLAW本部は爆散して消え失せた。


このあたりのダウンサイドはほとんど建物が無く、道が開けていて敵を探し出すのは容易である。


出発したハンヴィーはすぐさまグルカを発見すると、その足取りを追跡した。


一方その頃、グルカの後部座席でタイラーの携帯に一通の電話が入ってくる。その宛先はCLAWの創設者である〝ドギー・デッカード警視〟からの連絡だった。


「タイラー、私だ。」


「…デッカード警視?ちょうどよかった。もうわからないことだらけでてんやわんやになってて…警視も連絡に出ないし一体どうなってるのかって…エヴァのことは巡査部長も知らなかったようだし…」


「私は全てを知っている。最初から最後まで見通していた。この事件で何があったかも全て把握済みだ。」


「…はあ?では、エヴァが裏切り者だってことも…?」


「当然わかった上で引き入れた。そしてお前が違和感を持つようにあえてエマに連絡を入れなかった。真実を知りたいなら生き延びろ。ブルドッグウェイにある旧署に来い。エマもこのことはもう知っている。」


「は?巡査部長も一緒にいるんですか?」


「エマにも全て事実を話した。それと…時間がかかるかもしれないが少し助け船も出してやろう。」


「助け船?」


話の途中で電話が切れると、タイラーは運転席のシバサンにカウンタウンにあるブルドッグウェイに向かうように指示を出した。


すると、後部ハッチに銃弾が命中する音が聞こえ始める。タイラーは無線でシバサンにサイドミラーをチェックさせると、後ろから三台のハンヴィーが接近してきていることがわかった。


「クソ、弾もほとんどないって時にまだ追ってきやがる!各自、弾は何発ある?」


「スタッカート二丁が十発ずつしかないよ!」


「スラグ弾が二発…」


「悪ぃ、一発も残ってねえ。」


「フラッシュは?」


「一個だけなら…」


「一台ならやれるかもしれないが他がどうしようもないな──」


次の瞬間、グルカの後部に榴弾が着弾すると、角側が大きく凹んで歪んだ。


いくら百戦錬磨の装甲車といえどもグレネードの直撃で無傷であるはずはない。


「クソ!グレネードかっ!ますます不利になってきたな!シバサン、何か手立てはあるか?」


「とりあえずアニマルシティ川のある道路に向かってる。グルカの重量で並走して押し倒せば敵を横転させて切り抜けられるかも!」


「よし、それだ!だがいいか、一般車は巻き込むなよ!」


「当たり前だろ!」


時速百八十キロ全開で車を数十分飛ばし続けている間に、グルカは着実に傷が増えて凸凹になっていった。


「減速の為に急ブレーキするからみんなしっかり捕まってて!」


シバサンがブレーキを一気に踏み込むと、グルカは急停止して一台のハンヴィーがグルカに突っ込むと、そのままスピードの出し過ぎてスピンしてその場で動かなくなった。


そしてハンヴィーのスピードに合わせて並走し、ハンドルを切ってガンガンとグルカの装甲をぶつけていく。


「ボス!スタンをこっちに!」


「わかった!」


タイラーがスタングレネードのピンを抜いてシバサンへと渡すと、シバサンはそのままギリギリグレネードが透過できるだけ窓を開け、ハンヴィーに向かって投擲すると、そのまま炸裂して目くらましを食らった敵の運転手はそのまま制御を怠って川の下へ横転して倒れていった。


「残り一台!」と喜んだシバだったが、割れたサイドミラーを見ると、リディアがハンヴィーから身を乗り出して鬼のような形相をしながら、六九式対戦車無反動砲でグルカを狙っていた。


「RPG!──」


その瞬間、グルカの後部に無反動砲の弾が直撃すると、グルカの後輪が完全に破壊され、時速百八十キロのスピードでそのまま横転して落ちていくと、完全にグルカは横を剥いて沈黙してしまった。


そして川の上でハンヴィーは停車すると、リディアが先陣を切ってダニエルディフェンス・PDWを構えながら横転したグルカへと移動していき、後部ハッチにドアブリーチング用の爆薬を手際よく仕掛けていく。


「おい…みんな…大丈夫か…クソ、頭がくらくらする…ここで終わりか…」


タイラーが諦めかけたその時、ビソンテスの面々に上空に飛んでいたベル421ヘリのサーチライトが当てられた。そして拡声器から聞き覚えのある声が響く。


「私はエマ・カストロ・マルチネス巡査部長!貴様らは包囲されている!大人しく銃を捨てて投降するんだ!」


「巡査部長…?巡査部長!」


「クソ…ここまで来たのにCLAWを一人も消せないなんて…全員!あのヘリに総攻撃を仕掛けるんだ!」


ビソンテスの兵士はリディアの指示を聞いてベル421ヘリに向けてスーパーデューティを撃ち始める。


だが、エマと共に搭乗していたスワット隊員の一人がHK417で正確無比な射撃をすると、ビソンテスの兵士は一人、また一人と撃ち殺されていく。


「ここは引くしかないのか…ここまで来てッ!」


リディアはプレートキャリアについていたスモークグレネードのピンを全て抜き、あたりの煙だらけにしてその隙に走って深い川へ飛び込むと、着ていた装備を全て取り外して深い川の中へと逃げていった。


