Chapter.2 アンプレディクタブリー・カジノ
PMCの痕跡を辿った結果、中南米で活動しているロス・ビソンテスが怪しいと判明した。ルフィナはコネを辿り高級ホテルで行われる軍事産業関係者のカジノパーティの参加し探りを入れる。
カレン・パッカード接触計画の当日の早朝、ブルーはケイトから受け取ったシェルビーGT500のボンネットを開けて故障個所をチェックしていた。
そんな時、新入りであるエヴァがブルーに話しかける。
「先輩、おはようございます。朝早くから何してんスか?」
「今朝からエンジンの調子が悪い…ブローしないか心配。」
「自分もマスタング乗りなんで、わかるかもしんないッス。ちょっと音聴きたいんで、ふかしてくれないッスか?」
ブルーはGT500の運転席に座るとギアがニュートラルに入っていることをチェックし、きちんとサイドブレーキを上げ切ったか手の感触で再確認してから、アクセルを軽く踏んでふかした。
するとエンジンからガタガタと振動するような異音が聴こえてくる。
「あー…これはローラーベアリングがぶっ壊れてる時の音ッスね…自分も経験したことあるッス。ただ今日中に修理は流石に間に合わないし、店に頼んだらとんでもない額吹っ掛けられるッスね…もしよかったら今度の休みにオーバーホールを手伝いましょうか?自分、何回かバラしたことあるんでこのぐらいなら余裕ッスよ。」
「助かる。前まで古いコルベットに乗ってたからマスタングのこと何もわからないの。」
エヴァはその会話を聞いてブルーがアメリカン・マッスルカーが好みであることを把握すると、ここで親交を深めておけば隠されたUSBの情報を探れると考えたのだ。
「へぇ…二代目のコルベット…シブくて最高じゃないッスか。」
「戦友の形見で…職務中に燃やしちゃったけどね。この車も戦友からのもらい物。なるべく手放したくないなって思う…」
「戦友…ってことはブルー先輩は元軍人なんスか?」
「あぁ…えっと、その、そうなんだけど、そうじゃないっていうか…記録が残ってなくて…不名誉除隊とかではないんだけど…」
エヴァはブルーが元軍人であることを経歴が抹消されている都合で知らなかった為、情報精査をやりきれていないFBIの局員に少し苛立ちを感じた。
「というか、私も疑問があるんだけど聞いていい?」
「なんスか?」
「一週間前の訓練で使ってた技、あれってクラヴ・マガ?一般に公開されてる護身術の動きだけじゃなく、軍や諜報機関でしか教えられない殺人術の動きだった。どこで覚えたの?それにスネークビーチ市警は基本的にシラットとテコンドーとボクシングを教えてたはず。」
その疑問を投げられた瞬間、「細かいところでボロを出してしまった」と思ったエヴァの表情は青ざめ、少し頭から冷や汗が垂れてきた。
「え、えーとその…ちょっと、えーと…」
「あっ、わかった。」
「えっ?」
「エヴァも私と同じなんだ。やっぱり元軍人だと言えないこと、あるよね。」
何故だかブルーに勝手に納得されたエヴァはとりあえず顔を縦に振って大きく頷いた。
エヴァにとっては最悪の空気の中で聞き覚えのあるエンジン音がこだまし始める。音が聞こえた方向を向くと、白い日産・ステージア260RSがCLAWの本部前に停まり、シバサンが機嫌良さそうに降りてくる。
「おはようみんなぁ。僕はRB26で朝から絶好調だよぉ。」
「今日はチャレンジャー使わなかったんだ。というかそれ、作戦用の奴じゃなかったの?」
「たまには日本車で気分転換したいじゃーん。最近はV8エンジンの音ばっかりでちょっと飽きてきちゃったからさ。そこにもマッスルカー、そこにもマッスルカー、グルカもV8エンジン。みんな忘れてない?アニマルシティはJDMが流行してる都市だよ!街の子供に聞いてみなよ。皆が皆GT-Rとスープラが一番好きって答えるよ。ま、ホントはアンジーにぶつけられてサイドスカートが凹んだから修理中なんだけどね!」
「それはお気の毒に…自分もプライベートはヘルキャット乗りなんスけど、なんだかココは自分が好みの車がすげぇ被るッスね。」
「おーい、お前ら。車の話で盛り上がるのはいいが、今日は大事な作戦がある日なんだぞ。もうちょっと気を引き締めたほうがいいんじゃないか?」
そういってタイラーが頭を掻きながらプレハブ小屋から出てくる。
「あれ、タイラーいたんだ。」
「ああ。昨日から気合入れてそこのトレーラーハウスに泊ってたんだ。何故か水たまりがあるわ、壁にムカデが張ってるわ、布団はカビてるわで最悪だったけど…」
「でも、あそこ私の家よりはマシだと思う。」
「ブルー先輩はどんなところ住んでんスか…」
そんな話をしていると、また違う派手な耳を割くような音と共にランボルギーニ・アヴェンタドールのロードスターモデルが姿を現した。中からは楽しそうなアンジーと手を振るルフィナの姿が見える。
