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元最強軍人のおじいちゃんが、殺されるはずだったモブキャラに転生して乙女ゲームを拳無双をする!  作者: バナナ男さん
第七章【召喚の儀式編】

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206 気をつけろ

(ルーク)


「そういえば……オーティス様、今、私に『様』をつけませんでした?」


「?あぁ、精霊王と契約したリリス様は、もはや王族よりも身分は上だと、私は考えていますので。だから────……。」


オーティスがそう言った瞬間、リリスはプッ〜と頬を少しだけ膨らませる。


「『身分なんかなしに皆と仲良くなりたい。』、さっきオーティス様がそう言ってくれたではありませんか!

私も同じ気持ちです。だから『様』付けは禁止です!────あ、でもこれじゃあ、命令したみたいになっちゃうのかな……?」


困った様な顔をするリリスを見て、オーティスは小さく吹き出すと、そのままクスクスと笑い始めた。


「フッ……クククッ、リリス様はとてもおもしろい方ですね。

────では、お言葉に甘えていつも通りの態度にさせてもらおう。これから切磋琢磨する良きクラスメイトとして仲良くして欲しい。……リリス。」


「はい!これからよろしくお願いします!オーティス……様!」


「そこはオーティスと呼び捨てにはしてくれないのか?」


キラキラキラ〜!とまるでそこだけスポットライトが浴びている様に、光り輝いていて、その場面だけ切り抜いたら、まさに主人公とヒロインの名シーンの様だ。


そのやり取りをすごく冷めた目で見つめているセレンとアッシュを除けば……。


「……よくもまぁ、あれだけ腐った本性を隠せますね。感心します。気持ち悪い。」


「痛すぎてしんどいよ……。俺、自分のことじゃないのに恥ずかしくなったの初めて。」


酷い顔色で腕を擦っているセレンとアッシュに、俺はNO〜NO〜!と言わんばかりに首を横に振った。


「おいおい、アレも青春に入るぞ。(多分)

だから今から耐性をつけておけ。まぁ、とりあえず俺達も帰ろうぜ〜。」


『青春』と聞いて二人は揃って青ざめて『イヤイヤ!』と言わんばかりに首を横に振ったが、俺も同じく首を横に振り、『やるよ?』と答えてやる。

そしたら二人はフラッ……と倒れそうになっていたので、まとめて抱きとめて両手に抱えて部屋から出ようとすると、突然ボソッとある人物に話しかけられる。


「精霊王に攻撃するなんて……そんなこと不可能のはず。一体どうやって……?」


なんと話しかけてきたのは、今まで大人しく立っていたエヴァ王女様だった。

無感情で淡々とした声だったが、その瞳の奥に見えたのは恐怖。

細かく震えている手を押さえているのが見えたが、あえて見てみぬフリをする。


「どうやってって言われても……あぁ、もしかして精霊王ってお化けと同じみたいな感じだったりする?」


手で触ろうとしたらスカッと触れられない系のヤツ?

それを想像して尋ねてみたのだが、エヴァ王女様は汗をドッとかいた後、大きく息を吐きだした。


「……そもそも精霊王という神に等しい存在に攻撃するという概念自体おかしい。聖后様が庇ってくださらなければ、今直ぐ極刑でもおかしくなかった。アナタは何を考えているの?」


責めるような言い方の割に、エヴァ王女様からは他の皆の様な殺気や刺々しい感じは向けられず、最後の方はただ単純に不思議なことを尋ねる子供の様にも見えた。


「?なんでって……やったらやり返す。それが俺の『当たり前』だからだ。」


自分としては常識的なことを言っただけだが、エヴァは目を僅かに見開いた後、少しだけ怒りを滲ませてくる。


「……そう。それって良い事なのかしら?私には理解できないわ。」


吐き捨てる様にそういったエヴァ。

表情が乏しくて、何を考えてそれを言ったのか分からないが、俺はそれが可笑しくて大笑いした。


「それでいいじゃん!理解できないもので溢れているから、人生は楽しいんだから。

わかんねぇことを『知りたい』と思うことが全ての始まりだ。

人生ってのは、大いに悩み、苦しみ、でも楽しみながら沢山の分からねぇことに答えを出していくもんだ。若者よ。」


「…………。」


ナ〜ッハッハ!と更に高笑いをすると、エヴァは一瞬ポカンとした顔をした後、一瞬オーティスの方へ視線を向ける。

そしてオーティスがまだリリスと痛い痛いな名シーンを繰り広げているのを見て、俺に向かってボソボソと耳打ちをしてきた。


「……一つ忠告しておくわ。貴方の取った行動によって人生を狂わされる人間がいるかもしれない。

結局、一番傷つくのは……きっと貴方じゃない。

大事な人達がいるんでしょう?なら態度を直ぐに改めた方がいいわ。

貴方が思った以上に、王族や高位貴族達は厄介よ。」


「?ご忠告どうも。」


随分と真剣なご様子で忠告してくるものだから少し驚いたのだが、エヴァはオーティス達から視線を外し、俺の方を睨みつける。


「戦いは1人ではできない。何が起きたのかは知らないけど……ルストン様は貴方が思っている以上にお強くて非情なお方よ。味方も多い。

あまりよくない話も聞くから、とにかく気をつけなさい。……大事なモノを失わないように。」


「あぁ、分かった。」


俺の脳裏には、初心者コースの緩〜い拷問で『強い』とはかけ離れた姿を晒していたルストンが過ったが、余計なことは言わない。


っつーか、俺って今どんな立ち位置?

病弱だの、別々に暮らしていてワガママしているだの……なんかとんでもない噂になっててついていけないんだけど??


ちょっと詳しく聞きたかったが、エヴァはオーティスを気にしている様子だったので、空気を読んで聞くのをやめておいた。


この二人の関係性も分からないので、それに対しても聞けないしな……。

今度セブン辺りに聞いてみるか。


俺が黙ったからか、エヴァはもう興味を失ったかの様に俺から目を逸らしたので、俺も出口の方へ顔を向ける。

そして、そのまま部屋を後にしたのだが、俺は気が付かなかった。


去っていく俺の背中を見たオーティスの口元が、一瞬歪んでいたことを。


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