#6:「パトリス」
誰も、動かなかった。
声も上げなかった。
今までどんな環境がマチを取り巻いていても、最終的には「ディスカバリー」の
船体が守っていてくれていたのだ。
だが今日、動く有刺鉄線の群れがマチを襲った。
犠牲者も多く出た。
今も動かないとは言え、金網群は船体にその身を預けたままだ。
マチのヒト達は恐怖に怯えている。
あまつさえ、情報伝達に使用していた「ファントム」も調子が悪いままなのだ。
その管理をしていた老人のソダーは行方不明。
マチは、着実に終末へと向かいつつある。
私の名はパトリス。
マチの上層部の一人だ。
このマチは、宇宙輸送船「ディスカバリー」が次元転位してきてこのホシに不時
着し地面と同化した場所に出来た。我々はその出来事を「トランスポート」「トラ
ンスファー」などの言葉から「トランス」と呼んでいる。
その瞬間、我々はそれ以前の記憶も無いままこの場所に放り出された。それまで
何処で何をしていたのか、何処から来たのか、覚えているものはいない。
やがて残った船体を軸にマチを構えようとしていく内に、我々は幾多の謎に遭遇
することになる。
第一に、マチの船体から百メートルほど離れた場所にはそれが地中であろうと空
中であろうと見えない境界があり、それに触れたものは蒸発したり原子分解された
りと存在が消えてしまうこと。それ故我々はマチの外には出られず、その外に何が
あるのか知る術も無い。
第二に、我々は年齢を重ねていく内に成長が止まり、そのまま死ぬことなく生き
続けること。病気や事故では死ぬが、寿命で死ぬことは無いのだ。トランスから百
年が経つが、トランス時に既に中年だった私も今こうして生きている。
第三に、マチを取り巻く環境は時に変わること。単に天候の話だけでは無い。そ
の変化は地形自体にも及び、ある時は草原、ある時は海、氷河や岩場、ジャングル
やサバンナだったこともある。その変化は一瞬で起こり、その度に我々は生きる為
の対処を強いられることになる。
第四に、マチでは時々モノが現れることがある。何が現れるかはその時々で、驚
くようなモノが現れることもあればどうでも良いモノが見つかることもある。それ
らがいつ現れ、いつ消えるのかは分からない。その多くは船体に立っている塔の中
の無限に部屋が続いている場所で発見される為、我々はそこに採取専用の人員を配
している。
そして最も大きな謎は、……『ヒュー』。
我々の目に見える姿は白い服に白い髪の少年風だが、未だその正体は不明だ。生
命反応も重量もなく、触れた人はいない。だが彼が時々緑がかった光を放つ度、こ
のマチに何かが起こっている。
この間『ヒュー』はマチの境界を越えて女性を連れてきて、また境界を越えて連
れ去った。トランスから五十年の間新生児が生まれなかったマチに初めて出来た子
供・ファイの出生にも、『ヒュー』は関わっている。
ーー実はトランス時から、『ヒュー』はマチに関係している。
私は、それを目撃している。
そしてそのトランス自体にもーー『ヒュー』は関わっているのではないだろうか。
それが今の所『ヒュー』の調査に当たっているヒト達の大方の意見だ。
上層部でも何人かは関わっているが、私が個人的にそれを任せているのが、トラ
ンス時一緒にいたスキルだ。彼はトランス時から再生技術で作られた肉体を持ち、
百年が過ぎた今でも三十代の肉体を持っている。その左目には精巧なセンサーが凝
縮され、左手には生体レーザー、右手には震動波を起こせるパーツを装備し、一流
の兵士の訓練を受けている。私が信頼を寄せる男の一人だ。
私の娘同然のファイを彼に任せているのも、彼ならば最後までファイを守れるだ
ろうと思っているからだった。
だがどうやらマチの事態は急速に悪くなってきている様だ。
とにかく私はこのマチを預かる者の一人として、全霊をかけてそれに取り組まね
ばなるまい。
✴︎ ✴︎ ✴︎
「現在の人口は三千人を割り込みました」
無事だった船内の上層部ブロックで、我々はマチの復旧作業を開始した。
私は秘書官たちから現状報告を受けていた。
「先の金網戦では」
「五十人ほどが亡くなりました」
「いよいよ、減少が目に見える数になってきたな」
「はい」
「家族には手厚く保障を。船内の復旧は始まっているか」
「マニュアル通りに作業中です。戦闘の死者で若干人員が少ない箇所がありますが」
「この間の様にスキルやファイも使っていい」
「了解」
「で、ソダーの方は?」
「行方不明のままです。生体反応もマチ内にはありません」
「そうか……」
ソダーはマチの連絡手段として有効だった「ファントム」ーー我々がトランス時
からそれぞれ手の甲に持っている紋章の様な生体的端末ーーや、マチの電力の根幹
を成す謎の外燃機関を研究する職についていた老人だ。私との縁はトランス以来で、
マチの成り立ちや「ファントム」研究の黎明期を共に経てきた間柄だ。だが先の金
網群騒動の時、彼は「ファントム」の奥底深くにサイバーダイブし、その消息を絶