「まるでスポーツカー博覧会ッス…」とエヴァは心の中で思った。
「おいおい、ランボルギーニなんてどこで手に入れたんだよ!シビックの何倍だこりゃ…」
「今回の作戦のためにお父様から借りましたの。何せ、セレブの集会ですからこれぐらい乗らないと、見てくれが怪しくなってしまいますわ。それに世間的に私が警察官であることは知られていないですから、あくまでも軍事産業に興味のあるバカな金持ちの放蕩娘を演じるのにはこういう派手な乗り物を用意するのがちょうどいいんですわ。」
「ふ、ふん。僕のステージアの方がいいもんね…羨ましくなんか…」
そういうシバの肩を叩いてアンジーは「V12エンジン、最高だったぜ。」と恍惚の表情をしながら呟くとシバは膝から崩れた。サイドスカート代を返せと思った。
「あとそれから、コレを皆様方に。」
ルフィナはトランクから銀のジュラルミンケースを取り出すと、中から五枚のカードを取り出した。
内三枚はパーティに参加するための招待状、他二枚はタイラーとエヴァの顔写真が貼られたハリネズミウッドパーク・カジノ&ホテルの従業員の身分証だった。
「はぁ、三人はスーツ着て高級ホテルで一夜を過ごすのに、私たちはホテルの従業員の恰好して裏方かぁ。自分で作戦立てておいてなんだけど、ちょっと変わってほしいよ…というか、なんだこの身分証。私の本名がソー・オーディンソンになってるぞ。」
「自分はロキ・ラウフェイソンッスね…なんじゃこりゃ。」
「僕なんて何もないよ。外でエンジンかけて一日中待ってるだけだもん!」
「シバサン?ステージアを返しに行きますこと?」
「はい…外で一日中待ってます…」
「それから、ブルーさんとアンジーさん。お二人とも恰好がみすぼらしいですから、ブリオーニできちんとしたスーツを誂えましたわ。お風呂に入った後にこのスーツを着て、姿勢を正してちゃんと私のボディガードらしく振舞ってくださいまし。礼節が人を作るとも言いますわ。お二方にもホテル内で買収した協力者から従業員用の衣服と清掃カートをいただきました。使ってくださいまし。」
「わかった。」
「よし、じゃあ準備開始だな。」
その日の夜、6人はハリネズミウッドパーク・カジノ&ホテルに散らばりながら集合していた。
事前にシバサンが四人を運んで車を裏口の従業員用駐車場前に停め、タイラーとエヴァはそのまま従業員として侵入、アンジーとブルーが合流してポジションについたところで入り口にルフィナがランボルギーニで訪れるという形だ。
「うえ…気持ち悪い…シバ先輩…こんな運転無いッスよ…」
「慣れだよエヴァ…」
タイラーとエヴァは清掃用カートをステージアから取り出すと、ゴミ箱に偽装した中からキンバー・TLEⅡとシグ・P320を取り出し、中にH&KのMP7A2とラぺリングロープが入っていることを確認した。タイラーはエヴァにピストルを渡そうとするが、何やら受け取るのを渋っている。
「これはもしもの時のための保険だから、本当に危険になった時以外は使わないでくれ。」
「いや…自分オートはちょっと…」
「何言ってるんだよ。たかだか携帯するだけじゃないか。それにリボルバーはサプレッサーが着けられないじゃないか。」
「サ、サプレッサー?警察官がそんなもの用意できるわけないじゃないッスか。」
「いや、あるよ。」
タイラーはあたりの車をチェックしてセキュリティが緩そうな古い車を物色すると、偽装用の清掃道具に入っていた雑巾越しにガラスを割ってボンネットを開き、適当な二台の中からオイルフィルターを取り出した。
「ちょ、ちょ、ちょ、何してんスか!器物損壊ッスよ!」
タイラーは無言で懐に入っていたメモ帳に「公務に利用しました。費用はアニマル市警にご請求ください。ご迷惑おかけして申し訳ありません。」という断り文句と共に、タイラーの電話番号が書かれたメモ書きをワイパーの間に挟む。
「相棒にこれがあればサプレッサーが使えるって言われてな。あいつは謝ったりしないだろうけど。」
そういいながらタイラーはキンバーとシグのマズルに切られたネジにオイルフィルターを取り付けて、シグをエヴァに渡そうとする。
「ほ、本当に知らないッスよ…自分がオート握ったら何が起こるかわからないッスよ…」
エヴァはそう念押ししながら恐る恐るシグを握ると、衣服の中にバレない様に携帯した。
一方そのころ、ルフィナはランボルギーニをホテルの入り口に向かっていた。
「アヴェンタドール、最高でしたわぁ~!」
そういいながらルフィナは胸に大量のダイヤモンドがちりばめられたネックレスをぶら下げ、派手なワインレッドの肩出しドレス姿で現れると、スカート部分を挟まないようにたくし上げてランボルギーニを降り、ホテルマンに車の鍵と1000ドルのチップを手渡すと、建物の前で待っていたブルーとアンジーに合流した。
