134 クズ野郎です
(ルーク)
「全く〜……。喉元すぎればなんとやら、アイツらどうしようもないクソガキ共だな。」
またボコボコにすっぞ?と脅しを込めて握った拳を見せてやろうと思ったが、それより前に試験官の声が割って入ってきた。
「次!第八グループ!ライアー様とセレン!第一ステージへ!」
「おっ!」
なんとあの悪ガキ代表ライアーと我がパーティーきっての特攻隊長、セレン嬢に対決だ。
その瞬間、ひゃっほーい!とテンション高く飛び上がり、セレンの方を振り向くと、それはそれはモブでもヒロイン枠にもなれなさそうな悪人面で笑っている!
「ちょうど良かった。────ルークに対してしてきた所業の数々……生まれてきた事を後悔させてやる。」
「…………。」
真顔で黙る俺の前で、セレンは真っ直ぐライアーを睨みつけながら、ザッ!ザッ!と気迫満々な様子でリングへ上がっていった。
「アイツやる気満々だな……。」
「雪が降ると馬鹿みたいにはしゃぐ犬と一緒でしょ。勝手に遊ばせてあげればいいよ。
どうせ止まんないだろうし。」
「犬……。」
悪態をついて『へっ!』と鼻を鳴らすアッシュ。
確かに昔飼っていたドーベルマンは、雪の日には我先に飛び出し、雪に向かって口をパクパさせてり、飛び回って雪を体に擦り付けたりして大はしゃぎだった。
ホワワ〜ンと愛犬との日々に思いを馳せている間、対峙したセレンとライアーは、お互い睨み合う。
「ふん、女の分際で前衛型か。武器はレイピア……だろうな、女の腕力じゃあ、剣は重くて使えないもんな?戦う前に降伏する事を勧める。」
「…………。」
セレン完璧無視。
そのせいでライアーの額には青筋が走った。
「どうせさっきの基礎能力の試験は不正でもしたんだろ?
もしかして女の武器でも使ったんじゃねぇの?あ〜いいよな、女は!
頑張らなくてもさ、そうやって人生イージーモードだもんな。」
「…………。」
これも無視。
ライアーは更に青筋を増やし、今度は俺の方を指さし語尾を強めて言った。
「あんなインチキクズ野郎に雇われる時点で、お前もそれと同類って事だ!
────で?いくらで雇われてるんだ?どうせ連れて歩く用に雇われたんだろう?
まぁ、どうしてもっていうなら、俺が雇ってやっても────……。」
「ルークは────。」
セレンはライアーの言葉を遮り、レイピアの柄に手を触れる。
「世界一尊敬できる素晴らしい男だ。
そんなルークは言っていた。『自分が絶対に当てはまらない事で相手を叩くヤツは碌でもないクズ野郎だ』と。
男が女のくせにとか言うのは、その定番だとも言っていた。
辛い努力はしたくない、だがクソみたいなプライドで負けたくないから1番楽なその行動を選ぶ。
お前がまさにそれだな?心底情けない男だ。
いいからさっさと掛かってこい、このクズ野郎。」
「────っ〜……〜〜っ……!!」
ブチブチブチ〜!!!
ライアーの青筋がブチギレる音がしたのと同時に、剣を抜きそのままセレンに向かい剣を振り下ろした。
しかしセレンはそれをスルッと避けて、レイピアを鞘ごと抜くと、ライアーの顔に叩き込む。
「────へっぎゃ……っ??」
ライアーの顔にレイピアの鞘がめり込み、イケメンなど見る影もなく顔が大きく歪むと、ライアーからは変な悲鳴が上がった。
めり込んだ場所からメキメキと骨が折れる様な音がする中、セレンは不敵に笑う。
「二度とルークの悪口を言うなよ?分かったか、雑魚男が。」
そのままセレンはレイピアを振り切った。
するとそのせいでライアーは大きく吹っ飛び、遥か遠くにあった建物の壁に叩きつけられると、そのまま崩れ落ちてしまう。
「……な……あ……あ……。」
「な……なんなん……?……はっ??」
「えっ……?何……?何……?」
あまりに一瞬で勝負がついてしまったせいか、気がつけばライアーが吹っ飛んでいったとしか見えなかった受験生達が多かった様だ。
ポカンと口を開けてレイピアについた埃を払っているセレンを見つめていた。
そんな中、ドーベルマンとの楽しい思い出に浸っていた俺、気がつけば勝負がついていてビビる。
「おっ??あ、セレンが勝った?────当然当然!」
絶対に負ける事はない事を知っていたので驚きもせず拍手で迎えると、セレンは胸に手を当て軽く頭を下げた。
「ルークの凄さを教えてやった。ついでにルークに教えてもらった事も言ってやりましたが、あの頭の悪さだと理解できてないでしょう。」
「そうかそうか。まぁ、世の中には色んな考えがな〜あるから!だから理解しあえない事が沢山あってだな〜……。」
くどくどと、面倒くさい老害おじいちゃんの様な説教混じりの話をセレンはちゃんと聞いてくれる。
しかし隣でアッシュが「……あんまりコイツに変なこと教えない方がいいよ。」と言って水を差してきた。
いいじゃん、いいじゃん!
歳を取ると、誰も話聞いてくれないから嬉しいんだって!
ルンルンと上機嫌で自論を語っている間、吹っ飛んでいったライアーが回収され、次の模擬戦がスタートした。
「では、次……スティーブ様とアッシュ……。」
試験官からは覇気がないというか、ちょっと怯えている様にも見える様子で、アッシュの名を呼ぶ。
「おっ?アッシュ君の番じゃ〜ん。頑張れよ。」
「……負けろ、スポンジ男。」