った。意識だけが消えたのなら身体は残っている筈だが、何故か情報センターに彼
の身体は残されていなかった。
「で……彼の作業の引き継ぎは?」
「リドリーが今当たっています」
リドリーはマチの電気技師だった男だ。少し前に息子をマチの境界で亡くした筈
だったか。自分にもしものことがあったら彼に頼む、という話はソダーから聞いて
いた。
「他に報告は?」
「もうすぐ金網群の調査班が報告をあげてくる筈です。随時ダメージコントロール
はしていきます」
「分かった。よろしく頼む」
秘書官が出て行った。
私は簡素なスチールのチェアに持たれた。執務室とはいえ、豪華なデスクや椅子
などこのマチには少ない。もっとも、あったとしても私は使わなかっただろうが。
「ふぅ………」
今は、マチ創立以来の危機と言える。出来るだけのことはやらなければーー。
そう思いながら私は出されていて既に冷め切った紙コップのコーヒーを飲み干し
た。
キュイッ。
『!』
脳内で「ファントム」の呼び出し音が鳴った。スキルからだった。
不安定ではあるが私の「ファントム」は何とかまだ繋がっている様だ。
『作業の割り当ては聞きました』
『早いな』
『他にも「ベルリン」の連中がボランティア買って出るそうです』
『それはありがたい。今は猫の手も借りたい』
『ところで、金網の方ですが……』
『調査班を出している。もうすぐ報告が来る筈だ』
『いきなりまた動き出したりして死傷者が出ませんか』
『警戒はする様言ってあるが……お前もそちらに回るか』
『そうすべきだと思います』
『では頼む。作業の方にはこちらから連絡しておく。………ファイはどうだ』
『?……いつも通りですよ』
『いや……ならいいんだ』
『はい』
変な感じで会話を終わらせてしまった。
二人が喧嘩した様だ、と言うのはソダーから聞いていた。
「ふぅ……」
ファイは私の元恋人の娘で、トランスから五十年もの間新しく子供が生まれるこ
とのなかったマチに出来た、最初の新生児だ。ファイの母親から聞いたところによ
ると、彼女はファイを身籠った時に『ヒュー』らしき存在に遭遇しているそうだ。
もしファイの出生も『ヒュー』のお陰であるなら、その時にも『ヒュー』はマチを
滅亡の危機から救っていることになる。
その後ファイの両親が事故で死んでからは私が後見人として彼女の成長を見守っ
てきた。真面目で少し融通の利かない性格ではあるが、スキルと組ませてからはよ
く笑う様になったと思う。願わくばスキルと夫婦になってマチの人口を少しでも増
やして欲しいものだがーーそううまくはいかない様だ。
子供は、大体親の思う通りにはならない。まるでマチの様に。
などとヒトの親でも無いのに考えている自分に気づいて、私は少し苦笑した。
✴︎ ✴︎ ✴︎
延々と進む作業の合間に、私はかつてソダーが作業をしていた情報センターに顔
を出していた。
「状況はどうだ」
ソダーの後を継いだリドリーが空間モニターだらけのスペースで苦闘していた。
「申し訳ありません。まだシステムを把握するので精一杯で……」
「すまないが、こんな時期だ。よろしく頼む」
「はい」
リドリーは真面目な男だ。ファイよりも後に生まれた新世代で、まだ成長は止ま
っていない四十代だった。子供を失ったばかりだというのに少々心苦しくはあるの
だが、マチには必要な作業だった。
「………」
私は情報センター周りを見つめた。
やはりソダーの存在は何処にも無かった。
彼は一体何処へ行ってしまったのだろう。身体ごと消えてしまうなど、これにも
『ヒュー』が絡んでいるというのだろうか。
「あ……そう言えば」
リドリーが肩越しに振り向いて行った。
「何だ」
「階層の下に入っていたんですがーーこれ、ソダーの遺言かもしれません」
見れば小さな映像データのアイコンがモニター上にあった。
「!?」
「コードは解除してあります。宛先はスキルになっていますがーーどうします?」
私は少し考えた。
「……すまないが、こちらにも送ってもらえるか」
「はい」
リドリーが空間モニターをヒュイッと触ると、「ファントム」経由で私の脳内に
そのデータが送られてきた。動画データの様だ。
「スキルにも、送っておいてくれ」
「了解です」
「引き続き頑張ってくれ」
そう言ってわたしはその場を離れた。
少し後ろめたくもあったが、私はそれを開いてみることにした。
誰もいない情報センター内のロビーで、私は目を閉じた。
「………」
脳内に映し出される映像は、空間モニター上のウェブカメラのものだった。
ソダーが例の脳波デバイスを被った状態でカメラに向かって話している。
『今から、最後のダイブを試す』
ソダーはいつもの飄々とした表情だった。
『ひょっとしたら、「ファントム」の奥底に触れられるかもしれん。もし戻ってこ
なくても、心配せん様に』
「…………」
それは無理というものだ。
『それにわしは思っておる。きっとそこで『ヒュー』に会えると』
「……!」
私は少し背を伸ばした。ソダー、今何と言った?