「ここでおじさまと合流したいのですが…まだ来られてないのかしら?」
「おじさま?」
「ええ、Odin.incの社長であるリッキー・マイト氏ですの。この計画を取り付けてくれたのもおじさまのおかげなんですわ。あ、でも私が警察官であるという正体は伝えてないですから、なるべくボロが出ないようにしてほしいですわ。」
そんな話をしていると、更にホテルの入り口前に1991年式型の銀色のアキュラ・NSXとトヨタ・GRセンチュリーが停まる。
NSXの中からは小ぎれいな格好をしたキザっぽそうな若作りの男が出てきて、ホテルマンに鍵とチップを渡した後、ルフィナに手を振っている。
「おーい、ルフィナちゃん。久しぶりだね。」
「あ、リッキーおじさまですわ!」
リッキー・マイトはハイクラス&ラグジュアリーを掲げた民間軍事会社Odin.incのCEOである。ネイビーシールズチーム9出身の元ティア1特殊部隊員でルフィナとは幼少期からの知り合いであり、仕事柄過激なファンやアンチに命を狙われることもある彼女の両親を守り続けてきた存在であり、この会社の訓練プログラムによってルフィナはアニマル市警スワット試験を受ける前に軍の特殊部隊並の技術と知識を手に入れたのだ。
リッキーが指を鳴らすとGRセンチュリーの中から耳にイヤホンをしてスーツとサングラスをかけ、PACAアーマーと米軍の正式採用ライフルM7の民間モデルであるシグ・MCXスピアーのショートカービン仕様を装備している六人のボディガードが降りてくる。
そのボディガードと共にルフィナたちはホテル内へと移動し始めた。
「彼らは僕のボディガードだ。少々威圧的だが我慢してくれ。僕も仕事柄結構命を狙われることがあるからさ。それにこの部下は一流の中の一流をそろえてる装備もだ。ルフィナちゃんにも紹介するよ。右から順にドゥクス・ブラウン、エイニス・ホマー、スコラエ・ディボウスキー、ヴェネター・ハートマン、シグニファ・トレント、レオギナリ・バーンズ。どれも優秀な私の部下だ。彼ら無しではここまで財を築くことはできなかった。それどころか今も命を張ってくれてる。感謝しないとね。」
そのメンバーの中には何故だかブルーが見覚えのある人物がいた。シグニファ・トレントと名乗っている女性はどこからどう見てもケイト・ウィーバーだ。
小さな声で「ここで何してるの。」とブルーは話しかけると、ケイトはただ一言だけ「新しいIDで再就職したんだ。」と答えた。
「ルフィナちゃんのボディガードの二人についても紹介してくれないか?」とリッキーが言うと、ルフィナは少し焦りながら答えた。
「え、え、え、えーと…ロ、ロシア系の方がノ、ノビチョクさんで大きい方がスープラさんです…」
アンジーは心の中で「なんでそこでノビチョクってワードが出るんだ。」と、ルフィナのネーミングセンスを疑ったが、言ってしまった以上はしょうがないのでこのまま突き通すことにした。
「ノビチョク?スープラ?コードネームかなにかかい?」
「いや、えー、えー、えー…いえ!ごほん、私の名前はノビチョク・ロカタンスキー。2022年にアメリカに移住したロシア系移民です。こっちのデカい方はミス・スープラ。どっちも本名です。両親は私を出産後にコカインでガンギマリになって、出生届にノビチョクと書きました。ミス・スープラの方は両親がヘロインをやっていて、トランス状態で出生届を書いてる最中に、スーパーという名前を付けようとして綴りを間違えたんです。要するに親がぶっ飛んでたってことです!」
「そ、そう。親が私にスープラって名前つけたの。しゅとぅとぅとぅ~。」
あまりにも無理のある言い訳にボディガードが皆が無表情の中、一人だけケイトは吹き出すのを止めきれずに笑いそうになっている。
「大変だったね…そうか、君たちは過酷な家庭環境で育ったのか…それがこんなに立派に育って…ルフィナちゃんを守ってくれて本当にありがとう…!これからも頑張ってくれたまえ!」
涙ぐみながら感銘を受けるリッキーを見たアンジーは予想外の反応に少し悪い気持ちになった。
「あ、おじさま。会場に到着しましたわ。おじさまはカジノを嗜むんですの?」
「いや、実を言うと僕は賭け事はあまり好きじゃないんだ。僕が参加してるのはあくまでも〝コネ作り〟のためさ。ビジネスパートナーを作って今後の業績向上に努めないといけないからね。それにウチの従業員にはもっと良い生活をさせたい。お、いたね。奥の席にいるあの人がカレン・パッカードだ。とはいっても、同じ民間軍事会社だからライバルみたいなもんだけどね。ルフィナちゃん、行っておいで。」
