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ギフト持ちのカメレオン令嬢は縁を結ぶ  作者: たくみ


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9/19

9.成敗

「うるさい!うるさいうるさいうるさい!うるさーい!」


 急に叫び出す男爵。その手はぶるぶると震えている。


「終わりだ!お前のせいで全部終わりだ!」


「私のせい?自業自得でございましょう?」


「いや、こいつらを消せばあの方が使える人間だと思って救ってくれるかもしれない」


 あの方――彼が忖度している相手だ。地位は高く態度もでかいが忠義の心もなければ誠実さもない。頭は……悪知恵だけは働くような小者。


「なんたるおめでたい頭。救ってくれるわけないでしょう?皇帝はあの人のことがお嫌いですもの。あの人の言うことなんてなあんにも聞くわけないでしょう?」


「そうだ!そうに違いない!」


「聞いております?頭に衝撃が与えられすぎてしまったかしら?」


 噛み合わない会話。男爵の目は血走り焦点も合っていない。自分の世界にダイブしてしまったようだ。


「お待ちくださいバイ侯爵!今この女の首を持っていきますから!おい!こいつらをやってしまえ!」


 悪党のお決まりのセリフの後に部屋にゾロゾロと入ってくるのはガタイの良い男20人程。というか彼は裏に存在するものの名前を口にしていることに気づいているのだろうか。


「1人10人ね」


「………………………………え?僕ですか?」


 勝手に色々と事態が発展していき思考が追いついていなかったジョン。ほぼ思考停止しかけていた彼はユリアに急に視線を向けられぎょっと目を見開く。


「当たり前でしょう?か弱いご令嬢を戦わせようなんて鬼畜の所業だわ」


「そういうことじゃなくて……僕はあなたを消そうとしたんですよ。なぜ助けると思うんですか?」


「え?戦いませんの?連れてきた意味がないじゃない」


「はあ?」


 一体何を言っているのだ。普通に考えれば助けるわけがない。だって彼女が消えれば一応任務クリアなのだ。


「ジョン冷静になって考えてみてちょうだい」


 お前がな?


 口から出かけた言葉をなんとか飲み込む。

 

「私がここでお陀仏しても依頼主は破滅、お金は少しも入らないわよ?」


「それはあなたがお陀仏しても一緒じゃないですか」


 自分はユリアの暗殺に失敗したのだから。


「短気は損気よ。まあ焦りなさるな」


 イライラさせてるのはお前だ。またしても出かかった言葉を飲み込む。


「あなたの大事な大事な幼馴染ちゃんが危険に晒されているのは誰のせい?彼が私を消してくれなんて依頼しなかったら彼女は今そんな目に遭っていないのよ?」


「なんでそれを……」


 黙ってと人差し指で口を塞がれる。


「あの男の存在ムカつかない?あなたの大切な大切なものを傷つけようとしているのはあの男……ねえやっちゃいましょう?」


「…………………………」


 そうだ。依頼主がこんな依頼をしてこなければ……ゆらりとジョンの目が揺らぐ。


「ご歓談中申し訳ないですがまだですか?」


 ダンッ!ガッ!


 うおー!


 そんな声と共に周囲の音やら声やらが意識が浮上したジョンの耳に入る。二人の前ではカインが1人男たちを叩きのめしている最中だった。


「あらごめんなさい。だってジョンが決心してしてくれないんだもの」


「さっさとしてください」


「はいはい」


 煩わしそうな返事をしたユリアはジョンを真っ直ぐに見据える。その真面目な表情にジョンはドキリとする。


 がしっと肩を掴まれたかと思うと大きな口を開けながらハイテンションに話し出すユリア。


「1ヶ月も同じ釜の飯を食った仲じゃん!同じ家で暮らした仲じゃん!一緒にいると楽しかったし……もううちら仲間じゃん?」


 見開かれるジョンの目。


 彼の目に映るのはユリアなのにユリアではなく――。




 気づけば男たちに蹴りを入れていた。



 

 数分後


 部屋に寝転がるのは男爵の手下たちだった。男爵はソファの端で足を抱え身を縮こまらせ震えている。


「あ…………あ……………」


「もうすぐ兵士たちが来るから大人しく待っていてくださいませ?」


「あ…………あ…あ…あー…」


 完全に自分の殻に閉じ籠もってしまった男爵からはまともな返事はなかった。


「お疲れ様カイン、ジョン」


「今月のお給料アップでお願い致します」


「……あなた固定給でしょ」


 ガーン……と見ているものが音が聞こえてきそうなほどショックを受けるカイン。


「僕はほぼ何もしていません。ほとんどカイン様が倒してくださいました。だから、あの……彼のお給料を……」

 

 チラチラとカインを見ながら恐る恐る吐き出された言葉にカインの顔がショックから歓喜の表情へと変わる。


「ジョン様……私の苦労を理解してくださるのは共に戦ったあなた様だけです。きっとただ見てるだけの人にはわからないんですよ」


「減額するわよ」


「流石お嬢様、お嬢様の声援で頑張れました」


 ペコリと頭を下げるカイン。


 いや、一言も声援など送られていなかった気がするが。


 うんうんと頷くユリアと手をモミモミしながらなんとか給料アップを狙うカインの姿に気が抜ける。


「さ、次に行きましょうか」


「え?どちらにですか?」


「行ってからのお楽しみ」


 まただ。また何やら企みのある笑みを浮かべている。


 不服そうなジョンに軽く笑った後、男爵に近づき顔を覗き込むユリア。


「色々と尽くしたのにお気の毒ですわ。あなたは候爵に利用されただけですのにね」


 候爵という単語にビクリと反応する男爵。ゆるゆるとその目がユリアに向く。


「でも困っているという言葉を勝手に忖度し、あるかもわからない見返りに縋る選択をしたのはあなた自身ですもの。しっかり罪を償ってくださいませ?」


「……る…い」


 うるさい。少し覇気が戻ってきた様子にユリアは笑みを深める。そっと彼の耳に自らの口を近づける。


「候爵ですが、自分がちょろまかした横領もあなたのせいにするそうですよ?どうせ首をはねられるんだから罪が増えようと一緒だろうですって。候爵は身ぎれいに……あなたは首無しに……世の中とは本当に弱肉強食の世界ですわね」


 屈めていた身を起こし、カインとジョンと共に部屋を出るユリア。


「あ……あーーーーーーーーー!!!」


 男爵の絶叫が屋敷に響き渡ったが、ユリアたちは誰一人後ろを振り返ることはなかった。

 





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