『思えば「ファントム」を繋げることが出来たのも、初期にダイブした時に恐らく
は『ヒュー』であろう存在と出会ったお陰じゃ』
「………」
そんなことが、あったのか!?
私は眉根を寄せた。
ならば、やはり『ヒュー』はマチとーーーー
『じゃから今度の騒動も、きっと何かがあるとわしは思っておる。わしは行くよ』
「……」
逝くよ、だったのかもしれない。私は何となくそう思った。
『スキル、ファイ』
「!」
『寿命がないと言っても、マチ自体はいつ無くなるか分からんのじゃ。決断は早い
方が良い』
「………」
私は苦笑した。ソダーもやはり、それを望んでいたらしい。我々老人はーーと言
ってもスキルたちも既に百数十歳と五十歳ではあるのだがーーそういうおせっかい
が好きなものだ。
『わしは期待しておるぞ。ではな』
メッセージはそこで終わっていた。
「…………」
『ヒュー』に関することは初耳だったが、だからと言って体が無くなることの説
明はつかなかった。
このマチでは不思議なことは当然とは言えーー何処か釈然としない気分で私は情
報センターを後にした。
✴︎ ✴︎ ✴︎
上層部の私の執務室に戻ると、ハークが待っていた。
ハークは私より少し歳下で外見は既に老人の姿の旧ロシア系の小男だ。
能力はあるのだが兎に角融通が利かないタイプなのでよくスキルの様なタイプと
は衝突する。この間もそれでマチの一部を破壊する事件を起こして懲罰を与えられ
たのだった。
「お久しぶりです」
「もう、体調の方は良いのか」
ハークは一時、モノが現れる塔の作業に回されて精神を病んだと聞いていた。
だが目の前のハークは憑き物が落ちた様にキリッとした表情をしていた。
「はい、もうすっかり大丈夫です。マチがこんな時に、いつまでも休んではいられ
ません!」
「………」
私はトランス時からずっと上層部で働いている。最初は私よりも歳上の上司たち
の元で、そしてやがて年を経るごとにどんどん出世していき今ではトップの一人だ。
歳上の上司たちもこのマチ故まだ存命なヒトも多いが皆引退している。中には体が
動かなくなるほど年を取ってからようやく成長が止まった元上司も居る。
そういう部署で百年を過ごしたのだ。ヒトを見る目はそれなりにあるつもりだ。
今のハークなら、任せて良い仕事も多いだろう。
「うむ。力を貸してくれ」
「はい!」
「よろしく頼むそ」
「はっ!」
ハークはビシッと敬礼ポーズを取った。
その時だった。
キュイッ。
スキルから「ファントム」での連絡があった。焦った声だった。
『パトリス!』
『どうした、スキル』
『何か、降って来る!』
『何か、だと?』
『多分ーー鉄骨だ。それも一つや二つじゃない』
『!?』
『左舷の奥、十秒後に着地!』
私はデスクの空間モニタを触り、監視カメラの映像を出した。
ウィンドウが立ち上がるのと同時に、境界の向こう辺りに巨大な鉄骨が十数本突
き刺さったのが見えた。
マチが軽く振動に揺れた。
✴︎ ✴︎ ✴︎
「……何じゃありゃ」
「鉄骨じゃろう」
「そりゃあ分かるが、何であんなところに」
「そんなもん、このマチじゃーー」
鉄骨の捜査にはハークを行かせて、私はマチ内から外が見える場所に出ていた。
このマチのほぼ唯一の飲み屋である「ベルリン」も近いので、その常連たちの姿
も見える。皆幾分不安げにそれを見ていた。
マチの環境は相変わらず元は海底だった遠浅の砂浜が広がっていた。そこに突き
立ったそれぞれ数十メートルはあろうかという鉄骨群。まだ境界の外で良かったが
ーーーもしマチの船体に落ちてきていたら、大惨事だったろう。
「パトリス!」
振り返ると、ファイとランプがこちらに向かってきていた。
「ファイ」
「また、大変なことが起きてますね」
「あぁ、スキルが最初に発見した。今も船体上で次が来ないか警戒してもらってい
る」
「何か、どんどんマチがやばくなってきてるよね」
そう言った少年の姿のランプは、トランス時に子供で程なくして成長が止まり、
そのまま百年を過ごした男だ。たまたま彼の手の「ファントム」の機能が使えなか
った為に社会から疎外され、ランプはマチの地下でずっと暮らしていた。かつてテ
ロを起こしかけたこともあるが、今はスキルたちに協力している立場だ。
「あぁ……」
私は鉄骨を見ながら言った。
「何としても、マチは守らないとな」
「そうですね……」
私はそう呟いたファイの方をそっと窺った。