そういうとリッキーはルフィナのもとを離れていく、去り際再度ケイトがブルーとアンジーの肩を叩いて半笑い状態で呟いた。
「が、が、がんばれよ、ノビチョクとミス・スープラ…あっはっ…つ、ツボに入る…くっ…!あはははっ…」
カレン・パッカードはピンクの派手な髪色をしていて年齢はおそらく30代前半。
ぴっちりとしたタイツを穿いていて、肩にコートをかけており、時折ドミニカ産の葉巻を吸いながら手持ち無沙汰なのか片手でチップ・トリックをしている。
動きや佇まいから生粋のギャンブラーであることがわかり、視線でポーカーの対戦中に心理的風下に立たぬようにするためか夜中にも関わらずサングラスを着用している。
彼女の周りには護衛と思しきメンバーが監視をしており、人種もアルジェリア人と思しき女性に大柄な体躯をした屈強なドイツ人、おおよそ成年には達していないであろう隻眼の中南米系の少女にロングコートを羽織った日本人とブラジル人とかなり国際色豊かであった。
「ね、マム。ここで立ってるだけなの、つまらない。」
隻眼の少女はカレンに懐いているようで少しちょっかいをかけているようだった。
「ああ、マヌエラ。だったら部屋に戻って好きな物を頼みな。」
「いいの?マヌエラはピザとケーキが食べたい。」
「ルームサービスに頼め。お金は気にしなくていい。」
「はーい。」
「気を抜いていて大丈夫かな?」とカレンと同じテーブルに座っている初老の男性はフォーカードを出すが、それをカレンはニヤリと笑いながらストレートフラッシュでフォーカードを叩き潰した。
初老の男はそのままチップを持っていかれ、イラついた表情をしながら離席していった。
これをチャンスに思ったルフィナはアンジーにブラックカードで一千万ドル分チップを購入するように頼んだ。
「おい、一千万ドルって正気かよ?それにお前、テキサスホールデムのポーカーなんてやったことなんてあんのか?」
「ドラマで見たことはありますから、ルールぐらいは知ってますわ。」
「ハッキリ言ってその領域の額だと遊びじゃ済まないぞ?」
「わかってますわ。ですが、演技にはハッタリが必要ですの。格落ちしないだけのオーラが必要なんですの。」
「ち…知らないからな本当に。」
そのまま初老の男が座っていた席に直行してポーカーに参加する。あたり一面にはむせ返るような葉巻やウイスキーの香りが漂っている。
「ここ、座りますわね。」と一言入れてルフィナは席に着く。
「お嬢ちゃんが来るようなところじゃないぞ。」とカレンは威圧する。
「あら、そのお嬢ちゃんに負けるのが怖くって?」と強気に返すとカレンは無言でそのまま座るように促した。
「…チップが無いようだが?」
「今ボディガードが持ってきますわ。」
ルフィナが指を弾いて合図をするとアンジーがチップの束を持ってくる。
「ここに一千万ドル分のチップがありますわ。」とルフィナが言うと、ポーカーに参加している四名の参加者が唖然とする。
「お、お嬢ちゃん、一千万ドルなんて大金どこから…?」
「まあ、お父様の力があればこれぐらい余裕ですことよ?」
「親の金で遊ぶ放蕩娘か…」
どよめく他の参加者の中、カレンだけは冷静に場を見つめていた。
「おい、最初は小額からチマチマいけよ。勢いよくかけ過ぎるとものの数分で無くなっちまうから。」とアンジーに言われるが、「大丈夫ですわ。ブルーさんとその辺で遊んでてくださいまし。」とルフィナは返した。
「では、始めましょう。」
そういうとディーラーは一斉にカードを配り始めた。
ルフィナの手はハートの二とスペードの二である。
ボードに配置され、最初に捲られたコミュニティカードはクローバーの二と七だった。
ルフィナの手にはツーペアが完成しており、ある程度は強気に行けると考えた。
「五十万ドルベットしますわ。」というと他のメンバーは全員コールした。
もう一枚のコミュニティカードはスペードの二である。
カレンは五十万ドルをベットして強気に出ると、ルフィナはスリーカードが揃ったことに気づいてコールし、百万ドルのプレッシャーに負けたのか二人が勝負から降りた。
「百万ドルの勝負か…胸が躍るね。」
四枚目のコミュニティカードが捲られるとクローバーの六が見えた。
カレンは二十五万ドルレイズすると、ルフィナは更に食いつくが、他のプレイヤーは皆勝負を降りていった。
五枚目に見えたのはクラブの四だった。
「それではショーダウンを。ルフィナ様が二のスリーカード。カレン様はクローバーのフラッシュ。よって、カレン様の手が上位となります。それでは十分の休憩時間となります。」
そうディーラーが言うと全員が席を立った。
「おい、ありゃなんだ。ポーカーにおいて二は一番弱い数字なんだぞ。スリーカード如きに百二十五万も賭けるんじゃねえよ。」
