132 私がやった
(ルーク)
好戦的少年、サミュエル君。
いいねいいね!これぞ、青春って感じじゃね?
俺はクククッ〜!と悪い顔で笑い、それにたじろぐサミュエルに向かって指を指した。
「いいからそこで黙って見てろ!世の中には上には上がいるということを思い知らせてやんよ、ドラ猫少年。」
「……は?ド、ドラ猫……??」
自分に向かって放たれた言葉を受け入れられなかったのか、呆けてしまったサミュエル。
取り巻き達に睨まれたがそれも鼻で笑ってやると、一気に険悪なムードへと突入した。
ちなみに、俺の物理的な強さを嫌という程経験しているライアーとスティーブは不自然な程静かだ。
王族二人組に至っては、見る価値なしとでも言いたげな様子で視線は違う場所を向いている。
「────では、始め!」
そんなアウェイ半端ない状態で始まった俺の試験。
拳を握ると、これから始まるワクワクの青春ってヤツを想い、胸は高鳴る。
今まで一度として経験したことがない青春ってやつ。
俺はそれを経験してみたい。
これから一体何が起こるのか、凄く楽しみだ。
フンフ〜ン♬と鼻歌を歌いながら、準備運動でハイッ!と拳を前に軽〜く突き出すと────……。
────ドドドドドドッ!!!!!
凄まじい爆音と共に、俺の拳が指す方向、人型人形へ向かい真っ直ぐに抉れた道ができる。
「なっ……なぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
リングの上にいた試験官はその衝撃でふっとばされて、はるか彼方へ。
そして前列にいた受験生達も皆吹っ飛んでいく。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ほぎゃぁぁぁぁぁぁ────!!!」
会場獣が悲鳴で溢れる中、俺の放った衝撃波はリングを大きく削り、人型人形の的へ。
そして的をアッサリ破壊した後は、その後方へと進み……そのまま学院に張られていた結界を破壊してやっと止まった。
…………シーン……。
瓦礫と化したリングと、大穴が空いた人型魔道具から欠片がポロポロと落ちる音だけが聞こえる中、まさかこんなちょっとで壊れると思ってなかった俺、ビビる。
しかし、とりあえずやってしまったものは仕方がないと、開き直って拳に息を吐きかける。
「ナ……ナ〜ッハッハッハ〜!!ざっとこんなもんよ!見たか!俺の実力を────……。」
俺がクルッと受験生達がいる場所を振り返ると、そこにいたのはアッシュとセレン、そして何とか踏ん張れた数人の受験生達だ。
『やり過ぎ〜。』と言わんばかりに首を振るアッシュと、キラキラ目を輝かせているセレンの他は、床に這いつくばってしがみついているライアーとスティーブ、それにサミュエル君。
そして、少し離れた所には、エヴァが張ったらしい結界の中で膝をついている王族二人組の姿があった。
他にもチラホラと、それぞれのスキルらしきモノで耐えている者達もいる様だが、セレンとアッシュを除いた者達からは、一斉に恐怖に似た感情が籠もった目を向けられる。
「あり得ないわ……。」
ボソッと呟いたのは、エヴァ王女様で、そのまま俺が大穴を開けた人型魔道具を指差した。
「純度100%の<絶体石>をスキルも魔法もなしで砕くなんて……。
アナタ……何者なの……?」
エヴァが恐怖に滲んだ目で俺を見てきたので、俺はどうしようかと悩んでしまった。
俺の予想では『凄〜い!強〜い!』『お前がナンバーワンだ!』『ルーク万歳!友達になりたいな〜!』……っていう反応を期待していたんだが……。
チラッと周りを見れば、慌てて逸らされる視線に────自分が失敗したんだと気づく。
まさか、あんなに柔らかいモノだとは思わなかった。
恐怖、恐怖、恐怖!な視線を受けながら、どうしようか考えて────……俺はセレンとアッシュを指さした。
「……なんか、アイツらが壊していたみたい。もう既にヒビが入っていた。俺はそれを軽く突いただけ。いや〜ビックリしたビックリした〜。」
「────っ!?}
「……ハァ?アンタ何言って────。」
ビックリした顔をするセレンと、ため息をつきながら何かを喋ろうとするアッシュ。
俺はすかさずリングの上から飛び降り、アッシュの背中に飛び乗ると、そのまま口を塞いだ。
「馬鹿野郎!見ろよ、皆の顔!こんなに怖がられちゃ、青春が送れなくなる!
これはもっと手加減しつつ1番にならないと、俺が悪の帝王みたいになっちゃうだろう?」
「…………。」
小さな声で必死に訴える俺を、アッシュは嫌だと言わんばかりにジトッ〜とした目で睨む。
しかしそれとは逆にセレンは心得たと言わんばかりに頷くと、コチラを見ている皆に向かって指を差した。
「そういう事だ!私とこのスポンジ男が全部やった。
ルークはいつもこうやって私達の後に色々やって、良い成績を残している!
ルークは凄くないし、悪くない。
いつも悪いのは、このスポンジ男だ。悪口は全てこのスポンジ男に────。」
そこら辺でアッシュがセレンのおでこをスパンッ!と叩き、また取っ組み合いが始まる。
ちょっとちょっと……セレン、その言い方だと俺、部下の上前をはねる最低上司だからな?
そのせいか、皆の視線は恐怖から軽蔑したモノへと変わっていった。




