表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第四章 力と共に
81/81

第40話 帝都を抜けろ

マルクとガンツの脱出劇が、ついに始まります!

そこに待ち受けていたのは……。


帝都を抜けろ


どうぞ。

 帝都の地下牢に、再び静寂が立ち込める。


「——なるほどな……姿の見えない声だけの人間。お前があの、()()()ってやつだったのか」


 そこには、腰を落ち着けるガンツ。

 その単語には聞き馴染みがあったらしく、弁解にはそう時間はかからなかった。


(思ったよりも、理解が早いんだな……)


 バルナの王宮にて、皇帝は既に、俺を転生者だと呼んでいた。

 おそらく、帝国側には俺の存在は知れ渡っているのだろう。


「聞いたことあったからな——それに、味方なんだったら何でもいい」


「ああ、僕が保証する。天の声である彼は——間違いなく味方だよ」


 マルクの言葉もあり、話は流暢に進んでいったが、ガンツは一瞬だけ立ち止まる。


「それより——マルク……」


 転生者の存在よりも、彼には明確にしたい事実があった。


「最後に聞くが、()()()は本当に生きてるんだよな?」


 それは——弟の安否。

 

 既に後戻りできないところまで来ていた彼は、今一度それを確認する。

 

 彼にとって、その答えは最後の一歩を踏み出すために必要なもの。


 やがてマルクは、その覚悟を受け止めるように大きく頷いて見せた。


「ああ。フラッツはおそらく、アリヴェルの地にいる——無事脱出して、必ず会いに行こう!」


 はっきりと言い切られる言葉。

 その一言で、全ては決まった。


「……そうか。——わかった」


 最終確認を終え、ガンツの瞳に再び決意が宿る。

 その眼差しに、マルクもようやく胸を撫で下ろすことができた。


 ——弟の生存を知り、彼の脱出に手を差し伸べるガンツ。


 ()()()()、彼が味方でいてくれた事に、俺も同様に安堵を覚えていた。


 

 そして、深呼吸をしたガンツは、手錠の穴に鍵を差し込んだ。


「——ふぅ」


 鉄の鎖はドサリと落ち、囚われの身から解放されたマルクは嬉しげに肩を回す。


「いいものだね。自由というのは」


「こいつも持っていけ」


 さらに差し出されたのは、ここに連れてこられた時にひっぺがされた武具の数々。

 彼が席を外してた間、どこかからこっそりとくすねてきたようだ。


「ありがとう。助かるよ——ガンツ」


 それらを受け取り、いつもの姿へと戻っていくマルク。

 立ち上がり扉へと足を向ける二人の戦士に、俺はようやく口を開く。


(二人のことは、俺が目となって誘導するよ)


「なるほど……幽霊のお前さんには、ピッタリの仕事ではあるな」


「うん。無駄な戦いは避けたいし——いい作戦だ」


 すぐに同意してくれたマルクだったが、ガンツは拳を握り、釘を刺した。


「頼んだぜ。もし裏切りやがったら、ぶっ飛ばすからな……!」


(ああ……わかってるよ)


 早速、扉の方へ体を進める中、治癒の手を止めたマリラだけは口を尖らせる。


『この人が味方なら、先に言ってくれればいいのに……カガミさんったら!』


(すまんすまん……後でマリラにも説明してやるからな)


 事情もわからず、一人だけ取り残されてい彼女に、俺はひっそりと呟いた。


「おい待て。まだ幽霊友達がいるのかよ……」


 噛み合わない俺の言葉に、再び後ずさるガンツだったが。


(男が細かいこと気にすんな! 行くぞ——)


 俺はさっさと牢屋を後にし、作戦の決行へと移っていった。


 ——ガンツには、意外と小心な一面もあるらしい。


 * * *


 響いては止まる二人の足音。

 暗い地下道を飛んでいた俺は、進んでは合図を繰り返し、マルク達を誘導していた。


「なぜだ……さっきから帝国兵が一人もいないじゃないか」


「なんで、今日に限って……珍しいこともあるもんだな」


 順調すぎる歩みに皆違和感を感じていたが、敵がいない以上、彼らは進む他なかった。


『変ね……ここにも誰もいないわ』


(俺達が来た時も、かなり手薄だったな……だが、今はとりあえず進もう——おい、二人ともこっちだ)


 俺はさらに声を送る。


 たびたび発生する幽霊(マリラ)との会話に、ガンツが身震いを見せながらも、一行の足は、地下を抜ける階段へと辿り着いていた。


(明かりが見える……ここから、()に繋がってるんだな!)


