表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

Chapter.10 ゴールド・ネーム

CLAW改めタスクフォース・ブレイブはビソンテスと戦うために武器を集めていく…

「とはいえ…今の装備はハッキリ言って足りてない。今20チームと巡査部長以外で銃を持ってる奴は?」


タイラーがそういうと他の面々が今持っている銃器をデスクへと集めていく。


タイラーのキンバーにエヴァのリボルバー、スラグ弾が二発だけ残っているルフィナのスーパーノヴァ、両方合計で二十発が残存するシバサンの二丁のスタッカート、両方とも弾切れを起こしているブルーのM1ガーランドとブラックオプス、アンジーに至っては全ての銃を破棄して何も残っていない。


おまけに全員着ている装備は配色も何かもバラバラで爆発の衝撃でどれもこれもが焼き焦げている始末であった。


「ナギサが記事を書き上げるまでまだ時間が掛かる。何せ大スキャンダルがてんこ盛りな上に読みやすいように書かなくちゃならないからな。それまでに武器や装備の調達をしておきたい。皆、アテはあるか?」


「お金ならいくらでもありますわ!まかせてくださいま…」


「いや、ブラックカードを今使えばアシがついてマズい。エヴァが持っている現金を使った方が賢明だ。」


「銃器のアテならバカアンジーはあるよね?」


「ああ。中華街にいるダチのベティとブルーインパルスのエンジンを探してた時に会ったファッティー、そして装備品類はカルラを頼ろう。ベティの方は私の名前を出せば協力してくれるはず。ファッティーはカルラの名前を出せばいい。あいつらはとんでもない規模だ。マシンガンがどっさりと必要だ。」


「車両はどうする?」


「一応回収してきたグルカが残ってる。もう外装は酷い状態だけど流石に装甲車なだけあってエンジンはまだ生きてる。民間軍事会社に乗り込めるだけの装甲がある車はあれ以外に無いよ。応急処置的に修理して使うしかない。そしてこれがグルカの最後の仕事になると思う。」


「よしわかった。シバサンとエヴァはグルカの修理とパーツ調達。アンジーとブルーは銃器と弾薬の調達。私とカルラは装備品の調達だ。全員、使いたい銃器や装備品の希望があればメモして担当するメンバーに渡してくれ。」


タイラーがテキパキと仲間たちに指示を出していく様をエマは母親のような目で見守っていた。


「成長したな、ナイトウッド。」


「いえ、これも巡査部長のご指導のお陰です。それに…私は指示を出してるだけで頑張ってるのは皆ですから。」


「これで安心して引退できるな。」


「ちょっと、冗談はやめてくださいよ。それに巡査部長はまだ三十二歳なんですから引退するような歳じゃないですって。」


「怪我してる間にいつの間にか三十三歳の誕生日を迎えてな…」






銃器調達担当のアンジーとブルーは20チームが使っていたセラ・インターセプターを使用してまずはファッティーのいるアニマル市警の押収品保管庫へと足を運んだ。


「ちっす。」


「あれ?あんたたち前に来たカルラの知り合いじゃないか。次はなんの用?どの車のエンジンを持っていくつもり?」


「今日はエンジンじゃない。銃器が必要だから来た。ここなら押収品が大量にあるだろう?銃を使った犯罪なんて今この時も起きてるんだから。」


「おお!銃器か、おたくはお目が高いね!ここは大量の銃器が保管されてるんだ。期間が来るとスクラップにされたり溶かされるからいつももったいないなあと思ってたんだよ。この前話してたルガーも溶かされちゃってさあ。」


「御託はいいから早くつれてけファッティー。」


アンジーはファッティーにそう指示をすると、汗をかいた巨体をゆさゆさと揺らしながら室内にある暗い銃器保管庫へと二人を誘導して、電気を付けた。


そしてあたりには大小様々な銃器が所狭しと並べられていた。


「コレ、アンジーが轢き殺した奴が使ってたRPDだ。スリングが血の染みで茶色に変色してるけど。」


「こりゃあちゃんとロシア製のRPDじゃないか。中古市場なら結構な値で売れるはずなのになあ。」


「コレは気に入ったからたまに俺が遊んでるんだ。だからちゃんと整備してある。でも、あと半年もすれば溶鉱炉で溶かされる運命なんだ…ううっ、こんなに辛いことはない…それと、スニッド・ロウ地区の爆発事件で回収されたベトナム戦争期のM60も新入荷してるよ。登録番号とかが無いから完全に違法な物みたいだけど。」