三十歳程度の外見で成長の止まった旧オリエンタルの黒髪と肌は若々しくそして
美しかった。
「……今は、何処で作業している?」
「すぐそこのL地区倉庫です。なんとか金網は退けましたが、まだ貨物が散乱して
ます」
「金網は、危険では無かったか」
結局、金網についてはよく分かっていなかった。素材は判明したが、それが何故
動いていたのか、何故我々に向かってきたのかなどは不明のままだった。
「えぇ、今の所停止したままです」
「そうかーー気をつけるんだぞ」
「はい、もう戻ります」
「んじゃ、パトリス」
「あぁ」
私は戻る二人を見つめた。
ーー本当に、何とかしないとな。
マチも、そしてスキルとファイのことも。
そんなことを考えていた時だった。
「あら珍しい」
妙齢の女性の声がした。
「!キャスリン……」
近づいてきたそのヒトは、このマチの唯一の娼館「カサブランカ」の店主兼娼婦
のキャスリンだった。
彼女も三十代後半の肢体で成長が止まった女性で、長らく「カサブランカ」を取
り仕切っている。かつて私と付き合っていた時期もあるが、私が忙しいせいか長く
は続かなかった。
「この間から、大変みたいね」
「あぁ……そっちはどうだ」
「わたしはまぁ、何とかやってるよ。ゴタゴタが片付いたら、店にでもおいで」
わたしは苦笑した。
彼女の瞳は他の多くの成長が止まったヒトと同じ様に白脱していたが、相変わら
ず気持ちの良い色気を放っていた。
「……じゃあね、上層部さん」
「あぁ……また、キャスリン」
彼女はいつも着ている背中の広く開いたドレスをなびかせながら去って行った。
このマチでは、かつて愛した人もよほどのことがない限り、ずっと生き続ける。
果たしてそれが良いことなのか悪いことなのか、誰にも分からない。
私はもう少しだけ彼女の後ろ姿を見つめてから、踵を返した。
✴︎ ✴︎ ✴︎
私は、自分の幸せなどというものをあまり考えたことが無かった。
トランス時からすでに私はこのマチの上層部の一人であったし、そうでなくとも
マチの創成期は明日があるかも分からない極度の混乱状態だった。毎日が生き延び
る為の試練の連続だった。そこから徐々にマチのインフラが整備され、「ファント
ム」も通信用に使えるようになっていった。
十数年が経ち、ようやく少し余裕が出来てキャスリンやファイの母親と付き合っ
たこともある。だがどちらもうまくはいかなかった。マチの為に結婚もしたが結局
子供は授からず破綻した。私はどうもそちら方面の才能が無かったのだと思う。
結局成長は人並みの六十歳頃で止まったがまだ筋肉は衰えていないし、この間は
図らずも実戦を無難にこなしもした。だが、私の上層部人生もそろそろだろうか、
という思いは最近胸の内で大きくなっていた。理由は分からない。かつて去ってい
った私の前任者たちも同じ思いだったのだろうか。
「………」
私は自分の執務室に戻っていた。
自分のデスクの空間モニターには、各作業の進行状況などが適宜入ってきている。
「…………!」
私はそのモニターの端に目をやった。いつの間にかメール着信の表示が出ている。
他の事務的なものとは違う独特の表示。時々来るもので、前任者からは更にその前
の人たちからの指示だ、と言われているものだ。
私はそれを開いた。
「 い ろ 」
それだけが書いてある。誰からかはよく分からない。指示と言っても強制力は無
く願望みたいなもので現場の判断が優先、ということだったが果たして本当は誰か
らのものか?
実は私はそれを探していた時期もある。ソダーにも捜査を依頼したが、その発信
元が分かることはなかった。全身麻痺で意識もあるかどうか分からない元上層部の
ヒトがもしかして……などと考えたこともあったが、結局その人はネットからは切
り離されていて違った。
詰まるところ、このマチでは最後は謎に行き当たるのだーー。
「………」
私は考えていた。
あのメールの文面「いろ」。それは何を意味しているのだろうか。
色?それとも留まれ?此処にいろ?今のままでいろ?
確かに今まではそうしてきた。
だが今の状況では……。
マチも、私も。
何か、突破口が無いと。
そんなことを考えていた時だった。
キュイッ。
『パトリス!』
スキルからの「ファントム」だった。
『また降ってくる!』
私はビクッと腰を浮かせた。
『鉄骨か?!場所は?』
『船体後方ーー境界の上ーーいや内側だ!』
前よりも、近づいている?!