ベル421ヘリはそのままCLAWのメンバーたちのもとへと着陸すると、エマが壊れたグルカの後部ハッチを取り外して全員の安全をチェックする。


「おい、大丈夫か?よく頑張ったな、ナイトウッド。」


「他のみんなは気絶してるみたいですが息はあるみたいです…それよりお怪我は?」


「とっくの昔に治ってたさ。それよりも今は自分の心配をするべきじゃないか?」


「はは、違いないですね…いてて…」


「おいルーキー、お前の鍛えた部下は大丈夫か?」


「全員無事です。」


「ルーキー…?」


タイラーが横転したグルカから出て顔を上げると、そこにはエマ以外に四人のスワット隊員たちがいた。


そのスワット隊員たちは全員四十代から五十代で現在アニマル市警スワットで採用されているファーストスピアのシージRプレートキャリアではなく、ポイントブランク製のMR-Vという十年以上前にスワットに採用されていた旧式の防弾ベストを着用しており、装備も全員旧レーザープロダクトのフラッシュライトを取り付けたキンバー・TLEⅡをホルスターに収めていた。全て旧式の装備だがそれぞれに裁縫で手が加えられていて、近代仕様にアップデートされている。


「ああ、紹介するよ。この人たちは20チームの方々だ。全員警部。二十年以上キャリアがある超ベテランだ。そんな人たちだから私も未だにルーキーってわけだ。」


「私はデューク。こいつらはそれぞれジョー、マクレーン、マックス、ブロンソン。俺たちは20チームだ。デッカード警視に指示されてお前たちを助けに来た。」デュークが手を差し伸べると、タイラーはそれを掴んで起き上がった。


「なら、CLAWがヤバイってことは今知ってますよね?本来ならあなた達は私たちを逮捕すべき側の人間だ。」


「ああ当然だ。私たちはリスクを承知でお前たちを助けている。何故なら全員警視が何故CLAWを創設したのか、FBIが何をしたのか、そのすべてを知っているからだ。我々は表向きは20チームとして活躍しながら、裏では警視の私兵をやっている。死んでもかまわない言わば決死隊だ。今この状況だってかなりマズい。無許可でヘリを飛ばして違法な銃器を持った連中と許可なしで銃撃戦を行い、表向きは犯罪者になる可能性のある連中を助けたわけだからな。あ~こちら20D。警官四人と民間人一人の安全を確保。移動用のパトカーを二台手配してくれ。それとヘリは直ぐに帰還しろ。かなり目立ってしまった。」


そうデュークが連絡を入れると、ヘリの位置をリアルタイムで追いかけていたのか二台のトヨタ・セラベースのアニマル市警インターセプターが数分後に到着すると、中には20チームと思しき隊員が運転席に座っており、透明なバタフライドアを開けて席を降りた。


「こいつらはボーイとカゲヤマ。同じく20チームのメンバーだ。」


「よう俺はボーイ。20チームの運転手をやってる。今年で四十三歳なのにこの堅物おやじのデュークに未だに二十年前と同じ〝ボーイ〟って呼ばれてんだ。よろしくな。」


「どうも、カゲヤマと申します。以後お見知りおきを。」


「とっととセラに乗れ。安全な場所に逃げるぞ。細かい話は後で旧署で説明してやる。」


タイラーたちはセラに気絶した全員を運んで乗せると、そのままアニマルシティ川を後にした。






「…あ、リディア大丈夫?」マヌエラが全身濡れているリディアを川から起こすと、ガソリンスタンドで買ってきたタオルを渡した。


「悪い…助かった。」


「…悔しい?」


「当たり前だろうっ…!あと少しでCLAWの過半数を殺せたというのに…!これではオッドホーンに恩を仇で返した挙句、ジュリアが死んだ意味がないじゃないか…」


「アランとヒトキリは今どうしてるかな…死んでないといいけど。」


「健闘を祈るしかない…オッドホーンは?」


「無線で作戦の失敗を連絡したら、マムは震えた声で怒ってた。ずっと泣いてた。ジュリアが死んだことが相当堪えてるみたい。」


「クソ…私が、私が失敗しなければこんなことには…あそこで自爆でも何でもするべきだった…爆薬をジュリアに使ったばっかりに…それにオッドホーンを悲しませるなんて私は秘書失格だ…」


「泣かないで。きっと、まだリベンジのチャンスはあるはずだから。それに、私は狙撃手の一人の指を落とした。そしてあなたたちは装甲車を破壊して殺す一歩手前まで追い詰めることができた…これだけでも大きなダメージを与えられたはず。前向きに行こう。ね?」


マヌエラがリディアの頭をオッドホーンにされた時のように優しくポンポンと叩くと、リディアはそのままマヌエラに泣きついた。


その光景を見ていたビソンテスの兵士たちもまた、無念の気持ちに胸が打ちひしがれていた。


人を殺して闇夜に生きるしかない社会に必要とされなくなった血に飢えた狂戦士たちもまた、人間なのだ。



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