ファッティーはそういうと、明らかに昨日アンクル・ボブがブルーに渡したあの時のM60が残っていた。奇跡的に崩落した建物からの圧壊から免れていたようだ。


「げぇっ、病院とプライド・パレードのテロで使われたゴースト・ガンじゃないか…こんなの触りたくもないな。呪われちまう。」


「…これはやめとこ。シバサンがトラウマぶり返す。」


「密造銃の類は薄汚いよね。そういえば薄汚いと言えばこの前フランソワのアパートに忍び込んでゴミ箱に入ってたパンツを盗んだんだけどそこの染みを舐め取ったんだけど、魅惑の味がしてさ。」


「これは…強盗事件でエースってやつとジャックって死んだ退役軍人が使ってたAR-15ライフルか。威力としては十分だが…ブルーはどう思う?」


「あんまり気乗りはしないけど…現状信頼できる銃器は必要だと思う。」


「ああ、AR-15ならそこにいっぱいあるよ。最近同じ仕様の銃ばっかり入ってきてさ。良い銃なんだけど流石に飽きるっていうか。」


ファッティーが指を差すと、明らかに見覚えのあるコヨーテカラーのショートバレル仕様のガイズリー・スーパーデューティが並んでいた。


「ビソンテスが使ってたカスタムライフルじゃないか。それもこんなに大量に。」


「なんだっけ…えーとああ、そうだ。港で起きたテロ組織の事件で残ってた身元不明の遺体から回収したやつだよ。ぜーんぶ既製品だけど特定できる箇所が全部なくなっててさ。不思議だよねえ。これだけのカスタムライフルがこんなにいっぺんに入ってくるなんて。アニマル市警は押収という名目で戦争の準備でもしてるのかな?」


アンジーは内心癪に障るとは思ったが、十二分な性能がある上に既にカスタムが完璧という点から本銃人数分回収し、ブルーは一丁のパーツを取り外して死んだ退役軍人が使っていたライフルに移植した。


「よし、これでライフルは足りたがやっぱり乗り込むのにマシンガン二丁だけじゃどうにも苦しいな…アイツのところに行くか。」


続いてアンジーとブルーはセラ・インターセプターに乗って中華街のベティが経営している闇のガンショップへと足を運んだ。


「ちぃーっす。よっす、おっさん今日もシケた顔してんな。」


ホンシュアンシーを吸っている斜視の老人はゆっくりと動きながらアンジーを見つめると、よろよろとした動きで手を振り、コールベルを人差し指で押した。


そしてアンジーは勝手に地下へと続くドアを蹴り開けた。


「おい、腐れジャンキー起きてるか?」


ドアを蹴り開く音でベティは目を覚ますと、そのままいつものように大量にあるヂョングゥォのカートンを一箱開けて火を付けると、眠気覚ましに吸い始めた。


「ウゲーーーーーーーーーーーゥッホ!…あ゛ぁ…アンちゃんじゃないか。どうしたんだ。そこの酷いツラしたデカブツは?」


ベティは起き上がってブルーに近づき、スンスンと匂いを嗅ぐとアランと殺し合ってから暇がなくシャワーを浴びる時間が無かった故にする汗の匂いで眉を顰め、そんなブルーもベティから放たれる肺まで侵されたタバコの匂いと薬物中毒者特有の刺激臭がして、少し後ずさりした。


「そいつはブルー。私の親友で同僚の一人だ。それよりも、今早急にマシンガンが必要なんだ。火力がライフルだけじゃ足りなくてな。」


「マシンガン~?戦争でも始める気なのか?」


「ああ、その通りだ。民間軍事会社とやり合う。だから生半可な武器だと火力が足りなすぎるんだ。今手元に二挺あるんだが、もっとマシンガンが欲しい。車載する分も含めてな。」


