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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第二部】 第四章 力と共に
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第39話 モグラ作戦

ここからカガミ視点へと戻ります!


そして始まるのは、転生者でこそできる作戦。

強固な牢など意味をなしません。


モグラ作戦


どうぞ。


 マルクとガンツの共同戦線が張られる少し前。

 俺は、悪魔の起源とされる山を背にそびえ立つ、皇帝の居城へと目を向けていた。


『ここが帝国のお城? なんだか嫌な雰囲気……』


 ゴクリと息を飲むマリラは、帝都の空からその異様な空気を見下ろす。


(ああ。間違い無いと思う。マルクの気配が——地下の方から感じ取れる)


 覚悟を決め、この地へと飛び立ったが、彼女はかすかに肩を震わせていた。


『大丈夫よね。私達の姿は——誰にも見えないもの』


 強かに振る舞おうとするその姿をなんとか安心させたかったが、俺は真実を話す。


(いや、そうだと言いたいところだが……例外がいる。帝国四天王、シュダという男だ——)


『そんな人が……いるの?』


 先の戦いでは、俺は不覚にも敵の視認を許してしまった。

 それに、他にもそんな人間が存在するかもしれない。


 酷だとは分かっていたが、事実を伏せるわけにはいかなかった。

 最悪の状況を前提に、すべてを受け入れ戦うしかない。

 

 ——だが。


(悪いことばかりでもないさ。何度も経験しているが、斬撃や魔法は——俺たちには一切通じない)


 マリラは、ホッと胸を撫で下ろす。


(それに今、皇帝のあの黒い覇気も感じない——これは絶好の機会だ)


 さらに、やつの気を感じない今こそが勝機だと、彼女を勇気付ける。

 

 ——すると、歩を止めていた俺の横で、マリラはピンと指を立てた。


『そうだわ! モグラみたいに、壁の中を進んでいくと言うのはどうかしら?』


(確かに——物体の中なら、人の目は届かないかもしれない。その作戦で行こう!)


 彼女のひらめきに乗った俺は、早速人気の少ない壁を探り当て、暗闇に包まれる石壁の中に身を沈めていった。


* * *


(——マリラ。ちゃんとついてきてるか?)


『ええ。後ろにいるわよ。でも——やけに静かね……』


 小声をかけ合い、壁の中を進んでいた俺たちは、壁や地面から度々顔を出しその場を覗く。

 しかし、例の黒甲冑の帝国兵達は——余りにも少なかった。


(思ったよりも手薄だな。帝国は、それほど兵力がないのだろうか?)


 疑問に思いながら、二人はどんどん地下へと潜っていく。


 ——すると、俺はついに、暗闇の中に彼の気配を見つけた。


(待て——ここだ……向かって右側に、感じる)


『ええ』

 

 マリラは一言だけ返事を返し、深呼吸をする。


 そして、二人は恐る恐る、その壁から顔を覗き込ませた。


 ——そこには、傷だらけで眠るあの青年。

 

『この人が、ルミナさんの……』


 青空のような髪色と、少しだけ華奢な体躯。

 元女神の騎士団、マルクがいた——。


『よかったわね——生きてるみたい』


 スースーと寝息を立てるその姿に、目を潤わせるマリラ。

 無論、俺も彼女と——同じ気持ちだった。


(全く……呑気に寝やがって——)


 彼の生存を確認した俺は、ようやく安堵を覚える。

 

 生きていてくれて、ありがとうと——心の底からそう囁いていた。


 ——だが、彼の安全はまだ約束されていない。

 敵の本拠地からその身を逃すまでが、俺たちの任務。


 平常心を保ち、早速彼に声を送った。


(マルク……マルク……! 起きてくれ——俺が来たぞ)


「……ん」


 耳に鳴り響く音に気づき、目を覚ますマルク。

 自由のきかない体で、あたりをキョロキョロと見回す。


「——この声は、天の声……! 君なのか?」


(ああ、俺だよ。今——石の中にいる)


