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ギフト持ちのカメレオン令嬢は縁を結ぶ  作者: たくみ


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7.捕獲

 ジョンの目に映るのはベッドに舞い散る血




 ではなく横に向けていた美しい顔を正面に向ける人。


 目をパッチリと見開いてこちらをガン見する金髪



 …………の鬘を被ったカインだ。


 首に振り下ろそうとしたナイフを握り締めた手は軽々とカインの手によって止められている。力を込めるがこちらの手がぶるぶると震えるばかりでびくともしない。


「きゃ~お助け~」


 言葉はか弱い令嬢風なのに無表情、低音ボイスというミスマッチさから余裕綽々なことが察せられ、ジョンは唇を噛みしめる。


「あらあら、私ではなくカインに夜這いだなんてやっぱりそっち系の男子だったのね。あ、私その手のことには理解があるから安心してちょうだい」


 声がした部屋の隅の方に視線を向けるジョン。そこには狙った獲物がいた。手には何やら大きな布を持っている。それを被って隠れていたよう。


「いえ、そちらの趣味はありません。もちろん僕が狙ったのはあなたですよ」


 ふと力を抜きナイフを落とす。顔面に落ちそうになったそれをジョンから手を離し躱すカイン。その隙にユリアに向かって走る。

 

 その速度は武を嗜むものでさえ追いつけないようなものだった。懐に隠していたもう1本のナイフを取り出しユリアに向かって腕を思いっきり伸ばす。


 やれる――――!


 確信したジョンの目が捉えたのはユリアに浮かぶ深い笑み。


 驚きに目を見開いた瞬間ジョンの顔は追いついたカインの手によって強く叩きつけられ床とこんにちは。


 口元は切れ、吹き出す鼻血。


 血だらけの顔を横に向け悔しげにカインを見る。


 !?


 喉が床に押し当てられてなかったら叫んでいただろう。


「ちょっと!なんであなたが私のネグリジェを着てるのよ!」


 ジョンの代わりに叫んだのはユリアだった。カインはレースがふんだんに使われた真っ白のネグリジェを着ていた。


「お嬢様が身代わりになれと仰ったので、着てみました」


「パッツンパッツンじゃない」


「少々足が出ておりますが、意外と似合っておりますでしょう?ちゃんと毛の方も処理致しました」


「確かに超似合う~……じゃなくて、もう着れないじゃない!」


「新しいものはもう手配しております。明日届く予定です」


「口は悪いけれど仕事のできる男ね」


 カインに身体の上に乗っかられているジョンはパアンと片手を打ち合わせる2人を目だけ動かし呆然と見つめる。


 それで良いのか?


 なんか違わないか?


 というかそもそもそんな呑気に会話をしている場合なのか?

  

「ふふふふ、あなたが暗殺者であることもソーヤ男爵でないことも知っていたわ」


「なんで……」


「もともとソーヤ男爵の顔は知っていたの。両親は亡くなり執事と2人暮らし。昔から引きこもり気味だったけれど女性に振られて完全な引きこもりになったから顔なんて誰も覚えてないと思ったのかしら?嘘をついて伯爵邸に潜り込もうとする魂胆は何かしら……と思って一緒に過ごしていたら身のこなしが暗殺者そのものなんだもの。あなた静かに動きすぎよ?」


「じゃあなぜさっさと追い出すなり消すなりしなかったのですか?」


「それではつまらないわ。やはりイベントは潰すものではなく楽しく過ごさないとね。あなたよりカインの方が強いことはわかっていたしね」


「はははっ!完敗だ!暗殺に失敗したんです。さっさと消してください」


 ユリアがジョンの顔の前で膝を曲げ屈むとす……と指が彼の目元に触れた後すぐに離れる。


 その指先には涙が。


「明日出かけるからついていらっしゃい」


「どこ………いえ、わかりました……」


 どこにと言いかけてやめるジョン。負けた人間の行き先など決まっている。そして敗者は勝者のいうことを聞いていれば良いのだ。


 どこから取り出したのかカインがジョンの手、足、腰にロープを巻き付ける。巻き付くロープは頑丈で取れそうにない。


 ドッコイセとカインの肩の上に抱えられたジョンはゆっくりと目を瞑る。明日まで命はあるようだが、地下牢にでも入れられるのだろう。


 貴族の家には大抵ある。


 喜ぶべきか恥ずべきか……自分の置かれた状況に呆れてくる。


 ドサリと下ろされる身体。




 ん?



 いや



 なんか


 

 えっ



 近くない?


 担ぎ上げられてから3秒くらいしか経っていない。



 それにこの背中の心地良いフワフワ感は何だろうか。




 ドサッ、ドサッ



 え、いや、あの……


 近くで2つの音がしたかと思うと人の温もりとなんとも爽やかでありながらも甘い香りが鼻をくすぐる。


 バチッと大きく目を見開く。きっと今まで生きてきた中で一番大きいに違いない。


 顔は動かせない。物理的にではない。現実だと確認することが怖いのだ。だが怖いもの見たさとはあるもので恐る恐る目だけ右に動かす。そして次に左に動かす。


 

 うん。


 うん。


 うんうんうんうんうんうん。


 うん。


 現実だと脳が理解した時ジョンの全身から汗が吹き出す。


 

 自分がいる場所はユリアのベッドの上。


 そしてジョンの


 右にはカイン。

 

 左にはユリアが横たわっている。


 3人仲良く川の字でベッドの上に寝転がっていた。



「!!!???」


 人とは混乱しすぎると声を失うようで、声にならない悲鳴がジョンの口から漏れる。


「うるさいわよジョン」


「お静かになさいませジョン様」


「!?」


「さっさと寝ないとお肌のコンディションが悪くなるわよ」


「お若いからと慢心はいけませんよ」


「!?」


「カイン」


「は」


 ドスッ


 混乱から抜け出せないままジョンは一発みぞおちにきれいに決められ意識を失った。



 

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