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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第四章 力と共に
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第41話 癒しの戦士

途中カガミ視点が入ります。

混乱するかもで申し訳ないっす。

てなわけで戦闘開始!


癒しの戦士


どうぞ。

 じりじりと、距離を詰める帝国兵。

 階段を背に剣を構える二人には、すぐそこにあるはずの裏口が、異様なほど遠く感じられた。


(上から数えたが——大体五十ぐらいだ)


「そうか……あの二人はともかく、他さえ片付ければ——」


 大群を前に、戦況を見据えるマルク。

 重い体を押しながら、生き延びるための算段を巡らせる。


 しかし、その方程式は——すぐに崩れ去った。


「グゴゴ……」

「ガァァァ……」


 前列にいた帝国兵たちが、ギチギチと音を立て、自らの肉と骨を肥大化させていく。


『なんなの……あれ——』


(妖魔の力を併せ持つ者——“半妖”だ)


 見たこともないおぞましい姿に、言葉を失うマリラ。

 皇帝の居城には、当然のように少数精鋭が配されていた。


(おい——お前はあれになれないのか?)


「残念だが、あんな力はもらってねぇ——」


 天からの問いに振り向くガンツは、そのままマルクの方へと視線を落とす。


「……これまでだな」


 疲労の色は明らかだった。

 万に一つも生き残る術はない。

 

 誰かが、命をかけなければ——。


「聞け、マルク——」


 ガンツは声を落とす、そして——吹っ切れたように言い放った。


「さっきの道を逆に向かうと水路に出る……危険だが、脱出口はそこしかない——道に迷うなよ……」


「なに……?」


 示したのは、唯一残された退路。

 立ちはだかった彼の背中にマルクが——。


「君は……どうするんだ?」


 眉を顰めながら問うが、その意図はわかりきっていた。


「ちょっとあいつらと遊んでやるだけだ。それに、お前がいたら足手まといになる——」


 今の戦力では、正面突破をするのは不可能。

 敵の足止めをし、他の逃走経路へと駆けるしかない。


 その“しんがり”の役を、ガンツが買って出たのだ。


(……水路までの道のりなら、俺がよく知っている)


 一部始終を見ていた転生者は、そっと答える。


「そうか? それなら大丈夫だな……弟のこと、頼んだぜ——」


「ガンツ……君は」


 ガンツが声が、どんどん遠くなっていく。

 限られた時間の中、彼は既に覚悟を決めていた。

 

「本気、なのか」


 一人だけでも生き残るには、これこそが最善の策。

 それに納得をしつつも、マルクは歯を食いしばっていた。


「君も……後から、必ず——」


 さらに、思いを絞り出す。

 だが、それを断ち切るように——ガンツは叫んだ。


「早く行けぇぇぇ!」


 ——突如響く、大広間を震わせるほどの声。

 マルクはようやく、迷いを捨てた。


「——っ! 待ってるぞ……!」


 その背中は、地下への階段へと消えていく。


「地下に戻った……?」


 疑問に思うデノイルだったが、それにいち早く気づいたシュダは、彼らへと飛びかかっていた。

 

「逃すものですかぁぁぁ‼︎」


 しかし、彼の目の前に、鉄壁のような大剣が立ちはだかった。


「そう来ると思ったぜ!」


「——ぐっ!」


 空からの剣を予測したガンツは、その場で跳躍し重厚な一撃を叩き込む。

 

 それを受け止めたシュダも、重すぎる剣圧に押し飛ばされ、後ろの壁へと着地した。


「——相変わらずの馬鹿力ですね」


 剛剣ガンツの巨体が、ドスンと地面を揺らす。

 そして、なぎ払うように大剣を振り、彼は立ち上がった。


「さぁ来な——俺の剛剣が受けられるならなぁ!」


 勇む剛剣。

 人の身で半妖に抗う、その名に恥じない力がそこにはあった。


 国の最高戦力の一つだったそれを目の前にして、思わず後ずさる帝国兵。


 しかし、戸惑う背中に冷たい視線が浴びせられる。


「何を躊躇している——」


 身も震える静かな一喝。

 振り返る半妖の戦士達に、デノイルが剣を向けた。


「貴様らの仕事は、命を投げ出し戦うことだ。たとえそれが、どんな相手であっても——」


 その表情は、依然として変わらない。

 だが、その周りを覆う真っ黒な殺意が、躊躇う帝国兵達の心を恐怖で縛り上げた。


「死にたくなければ、今すぐ死ね——」


 血の通わない号令に、死ぬことしか許されない彼らは、崖っぷちの修羅と化す。


「ウォォォ‼︎」

「コロセェェェ‼︎」


 怒号と共に自分を奮い立たせたその牙は、一斉に裏切り者へと襲いかかった。


「——上等だ! 来いっ!」


 * * *


 ふらついた体で元来た道を戻るマルク。

 俺は気遣うように、ゆっくりと前を進んでいた。


『あの人——大丈夫かしら……』


(マリラ……?)


