表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第四章 力と共に
90/95

第49話 亡き友の為に

戦いは終わりました。

あとは帰るだけ。

しかし、彼らの決断は……。


亡き友の為に


どうぞ。

 太陽が昇っていく中、だんだんと大きくなっていく気配を頼りに、俺はゆっくりと体を進めていった。


 今朝は、俺のエギルを感知され、マルクの追跡を許してしまった。

 後ろばかりを確認していたのは、その警戒のためだ。

 やがて——。


(——やっと、追いついた)


 背後に、帝国兵の気配はない。

 彼の背中を見つけ、ようやく安堵の息を漏らしていた。


(おーい! マルクぅ!)


 肩をぴくりと反応させ、すぐに振り向くマルク。

 聞き覚えのある声に、彼の表情も自然と綻んだ。


「よかった、君だったのか——奴らは?」


(ああ、ばっちりまいてきた。それより——)


 俺は、彼の背にしがみつくエギルへと視線を向けた。


『——ふぅ』


 疲れ切った様子で、こちらを見るなり微笑むマリラ。


(……本当に助かったよ、マリラ——もうゆっくり休んでくれ)


 その言葉と共に、マルクの背中から、癒しの戦士は静かに姿を消していく。


 感謝をしてもしきれないよ……ありがとうな——。


「ふっ、道中妙に体が軽かったよ——」


 穏やかに笑っていたマルクだったが、不意に何かを確かめるようにこちらへ目を向けた。


 そして——。


「君の周りには、いつも誰かがいるのか?」


 彼の言葉に一瞬だけ息を呑んだが、俺は察していた。


(……やっぱり、気づいてたか)


 度重なる不可解な癒しの力。


 さらに、あの時——謎の光を巡って繰り広げられていた、デノイルとの不可解な攻防。


 流石のマルクも、俺以外の“誰か”の存在に、薄々気づいていたのだろう。


「一体、誰なんだ?」


(それは……)


 俺は言葉を詰まらせる。


 ——本当は伝えたかった。


 想いを残した人間が、死んでもなお、誰かを支え続けていることを。


 だけど——。

 彼らの声は、生者には届かない。


 だからこそ——想いそのものである彼らの正体を、俺が簡単に明かしていいとは思えなかった。


 想いってのは、本人が直接伝えるべきだと、俺は思う。


 それに、幽霊が見えるなんてやつ、誰も信じないだろう……。


(……)


 しばらく、沈黙が続いていると。


「——かまわないよ」


 彼は深く詮索することなく、ただ静かに受け入れてくれた。


「話せないのなら、それもいい——」


(マルク……)


 ……本当に、いいやつだ。


 一緒にいると、不思議と安心する。

 だからみんなも、この俺さえも、彼に惹きつけられるのだろう。


「だが、感謝はしている——君からもよろしく伝えておいてくれ」


 見えない英雄(マリラ)へ、マルクは感謝を口にした。


(ああ……君には、いつかちゃんと話すよ)


 ()()()()()その背中へ、俺もまた、静かに感謝を返す。


 そして——。


(さあ、みんなの元へ帰ろう)


「……ああ」


 振り返るマルクは、どこか切なげに空を見上げていたが——やがて、踵を返した俺たちはその場を後にする。


 ——ようやく、俺の任務は完了した。

 これで彼女(ルミナ)との約束も、無事に果たせる。


 再びあの笑顔を見られると思うと、俺もマルクも、胸の奥が同じ安堵で満たされていた。


* * *


 それから丸一日。


 互いの視界を頼りに、妖魔との戦闘を避け、俺たちは順調に南下を続けていた。


 そして、辿り着いたのは、とある川沿いの分かれ道——。


「この川を西に下れば……僕たちの、故国があるのか」


(……それなら、こっちのギルバディアの方へ向かおう)


 穏やかな水流を背に、俺は仲間が待つ国への道を促す。


 ——だが、彼の足は、そこから動こうとしなかった。


(マルク? 一体どうしたんだ?)


 何かを思い返すように、川下をじっと見つめている。

 やがて、彼はゆっくりと口を開いた。


「僕はこのまま——西へ向かうよ」


 それは、滅びた国への帰国宣言。


(な、何言ってんだ⁉︎)


 俺は思わず声を荒げ、彼の前へと身を乗り出した。


(今アリヴェルに戻る理由はない——ルミナもルキも、ギルバディアで待ってるんだ!)