「あら?その辺で遊んでなかったんですの?…ですが、私にとっては実はポーカーは関係ないんですの。一番大事なのは賭けに勝つことではなく…今は休憩時間ですし、接触のチャンスですわ…それと、ブルーさんは?」
アンジーが指差すと少し調子の良さそうなブルーの姿が見える。その表情から軽い勝負に勝って数千ドルを手にしたようだ。
「珍しいですわね。ブルーさんの方が賭け事をやってあなたは何もしないなんて。」
「流石に一千万ドルなんて言われたら真面目にならざるを得ないだろ。」
「ふふ、そうですわね。では、一緒にカレンに近づいてみましょうか。」
ルフィナはアンジーと一緒にカレンが休憩しているテーブルまで移動した。
「おい、お前ら。オッドホーンになんの用だ?」
アルジェリア人の女性は二人を静止すると腰に手をやって秘匿しているピストルをすぐにでも抜ける態勢に移行した。
「オッドホーン?」
「あだ名だよお嬢さん。リディア、そう殺気立つな。」
カレン・〝オッドホーン〟・パッカードはそう言ってリディアという名のアルジェリア人の護衛を静止した。
「皆は酒でも飲んで休憩していろ…わざわざ金持ちのお嬢さんが私にちょっかいかけてくるってことは、何か商談でもしたいんだろう?あの時わざと私に興味があるような振る舞いをしてたように見えるが。」
「流石…天下の民間軍事会社の社長様は違いますわね。私はルフィナ・P・スノフスカヤ。女優のアナスタシア・スノフスカヤとアンソニー・P・アンダーソンJr.を知っています?」
アンジーは二人の会話を聞きながら心の中でリスクを冒して本名を名乗ったルフィナに焦りを覚えた。
「レジェンド・オブ・バイオレットの女優とその監督か。あの映画は確かに良かったな。ということはお嬢さんはあの二人の娘ってことかい。」
「そうですわ。」
「はぁ、なるほど。つまりはボディガードを増やしたいってわけか。」
「それだけじゃありませんわ。私、軍事方面に興味がありまして…色々な民間軍事会社で元特殊部隊の方にトレーニングを受けてましたの。そういったことを探求したいという知識欲的な面もありますわ。そちらのホームページを確認すると大変興味深いものが出てきますもの。それに…」
ルフィナはオッドホーンの耳に近づいて小さく「排除したい連中がいるんですの」と囁く。
「排除…?我々はただの民間軍事会社だ。殺し屋を探しているなら他を当たった方がいい。」
オッドホーンはシラを切るがルフィナは更に畳みかける。
「我々が消したいと思っているのはロス・クルティードですわ。」
その言葉を聞いた瞬間、オッドホーンの表情が豹変する。
「な、何故麻薬カルテルを排除したい?お嬢さんは民間人だろう?」
「私の家は単に映画撮影と俳優業で食っているわけじゃありませんわ。その資産を使って様々な国の土地を買っている…そんな中でメキシコでこいつらに邪魔をされた。あなた方はメキシコでの仕事を請け負っているんですわよね?」
「だが、そういう仕事は政府から請け負うもので…」
ルフィナは懐からスマートフォンを取り出して、インスタグラムのスクリーンショットを見せた。
「このロス・クルティードの構成員の写真に映っている傭兵は何故…あなたの会社の社章を付けてるんですの?」
その写真を確認したオッドホーンは激昂し、懐からウィルソン・コンバット製の9ミリコマンダーモデルの1911を取り出すとルフィナの心臓に突き付けた。
「お前、我々の正体を〝知って〟いるな…!」
だがルフィナは涼しい顔で「いいんですの?」と切り返す。
「この会場には有名な兵器開発の人員が山ほど…それも元警察官や軍人が山のようにいますわ。ここで撃てばあなたの社会的地位は失墜して一生独房の中で暮らすことになりますわ。それに、私は言った通り映画スターの娘。そんな私を殺せば警察も黙っているわけがありませんわ。それだけ不利な状況で本当に私のことを撃つことができるんですの?」
オッドホーンは歯ぎしりしながら震える手で銃を収めるとセーフティをかけてホルスターへと仕舞った。
「あとそれから言い忘れていましたが…」
ルフィナは懐から警察バッジを取り出してオッドホーンに見せた。
「私は警察官ですわ。確信が持てた時点で…この賭けは私の勝ちですわね?それと…もっと他のところを気にした方がよくってよ?」
するとオッドホーンが持っているスマートフォンに着信が入る。その着信はマヌエラからの物だった。
「マム、やばいよ…!ラップトップが取られた…!」
「うぅ、寒い…寒いよ…」
ルフィナがポーカーを、タイラーたちがカレンの部屋を探っている間に小額からカジノを楽しんでいたブルーだったが、徐々に勝ちが増えていくと気が大きくなってしまい、自分の手持ち以上の額を持った相手と対戦して見事なまでに大敗を期すると、着ていたスーツごと身ぐるみを剥がされ、招待状だけ片手に全裸でカジノの外へと追い出されていたのだった。