私はすぐに情報センターのリドリーに「ファントム」でマチの住人に緊急連絡を
出すよう指示を出した。
だがやはり「ファントム」の調子が悪くそれはマチの一部にしか伝わらなかった。
「く……」
『着地!』
スキルの声がすると同時にマチに衝撃が来た。最初のものよりも大きかった。
「ダメージコントロール!」
私は各所に指示を出して、モニターを注視した。
✴︎ ✴︎ ✴︎
「H地区のコンテナが崩れました!現在内部を検査中」
「T地区が全域停電中です」
「船体後方の商店の一部が衝撃で崩壊!」
上層部ブロックはごった返していた。
マチのダメージはそう多くはなかったが、マチの動揺は相当なものだった。
二回目の鉄骨群は二十本程、境界よりも内側に落ちていた。近づいてきている、
ということは次はーー?
私は情報センターのリドリーに「ファントム」で話しかけた。
『リドリー、マチの皆に情報は出せるか?!』
『すみません、まだ全員とはいきません………』
私は唇を噛んだ。こんな時に、「ファントム」は不安定なままだ。
すぐに船全体への放送の準備や各所へのトランシーバーの配布などの指示を出し
た。
さてーーーどうする?これから、何が出来る?
あの鉄骨は、恐らくまた来る。
あれは一体、何なのだ!?
考えていると、スキルから連絡があった。
『パトリス』
スキルとはまだ「ファントム」が繋がっていて幸いだった。
『どうした、他に動きか?!』
『いや……』
『……?』
私は椅子に腰を落とした。久しぶりに座った様な気がした。
『パトリス、大丈夫ですか』
いつになく大人しい脳内の声に私は少し笑んだ。
『お前こそ、ずっと監視に当たっていたろう。誰か交代にやろうか』
『いえ、まだいけます』
『食事は取っているか』
『えぇ、ランプが時々来てくれてます』
『そうか……』
私は一息ついた。
スキルも座っているのだろう。もしかしたら寝転んで空を眺めているのかもしれ
ない。「ファントム」からはそんな感覚が伝わってきた。本当によく出来た通信装
置だ。それが繋がってさえいれば。
『………』
私たちは、しばし黙った。
マチの周りはまだ干上がった海底のままだ。船体の上にはまだ金網群が乗っかっ
ている。こんな状況なのに空だけは青かった。
先に口を開いたのはスキルだった。
『これは……何かの攻撃なんでしょうか』
『誰からのだ』
『……分かっているでしょう』
『………』
『もしかしたら、この金網も、そうかもしれない』
確かに。あるとすればーーそれは『ヒュー』なのだろうか。
『お前がそう言うのなら、あるいは……』
私は冷静に言った。
スキルは黙ったままだった。
『だがーーー』
『……だが?』
聞かれた私は、少し言い淀んだ。
実はまだ、私はスキルに全ては語っていないことがある。
「パトリス、ハークからの報告ですがーー」
秘書官が入ってきたのを片手で私は制した。
『後で、話せるか』
『ーーーはい』
その場の話はそこまでになった。
✴︎ ✴︎ ✴︎
ハークの調査によると、降ってきた鉄骨は高硬度のタングステン製で、あの重量
のものがもしマチの船体に当たればかなりの階層まで貫く威力があるとのことだっ
た。なお、何処から来たかはやはり分からなかった。
一体、何処からあれはやってくるのか。この先マチはどうなるのか。
分からないものは分からない。私は唇を噛んだ。
そして、マチの「ファントム」はすっかり繋がらなくなった。
リドリーは苦闘してはいるが、原因を突き止めるまでには至っていない。
停滞したまま、マチは静かな夜を迎えた。
一応警戒の指示を出して、私は船体上へと向かった。
長い一日だった。
外に出ると、綺麗な星空が広がっていた。
船体の上にはまだ各所に金網が乗ったままだった。
「スキル……」
船体上のスキルがよく一人でいる場所に、やはり彼はいた。
寝転んだ状態で、右目を閉じて左目だけで上空を見つめている。
側には、スキルが飼っているカワウソも寝そべっていた。
「起きてるか」
「勿論」
スキルは目線はまだ天頂を向いたまま、体を起こした。
私は隣に座った。
スキルは、幾分疲れているだろうか。丸一日寝ていない計算になる。
「鉄骨はーーーやはり境界を越えるまでは視覚以外に反応は無いのか」
「えぇ」
「全天を監視するのは大変だな」
「もうそれは諦めて、マチに当たりそうな天頂付近のモノだけ見ることにしていま
す。今の所自由落下軌道以外では落ちてきていないので」
よく見れば、その瞳は天頂方向にまっすぐ向けられていた。スキルの左目は最先
端科学の集合体だ。その性能は信頼している。
「……昼間、何か言いかけましたね」
「あぁ。私は、お前に話しておかなければならないことがある」
