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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第三部】 第一章 恋と共に
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第3話 勇気を分けてあげる

なんと、ラキの行動はずっと見られていたようです。

突如体を乗っ取られ、自由を奪われていたナナは、彼女に対し一体何を思うのでしょうか。

そして、陰ながら手助けをしていたラキは……。


勇気を分けてあげる


どうぞ。

「なな、なんで私の中に——ナナちゃんの声がぁ⁉︎」


 ナナの体を借りていたラキは、思わず両耳を押さえた。


 だが、頭の奥から響いてくるお嬢様口調は、そんなことで遮られない。


(違いますわ! これは元々私の体。以前にもこういうことがありましたが、一体どういうおつもりなんですの⁉︎)


「あ、()()()も……バレてたの……⁉︎」


 それは、ラキにとって衝撃の事実だった。


 この国へ来る前にも、一度彼女へ憑依したことがある。

 誰にも気づかれず支えていたつもりだったが——どうやら全て見られていたらしい。


 まずいと思ったラキは、慌てて体を離れようとする。


「い、今出て行くからぁ!」


 しかし——。


(お待ちになって!)


 ナナはそれを呼び止めた。


「うっ……!」


 頭の奥へ直接響く声に、ラキは思わず体をを止める。


 そして——。


「……うう、ごめんなさい」


 ナナの小さい肩をすとんと落とした。

 まるで、いたずらが見つかってしまった子供のように。


 しばらく沈黙が流れた後、内側にいたナナが静かに問いかける。


(——あなたは、一体何者なのですか?)


 それは、不安と好奇心が入り混じった少女の声。


 ナナには悪いと思ったが、素性を明かすべきではない。

 そう考えたラキは、言葉を詰まらせていた。


「わ、私は……」


(正直に、お答えくださいませ!)


 だが、さらに追及されたラキは、再び追い詰められる。


 そして——もうどうにでもなれと、近くに転がっていた言葉を拾い上げた。


「私の正体は——幸運の女神様なのです!」


(幸運の女神……⁉︎)


 どこかで聞いたことのあるような紹介文句。


(……)


「あはは……」


 再び沈黙が訪れる。


 やはり無理があったかと、ラキは胸をどきどきさせながら返事を待っていた。


 しかし——。


(……わかりました。信じます)


「えっ!」


 返ってきたのは、あまりにもあっさりとした答え。

 子供騙しにもならない言い訳だと思っていたが、彼女は思わず胸を撫で下ろす。


 すると。


(——過去にも、あなたは私たちを助けてくださいました)


 ナナは静かに語り始めた。


 ——ルキと出会ったあの街。

 彼女と共に戦ったあの日の記憶が、()()にラキの脳裏へと蘇る。


(あの時も同じように、あなたは私に乗り移りました——悪い方ではないことは、よくわかります)


「……ナナちゃん」


 弟を助けるため。

 そして、ナナを助けるため。


 あの時取った行動は、今も彼女の中に確かに残っていた。


 ——しかし。

 

(そんなことより……)


 感傷に浸るラキとはよそに、ナナには深く懸念していることがあった。

 

(ルキ様を屋敷にお招きするなんて——なんであんなこと言ったんですかぁ⁉︎)


「——ひぃ!」


 体いっぱいに、叫びが広がる。

 さらにその胸は、何かがつっかえているように重くなっていた。


「お、お、落ち着いて! ナナちゃん——」

 

(私、お客様にお出しする料理なんて……)


 体の内側へと、必死に訴えかけるラキ。


 道行く人に白い目を向けられながらも、彼女は握った拳を高らかにあげる。


「大丈夫よ! 私がいる!」


 そして、その手をドンと胸に当てた。


「幸運の女神様にとって、料理なんてお茶の子再々なんだから!」


 不安だらけの背中を押すラキだったが、それでも響く彼女のため息。


(そうは言いましても……)


 本当に、うまくいくだろうか……。

 

 今日の一日を過ごしたナナには、そんな不安ばかりが渦巻いていた。


 ——すると。


 ラキは()()の左手を掬い上げ、そっと胸に押し当てる。


「下を向いちゃダメ! ルキと出会ったあの日から、二人は運命の糸で結ばれてるんだから」


(運命……!)


 その素敵な二文字に、ナナの胸は大きく弾む。


 この国へ来るまで、彼女は屋敷の中だけの狭い世界で生きてきた。

 だが、そんな孤独に閉ざされていた世界に、光が差し込んだあの日を、今でも覚えている。


 その光こそが、少年ルキ。

 ナナの全てを変えたとも言える運命の出会いだった。


 そして、胸の高鳴りを見逃さなかったラキは、後押しするように言葉を続ける。


「想い合ってる二人を、私はちゃんと見てた——後は、“勇気”を出すだけよ!」


(勇気……ですか)


 その言葉に、ナナの心が再び揺れる。


 それが——今の自分に、一番足りていないものだと、彼女自身わかっていたからだ。


 すると——。


「心配しないで! この私が——勇気を分けてあげるから!」


 次の瞬間。

 胸の奥が、ぽかぽかと温かくなった。


 優しくて、それでいて不思議と背中を押してくれるような温もり。


 これが、“勇気”なのだろうか。


 答えはわからない。


 それでも、その熱は確かに——ナナの心を前へ進ませていた。

 

(ありがとうございます……でも私、こんなに恵まれてよろしいのでしょうか?)


「いーのいーの! ナナちゃんには、いつも世話になってるんだから!」


 感謝と戸惑いを抱きながら、ナナは思う。


 突然現れ、自分に勇気を与え、何もかも後押ししてくれる——この不思議な人格は、一体何者なのだろうかと。


 だが——。


「じゃあ今度の休日、正午にね——!」


 “幸運の女神”を名乗るその存在は、別れの言葉だけを残し——ふっと、その体から抜け出していった。


「あっ……!」


 自由を取り戻したナナは、思わず空へ向かって手を伸ばす。


「——お待ちになって!」

 

 しかし、そこにはもう、誰の姿もない。


 冷ややかな視線も。

 背中を押してくれた温もりも。


 ただ、沈みゆく夕陽だけが、街を赤く照らしていた。


「い、いけませんわ! もうこんな時間——」


 やがて、彼女の足は動き出す。


 ——愛しの彼との今日のデートは、決して上手くいったとは言えない。


 それでも——幸運の女神がくれた“勇気”によって、彼との運命の糸は、再び繋がった。


「次こそは、楽しみにしていてくださいね——ルキ様!」


 三番街を駆け抜け、屋敷へと帰っていくナナ。

 次の休日へ向かうその足取りは、まるで踊るように軽やかになっていた。

幸運の女神を名乗りその場を乗り切ったラキ。

なんと彼女との協力関係にまで漕ぎ着けました。


勇気と運命を携えたナナの恋の行方は⁉︎


お次は火曜日!

お楽しみに!

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