表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第四章 力と共に
83/84

第42話 日頃の行い

前回に続きカガミパートが、真ん中に入ります。

マリラの助けを借りたガンツ。

一体どうなるのでしょう。


日頃の行い


どうぞ。

「グググ……こんのでくのぼうがぁ……!」


 妖魔の力で肉体の再生を図るシュダ。

 

 蘇る剛剣の脅威に、思わず攻撃の手を止める帝国兵達だったが——すぐに冷徹な一刺しが入れられる。


「何をやっている無能共……! ()()の間を与えるな——」


 ガンツに施される治癒の光が、デノイルには見えていた。


「へっへ。なんだか知らねーが、これも日頃の行いってやつだな……!」


『もうっ! 自分で言うかしら——』


 マリラが漏らすため息にも気づかず、当の本人は鼻高らかに言い放つ。

 やがて。


「今度はこっちから行くぜぇ!」


 大剣を振り上げ、自ら敵陣へと飛び込むガンツ。

 癒しの衣を纏った剛剣は、ついに攻めへと転じた。


* * *


 その頃、俺は足取りの重いマルクの前を舞うように飛び、唯一の逃げ道である地下水路へと導いていた。


(マルク! こっちだ。もうすぐ見えるはずだ——)


「ああ。だが……本当に間違いないのか?」


 迷うことのない案内に疑問を持ちながらも、彼は声のする方へと歩を進めていく。


 ——俺には、進めば進むほどにこの地下の景色を鮮明に思い出すことができた。

 

 なぜなら俺は、ここに来たことがある。


 マルクがいた地下牢も、水路までの道のりも——全てはその時に見た。


(確か——あの先だ……!)


 一足先に曲がり角を抜ける。

 やがて、それに追いついた青髪が、赤い光に包まれた。

 そこには——。


「夕日……外が見える——」


(……間違いない)


 それこそが、マルクが目指していた終点。

 ついに俺たちは、水路の流れ着く先に——外界へと続く、希望の光を見つけ出した。


 さらに、足元には、()()()の血の痕。

 俺の記憶の答え合わせも、そこで終わる。

 

 ——皇帝に囚われ、苦痛の日々を強いられた()()は、何かをきっかけにその場から抜け出し、特殊な力でこの世から離脱した。


(何が女神のさらし首だ……まるで、自分の手柄のように言いやがって)


 ここにきて、俺はやっと気づくことができた。

 過去に見てきたあの悪夢は、女神アリステラの記憶だったのだと。


 そして、彼女は皇帝の手によって首を刎ねられたんじゃない。

 奴の力に屈することなく、この場所を最期に——転生者となる道を選んだのだ。


* * *


 ——大広間では。

 剛剣ガンツが、水を得た魚の如く、その猛威を奮っていた。


「おらおらぁ! 天下の帝国様が、こんなもんかよ!」


『おっと! ……守護霊ってのも楽じゃないわね』


 右往左往を繰り返しながら、攻める様に動き回る彼の背には——それに振り落とされまいと、必死にしがみつくマリラ。


『それより、マルクさんは無事にたどり着けたのかしら——』


 癒しの手を添え、地下への階段を見つめていると——。


『——キャ!』


 彼女の胸を貫くように刃が突き立てられた。


『——何⁉︎ ……氷?』


 思わず声を上げるマリラだったが、自分がエギル体だと言うことを思い出し、その正体を確認すると。

 そこには。


「うぐぐ……がはっ!」


 氷の刃に左肩を刺し貫かれ、膝をつくガンツ。


「——狩られる時より、狩る時に隙を見せるとは……まるで動物だな」


 冷気の煙の先には、まっすぐと手をかざすデノイルの姿があった。


「遠くからこそこそと——女みてぇな野郎だな……!」


『ひどい……早く治療を——あっ!』


 しかし、新たな氷が腹部へと被弾し、問答の時間すら与えられない。


「ぐぁぁぁ‼︎」


「後方支援は魔法使いの基本。そんな事は常識だ——知能まで動物並みか?」


 冷徹で鋭い言葉。

 彼の快進撃も、“氷の男”によって止まってしまった。


「グヘヘ」

「コレマデだな」


 すると、傷を押さえ足を止めたガンツの元に、笑みをこぼす兵たちが群がる。


「くそっ! 血も涙もない、連中共め……」


「フフフ……裏切り者が、何を言ってるのですか?」


 やがて、腕の再生を終えたシュダも立ち上がった。


 そして——。


「さあ! あなたたちは()()に逃げたマルクを追いなさい!」


『どうしてその場所が⁉︎』


 数人の部下に号令がかけられる。

 それを受けた男たちは、焦るマリラの横を通り過ぎ、次々と階段の方へ駆けていった。


「おい、てめえら! 相手はこの俺だぁ……!」


 手を伸ばすガンツだったが、壊れた肩ではそうすることすらできない。


『だめ。回復なんて、間に合わない……』


 ついに、マルクのいる地下への進路を許してしまった。

 その時、二人の上に大きな影が覆いかぶさる。


「——フヘヘ。四天王の首はいただきだ」


 見上げた先には、手柄に目をぎらつかせ、大きな爪を振り上げた半妖兵。


「ちくしょう……! ここまでか——」


 一瞬の隙を見せたために、戦況は逆転してしまった。

 いや——もとより、こうなる結果は見えていたのかもしれない。


 観念する彼の背中で、マナを込め続けていたマリラも、ようやく目を瞑った。


『……カガミさん!』


 そして、死神の鎌のような剛爪が、彼の首元に落とされようとした——その時。


「——ガンツさんを守れぇ!」


 折り重なる掛け声と共に、何かを受け止める金属音が響いた。


「……お前ら」


 ガンツが顔を上げると、見覚えのある()()()