「……はい」
スキルは予想していた様に答えた。らしいな、と私は思った。
「トランス時のこと、覚えているか」
「えぇ。あの塔の中の部屋で、気が付いたら目の前にパトリスがいた。書籍に埋も
れていた俺を、あなたが助け出してくれた」
スキルはチラリと天空にそびえる塔の方を見た。
カワウソも一緒にキュルッと上方を見た。このカワウソーー名前はワウ、だった
か。
「…………」
私は意を決して話し始めた。
「その時、『ヒュー』と共に現れた、という話は前にしたな」
「えぇ…」
少し、スキルが身構えた様な気がした。
「私が先に気付いた時、お前はまだいなくてーーー目の前には、あの『ヒュー』が
いた」
「……!」
その詳細を話すのは初めてだった。
スキルがゆっくりと私の方を見た。ワウが少しピクッと顔を上げた。
「ーーーそれで?」
私は続けた。
「勿論その時は『ヒュー』などという名前は知らない。だが今と同じ、ボウっと光
った白髪に白い服の少年だった」
「…………」
そして私は話し始めた。
あの時、私は何も分からずあの暗い部屋にいた。自分が誰で、どうして此処にい
るのか、全く記憶が無かった。不安に包まれていた時、目の前でボウっと何かが光
った。それが『ヒュー』だった。私は驚いたが、同時に何か安らぎに近いものも感
じていた。彼は私の方をじっと見つめていた。私は何のことか分からず何も反応出
来なかった。夢でも見ているのかと思った。それから『ヒュー』はフッと横に目を
やった。私もそちらを見るとーーーー先ほどは誰もいなかった筈の崩れた書籍の中
に、いつの間にか埋もれたスキルがいた。私は目を見張った。その時のスキルは『
ヒュー』と同じ様に体を覆っていたボウっとした淡い光が徐々に収まっていくとこ
ろだった。まるで何かの力で生成された直後、とでもいった感じだった。私は恐る
恐る『ヒュー』の方を見返した。彼は無表情に見えたが、一瞬微かに笑んだ様な気
がした。次の瞬間、『ヒュー』は身を翻して姿を消した。私は思わず手を伸ばした
がその手に触れるものは何も無かった。
「う……」
その時、スキルは目を覚ましたのだ。目を開けたスキルは私を見つめて先ほどの
私と同じく何も分からない状況に戸惑っていた。私もまだ訳が分からない状態だっ
たがーースキルに向かって手を伸ばした。
その時、私は自分が彼の上司であり、この事態を何とかすべき使命を帯びている
のだ、と不思議にそう思っていた。
「ーーーそれはーーーー」
スキルは少し驚いていた。当然だと思う。
「………だから、俺を今まで………」
私はゆっくりと頷いた。
それから、私は星空を見上げた。
「だから、五十年後ファイの出生の時に母親から『ヒュー』らしき人物を見たと聞
いた時も私は驚かなかった」
「……………」
「ソダーによると、「ファントム」が初めて繋がった時も『ヒュー』が関わってい
たらしい」
「………!」
「そして最近の『ヒュー』の動きーーーこれは、最初に関わったお前の周りで起き
ているとも言える」
「それは………」
「だから私は、『ヒュー』がこのマチに害を成そうとしているとはどうしても思え
ないのだ」
「…………」
それは私の本心だった。
スキルは黙った。まだ頭では分かっても感情が追いついていない様だった。
私は更に続けた。
「なぁスキル」
「……はい」
私は体ごとスキルの方へ向き直った。
「これからこのマチがどうなるかは分からない。だがもし私に何かがあった時はー
ーー」
「パトリス」
「いいから、聞け」
私の強目の制止にスキルは黙った。
「上層部は私の部下やハークたちで協力して何とかやるだろう。だがお前は、最期
まで『ヒュー』を追え。お前は、特別なのだから。存在の最初から、『ヒュー』に
関わっていたのだから」
「…………」
そして、願わくば同じ様に『ヒュー』と出生から関わっているファイと繋がって、
マチの次の世代をーー私はそこまでは言わずに飲み込んだ。
スキルは、黙りこくっていた。突然こう言われても衝撃の方が大きいだろう。だ
がスキルなら、いずれベストな判断を下す。百年もの間、スキルがそうするのを見
ていたのだから。
「ーーー分かりました」
しばらくあってから、スキルは答えた。
私は右手を差し出した。
スキルも握り返した。彼の震動波のメタルパーツの感触が手に残った。
「………!!」
スキルがハッと空を見上げた。
「!?どうした」
「………?」
スキルはじっと天頂方向を見上げた。
私の目には星々が瞬いている様にしか見えなかった。
「……来ます」
「鉄骨か!?」
「はいーーそれも無数に」
「!?」
私は立ち上がった。
✴︎ ✴︎ ✴︎
マチにサイレンが鳴り始めた。
”マチの全員に告ぐ!”