「民間軍事会社だぁ~?なんてことやってんだお前らは…」


「私のこの右手を見ればわかる。」


そういってアンジーは人差し指が銃創で吹き飛び、無理矢理焼却止血した痕の酷い状態の指をベティに見せると、表情は一変した。


「…車載するならコイツだな。」


ベティはそういって部屋の隅に置いてあった巨大なマシンガンから埃避けのシートを取ると、そこには巨大なブローニングM2機関銃があった。


「おお、こいつはスゲェぜ。」


「アメリカ軍が誇る地上最強の機関銃だ。敵にバババーッと撃ち込めば一瞬の内に肉片と化す!気分はまるでランボーさ。」


「よし、こいつをグルカの上部ハッチに取り付けるか…他に在庫はあるか?」


アンジーがそういうとベティは何挺か壁に立てかけられたマシンガンをデスクの上に並べていった。


「これはM249に見えるが実は大宇のK3。数年前にM249の調達が難しかった時に流通してたやつ。今じゃあんま見かけないレアもの。それと旧式のブローニングM1919とヴィッカーズ機関銃。こいつらは超古いからちゃんと申請すれば合法で持てる。それとM240ってところだ。ああ、重かった。」


「よし、じゃあそれを全部くれ。あと弾薬もな。」


「アンジー、もうセラに積めない。」


「しょうがないな…後でカルラにタンドラで運んでもらうか。」


「あ、アンちゃんお金は?」


「現金払いじゃないが…蔵出しだ。もうこれで隠してたコレクションは最後。まあ、これを機にクスリは辞めちまうか。」


アンジーはあらかじめ用意しておいた百四十サイズの段ボール箱を持ち上げると、ベティの前に置き、その辺に置いてあった開封用のカッターナイフで封を開けた。


すると中にはところかしこにぎっしりと白い純白のヘロインが詰まっていた。


「お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!ま、待てよ騙されてないか?お前昔私にヘロインだって言って小麦粉を渡してトリップするフリしてたあたしのことを笑ってたことあったろ?マジに本物なのか確かめさせてもらうからな。」


そのままナイフを借りて袋を開封し、溢れてきた粉をベティは指ですくって舐めとると、恍惚の表情を浮かべ始める。


「これはとんでもない量のホワイト・ピュアだ。あ、あ、幸せが見えてきた…お゛っ!お゛っ……」


そのままベティは床に寝っ転がって痙攣しながら快感を享受すると、目の焦点の合わなくなり、脱力して股の部分から黄色い染みが床に現れ始めた。


「んじゃ、代金はこれでOKってことで。ブルー、カルラを呼んだから店先で待って銃器を持ち帰ってほしい。」


「わかった。アンジーは?」


「私はもう少し用がある。あのビソンテスの狙撃手の子供がいただろ?」


「うん。」


「あいつに勝てるだけの精度があるボルトアクションライフルが必要なんだ。あいつの狙撃能力はとんでもなく高い。なんでもエヴァが言うにはヘリを撃墜したらしい。それと指がこんなだからココにある右利き用じゃ使いづらいしな。街中の専門店で色々見に行こうかなって。」


「わかった。」






アンジーはアニマルシティの山近くにあるライフル専門店〝カーターズ・ハンティングライフル〟へと足を運んでいた。退役軍人の猟師が営んでいる店で特にボルトアクションライフルが手厚い店だ。