「も、もう賭け事はやらない…絶対やらない…」
ブルーは体育座りをしながら寒さに震えていると、浮浪者のような恰好をした五十代の男が話しかけてくる。
「お嬢ちゃん、娼婦かい?」
「え?え、えっと違います…」
「いんや、こんなところで全裸なんて痴女の娼婦に決まってる。三十ドルで一発ヤってくんねえか?嬢ちゃん、デカいし腹筋があってムダ毛が生えてるところが俺にドンピシャなんだよ…」
五十代の男のズボンのチャックの部分が隆起し始めると、舌なめずりをしながらブルーに抱き着いて股の間に指を突っ込んで弄ってくる。
「や、やめて、やめて!お願い!あなたを殺したくない!」
ブルーは男を引き剝がそうとするが、なかなか離れようとしない。
暴力を振るえば一瞬で引き剥がすことができるが、ブルーが習ってきた格闘技術は殺人術であるため、下手をすればこの男を一瞬で殺してしまうことを考えると抵抗ができなかった。
そうとも知らずに男はズボン越しに隆起したモノをブルーの足に押し当てている。
あまりの気色悪さにブルーが遂に手を出そうとしたその時だった。
カレンの護衛をしていたドイツ系の男が五十代の男の頬を殴りつけ、そのまま一瞬で昏倒させると、ブルーへと手を差し伸べ、ブルーはおそるおそるその手を握った。
「大丈夫か?この辺は治安が悪いみたいだな。あんな強姦魔がいるとは。というか、なんで裸なんだ?」
ドイツ系の男は懐からラッキーストライクを一本取り出して、ジッポーで火をつけて一服した。
「実は…カジノで熱くなってしまって…身ぐるみを剥がされたんです…」
「そうか…まあ、これに懲りたら賭け事なんてやらないことだ。」
そういってドイツ系の男は自身が着ていたファーのついたナイロン製の寒冷地用ジャケットをブルーの肩にかけた。
「あ、待って名前を…」
「アランだ。それじゃあな〝お嬢さん〟。」
そういって男は無言でその場を離れていった。ブルーにかけられたジャケットはとても暖かく、「世の中には優しい人もいるのだな。」と涙くんだ。
「ハァ、暇だな…ずっとあたりを流してるだけじゃつまんないなあ。もう二時間もこんな感じだ…もっとかっ飛ばしたいんだけ…あれ?」
シバサンがちょうどステージアで徐行していると、ジャケット一枚だけ羽織ったブルーを発見し、車を停めてパワーウィンドウを開いた。
「…何してんの?」
「カジノで負けたの…」
「はー…馬鹿だなあ。そうだ。僕散々暇だったし、招待状貸してよ。どーせまだ時間かかるだろうし、ちょっと遊びたいしさ。その間車の暖房で温まっておきなよ。」
「わかった…」
シバは運転席を降りてブルーを座らせると、そのまま招待状を借りてカジノ会場へと向かった。
ルフィナがオッドホーンに凄む三十分前、タイラーとエヴァは無事にホテルの清掃員になりすまして裏口から侵入し、内通者から情報を得てカレン・パッカードの部屋がある最上階までエレベーターで移動していた。
「…先輩。自分らがやってることって完全に諜報機関がやることじゃないッスか。疑問を持ったことってないんスか?」
「そりゃあ、入りたての頃はこいつらイカれてんなって思ったよ。全く理解できなかった。でもな、私らみたいなグレーゾーンの人間がいないと救えない命もあるからな。」
「でも、そういうのはFBIみたいな上位組織に任せるべきだと自分は思うんスけど…」
「かもな…だけど、本当にそうならとっくにカレン・パッカードは捕まってるはずだ。それが無いというのはどうにも怪しいと私は思う。それにマズバハ壊滅事件の時だって傭兵に触れてる記事は一つもなかった。」
「…」
エレベーターの到着音が聞こえると、二人は降りて廊下を移動する。すると、武装した男二人が護衛として立っている如何にもな部屋を見つけた。
部屋番号を見るとちょうどカレン・パッカードのものと一致している。
その護衛の前に立つとタイラーは「すいません。ルーム・サービスです。お部屋の清掃に参りました。」というが、突っぱねられてしまう。
「あの、カレン・パッカード様からのお願いで来ているのですが…」と嘘をつくも、「知るわけがないだろう。通すなと言われている。」と返されて入れてはくれない。
仕方なく二人は引き返すと、そのまま階段の方へ移動して清掃カートの中からMP7A2とラぺリングロープを取り出して体にスリングをかけた。
「で、どうするんスか?」
「仕方ない。ここはダイ・ハードに習おう。プランBだ。」
「プランBってなんも伝えられてないんスけど!?マジで言ってんスか!?屋上からバルコニーに降りるってことッスか!?」
「そうだ。」
タイラーは施錠された扉の鍵をオイルフィルター・サプレッサーのついたキンバーで撃つと、暗闇の広がる屋上へと出た。