私は用意していたマイクを取り出していた。その先は前に使った、上層部と情報
センターを介してマチ全体に声を届かせるスピーカーシステムに繋がっていた。
”今現在、また鉄骨群がマチに落下しつつある!”
私は叫んだ。
”全員、直ちにマチの最下層部へと避難!各所の隔壁を開けるので、その中へ退避し
てくれ!”
ハークの報告で、最下層の隔壁の下ならば船体に鉄骨が突き刺さっても助かる可
能性が高いことは分かっていた。
”皆、冷静な対処を望む!”
スキルも立ち上がった。ワウも気配を察したのか、ソワソワとしていた。
「俺は此処で軌道を見ます!」
「頼む!私は上層部へ戻る。最初の落下は?」
「三十秒後!」
「うむ!」
私は走った。船体上からの梯子を下りたところで最初の衝撃が来た。
ガガンッ!
「く……場所は!?」
”右舷、五十メートル!二十数本!”
スキルに渡していたトランシーバーからの連絡が来た。
間違いなく、マチの船体へと近づいてきている。
私は執務室に飛び込んだ。既に秘書官たちが空間モニタを立ち上げ、全員が対応
準備済みだった。
空間モニタに繋がれたスキルの声が響く。
”まだ来ます!今度は三十数本!近い!”
「住民の避難は!」
私は秘書官たちに尋ねた。
「まだ半数も隔壁に達していません!」
”来ます!”
マチが揺れた。更に大きい揺れだった。
「マチから三十メートル!」
「近づいています!」
「まずいな……」
執務室に緊張が走った。
「スキル、次は?」
”………パトリス、住民の避難は”
「まだ半数が隔壁の外だ」
”急がせてください……”
「どうした!」
私はスキルの声に嫌な予感を感じざるを得なかった。
”来ますーーー無数にーー”
「無数だと!?」
”しかも赤熱してるーー直撃するものもあります!”
「な……」
光学映像でようやく確認出来る距離まで鉄骨群が近づいてきた。
「確かに赤く燃えた様なーーまるで流星だ」
秘書官たちが呻いた。
私は決断した。
”上層部ブロックを破棄!情報センターも含め下層部のサブブリッジへ!”
我々はもしもの時の為に、そういうブロックを用意していた。宇宙船「ディスカ
バリー」の戦闘時のサブブリッジを含むエリアだった。
「え……でも」
「急げ!データは全てそちらに移せ」
「は、はい!」
私はトランシーバーに向かって怒鳴った。
「スキル、もういい、逃げろ!」
”何処にいても、当たる時は当たります”
「そんなことを言っている場合か!着弾までは?」
”残り二十秒!”
「ーーー!」
間に合わないーーー。
その時、私は目の前のモニターの端にある表示に気がついた。
「パトリス、あなたも!」
「先に行け!」
秘書官たちに指示した後、私はその表示に恐る恐る手を伸ばした。
それは、例の謎の送り主からのメール。
「パトリス!」
ドア向こうから誰かが叫んでいる。
”来ます!”
スキルの声がした。
だが私はーーーふと、思っていた。
これは、もしかしてーーー『ヒュー』からのメールではないのか?
何故今までそう思わなかった?
私はそっと表示に触れた。
その中身はーーーー
『 い ろ 』
文面は今までと同じだった。
だが、何かが違う気がした。
『パトリス!』
スキルの声がーーートランシーバーではなく、「ファントム」を通して聞こえて
きた。
今は「ファントム」は機能していない筈だが、何故ーーー頭の隅でそんなことを
思った。
『逃げて!』
ガッ!
衝撃が来た。明らかにマチの何処かに当たった。
ガッ!
ガガッ!
マチの外にも次々にあの焼けた鉄骨群が突き刺さっていくのが分かった。
ガッ!
強い衝撃も来た。また直撃したのだ。
だが、私の視線はずっとそのメールに注がれていた。
何故か目を離せなかった。
『パトリスーーー!』
スキルの絶叫が脳内に響き、次の瞬間、凄まじい衝撃が執務室を襲った。
✴︎ ✴︎ ✴︎
『……………』
私はーーー死んだのだろうか?
痛みは無かった。
体の感覚も無かった。
ただ意識だけが、何処かに浮かんでいた。
『…………』
私はぼうっと考えていた。
私は、結局マチに何が出来ただろう。
この百年は、一体何だったのか。
『ヒュー』にスキルのことを託され、それなりに努力はしてきたつもりだ。
だがーーー。
私は何も無い不思議な空間を漂っていた。
長い時間が経った様な気がした。
その時、見覚えのある光が煌めいた。
キィーーーン!