 マリラの背中が、不意に立ち止まる。

 彼女は、たった一人で追っ手を食い止めるガンツのことを気にかけていた。


(……気持ちはわかるが、今は逃げることだけを考えないと——)


『……でも』


 振り返った視線の先には——まだ戦いの気配が残っている。


 唇を噛み、拳を握る。

 行くべきか、戻るべきか——その狭間で、彼女は揺れていた。


『カガミさん……!』


 一瞬、俺たちの方へと視線を向けたが、それは再び、大広間の方へ戻った。


『やっぱり……私、あの人を置いていけないわ!』


(マリラ! 待て!)


 呼び止める声を背に受けながらも、足を止めないマリラ。

 迷いを振り切るように、階段へと駆け出していった。


「おい——さっきから、誰と話しているんだ?」


 振り向くと、息を荒げるマルクの足を止めてしまっていたことに気づく。

 俺は断腸の思いで、再び彼の元へと駆け寄った。


(いや……なんでもない。行こう)


 不安がないわけじゃない。

 だが、エギル体のマリラなら——おそらく大丈夫だ。


 それよりも、今優先すべきは、負傷しているマルクを一刻も早く目的地へ運ぶこと。


 ——彼を、()()()()へ導けるのは、俺しかいないのだから。


 * * *


「——ぐっ! ……おらぁ!」


 大広間では、数の力に屈するガンツの姿。

 

 右を斬れば左から斬られ。

 受けてはまた斬り返す。

 終わりのない連撃の中で、彼の体は確実に削られていった。


「はぁはぁ——案外大変なんだな、しんがりってやつも……」


 仲間の為に、少しでも長くその場に立っていなければならない、辛い状況。

 彼はバルナの王宮にて、たった一人で敵に対峙していたマルクの姿を重ね合わせていた。


 ——その手足は、徐々に重さを増す。

 そして、その思考の合間を縫うように、空に舞う千里眼の刃がチラリと光った。


「——隙を……見せましたねぇぇぇ‼︎」


 急所へと目掛け、背後から一直線に飛ぶシュダ。


「このチビ……!」


 振り向いたガンツも、大剣を薙ぎ払う。

 

 だが、時既に遅し。

 それよりも先に、敵の刃は心臓へ到達しようとしていた。


 帝国四天王、剛剣のガンツはここにて絶命。

 誰もがそう思った——しかし。


「ぎゃぁぁぁ‼︎」


 先に振り抜かれた剛剣が、その場に絶叫を響かせる。

 倒れ伏したのは——シュダの方だった。


「腕がぁ……腕がぁぁぁ‼︎」


「シュダ様……?」

「何が起きた⁉︎」


 半身を翼ごと切り裂かれた半妖は、目に涙を浮かべながら、哀れにも這いつくばる。


「何故だ? 奴の剣速が——()()()


 遠くにいたデノイルは見逃さなかった。

 鈍っていくはずのガンツの攻撃が、確かに加速する様を。


 じっと見つめながらも、理解に苦しむが——それを一番不思議に思っていたのは、当の本人だった。


「体が……?」


 重くなった体が再び軽くなる、開いていた傷が癒えていく。

 一人でに起こる怪奇現象を見渡していると——()()が耳元で囁いた。


『私も加勢するわ。だから、思い切り戦って!』


 ガンツの背中に張り付くように捕まるマリラ。

 発光させたマナの光で、彼の体を包み込んでいた。

 

 わずかずつだが、傷が塞がり体が軽くなっていたのは守護霊となった彼女の仕業だった。


「……これなら、まだ戦える!」


 決して聴こえない激励を受け取ったガンツ。

 痛みでのたうち回るシュダと、たじろぐ帝国兵達を前に、再び剣を握りしめるのであった。

癒しのマリラ。

これ以上頼りになる守護霊はいません!


お次は金曜日

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