先ほど確認した位置からカレン・パッカードの部屋の位置を確認すると、命綱を付けて手すりにフックをかけるとそのまま降りようとする。
「ちょ、ちょっと!これ安全って言えるんスか!ちょっとでもミスったら死にますよ!」
「だが、ここで命掛けなきゃ他所で死ぬ!」
そういうとタイラーは徐々に降りてバルコニーへと移動していく。
下を見れば絶景が広がっているが落ちれば即死する高さであり、風のあおりもあって移動は非常に困難なものとなっていたが、不屈の精神で乗り切る。
仕方なくエヴァもロープを使って降り、徐々にバルコニーへと到達していく。
そうやって永遠にも思える時間をすごしてようやっとバルコニーについた。
「ハァ…ハァ…も、もう二度とやんないでくださいね…」
「静かに…気づかれるかもしれないから慎重に…」
タイラーはバルコニーのドアをそっと開けると、そのまま静かにオッドホーンの部屋に侵入していく。最高級のスイートルームで部屋には誰もおらず、中には旅行用バッグだけが鎮座している。
バッグのジッパーを開けるとオッドホーンの衣服の下にラップトップが入っていた。
「よし、あったぞ…パスワードがあるな…しょうがない。コイツを持ち帰って解析するしかないか。」
「根拠もないのに…不法侵入と盗みッスか…正気の沙汰じゃないッスよ。」
タイラーがその辺においてあったトートバッグにラップトップを入れているその時、鍵がかかっていたはずのドアが開く。
外からは青いジャージを着た隻眼の少女が入ってきており、タイラーたちと鉢合わせてしまった。
「あ、これはその、ルームサービスの清掃で…」
「そ、そうッス。ルームサービスッス。」
「敵!」
マヌエラは表情を変えると懐からサプレッサー付きのベルサ・サンダー.380ピストルを取り出し、タイラーたちに向かって発砲を開始した。
二人はその銃弾を何とかかわしながら後退していくが、発砲音に気づいたビソンテスの警備員も侵入してくる。
「マズいっすよ先輩!人数差で圧倒的に不利ッス!」
「こうなったらプランC!」
「プランCってなんスか!」
「飛べ!」
タイラーとエヴァははバルコニーのガラスを突き破って先ほど降りるために使ったラぺリング用ロープを掴みながら飛び降り、慣性の法則を使って勢いをつけると、MP7で下の階のバルコニーの窓ガラスを銃撃してそのまま飛び込んだ。
音にびっくりしたのか中でお楽しみ中であったカップルも唖然とした顔で二人のことを見ている。
「ハァ…ハァ…し、死ぬかと思ったッス…もう二度と高いところには行きたくない…」
「ハァ…あ、あ、お楽しみの最中に申し訳ありません。公務ですので。」
そういってタイラーはバッジを見せるとそのままドアを開けて廊下まで全力疾走した。
「エレベーターまで移動する!エヴァは背後をカバーしてくれ。」
「コレ、完全に自分らが悪いッスよね!?本当に撃っていいんスか!?」
「撃たなきゃ殺られるだろうが!」
階段から疾走してきた警備に向かってタイラーは銃撃しながら急いでエレベーターへと向かうと下りのボタンを何十回も連打した。
「早く来い早く来い早く来い…!」
三十秒ほど待った後、エレベーターの扉が開いた。
「うわっ、なんだ君たちは!?その銃は!?」
「警察官です!この建物にテロリストがいるとの通報を受けました!皆様はこの階層から動かず、姿勢を低くして部屋に隠れていてください!」
タイラーが指示をすると他の客は一斉に部屋の中へと隠れ始め、敵が到着する間一髪のところでエレベーターは下りへと移った。
「ハァ…ハァ…危なかった。」
「テロリストも嘘じゃないッスか…こんなの通らないと思うッス…」
「しょうがないだろ!それに銃を持った連中がいるんだから危険には違いない。」
「自分らも銃持ってると思うんスけど…」
「とりあえず、相棒に連絡だ…」
タイラーはスマートフォンを開いてアンジーの携帯へと連絡を入れる。
「あ、相棒。こっちはOKだ。そっちも脱出するんだ…」
「こっちもOKだ。確証が取れた。裏で合流しよう。」
エレベーターが一階へと到着すると、二人はエレベーター前にあったゴミ箱にMP7を投げ入れ、そのまま従業員用のスペースへと入っていき、裏口へと出た。
「クソ、完全にやられた…おい、リディア…」
「はい。オッドホーン。」
「あのルフィナとかいうガキが建物を出たタイミングを見計らって消すんだ!地獄の果てまで追いかけろ!」
「わかりました。おい、行くぞ。」
リディアは他で待機していたビソンテスの人員を呼び出すと、ホルスターからCZシャドウ2を抜いてルフィナが向かった方へと移動を開始した。
「ハァ…おい、アラン…」
「どうしたんだオッドホーン。」
「この街で一番ペニスがデカい男のセックスワーカーを私の部屋に呼べ。」
