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ギフト持ちのカメレオン令嬢は縁を結ぶ  作者: たくみ


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18/19

18.選択

「私もユリア様も持っているもの……それは……なんですか……?」


 恐る恐る。でも期待が膨らむレイスの顔。


 ユリアは微笑む。まるで天使の微笑みのごとく美しい笑みで。


「もちろんお・か・ね」


「お、お金ですか……?」


「お金万歳」


「お、お金万歳?」


 レイスも含め皆呆気に取られる。


「だってお金があればそれこそ結婚しなくても生きていけるじゃない?あ、子供とか絶対に欲しいタイプかしら?大丈夫よ。お金に困っている男を買って結婚しちゃえば。貴族でもお金に困っている人は案外多いものよ?」


「え?え?いや、でもその……そんなことしたら評判とかもよくないだろうし、その……あのやっぱり愛とかない結婚は……」


「人生は妥協!そもそも貴族の結婚で愛だの恋だの言える時点であなたは十分恵まれていることがおわかり?」


「それは……はい」


 ヒマリーと分け隔てなく育ててくれた両親。その愛情は見せかけではなく本当に自分のことを思ってくれていることはわかっている。お金だって不自由したことはない。忙しい中家族の時間、レイス個人の為の時間を必ず作ってくれる優しい両親。


 いつも自分を気にかけてくれる優しいヒマリー。

 

 皆自分には眩しすぎて苛つくことも正直あるけれど、大切な家族だ。


「全てを手に入れることなど無理よ。良き人との結婚、良き人が見つからなかったら独身を貫く。結婚を重視するのであればどんな評判を立てられようとも金で買うくらいの覚悟を持つべきよ」


「全てを望むことはいけないのでしょうか?」


「いけなくはないわ。何も努力せず手に入れようとするのはどうかと思うけれど何かを手に入れるために努力することは素晴らしいと思うわ。けれどあなたそんなにあれもこれも頑張れるタイプ?難しくない?疲れない?」


「た、確かに……」


 でも、


 ちらりとユリアを見るレイス。


 本当に女神のように美しい女性。


 ギフトを持ち、


 権力もお金もある家に生まれ


 皆に憧れられるような


 神が創った最高傑作のような女性もこの世には存在する。自分はどうして彼女のようにはなれないのか。


「私は全てを手にしているように見える?」


 一瞬ビクリと身体を震わせた後レイスはコクリと頷く。


「あら私だって色々と選択し諦めたことや切り捨てたことだってあるわよ?婚約者だっていないし、あなただって私がカメレオン令嬢と呼ばれていることは知っているでしょう?」


「あ……」


 ユリアはギフトを利用し人の真似をする。それは人にはない能力を持つギフト持ちであるということの証しであり羨望の対象となっている。


 だが割といるのだ。


 人真似ばかり。自分がない。

 

 他者を結びつける傲慢な女。


 蔑みを込めて彼女を見るものが。


「私は人の真似をすることが大好き、それが生きがい。奇妙な目で見られようと蔑まれようと構わないと思って演じることを選択しているわ」


 ふわりと優しく微笑みながらもその目に見えるのは強い意思で……レイスは薄く口を開けたまま見惚れてしまった。


「まあでも」


 ちらりと上目遣いで見つめられはっとするレイス。


「私が選ばれし存在であることは否定しないわ。美貌、頭脳、経済力、ギフト、そして演技力!ああ!私はなぜこんなにも恵まれているのかしら」


 ふふ……と笑うユリアに一瞬レイスは呆けたが、すぐにつられるように笑っていた。


 なんだそれは。結局生まれ持ったものということではないのか。でもきっと今の彼女があるのは彼女なりの選択をしてきたからなのだと思う。


「眩しいな」


 自分は彼女のようにあれもこれもとはいかない人生だと思う。でも少しずつ少しずつ何かを手に入れていけたらいいと思う。


「ユリア様!私頑張ります!」


 真剣な眼差しで自分を見つめるレイスに本日一番の笑みを浮かべるユリアだった。






 3ヶ月後ヘンネル伯爵邸では父が仕事で不在の為自室で食事を取りながら新聞を開くユリアの姿と紅茶を淹れるカインの姿があった。



「あら、おめでたいこと」


「誠に」


 

 彼女が持っている新聞にはサランとヒマリーの結婚記事がでかでかと掲載されている。大きな商会同士の結婚ということで色々とセールも行われるようなので是非行きたいところである。


 と思ったのはつい先程のことで、今彼女の目が捉えているのは別の記事である。


『レイス男爵令嬢結婚!』


 そんな見出しで始まるこじんまりとした記事。



「ユリア様先を越されてしまいましたね」


「結婚は焦るものではないわ」


「ご当主様は焦っておられますが」


「あらあら知らないの?お父様は内心可愛い可愛い娘はいつまでも側にいて嬉しいのよ」


「昨日額に青筋を浮かべながらお見合いをブッチしただろうとお怒りになられておりましたのは私の見間違えでございましょうか」


「お父様も私と同じで演技がお上手なのよ。照れ屋さんなの」


「…………」


 ああ言えばこう言う主人に呆れて言葉を失うカイン。そんな彼を見てユリアは軽く笑った後記事に視線を戻す。


 そこには身を寄せ合い幸せそうに微笑むレイスと結婚相手の姿。


 お相手は商会の取引先である男爵家の三男坊だ。華やかなことが苦手で裏方の仕事をしっかりとこなす真面目で誠実な人と噂されている。


 何かの取引で出会った際に三男坊が自分に似たレイスのことを気に入りスピード婚約、結婚に至ったそうだ。

 

「色々とお説教こきましたけど、簡単に結婚できちゃいましたね。ユリア様と違って」


「まあ人生なんてそんなものよ」


 ぐるぐる思い悩んでうまくいかなくて、ふとした時に手に入っている。そういうことだってある。


「ああ、でも簡単にというところには異議ありよ」


「ほう」


「きっと努力していたはずよ。ただ私なんてと下を向いていたわけではないわ」


「そうですか?」


「ええ」


 そう言いながらそっとレイスの顔写真を見るユリア。


「だって髪の毛もアップにしているし、これお化粧も明るい表情になるようにしているわよ。それに見てこのドレス。暗めと言えば暗いけど柄が入っているしレースも入っているわ。これヒールも3センチは高いものにしているわね。腰をきゅっと縛ってお胸には詰め物が入っているわね。色々と努力しているわ」


「左様ですか」


 言われてみればそうかもしれないが、髪の毛のアップくらいしか気づかなかった。まあなんにしても彼女は自分なりに結婚できるように努力していたようだ。


「努力は実を結ぶってことね」

  

「そうですね」



 ユリアは新聞をカインに手渡すと少し冷めてしまった食事に手を付け始めた。 




 

 



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