138 ごめん
(ルーク)
大丈夫大丈夫。
寧ろ、誰が敵で誰が中立か分かりやすくてよし!
「〜〜♬〜〜♬」
俺は鼻歌を歌いながらリングの上へと登ろうとしたのだが……突然俺の後ろに接近してくる人物が……。
「ガゼインはデバフ攻撃に関しては王都屈指の実力者よ。ただ強いだけでは勝てないわ。お気をつけなさい。」
「…………?」
チラッと視線だけで後ろを振り返ると、そこにいたのはエヴァ王女様。
どうやら、この陰謀渦巻く対戦を王女として心配はしてくれたらしい。
「あぁ、ありがとう。」
「…………。」
お礼を言っても無視して戻って行ってしまったが、それでもやはりエヴァは悪いヤツとは思えないと思った。
悪役令嬢……?
再びその事について疑問を感じながらリングの上に上がると、既に上がっていたガゼイン先生と対峙する形で足を止める。
すると、俺と真正面から目を合わせたガゼイン先生は、ニヤついた顔でまたペラペラと喋りだした。
「グリード家のルストン様は、同じ志を持ったお方で本当にとても素晴らしい男だよ。
ちゃんとこの世の中の状況をしっかりと理解し、その上でどうしていくのが正しいのかを常に考えている。」
「へぇ〜。」
「……今まで義務教育である小学院にすら通った事がないそうですねぇ〜。なんでも家で癇癪を起こすわ、使用人達に暴力を振るわで、色々とお忙しかった様で。
流石はあの悪名高いサラ様の御子息様ですよねぇ〜お体が弱いなんて嘘をついてまで!
ルストン様はこんなモノを庇って……優しすぎます。
ハァ……そもそも、フルート様が尽力して下さったお陰で、グリード家は立て直しができましたけど、そうでなかったら今頃はどうなっていたことか想像できます?
無理でしょうねぇ〜そんな恩人に酷い態度を取り続けていたアナタには!
凄いですよねぇ〜。ルストン様達は『自分たちの領地を一つ任せてみる事にした』とか言って最後までアナタを庇っていましたが、本当はアナタに酷い暴言と暴力をされ続けたライアー様とスティーブ様を逃がすためでしょう?
あぁっ!なんて非道な事をするのでしょうね!私は心の底から悲しい!」
「ほほ〜ぅ。」
とりあえずエヴァとオーティスの方が気になり、そちらに意識を向けながら話を聞いていたが、その聞き方に問題があった様だ。
ガゼイン先生の額には蠢く青ミミズの様な血管が広く走っていく。
「……人の話もまともに聞けないなんて、もう獣と同じですねぇ〜?
まぁ、一つも反論できないから、わざとそんな挑発行為をしているという事ですか?
本当に人を不快にさせる天才ですよねぇ〜。いい加減その癇に障る態度を改めろよ、クソガキが。」
「ん?あ〜すまんすまん。ちょっと王族の戦い方に興味があってな。」
王族にはその血筋故、強力な力があると聞く。
その設定はゲーム上でももちろんあったが……ただ、ロックされている情報部分が多く、詳細は不明だった。
一応ストーリー進行と共に、それが順々に外れると思っていたのだが……そんな兆しは一切なく、最後までロックされたまま。
もしかして、二周目でその謎が明らかにされるはずだったのかもしれない。
「そう考えると、血筋って思った以上に力を持っているモノ……?」
悶々と思い出している俺を見て、ガゼインは相手にされていないと思い大噴火してしまった。
「ふざけるなよっ!!俺はお前より格上の存在だぞ!!お前はグリード家を潰そうとした反逆者だと聞いている!!
だから学院内の教員達は全員、お前を警戒しているんだ、そんな事も分からないのか?!
何か言ったらどうですか?全部言い訳でしょうけど!」
怒りに任せ怒鳴り散らしたガゼイン先生は、周りにいる試験官達を紹介するように、両手を横に伸ばして手のひらを上に向ける。
まるで自分が正義の真ん中にいるかの様に、満足げに笑うガゼイン先生を見て────俺は吹き出してしまった。
「……何に笑っているんですか?恐怖で……。」
「ブハッっ!!wwハッ……ハッ……ハハハッ!!wwや、止めろって!これ以上は……っwww中2っ!中2の病気〜っwww」
中2病を知らないためか、一瞬ポカンとしていたが、『病気』の部分でバカにされている事に気付いたらしい。
額を走っていた血管が、下へと下がり頬や顎にまで到達していたから。
「……いいでしょう。お前みたいな犯罪者を入学させないのも教員の大事な務めなので……もう表舞台に立とうなんて考えられないくらい痛い目に合わせてやるよ、家族相手にしかイキれないクソガキが。」
「ハハッ。ちょっとは広い視野と心を持たねぇと駄目だぞ?もう新人にしちゃ〜歳取りすぎてるんだからよ。
ちょっとだけ広い世界ってヤツを見せてやるから全力でかかってこい。えっ〜と……《《カフェイン先生》》?」
この後、セブン達にお土産を買って帰ろう。
そう思っていたのが悪かったのか、お土産候補ナンバーワンのコーヒーを思い出したら名前を間違えてしまった。
「────あ、ごめん。」
謝ったが、時既に遅し。
ガゼイン先生は二度目の大爆発を起こした。




