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ギフト持ちのカメレオン令嬢は縁を結ぶ  作者: たくみ


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14/19

14.お見合い

 ほんのりと暖かい空気、優しくふくそよ風、そんな穏やかな気候のもと伯爵邸の庭園には2つの男女の声がする。使用人たちも思わず口元が緩むような会話が庭園には響いていた。


「ふふ、本当にサラン様といると心が安らぎますわ」


「過分なお言葉痛み入ります。ヒマリー嬢こそいつも豊富な話題をありがとうございます。楽しいだけでなく、今後につながるようなものまで……流石ですね」


 サランとヒマリーはお互いの顔を見て微笑み合う。


 和やかな雰囲気はとても良い感じでいつでもお見合い成立という感じなのだが、生憎ここにはもう一人女性がいる。


「レイス嬢用意させたお菓子はお口に合いますか?」


「はい」


「レイス嬢はご趣味などは何かございますか?」


「いえ」


 会話に入ってくるでもない様子のレイスを気遣いサランは声をかけるが、返ってくる答えは小さくて素っ気ない。


「レイス。この紅茶はお父様が取り扱っているものよね?あなたが絶対に売れるってお父様に推薦したのよね!」


「ええ」


 サランの困ったような様子にヒマリーがなんとか話題をと話を振るがこれまた不発だった。その場はなんとも言えない微妙な空気が漂う。


 サランは自分の心を立て直そうと目の前のカップに口をつけながらちらりとレイスを見る。


 今朝相対したユリアの姿と被る。


 いや、ユリアが彼女の真似をしていたのだからレイスを見てユリアの姿が被るというのはおかしいのか。


 まあそれだけユリアの演技が素晴らしいということか。そして……やはり自分の好みはこのレイスなんだとはっきり自覚した。


 


 このお見合いというか顔合わせは3回目。


 ヒマリーとレイスは男爵家に生を受けた双子の姉妹で彼女達の父親はそれなりの大きな商会を営んでいる。事業拡大を目的とした婚約をということになったのだが相手は双子のどちらでも構わないそう。


 幸いなことにヒマリーとレイスもサランのことを気に入ったようで婚約に異論はないそうであとはサランがどちらと運命を共にするのかを選ばなければならない。


 そう。


 あるのだ。


 選ぶ必要が。


 そしてこのことがサランの頭を悩ませているのだった。 




「まさかお前の好みが無口系だったとはな」


 双子が帰宅し、夕食の時間となったアルク伯爵邸。食堂には夫妻とサランが集って黙々と食事を口にしていたが、伯爵の一言でその場は微妙な空気に覆われた。


「無口系……物静かと言っていただけますか?」


「私含め騒がしい女性に囲まれてきたものだからその反動かしら……サランあなたもしかして母のことを騒がしいうざい女とでも思っていないわよね?」


「思っていませんよ」


 確かに大きな商会を営んでいることもありコミュニケーション能力重視というのか母も従業員の女性も屋敷の使用人たちも口達者なものが多い。


 それに関して不快な思いをした覚えはないが。


 求めていたのだろうか?


 周りにはいない静かな女性を。


「ヒマリーさんとレイスさんが来た時に私はもうヒマリーさんで決まりだと思ったのよ?ヒマリーさんは表情も豊かで話題も豊富で笑顔が素敵で明るくて我が家にぴったり!一方レイスさんは根くら……じゃなくて落ちついていて知的で裏方が似合いそうな感じで……」


 流石に息子の想い人らしき人にないわーとは言えず閉口するしかなかった夫人。


「母上どちらも素敵な女性ですよ」 


「わかっているわ。根暗が悪いなんて言っていないわ。商会の代表として表に出るときはもうちょっと明るくお願いしたいけれど。あ!家ではいいのよ?あなたの好みは物静かな方みたいだし」


「……………………」


 息子思いというのか母の中ではレイスで決まりのようだ。ヒマリーの方がと思いつつ、レイスを受け入れようとする母は良き母と言えるのだろうが……。


「初めて顔合わせをした時に皆がヒマリーさんで決まりだと言う中サランだけがもう一度両方と会いたい、更にもう一度と言っていたのだ。きっとお前は優しいから皆の意見に従わねばならないと思ったのだろう?だがどうしてもレイスさんを諦められずここまで来てしまったのだな……。お前の気持ちをわかってやれなくてすまなかったな」


 父上、お前もか。


 いやお前などと言ってはいけないな。あなたも母上のように私がレイスさんを選ぶと決めつけているのですね。


 ユリアは明らかにレイスの真似をしていた。


 それはレイスが好みであるということで。ま、まあ確かに彼女の方が気になっているという自覚はある。惹かれものがある。


 ユリアが縁を紡いだ人は末永く幸せになれる。

 いや、それだけではない。

 国に繁栄をもたらすと言われている。


 ていうことは


 あれ?


 これ?


「「サラン?」」


 急に汗を噴き出し始めた息子を心配する両親に慌てて何でもありませんと答えながら水の入ったグラスに手を伸ばす。


 少々お下品だが勢いよく水を飲み干す。


 そしてその勢いのままカツンとテーブルにグラスを置く。両親が訝しげな目で見てくるが気にしている場合ではない。


 だって自分は気づいてしまったのだ。


 レイスと結ばれたら繁栄するということだよな?と。


 裏を返せばヒマリーと結ばれたら繁栄はないということ。



 いやいやいやいやいやでもおかしい。


 レイスと結ばれて商会が繁栄、国が繁栄するビジョンが見えないのだ。






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