ココの魅力は店主の親族が保有していた農地をそのまま射撃場に改装しているという点で広大な土地でライフルを撃つことが可能になっている。


「よぉ、ミスター・カーター。」


「おお、アンちゃんじゃないか。どうしたんだ今日は?」


「実は新しいライフルが必要になったんだ。」


「おいおい、俺の薦めたデルタ5はどうしたんだよ。あれが一番最高だろうが。」


「残念ながらぶっ壊れちまってな…ついでに右手の人差し指もこんなになっちまって。」


そういって切断された指を見せると、カーターは驚いた表情をしていた。


すると、半年ほど前に見た顔がアンジーの前に現れる。


「お前はエミーのところの…たしかアンジーだったよな。」


それはかつて病院でテロが起こった際にエマに頼まれ狙撃の手助けを行ったアニマル市警スワットの狙撃班である60チームのリーダーであるオライオン・モニカであった。


「おお、オライオンさん。あんたが頼んでた中古のプレ64・ウィンチェスターのパーツが届いてるぞ。それより、アンちゃんのこと知ってるのか?」


「半年ほど前に一緒に事件で狙撃をした仲さ。それよりその人差し指は?指は狙撃手にとって最も大切なものだってのに。」


「実はな…とある任務の最中に敵スナイパーの強襲にあって指に見事に大口径弾がヒット。もげちまったってわけさ。だから、リベンジの為に新しいボルトアクションを探してるんだ。それも左利きの奴。」


「なるほどな。なあ、カーター、裏の射撃場を借りてもいいか?」


「ああ。今日は平日だから客足も少ないし好きに使えよ。」


「よし。じゃあアンジー、ちょっと私についてこい。私は狙撃銃コレクターでな。百挺近くコレクションあるんだが、今日は遊ぶために沢山持ってきた。それで色々選んでみろ。」


そういってオライオンは十五分ほどかけて射撃場にライフルのコレクションを並べた。どれもこれも状態がかなり綺麗に保たれているもので旧式から新式までかなりの数があり、選り取り見取りという感じでオライオンが趣味全開で集めた珠玉のボルトアクション・コレクションである。


エネミー・アット・ザ・ゲートに触発されて買ったであろうモシン・ナガンのM91/30モデルのPUスコープ付き、それに相対するケーニッヒ少佐仕様のKar98K、精度がすこぶる高い前期型のタイプ38アリサカ・ライフル、プレ64時代の最高精度を誇るウィンチェスター・モデル70、ホワイト・フェザーのM1903、D&L・MR-30PG〝十番目のブラック・キング〟、トーマス・ベケット仕様のM40A1、最も評価の高い狙撃銃の一つであるウェザビー・マークⅤ、シールズ仕様のマクミラン・タック-338A、青いジャージが似合いそうなシグ・SSG3000。


どれもこれも物凄い値打ちのする貴重な品ばかりであり、ガンマニア垂涎のボルトアクション・ライフルたちだ。


面白いユニークなものでは薬指と小指を離した状態でなければ真っすぐ当たらない様に設計されたカスタム・ライフルまであった。


オライオンは愛用のプレ64・ウィンチェスターを掴むと、そのボルトを動かしながら目を瞑ってうっとりとする。


「構造はいたって単純。使い勝手も全て大して変わらない。だが、そのシンプルさを突き詰めた美学がこのボルトアクションたちなんだ。ただ標的を真っすぐに貫くために作られたクロスボウよりも単純なこの銃たちが私の心を躍らせるんだよ。ゴーイングホット!」


そうオライオンは叫ぶと、立ったまま片手間に弾薬を一発薬室へと送り込み、八百メートル先にある的にウィンチェスターを撃ち、見事に着弾させると薬莢を排出して片手でキャッチしたが、熱かったのかそのままその場に薬莢を落とした。


「あっち…カッコつけるもんじゃないな。ちょっと火傷しちまったよ。」


「流石に常に前線を張ってるだけあってかなりの腕前だなあんた。あの一瞬で八百メートル先に当てるのはプロでも難しい。」


「私はブラジャーどころかオムツより先にボルトアクションに触れてきてるからな。そんじょそこらの齧った程度の連中には負けないさ。」


「なあ、このコレクションの試し打ちをしてもいいか?」


「ああ、もちろんだ。」


アンジーはウェザビー・マークⅤを取ると、そのまま座ってゆっくりとトリガーを引こうとするが、引くことができない。右手の人差し指が無いことをすっかり忘れていたのだ。


「クソ…」とぼやきながら、気を取り直して左手で使用すると、ウェザビーの精度によって五百メートル先のターゲットを撃ち抜くことに成功した。


「ヒット。いい腕前だな。なんでお前が私のところに配属されなかったのか不思議でならないよ。」


「ああ、だがやっぱり違う。このウェザビーは最高だが、全くしっくりこない。デルタ5は指が健在だったときはしっくり来たが、無くなってからはまるで違和感しかなかった。やっぱり左利き用の狙撃銃を調達しないとだめだ。まるで体の一部だと思えるような奴じゃなきゃ…」