 そして、声が聞こえる石壁へと体を這い寄らせた。


「驚いた……ここ()()、救いの手が迫っていたなんて——」


(ひどいやられようだな……今、何とかしてやるからな。ほら——)


 掛け声と同時に、壁から出てきたマリラは、抱き寄せるようにして彼に触れた。


『マルクさん——もう大丈夫』


 彼女の手から放たれたマナが、マルクを包む。

 傷へと流れ込むその光は、彼の苦痛を和らげていった。


「治癒魔法……君は、こんな力を持っていたのか?」


(まあ、そんなところだ。それより、まずは良い知らせがある——)


 マリラが彼の体を癒す中、俺はその心を癒すべく言葉をかけた。


(ひっくり返るなよ? ルミナとルキは、生きている!)


 彼にとって吉報となる情報に、俺は思わず声を弾ませる。

 しかし、マルクは淡々と応じた。


「ああ。そのようだね……」


 ——それだけか。


 拍子抜けするほど静かな反応に、思わず俺は言葉を失う。

 もっと驚き、喜ぶと思っていたのだが……。


(おいおい……薄情なやつだな。嬉しくないのか? 仲間が生きてたんだぞ)


 詰め寄るように言う俺に、マルクは小さく笑った。


「その情報は、ある人物から聞いていたんだ。本当に……安心したよ」


(ちぇ。聞いてたのかよ……しかし、一体誰に——)


 肩透かしを食らったように、俺は内心で舌を打つ。

 感動の再会に元気づけてやろうと思っていたのに——まるで、自分だけがはしゃいでいたみたいだ。


「はは。君が来てくれたことも嬉しいさ。だから、そう拗ねないでくれよ」


(——別に拗ねてねぇよ!)


 軽口を交わすそのやり取りを、マリラは静かに見守り微笑む。


 ——その時だった。


 重い音を立てて、牢の扉が開いた。


『誰⁉︎』


(しまった!)


 マルクをかばうように身を乗り出すマリラ。

 

 そして、目を向けた先にいたのは——ある男。


「——よっ。眠れたか?」


 帝国四天王の一人、ガンツだった。


「お前、さっきから何ぶつぶつ喋っていた?」


 外まで響いていたという俺たちの会話。

 震えながら治癒を施すマリラだったが、マルクは白々しく返事をする。


「ガンツ。君だったのか——今のは、なんでもないんだ」


『敵……じゃないの?』


 黒甲冑の男と言葉を交わしている異様な光景に、戸惑いを隠せない彼女だったが、俺は安心したように身を乗り出した——。


 なぜなら、この男の素性は——よく知っている。


(構わないよマルク。俺から彼に説明する——)


 ——無警戒に声を発する俺に、()()は騒然とした。


『カ、カカ、カガミさぁん⁉︎』


「な、なんだぁぁ⁉︎ むぐっ!」


 突然の皆既現象に、騒ぎ出す口をすぐに塞ぐガンツ。

 一方でマリラは、わざわざ存在を知らせる俺の奇行に、あられもない声をあげていた。


『どうしてしゃべっちゃうのよ⁉︎ 折角のモグラ作戦が——これじゃ台無しじゃない!』


 あたりは狂乱状態——。

 恐怖に怯える者。頭を抱える者。想定外な皆の反応を、俺は少し呆れた様子で見守る。


「なんだよ……幽霊でもいるってのかよ——!」


(待て待て。落ち着け)


「——あはは、随分と賑やかそうだね……」


 しかし、慌てた様子のガンツを見ていたマルクは、一人呑気に笑っている。

 本当に、間の抜けた主人公だ……。


『カガミさんのばかぁ! ルミナさんとの約束はどうすんのよ!』


 自分の声こそ聞こえないが、マリラは収まる様子を見せず、俺へとすり寄る。


(はぁ……どうしたもんかな)


 ——てんやわんやなこの状況を見ていた俺は、初めてこの世界に来た時のことを思い出していた。


 こうなってしまったら、信じてもらうのに時間がかかるんだよなぁ……。

なんと、早速作戦が台無しになりましたぁ〜

しかし!

カガミには考えが……?


お次は金曜日!

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