133 模擬戦スタート
(ルーク)
「確かに、さっきの魔法の試験の時、0点だったもんね……。」
「前に試験した二人の攻撃が凄すぎて、それで既にヒビが入っていたって事か。
それを触っただけでひとりでに壊れたって感じ?」
「なんだ、じゃあ、そんなに大したことないんじゃない?
今の風ももしかして、あの二人がこっそり魔法使ったんじゃない?」
ザワザワと好き勝手噂する受験生達。
なんかもっと酷い事になってる!
セレンとアッシュの間に立って物理的な距離を取らせながら、ショックで肩を落とす。
輝かしい青春が、どんどんと遠ざかっている……。
あまり好意的ではない視線を向けられていたが、その中で試験官や他一部の受験生達の目は────恐怖が入り混じったままであった。
◇◇
「────では、大幅に予定時刻を過ぎてしまったが、これより最終試験、受験生同士の模擬戦を行う。
これは一対一で戦ってもらうんだが、別に勝敗は気にしなくてもいい。
要はこの戦いで自分の実力を出して戦い、その実力が一定以上ならば合格するというわけだ。
そうそう、例えその戦いで死んでしまっても再生魔法のお陰で一度は生き返れるから遠慮はいらない。
思う存分戦う様に。」
だいぶ時間が経った頃、試験官が次の試験の説明をし始めたので、それを聞きながら自分の手に装着されている再生リングを見つめる。
前世でもこれと同じ様なモノがあって、それは科学を用いて開発されたモノだった。
原理的には、ナノミクロンサイズの医療遺伝子ロボと呼ばれる細胞再生を行ってくれるロボットが、瀕死の際皮膚に縫い付けられている腕輪から発射されるというもの。
だが、残念ながらその作用からも安全なモノではなく、俺達の様に子供の頃から毒物や肉体強化改造された者達にしか使えず、どんどん衰退してやがてなくなってしまった過去の遺物だが……。
「そう考えると、魔法の方が安全かつ便利だよな〜。」
過去を懐かしみ指輪をスリスリ撫でていると、試験官の説明は終わり、早速対戦する受験生達の名前が呼ばれ始めた。
今度の戦いは人数の関係上、3つのリングを使うらしく、それぞれのリングに十数人もの試験官がつき、点数をジャッジする様だ。
真剣な眼差しで試験を受ける受験生達を見守る。
「では、第一グループ始め!」
試験官の開始の合図により、試験が始まり、最初から激しい剣や魔法の戦闘が始まった。
それぞれがそれぞれの得意分野を活かし、相手に仕掛けたり防いだりする様は、凄いの一言で、思わず拳を握るシーンもある。
「こりゃ凄い!全員中々やるじゃないか。」
「私も少し侮っていました。てっきりお金にモノを言わせて入学するヤツらが多いかと……。」
セレンが複雑そうな顔をしていたが、それは無理もない。
基本この聖グランド学院に通う生徒の半数以上が貴族で、貴族の中にはそういった過激な方法を使おうとする奴らも結構いるからだ。
そのせいで、大体の平民は貴族というモノに対し、不快感や猜疑感がある。
そして、そんな過激な貴族が多いのは、この国で1番勢いがある派閥の存在が大きい。
「……ライン王子様か。」
頭に浮かぶのは、ゲーム内でまさに悪役に相応しい行動を起こし続ける第一王子、ラインだ。
更にコイツの周りを固める陣営にも面倒くさいヤツらが多く、ラインルートを選ばない場合、かなり強引な手で色々と邪魔をしてくる。
王族や高位貴族を優遇し過ぎて、精霊神を信仰する教会ともあまり仲良くないというか……お互いの主張が噛み合ってないから、こっちはこっちでパチパチしていた。
今にして思えばただのキラキライケメンと恋愛、イチャイチャ〜♬な乙女ゲームにしては、妙に政治設定が懲りすぎてて、変だったかもな?
ゲームクリアーだけに目を向けていたため、やはりそこまで詳しくは覚えていないが、それぞれのキャラ達の行動全てが、そんな政治設定に基づいたものだったりで、意外にご都合主義は見られなかった気がする。
だからこそアホみたいな難易度だったというわけだ。
色々と考えている間にも、試験は続き……知っている顔もチラホラ現れ始める。
「勝者サミュエル!試験タイム、5分25秒!」
鮮やかな動きで相手受験生を倒したサミュエルに、おお〜……と関心の声が上がると、サミュエルは顎を上に上げて偉そうに鼻を鳴らした。
「フッ、この程度、大したことはない。貴族として実力を磨く事は、何よりも優先すべき事だからな。
まぁ、どっかのエセ貴族様の中には、自分のお付きの者達にお膳立てされて気が大きくなっていいるいる者もいるみたいだがな。」
心底軽蔑している様な目を俺に向けて挑発してくるサミュエル。
それに便乗する様に、なにやら俺の試験結果に不満を持ってしまった層のヤツらが、ヒソヒソとこれ見よがしに悪口を言う。
「確かに、さっきのは……ねぇ?」
「頑張っているのがアホらしくなるよ。それに多分あの人、社交界でも見たことないし……妾の子じゃないのか?」
「グリード家って、当主様も奥様のフルート様もお綺麗ですものね。
愛人の子なら納得ですわ。」
「もしかしたら、愛人の子ではなく前妻様のお子では……?
確か、グリード家の財産を好き放題散財する悪女であったと父から聞いた事があります。」
散々な言われように、汗を掻いていると、それが耳に入ったライアーとスティーブは顔を大きく歪めて笑う。
周りは自分たちの味方。
お前に見方はいないんだぞと、随分といい気分になっている様だ。