「実を言うとな…一挺だけ私が〝手に負えない狙撃銃〟があるんだ。コレクションとして買ったはいいが、この私が全くといっていいほど使いこなせる気がしなかった左利き用の魔物だ。秘蔵っ子なんだがお前が使えるか試してみないか?」


そういうとオライオンは一つの重厚なペリカンケースを取り出し、両手でロックを外すとアンジーの方向に向けて開いた。


そこにあったのは高級なウォルナット木材で作られ、艶がきらめいて本体に金色のメダリオンが埋め込まれたまるでトパーズのような輝きを放つ至極の一品だった。


「おいおいこいつは…?」


「さっきのウェザビー・マークⅤのバリエーションなんだが…最高精度を誇る最高級品である五十周年記念モデルは右利き用しか存在しないと言われている…だが、あったんだ。一挺だけ従業員用に作られた左利き用の完全特注品が。通称は〝ゴールド・ネーム〟という。このモデルはその従業員が亡くなった際に知り合いだった私が個人的に遺族に取り合って購入したものだ。だが、この銃を使いこなすことはできなかった。私は右利き用の射手で左手で撃つことはこういうカジュアルな場以外ではやらない。だがそれでもある程度の標的にはヒットさせられた。だが、こいつは存在感が違う。まるで私が使うことを拒否するかのようにこの銃は私の体の一部になってくれなかったんだ。だから、保管するだけして宝の持ち腐れになっていたんだよ。使ってみろ。」


アンジーは指示されるままにゴールド・ネームに触れると、そのあまりの存在感に唸るしかなかった。この銃の前では今まで触れてきたすべての銃が屑鉄にすら思えるほどだった。


そして構えてみるとびっくりするほどしっくりきた。アンジーはエマに言われてこの半年以上左手で練習していたが、そんな銃よりも体の一部になったような感覚があった。それはまるで吸い付くようで失った指が戻ってきたかのような感覚だった。


そして三〇〇ウェザビー・マグナム弾を装填し、一キロメートル先の標的を狙った。


心の中でゆっくりはスムーズ、スムーズは速いというシールズの格言を呟きながら、引き金を絞ると銃身から放たれた弾丸は見事に一キロ先の静止した的へとヒットした。


そのあまりの精度と使い心地にアンジーは息を呑むしかなかった。


「なんだ…これ…狙ったところに正確に当たるなんてものじゃない。先を見通せるようだ。これは、これはとても言葉で言い表せるようなものじゃない…凄いなんてものじゃないんだ…」


語彙力を失ったアンジーはそのゴールド・ネームに魅せられるほかなかった。いろいろな狙撃銃で遊んできて心の中で最高に面白い銃はバレット・ライフルだと思っていた。だが、この銃は〝遊びでは済まされない〟魅力があったのだ。


「なああんた…この銃を譲ってくれないか?この精度が次の作戦では必要不可欠なんだ。これが無ければあいつには勝てないと思う。」


「作戦か…正直私も譲りたくはない。遺族から取り合って譲ってもらったものだからな。だから、何故これほどの銃を欲するのかちゃんとした理由を教えてほしいんだ。」


「私はとある強大な敵と戦っていて今佳境に入っている。そんな中で一人の敵がいた。その敵は子供だった…私は撃てなかった。どれだけ悪人を撃ってきても子供までは撃てないと思った。その結果、私は指をうしなったうえに仲間を危険に晒しかけた。」