「おらぁぁぁ!」

「この悪魔がぁ!」


「クギャァァァ‼︎」


 数の力で半妖を押し返した男たちは、すかさず首を跳ね、その心臓を刺し貫いた。


『どうなってるの? これ……』


 恐る恐る目を開けたマリラが見たのは、こちらを守るように並び立つ黒甲冑の兵士たち。


「まさか、あなたたちは……どういうおつもりです⁉︎」


 その状況に、シュダは怒りをあらわにする。

 謀反行為を行う男たちの正体を、彼もよく知っていた。

 

 増援の中に紛れ込んでいたはずの彼らの正体、それは——ガンツ直属の部下たちだった。


「——バカやろぉ! お前ら、何勝手なことしてる⁉︎」


 やがて、震える背中に、怒声を浴びせられる。


「裏切りもんなんか助けたら、どうなるかわかってんだろぉ!」


 彼らの行動は、明らかな無謀。

 その悲しみを覆い隠すように、ガンツは叫ぶ。

 だが、そんなもので揺らぐ者など——ここにはいなかった。


「わかってるさ! だけど、俺たちはあんたのおかげで——()()でいることができたんだ!」


 彼の怒りに動じない部下。

 その横で、もう一人の男が言葉をつないだ。


「この国は、血も涙もない人間しかいなかった……けど、あんただけは……あんな奴らが持っていない人間の心を、確かに持っていた!」


「——人間の心……くだらない感情ですね」


 片翼の男は吐き捨てる。

 

 それもそのはず、部下の命を道具として扱う者にとっては、“他者を助ける”など到底理解できない行為。


 ——だが、ガンツはそうではなかった。


 何かに裏切られ、孤独を感じる辛さを誰よりも知っていた彼は、今まで部下を見捨てることをしなかった。


 その心を、ちゃんと受け止めていた人間が、ここ(帝国)にはいた。


「あんたが国を裏切るってのは、何か理由があるんだろう? だったら、俺たちはあんたを信じるぜ! 命だって捨ててやる! ここは、俺たちに任せて行ってくれ!」


 死の恐怖に縛られることのない、心から放つ彼らの覚悟。


「……バカ、やろう」


 それを大切に受け取り、ガンツは——ゆっくりと立ち上がる。


 ——思いの丈を響かせた彼らは、二人の悪魔が率いる軍団を見据えていた。


「はぁ……面白くない茶番だ」


「つまり、それが最後の言葉ということですね?」


 度重なる裏切りの連続に、呆れる様子の四天王。


 既に敵だと認識された男たちに、帝国兵迫ってくる中、ガンツの背中でマリラが囁く。

 

『これも——日頃の、行いね……』


 そして、歩くほどの回復を終え、彼はようやく踵を返した。


「……それでいいんだ、ガンツさん」


 そのまま、階段の方へと駆ける彼は——何も言わなかった。

 

 口を開けば、きっと何かが溢れ出す。

 今生の別れに、言葉なんてものはいらなかった。


()()と共に、逃げたか。さて——」


 守護霊を背に、暗闇へと消える姿を見送るデノイルは——一人の男に手をかざした。


「うぐぁぁぁ‼︎」


 心ある人間の命を、一瞬にして断ち切る氷の弾丸。

 躊躇いもない非情の一撃に、ガンツの部下たちの覚悟は一瞬揺れ動く。


「命など惜しくないのだろう?」


 手のひらの上に、次なる刃を生み出すデノイル。

 再び放たれた“死の言葉”が、彼らの心を恐怖で包み込み、理性を塗り潰していく。

 だが——。


「しゃぁぁぁ‼︎」

「いくぞこらぁぁぁ‼︎」

「なめんじゃねぇぞぉ‼︎」


 力の限りの叫ぶ男たち。

 心をむき出しにした彼らは、そんな死の束縛すらをも跳ね除けていた——。



 ——階段を駆け降り、かすかに聞こえる断末魔に、ガンツの足は少し止まる。


「——すぐに、()()()に行く……待ってろよ」


『ガンツさん……?』


 この時、悲しい背中にしがみつくマリラには、彼が残す言葉の意味を、まだ理解できていなかった。

大事ですよね、日頃の行い。

実は、過去の彼が出る回などにも、人間味あふれるセリフを撒いていたつもりです。

あまり意識はしませんでしたがね笑


ってなわけで!

ここは彼の部下たちに任せます。


お次は火曜日に!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