 道を塞ぐように必死に訴えるが——故郷へ向いた彼の足が、迷うことはなかった。


 すると、振り返ったマルクは、風になびく青髪を押さえながら静かに呟く。


「これは、ガンツの“想い”だ」


(……あいつの?)


 彼の背には、帝都に散った仲間の死が、重くのしかかっていた。


「彼は最後まで、フラッツのことを気にかけていた——」


 そして、思い出すのは、最後に託された“弟を頼む”といった言葉。


「きっと……死んでも死にきれなかったと思う」


(それは……)


 今は亡きガンツの心中を察するマルク。

 すべては彼の言う通りだった。


 俺があいつを呼び戻せたのも、間違いなくその想いが残っていたからに他ならない。


「それに、僕を救うために、彼は裏切り者の汚名までかぶった——」


 マルクの命は、彼の力によって繋げられたもの。

 今の彼には、その義理を捨て置くなんてことはできなかった。


(そうか……)


 納得するには、十分すぎる理由。

 きっと彼は、アリヴェルを目指すことなど、初めから決意してたのだろう。

 

(止まる気は、ないんだな?)


 落ち着いた様子を見せる俺に、マルクは微笑む。

 ——すると、彼はふと、こちらへ視線を向けた。


()()を知る君なら、彼の想いもわかっていたんじゃないか?」


(……っ⁉︎)


 ……物語か。

 これは一本取られたな——。


(ああ——その通りだよ)


 ガンツのことなら、もちろん知っている。


 強くて、豪快で、喧嘩っ早い。

 だけど、不器用なくせに誰よりも情に厚くて、最後には誰かのために体を張ってしまう。


 そんな男だ。


 ——いや。

 そんな“兄貴”として俺が描いたんだ。


 理想の兄とは何か。

 そんな憧れを詰め込んで生み出した、兄貴の鏡。


 それが——弟想いのガンツだった。


 思い出したよ……。


「——亡き()の為、僕は行かなければならない」


(……わかった——もう止めないよ)


 彼の意思を引き継いだマルクの言葉を、俺はようやく飲み込んだ。

 あいつ(ガンツ)の心を思い出してしまった以上、もう止めることなんてできない。


「それから——」


 すると、マルクは少し困ったように眉を顰めた。


「すまないが——ルミナとルキ。二人にはうまく伝えといてくれないか?」


(仕方がないな——それは、俺がなんとかするよ)


 彼を連れ戻すつもりで来たが、既に根負けしていた俺は、すぐにそれを引き受けた。


 ——お互いに、新たな目的を胸に刻む俺とマルク。

 やっと会えた仲間との早速の別れだったが、俺は肝心なことを思い出した。


(——あ、マルク! 伝言がある)


「伝言……二人からかい?」


 立ち去ろうとする孤独な背中が止まる。


(絶対にいつか帰ってこい——二人とも、そう言ってたぞ)


 それは——たった一言のたわいもない言葉。


 伝えたいことはたくさんあったはず。

 だが彼らは、”直接伝えたい”と、そう言った。


 この伝言は、彼らのそんな想いが詰まっている。

 

 ——時間はかかってしまったが、俺はやっと、自分の役目を終えることができた。


「僕は必ず帰るよ。二人は、誰よりも大切な人だからね——じゃあ」


 やがて、仲間の想いを受け取ったマルクは、笑顔のまま別れの時を迎える。


(じゃあな——もう捕まんじゃねーぞ!)


 遠ざかっていく背中へ、俺もまた、言葉だけを返した。


 この時、もし体があったなら。

 俺もきっと——笑っていたと思う。

すみません。

個人的に自己主張度の高い、意味がわからない回となったと思います。

私の心と会話をし、かなり時間のかかった回です。

それだけに思い出深くなるでしょう。

いつか皆様と答え合わせができればなと、儚い夢を抱くばかりです。


てなわけで!

次回は第二部最終回!

だだ転第三部に向けての始まりとも言える回になります!

最後までどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


火曜日にお送りします〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