「子供か…我々警察官は時として本当に狙いたくないものを撃たなければならないことがある。どんな奴だった?」


「歳はまだ十七ぐらいの若いやつだ。紛争地帯を渡り歩いて狙撃の才を磨いたらしい。奴はあろうことかアニマル市警のヘリまで撃ち落としたような女だ。それに…おそらくだが昔の仲間も奴に撃たれて死んだ。」


「…!まさか昨日の大事件のことか?」


「そうだ。私は引き金を躊躇して奴を消せなかったことで結果的に優秀なアニマル市警のパイロットを殺す羽目になってしまった。だが、人差し指を失ってからまったくといっていいほど自信が無くなってしまったんだ。だからこそ、この銃がいる。この銃じゃなきゃあいつにリベンジできない。」


「…今から八年ほど前か。私の部下の一人にニックという男がいた。物凄く優秀な奴だったがとある事件で子供の銃乱射事件に巻き込まれ狙撃の担当になった。そいつは最後まで迷った末にアサルトライフルを持って父親を殺害し、警官を負傷させた小学生を撃ち殺した。事件は収束して負傷した警官は一命をとりとめた…だが、世間のバッシングがそれを許さなかった。彼は仕事を全うしただけにも関わらず、マスコミに報道されて社会的制裁を喰らい、子殺しであると非難された。そして離婚して子供の親権も奪われ、悩んだ末に首を括った…それだけのことをするんだ。お前に覚悟はあるのか?」


そういわれたアンジーはひとしきり悩み続け、簡単に答えは出なかった。だが、考え抜いた末に一つの結論が導き出された。その考えはまるで地獄の底でおぼれている最中に天から降ってきた一本の蜘蛛の糸のようであった。


「…正直言ってずっと引きずるだろうなとは思っている。けど、私は仲間を守るためなら…その覚悟はある。」


アンジーの覚悟を決めた表情と覇気にオライオンは頷くと、改めてこの銃をアンジーに手渡した。


「なら…ベストを尽くせ。どうやるかは知らないが、この銃がきっとお前の味方になってくれるはずだ。」


そのライフルをアンジーは受け取ると、オライオンに対して頭を下げて感謝した。


そして残った時間をオライオンに付き添ってもらい、このライフルの技能を成熟させるために使ったのだった。






「装備をちょろまかしてこいと言われた上に人手が足りないと聞いてきたはいいがこれはなんだ?ヤク中がトリップしてて倒れてるところでここにある違法な機関銃を全部積み込まなきゃいけないんだって?勘弁してくれよ…」


カルラはそうぼやきながらブルーと一緒に外に停めてあるタンドラに機関銃を運んでいた。


「まあ、いいんじゃない?私たちもこれで刑務所行きになるかもだし。ヤバかったら責任こっちに押し付けられて脅されたとでもいえばいいと思う。」


「いや、そんなことはしないさ。一応ここまで組んできた仲間だからな。死ぬときは一緒さ。」


二人が話しているとタイラーとルフィナも後追いで手伝いへと参加する。


「まさか警察官なのにこんな量のマシンガンを使うことになるなんて思わなかったな…うぉっ、重いっ…M2機関銃ってなんキロあるんだっけ?」


「三十三キロですわ…!」


「冷蔵庫かよ…!」


息があがった状態で階段を上ってタンドラの二台にM2重機関銃を置くと、汗だくになって二人はその場に座り込んで少しの間休憩した後、再度地下室へと装備品を取りに行く。


そしてカルラとルフィナの瞳があったその瞬間だった。


ここ最近あまりの忙しさに二人は会うことができず、ここで実に数カ月ぶりに出会った時ルフィナのセックスレス状態に陥っていた性欲が爆発する。


「カルラっ…待って…」


ルフィナは物欲しそうにカルラの肩を掴むと、そのまま筋力で彼女を無理矢理引き付けて押し倒し、発情全開の顔を近づける。


「最近セックスレスなんですわ。毎晩毎晩体を慰めても全く満足できなくて凄く息苦しさを感じていたんですわ。」


「だ、ダメだよルフィナっ…こんなところでエッチなんて…ヤク中が寝てるようなところだし、タバコ臭いし…」


「近頃は似たようなハードプレイばかりでマンネリ気味でしたわ…けど、考えてみてくださいまし。このタバコ臭とアンモニア臭がするこの小汚い空間のアングラさ…そして銃を運んで汗だくの私たち…最高にシチュエーションとしてクるものがあると思いますわ…」