 そして、階段を上がった俺は、少し慎重になりながら顔を覗かせる。

 

 ——だが、そこには。


(……はぁ。誰もいないぞ)


 大広間に、風が通るばかりであった。

 

 明かりの届かない地下を抜けたと言うのに、人の気配が感じられない。

 釈然としない光景だったが、ガンツが——提案をした。


「本当に誰もいねえのか……だが、ここを抜けて裏口まで行けば、逃げる確率は格段に上がるぜ——」


 城内をよく知る彼が言うには、大広間から裏口までの距離はそう遠くないらしい。

 腑に落ちない点がありながらも、目標地点は確かに近くまで迫っていた。


「——少人数の敵なら、今の僕たちでも切り抜けられる」


「わかってるじゃねぇか……」

 

 二人は、剣を握り見つめ合う。

 言葉を交わさずとも、互いの意図はわかっていた。


 強行突破——。

 

 頷き、息を合わせるマルクとガンツ。

 そしてついに、彼らは階段を駆け上がり——外の明かりへと体を乗り出した。


 しかし。


「——おやおやぁ?」


 羽音と共に降りてきたのは——あの男の声だった。

 

「この声は……!」


 聞き馴染みのあった不快な音に、二人は足を止める。

 見上げた視線の先には——黒い翼が舞っていた。


「後ろにいらっしゃるのは、マルクさんですよねぇ? ——二人で仲良く、お出かけですかガンツさん?」


 その正体は、“千里眼”と呼ばれる帝国の戦士、シュダ。

 半妖と呼ばれ、空の支配を許された、悪魔の人造兵器である。

 

 さらに、彼は間髪入れず、大広間に響くように手を叩いた。


「さぁさぁ皆さん。裏切り者のお馬鹿さんが、ノコノコとやって参りましたよ——お集まりなさい」


 その掛け声に応えるように、床や地面の隠し扉が次々と開いていった。


 そして、姿を現した黒甲冑どもが、あっという間に雪崩れ込む。


「ちっ——あのチビ。最初から……」


 歯軋りをする表情を、右往左往とさせるガンツ。


『そんな……これじゃまるで——』


 袋の鼠——。

 数にして、五十にも及ぶであろう帝国兵に、俺たちの退路は塞がれた。


(おいガンツ! これは一体どういうことだ⁉︎)


「さあな……こんな隠し扉は知らなかったし、俺はよっぽど嫌われ者だったらしい」


 開き直るように笑うガンツだったが、彼の頭上にはひらりと舞い遊ぶシュダの姿。


「アハハハ! 本当に馬鹿ですねぇ! アリヴェルの人間など、最初から信用するわけがないでしょう」


「おっしゃる通り」 

「馬鹿なやつだ」


 降り注ぐ高笑いに連られ、群衆から笑い声が漏れていく。


「そういうことかよ、てめぇら……!」


「落ち着くんだ! あんなやつらの言葉に耳を傾けるな——」


 今にも飛びついて行きそうな大剣を、冷静に抑止するマルク。


 満を持したように語られる謀反と。

 恍惚と笑うシュダを見て——二人は悟っていた。


 自分達は、初めからここに誘い込まれたのだと。


 ——すると、一触即発の空気が漂うその場に、もう一つ声が投じられた。


「四天王ごっこは——楽しかったか?」


 帝国兵が作る包囲の一角が、音もなく左右へと割れる。


「まあ……そうくるよな」


 低く呟いたガンツの視線の先——その中心から、もう一人の男がゆっくりと歩み出てきた。


(あいつは……まさか)


「俺の()()だ……」


 血の通っていないかのような、真っ白な肌と冷たい瞳。

 その男に該当する人物を、俺は一人しか知らない。


 ——デノイル。

 “氷の男”と称される、帝国四天王の一人だ。


「二人がかりとなると……さすがにまずいな」


 先程までの勢いが嘘のように、ガンツは半歩後ずさる。


 そのわずかな動きが、状況の深刻さを物語っていた。


『あの人、マナが……』


 そして、同じ力を扱うマリラには、彼の力が見えていた。


(見えたか……そう。あいつはただの剣士じゃない。レオンと同じ——魔法剣士)


『あの人も——』


 男としては珍しくマナを持つ存在。

 彼女がよく知るレオンと同じく、魔法剣士の力を持つデノイルに——彼女は得体の知れない恐怖を覚えた。


 さらに、人知れないはずの俺たちを、千里眼の瞳が貫いた。


「あなたもおいででしたか……会えて嬉しいですよ——転生者さん」


(へっ……そーかい)


 シュダ——。

 やはりこの男は、全てを見抜く力を持っていた。


「隣にいらっしゃるのは、お友達ですか? 小さくてかわいい()()()の塊が見えていますが」


『えっ……!』


 当然、エギルで動く以上彼女の存在も、やつには視認されるだろう。

 

 焦るマリラを心配するが。

 それよりも——。


「はぁ……はぁ」


 俺が気にしていたのは、既に肩で息を始めるマルク。

 過度の緊張状態が、万全の状態ではない彼の呼吸を早めていた。


(……どうしたものか)


 ——遠く閉ざされてしまった、裏口までの道のり。

 

 四面楚歌を迎え、女神の国の戦士達の脱出劇は、今ここで終わろうとしていた。


「さて——駆除の時間だ」


 そして、待ってはくれない絶望の時を告げるかのように、氷の男デノイルは、ゆっくりと剣を抜くのだった。

待ち構えていたのは、二人の四天王でした。

さらに、負傷していたマルクは満身創痍……。

彼らに勝ち目はあるのでしょうか。


お次は火曜日!

バトル開始!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