緑色の光が目の前で柔らかく揺らめいていた。
『あぁ………』
あれは、『ヒュー』の光。
トランスの時、スキルが現れた時に見た光だ。
そしてここ最近、マチでよく見かける光。
『ヒュー』。
あいつに、もう一度会わなければーーー。
私は辺りを見回した。
既に体は無かったが、必死で辺りを探し回った。
そしてーーー見つけた。
『ヒュー』ではない。
あれはーーマチだ。
私は被災したマチのイメージを俯瞰で眺めていた。
幾多の鉄骨がマチに突き立っていた。
私がいたであろう上層部ブロックにも一際太い鉄骨が刺さっていた。
まだその鉄骨は幾分赤かったが、徐々に冷えつつある様だ。
『スキルーーーー』
私は船体上にスキルを探した。
スキルは突き立った鉄骨の脇で生きていた。
側にはファイがいた。
その鉄骨は斜めに切断され、スキルの左手は焼け焦げていた。
恐らく最後にファイがスキルの元へ駆けつけ、スキルが左手の生体レーザーを最
大出力で撃って鉄骨の直撃からファイを守ったのだろう。
『…………』
あの二人は、大丈夫だろう。
私はそう思った。
それから私はマチ全体に目をやった。
恐らく多数の死傷者が出たことだろう。
ハリネズミの様に鉄骨が突き刺さった「ディスカバリー」の船体は、それでもま
だその身を崩壊させずにそこに横たわっていた。
「ベルリン」は無事だった。
「カサブランカ」も。
キャメロンやキャスリンーーーランプやハークーーー彼らは何とか生きていた。
『……………』
これから、マチはどうなるのだろう。
残った彼らには、どういった運命が待ち受けているのだろう。
私にはーーーーもう何も、出来ないのだろうか。
『ヒュー』
『………!』
誰かの声がした。
振り向くとーーーーそこには、あの白い髪に白い服の少年ーーー『ヒュー』がい
た。
『『ヒュー』……』
わたしがそれを見るのは、久しぶりだった。
相変わらず無表情なその少年は、じっと私の方を見つめていた。
『私はーーー』
何かを言おうとしたが、何も出てこなかった。
既に体も感覚も無い自分が、ヒトとしての生きがいや意味など考えても仕方が無
い。
何故かそう思う様になっていた。
ただ一つ、望みをかなえてくれるならーーー
これからマチがどうなっていくのか、見守っていたいものだ。
『…………』
私は、意識を『ヒュー』の方に向けた。
『……………』
『ヒュー』はーーー無表情な様だが、少しだけ笑んだ様な気がした。
それは百年前、トランス時に私に見せたものと同様だった。
私は胸がーー既に胸の感覚は無いがーーー暖かくなるのを感じた。
『ヒュー』
また声がした。
目の前の少年が発した様には見えなかった。
あぁ、これがスキルの言っていた『ヒュー』の名の由来か、と思った。
それが、何を意味するのかは分からない。
だが、それでもーーー今はどうでも良かった。
そういう気分だった。
あのメールの送り主もーーー『ヒュー』だったのかもしれないし、そうでなかっ
たのかもしれない。もはやそれを知ってもどうなるものでもない。
『…………』
静かだった。
これから私は、何処へ行くのだろう。
その時、『ヒュー』はひゅるりと体を翻した。
『ーーーー!』
キィーーーーン!
それと同時に、私の体は光になって飛んだ。
『……………!』
やがて周りには私だけではなくーーー幾多の光が現れた。
私は他の無数の光と共に、何処かへと流れて行った。
『!!』
やがてその光は互いに交差し合い、ぶつかり合いーーーやがて一つになった。
私の中を、幾多のイメージが流れていく。
私だけのものでは無いーーーーこれは、今までこのソラに存在した全てのヒトた
ちのものだ、と私は思った。
あぁ、我々だけでは無かった。
それを知ることが出来ただけでも、生きてきた価値はある。
そしてふと思った。
そうか、ソダーはこれを見たのかーーー。
「ファントム」の奥底の空間とは、これか。
『ヒュー』も、これに関わっている。
だからこそ最後の瞬間、私はスキルと「ファントム」で繋がったのだ。
全ては、『ヒュー』がーーーー。
『!……そうか…………』
そして、突然私は分かった。
先程のイメージで感じられたもの。
マチを囲んでいる境界。
「ディスカバリー」にのし掛かっていた金網群。
あの時私に見えたのはーーーそれらが、マチを、守っている姿ではなかったか?
境界はーーー外界から、マチをずっと守っていた。
金網群もーーー次々に飛来する鉄骨から、緩衝材の様にマチを守る為に船体に取
り付いていたのではないか?
やはり、『ヒュー』はマチをーーーー!
『…………………』
私は満たされた気分だった。
今は、これでいい。
いずれ、皆に会えるのかもしれん。
この事実を、彼らも知る時が来るだろう。
それはとても楽しみだ。
私はそう思った。
( 続 )