「で、でも…まだ仕事中で…」


「私、思ったんですの。いつもカルラをいじめてばかりで少し物足りなさを感じてましたの。そしてこの物足りなさを発散するために何をすればいいか…」


「てことは…ま、まさかリバでするってこと…?」


「冒険も…必要ですわ…今日はなんだか…すぅっごく…いじめられてみたい気分なんですわ…カルラ、私を辱めてほしいですわ…カルラ…!私を罵ってほしいですわ!尻を叩いて欲しいですわ!さあ、酷いぃ…ことをぉ…して!」


「う、うううう…ううううう…」


そんなやり取りをしている二人を見ていつものことだなと思いながら、タイラーとブルーは機関銃をいそいそと運び続けていた。


辺り一帯にはルフィナとカルラのハード・プレイの音がこだまし続けた。


そしてその絶叫を聴いてベティは目を覚ますと、性行為中の二人を見てこう言った。


「な、なんで人の店でセックスしてんだ、あんたら?」






数時間後、アンジーはタイラーの指定した時間ギリギリになって旧署へと戻ると、皆は装備の準備に勤しんでいた。


「相棒、遅かったな。装備の用意は完了してる。ナギサの記事もバッチリ書きあがった。これが報道されたら作戦開始の合図になる。」


「すまないな。遅くなって私は最高の狙撃銃を手に入れた。これがあれば人差し指のハンデなんて軽いもんだ。」


「ねえ、バカアンジー見てよこのグルカ。廃品パーツをそこら中からかき集めて20チームのメンバーにも手伝ってもらって完成したモンスター・マシーンだよ。ジャジャーン!」


シバサンがそういってグルカにかけていたベールを取ると、そこには外装は凹んでいるが、V8エンジンに搭載されたスーパー・チャージャーがボンネットから突き出ており、フロントライトが撤廃され中から機関銃の銃身が出て薬莢排出用の穴が設けられ、リア部分から六つの巨大なマフラーが飛び出し、上部ハッチにはM2重機関銃が増設され、どこから手に入れたのか爆発反応装甲まで設けられて黒い下地にホットロットのパターンで塗装された化け物マシーンが姿を現していた。


「名付けてベルベット・カスタム!相手がビソンテスだから牛殺しのアリから名前を取ったんだ。もう終わりかもしれないからやれるだけ弄ってみたよ。」


シバは楽しそうに運転席に座ると、エンジンをふかすと今まで聞いたことないような爆音が辺りに響き、アンジーも思わず耳を塞いだ。


「なんじゃこりゃ、ウォー・ボーイズにでも作らせたのかよ!最高じゃねえか。」


「へっへっへっへ!いいでしょーーー!」


「正直…自分も手伝いましたけど、コレやり過ぎた感じがするッス…」


「まあいいじゃんか!ルフィナが爆発反応装甲をどっかから調達してくれたからこれがあれば戦車ともやりあえるかもね!だはははは!」


そういって冗談を飛ばしていると、警視とエマが現れて皆を整列させた。


「準備は終わったみたいだな。今から我々はロス・ビソンテスの本拠地があるサンディエゴのメキシコ国境近くへと攻め入る。改めて言うがコレは完全に違法行為だ。腹を括れ!だが、違法であってもこの行為は我々が正義を成すために必要なことだ。あいつらを合衆国から徹底的に駆逐しろ!」


「私たちはグレーゾーンに叩き込まれてここまでやってきた。ビソンテスさえ叩ければやがてクルティードを叩くこともできるはずだ。だが、これだけは誓ってほしい。絶対に皆死ぬんじゃないぞ。刑務所に叩き込まれてでも生き延びるんだ!」






