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ギフト持ちのカメレオン令嬢は縁を結ぶ  作者: たくみ


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11.解せぬ

「余計な手間をかけなくて良かったと言うべきかつまらないと言うべきか悩むところね」


 ちらりと頭を見るユリア。彼には生き地獄を見せてやろうと思っていたものだから少し残念である。


「この村はもう終わりだ。俺たちも出ていく。ジョンはそこのお姫様のところ行きだな。頑張れよ一流暗殺者」


「は!?誰が!?」


「お前だよ」


 全く。


 ユリアが頭をやりに来たこと、ジョンを連れ歩いていることを考えれば普通わかるだろうに。


 人を手に掛けることが怖いといい自分がどうなるかも恐れず暗殺を拒否し続けたジョン。だが大切な人のためなら躊躇わず人を手に掛ける。


 それはとても冷たく残酷である。だが優しく強いとも言える。度重なる突然の展開にわたわたと混乱するジョンは助けを求めるようにネラを見る。


「ジョン!ヘンネル伯爵家に抱えられるなんてすごいわ!」


「ちょ、ちょちょちょ!ユリア様は僕を雇うなんて一言も言ってないよ!なんでそんな勝手に思い込んでるんだよ!そもそも自分の命を狙ったヤツなんて雇うわけないだろう!?」


「雇うわ。給料は要相談で」


「ええーーーーーーー!?」


「どうせ行くところもないでしょう?」


「ないですけど!」


「じゃあ決まりね」


「ジョン様これからお仲間ですね。どうぞよろしくお願い致します」


「い、いやいやいやいやちょっと待ってください!!!」


 ジョンの叫び声が村中に響いた。あまりにもの音量に耳がキーンとなり静かになるジョン以外の人々。


「ぼ、ぼく……気づいたんです」


 痛いんですけど……恨めしげな視線を一身に浴びながらもジョンは言葉を続ける。


「ネラが好きなんだって。ユリア様がネラの真似をする度にネラのことばかり考えちゃって。普通だったらユリア様みたいな美人で素敵な人が目の前にいたらその人のこと考えちゃうじゃないですか。でも僕はネラのことばかり考えていた。それってネラのことが好きってことですよね?」


 いや……ね?とか言われても。知らんし。自分の心には自分で向き合ってほしい。


「いつも怒られてばかり、人ひとり手に掛けることもできない情けない出来損ないの僕にいつも笑いかけてくれたネラ。常識もなければ面白さもない僕にいつも話しかけてくれたネラ。君の優しさに僕は救われていた」


 うーん……誰よりも実力があり過ぎで、喝を入れられていたのだが、それを出来損ないとか思っていたなんて。お前で出来損ないなら俺たちはなんだろうな。


 若き暗殺者たちは遠くを見つめた。


「僕は君と一緒にいたい。僕と結婚してほしい」


「ジョン……」


 ネラの口から名前が紡ぎ出される。


 そして他の者たちもジョン(様)……と心の中で呟いていた。


 ――まさかのここでプロポーズ?


 ――そこら中に頭の流した血が……


 ――おや、あそこにあるのは拷問器具というものでは


 ――やべー、頭の死体持ってるんですけど……


 ずり……と静かに男は後ろに頭の身体を隠した。残念ながら頭のでかい図体は隠せていなかったが。


「嬉しい。私もあなたのことが好き」


 ジョンが喜びを隠しきれない笑顔になる。



 おめでとうとお祝いすべきだろうか。やったねと言うべきだろうか。いや、でもなんかこんな場で喜ぶヤバイ奴になりたくない。外野は沈黙を選択した。


「でもこれからあなたはヘンネル伯爵家のお抱え暗殺者。私はその辺のどこにでもいる暗殺者。釣り合いが取れないわ」


「暗殺者っていうか用心棒とかスパイ的なものをしてもらうつもりなのだけれど」


「私とあなたはもう別の世界の住人。ああ!なんたる悲劇なの!?」


「…………」


 話聞かない系女子かしら?


「私も伯爵家にお仕えできれば……」


 ちらっちらっとユリアを見るネラ。その目は明らかに期待している。


 なるほど。


 ユリアの口角が上がる。


 図々しく厚かましく欲しいものをあれもこれもと手に入れようとするそのガッツ嫌いではない。


「あなた家のことはできるかしら?」


「!出来ます!頭の家事は女がやるべきとかいう古臭い思考のおかげでできるようになりました!伯爵家のレベルに見合わないなら鍛えます!根性だけは負けません!」


「器用そうだしいざとなれば盾にもなる。あなたもうちで雇うわ」


「ありがとうございます!よろしくお願い致します!」


 深く頭を下げるネラ。上げたその顔にはザ・嬉しいという笑顔が張り付いている。


「で?」


 でと言いながら別の方を見るユリア。その視線の先には羨ましそうな目をする男が2人いた。彼らは視線を向けられあたふたと慌てる。だがこれはチャンスだ。


「お、俺植物の扱いとか得意です!毒使うために育ててきました!」


「ふむ。庭師のじいが最近腰が痛いと言っていたわね。いざとなれば盾になるしあなたも採用」


「ありがとうございます!」

 

 こちらもまた元気いっぱいに頭を下げる男その1。


「は、はい!俺は字を書くのが得意です!女の字、男の字、幼児の字なんでも書けます!真似するのも得意です!」


「ほお。それは便利ね。いざとなれば盾になるしあなたも採用」


「ありがとうございます!あ……でも…………」


 男その2は頭を下げかけ止まる。何かしらと目だけで問うユリアに向かいおずおずと口を開く。


「俺人を手に掛けてるし、その中には貴族だっていたっす。ご迷惑をお掛けすることとかあるかもしれないっす」


「ああそんなことは気にしなくて良いわ。だいたいどこの家にも暗部はあるものだし。やってやられては当然よ。ただあなた個人への攻撃はあるかもしれないけれど、私にはノーダメージだわ。だから心配ご無用よ」


「まじっすか!?じゃあお願いします!」


 ほっとした表情を浮かべながら頭を下げる男その2。


 やった。やったねと騒ぐ彼らをカインは微笑ましい目で見つめる。なんて嬉しそうな表情をするんだろうか。



 でも解せぬ。


 なぜ盾扱いされて、お前への攻撃など知らぬはと言われてそんなに嬉しそうなのだろう。

 






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