205 それぞれの想い
(ルーク)
────あ、なんか恨まれてる??
俺、デコピンちょっとしただけなのにぃ〜。
先が思いやられると、大きなため息をついていると、今度はミザリー先生が、さっきのエリオに負けず劣らずの目で俺を睨みつける。
「恐れ多くも精霊王様に手を上げましたね?────なんてことをしたのですか!リリス様がいなければ、世界が滅んでいたでしょう!
神を恐れぬ大罪人め!!本来ならばこの場での死罪が相応しい!!」
「えぇ〜……。だって最初に攻撃してきたのは、あの真っ白坊やだぜぇ〜?正当防衛じゃん。仕方なくね?」
はは〜ん?と耳を穿りながら、ミザリー先生の言い分に反論すると、今度はミザリー先生以外の人たちからも同種の視線を一斉に向けられた。
「精霊王は精霊神を守りし神の守護神。それに攻撃するなど前代未聞だ!これは国に対する反逆罪と見なされても仕方がないぞ!」
「精霊王様に……なんて罰当たりなっ。」
「国に対する裏切り行為だ!」
オーティスを始めとし、それはそれは烈火のごとく怒り狂っている皆を見て、どうしたもんかなと困っていると、突然リリスが俺達と皆の間に立つ。
「止めて下さい!確かにエリオ様に失礼なことをしたかもしれないけど……でも、皆で寄って集って責めるのは間違っています!」
「リ、リリス様……。」
「しかし────……。」
精霊王様の主となったリリスを前に、今まで熱くなっていた皆は一気にクールダウンしたようだ。
全員口を噤んで、ザワザワし始めた。
リリスはそんな皆に対し、ウルウルと目を潤ませながら必死に訴えかける。
「エリオ様はもう気にしていない様子でした。なら私達も許すべきです。
全ての者達に慈愛の心を……それが精霊神の教えなのですから!」
いやいや、真っ白坊やさん、最後俺を殺さんばかりに睨んでいたんだけど??
めちゃくちゃ気にしてるじゃ〜ん!
キラキラキラ〜!と光り輝きながら、絶対心にもないことを言っているリリスに呆れ果てたが、結果的に皆が大人しくなっていくので余計なことを口にするのは止めた。
すると、その中でもひときわオーティスが感極まった様子で、リリスに近づいていく。
「リリス様。貴方はなんと慈悲深いお人なのだろう。
精霊王様と契約したなど、未だかつて人が成し得なかった偉業を達成したというのに、驕り高ぶることもせず、あんなモノを庇うなんて……。」
「そ、そんな……私は慈悲深くなんて……。」
顎に手を当て、恥ずかしがるリリスに、オーティスは「なんて謙虚な方だ。」とまた大絶賛だ。
「…………。」
おおむねコレもゲームの原作通り。
ゲームの中のステータス表がなくとも、オーティスのリリスに対する好感度がバク上がりしているのが分かる。
それに周りも同様に……。
「リリス様。なんと心優しい女性なのでしょう。
流石は精霊王様と契約できたお方です。────とにかく、すぐにこのことを各所にお知らせしなければ……。
それでは本日はここまでにし、明日また召喚の続きをすることに致します。
……リリス様に免じて、目を瞑りますが次はないと思いなさい。反逆者め。」
ミザリー先生は、俺に対しそれはそれは冷たい目を向けた後、魔法解除を発動したのか、部屋は元通りの広さに戻った。
そして足早に他の教員達と共に部屋を出ていってしまったので、それに続く様に他の生徒達もポチポチと部屋から出ていく。
「まさか精霊王様が……。この目で見れる日がくるとは思わなかったよ。」
「こんな奇跡を起こすなんて、リリス様は精霊神に選ばれし真の聖女ですわ。私も直ぐにお父様とお母様にお伝えしなければ……。これから色々と騒がしくなりそうですわね。」
「このことが伝わったら教会の方も大変なことになりそうですね。真の聖女様の誕生は、国を上げての祝辞だ。なんて目出度い!」
そんな好意的なヒソヒソ話が聞こえたが……それは好意的なモノだけではなく、嫉妬や悪意に満ちた声も聞こえた。
「……あんなマナーも知らぬ元孤児が聖女?なんてことでしょう。私は認めませんわ。」
「あんな上品さの欠片もない様な方が……あり得ませんね。何かの間違いでは?」
「下層民が聖霊王と契約など……もしかして誘惑する様なスキルでもお持ちなのでは……?」
カミラを初めとした、特に貴族女性を中心にヒソヒソ、ボソボソと陰口が飛び交い、それがリリスの耳にも当然入る。
「あ……。」
リリスはウルッと目を潤ませ、必死に辛いのに耐える様な表情をした。
それを見たオーティスはリリスに近づき、気遣うように話しかける。
「リリス様。どうかお気になさらずに。貴方様は間違いなく精霊王に選ばれたのですから、堂々としていれば良いのです。……カミラめ。なんて無礼なことを。」
「オーティス様……ありがとうございます。でも、私は全然気にしておりません!だからカミラ様や他の皆様を悪く言わないで下さい。
私はこれから頑張って皆と仲良くなっていきたいと思っていますので。」
「リリス様……。」
健気にも潤んでいる目を擦って笑うリリスをオーティスは感動した様に見つめ、お互いの目と目が合った。
「……っフッ。」
「…………フフッ。」
すると次の瞬間、二人はクスクスと穏やかに笑い合いその場に優しい雰囲気が漂うと、突然リリスが何かに今気づいたかの様に『あっ!』と声を上げる。