ロス・ビソンテスのオッドホーンは先の作戦で二人の仲間を失ったことに深い悲しみを感じていた。


ビソンテスの機密の都合上、上級幹部であるジュリアとアランの遺体はC4爆弾によって跡形も残らない様に爆破された為に遺体の前で弔うことすら許されなかった。


オッドホーンは二人の雇用契約書を見ながら、ただ一人ウイスキーを飲んで葉巻を吸いながら悲しみを紛らわせるしかなく、あまりの辛さに嗚咽が止まらなかった。


「マム、泣かないで…マム、ごめんなさい私たちが失敗したせいで…」


「大変申し訳ありません…私というものがありながらCLAWの連中をあと一歩のところで始末できませんでした…!ジュリアは…私に優しくしてくれていたというのに…私はそれを無視した結果、彼女と友人になることさえできずに死に別れてしまった…」


ヒトキリも悲しそうな顔をしながら二人と一緒に頭を下げた。


そして一人の兵士が大焦りでFBIの不正が大々的に世間にバレたことが判明すると、ビソンテスに辿り着いて法の裁きを受けるのも時間の問題となった。


そんな時にオッドホーンにある一通の電話が入ってくる。


「…もしもし…」


「やあオッドホーン。とんでもないやらかしをしてしまったね。」


その加工された音声を聴くや否やオッドホーンの額から冷や汗が止まらなくなった。


「エ、エ、エ、エル・アルテサーノ様…!?」


エル・アルテサーノとはメキシコ全土を統べる麻薬カルテルであるロス・クルティードの統領であり、オッドホーンと組んでロス・ビソンテスの設立にも関わった中心人物の一人である。彼女は機密保持の為に基本的に部下には連絡を取らないが、この時ばかりは例外でアメリカの足掛かりの柱を失ったことにかなり怒りを感じている様子だった。


「はぁ…なぁ、メス牛。私は君に失望している。あれだけの数の部下を連れておきながら誰一人敵を殺すことができないなんてね…」


「す、す、す、すみませんでした…私が、私が不甲斐ないばかりに…!」


「メス牛。君がビソンテスを興すのにどれだけ私は援助したっけ?それなのにそんな恩も忘れて…ひょっとして君は〝皮なめし〟にされたいのかい?」


アルテサーノがそういった瞬間にオッドホーンの目の前にあったラップトップがハッキングされ、中にクロウの体が損壊される映像がダイジェストで映り、ブタに食われる時の悍ましい断末魔の声を聴くとオッドホーンは息を潜める以外に無かった。


「と、と、とんでもありません…!私はただ…」


「はぁ、メス牛さ、発言と行動が一致していない。報道もされた。お前は全くの無能だ。あ、抵抗しようとか考えないでね。お前らがどれだけ軍人くずれを集めようと、こっちはメキシコ軍の一個中隊ぐらいなら動かせるから。それと一つだけチャンスをやる。我々と繋がってるFBIの副長官が今、国家機密を奪取してそちらに逃亡中だ。もうすぐ着くだろう。その国家機密があれば今後も我々が主要な政治家を脅して裏で繋がり、アメリカで活動することは容易になる。国境は開けとくから彼をメキシコまで生きて連れて来い。そうすればメキシコで一年間性奴隷として過ごしてもらうだけでこのミスはチャラにしてやる。それが嫌ならCLAWと戦って死ね。」


そうアルテサーノは告げると電話はツーツーと切れた。


「…クソっ、アルテサーノめ…私と対等な地位を結んだと思ったらメス牛と罵りやがって…!」


通話を終えた後、オッドホーンは憂さ晴らしに持っていた電話を地面へと叩きつけて破壊した。そんな頭を下げることしかできない哀れなオッドホーンを見て三人は心を痛めるほか無かった。


「うう…うう…私が築き上げてきた全てが灰に…!ゆるさん…ゆるさんぞCLAWども…」


オッドホーンの心の中にはCLAWに対する復讐心が沸き上がっていた。


「…マム、大丈夫?」


「…マヌエラ。もうこれで最後かも。お前の家族を殺した犯人を教えてやる…お前の家族を殺した奴は…」




「CLAWを率いるエマ・カストロ・マルチネスだ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