「はぁ。セックスワーカーですか…?いったい何故?」
「嵌められてムカついてるから一発派手にヤらなきゃやってられないからに決まってるだろうが!私は部屋に戻る!いいか、一番ペニスがデカい男だぞ!」
「わかりました…」
オッドホーンは怒りを露にしながらその場を離れると、アランは自身の携帯から検索してセックスワーカーを派遣する店を調べて電話をかけた。
「ああ、すいません。はい。そちらの店で一番ペニスの大きい男性を探しているのですが…え?いや、そこが女性向けの店だということは存じています。ですから、私は同性愛者ではありません。私の上司が性交渉をしたいと…いや、だから私は同性愛者ではなく…上司が…あぁ…切れてしまったな…」
ステージアのドアを叩くと、中で上着一枚で運転席で寝ているブルーだけがいた。
「おい、おい、ブルー、シバサンはどうした!おい!」
どんどんと叩く音でブルーは目覚めると鍵を開けて二人を後部座席へと入れた。
「シバサンはどこ行ったんだ!もうここから逃げないとマズいぞ。というかなんでお前全裸なんだ!」
「シバサンなら私の招待状使ってカジノに行ったよ…私は…負けて身ぐるみはがされた…」
「何やってんだよ!?それよりドライバーは!?私はマニュアルの運転できないって知ってるだろうが!」
口論をしていると、アンジーとルフィナもステージアの前に到着する。
「シバサンは!?もう追ってきてますわよ!というかなんでブルーさんは裸なんですの!?そういう趣味がありまして?」
「えっと、カジノで大負けして、私の代わりにシバサンがカジノに…」
「しょうがないですわね…シバサンは顔も割れてませんし…ブルーさん、出してください!」
「でも私靴もなくなっちゃって…」
「もとはと言えばお前が身ぐるみはがされたからこうなったんだろうが!裸足でやればいいだろうが!早く出せ、出すんだよ!」
「はい…」
ブルーは裸足でクラッチを踏むと、ギアを入れてアクセル全開でステージアを動かした。
RB26DETTのエンジン音が気分が下がっていたブルーの気持ちを高ぶらせていく。
「この車、面白い!楽しくなってきた!」
そんなステージアの後ろを十二代目のシボレー・サバーバンが追跡してくる。
サバーバンの中からビソンテスの構成員が身を乗り出してガイズリー・スーパーデューティのショートモデルを構えると、ステージアを銃撃してサイドミラーを破壊することには成功するが流石にバンでは分が悪くスピードが足りずにどんどんと距離が離れていく。
「このまま交差点で撒くから、アシストグリップちゃんと握って。」
そういってブルーはサイドブレーキを引き上げると、赤信号の状態の路地を大きくドリフトしてそのまま右折し、更に先で左折して見事追っ手を撒くことに成功し、そのまま帰路へとついた。
「はぁ…何気にブルーが乗る車には初めて乗ったな。シバサンの方が速くはあるが悪くなかった。よくやってくれた。」
「ありがと。」
「先輩、そのラップトップ、自分に預けてくんないッスか?解析ならウチの専門ッスから。」
「ああ。頼んだエヴァ。」
ラップトップを受け取ったエヴァは心の中でニヤりと笑ったのだった。
「いやぁ。まさかバカラで五万ドルも勝っちゃうなんて、僕運良いな~。」
チップを換金して受け取った札束を指で数えながら、シバは新しいマイカーを買うことを考えてウキウキしていた。
「RZ34買おうかなあ。それともWRXかなあ。安い80スープラを買ってチューンしてもいいかも…ってアレ?」
シバは裏口へと戻るとステージアはものの見事に消え去っている。
「あれぇ、僕のステージアどこ行っちゃったんだ?ブルーが乗って行っちゃったかなあ…」
気を抜いているシバにルフィナから電話が入る。
「あ、ルフィナ?今作戦どんな感じ~?」
すると電話の向こうからはタイラーが大きく怒鳴る声が聞こえてきた。
「おい、シバ、お前のせいで死にかけたぞ!なんで遊んでやがったんだ!」
「あはは…シバサン、状況は終了しましたの。みんなステージアで帰りましたわ。」
「じゃあ僕の帰る足なくなっちゃったじゃん。どうしよ~あそこまでタクシーだとすごい高いしなあ。」
「そこでなんですが、私カジノホテルに八百七十五万ドルとお父様のアヴェンタドールを置きっぱなしにしてしまいましたの。持って帰ってきてくださいませんこと?」
「え!?アヴェンタドールに乗ってもいいの!?」
「ええ。ビデオ通話で私の顔を見せれば応じてくれると思いますわ。」
「やったあ。じゃあアヴェンタドールで遊んで帰るね!」
「おい、待てシバ。説教は続いてる──」
シバは電話を切ると楽しそうにしながらカジノへと戻り、早朝までアヴェンタドールをハイウェイでぶっ飛ばしたのだった。




