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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第一部】 序章 笑顔と共に
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第3話 ラキ

ここからは弟思いの素敵なお姉さん、ラキの魅力がどんどん発揮されます。

みなさんもどうぞラキを好きになってあげてください!

 皆、寝静まった頃。


 いつもなら真っ先にルミナの寝顔を見にいくところだが、今日はなんだかそんな気分になれなかった。


 俺はずっと、昔を思い出していた。


 ——親父と激しくぶつかっていたあの日。

 そして、それを見て涙している母親を、横目に見ていたあの時のことを。


「——俺は小説家として有名になるって決めたんだ! なんでわかってくれない⁉︎」


「馬鹿野郎! 大学にも行かせ就職もしたのに、突然何てことを言うんだ!」


 仕事を辞め、小説家として生きる夢を持っていた俺は、日々父さんと喧嘩していた。


 いつも泣いていた母さんには——悪かったと思っているよ。


「小説家なんて……いつまでも夢を見ているんじゃない!」


「なにぃ……!」


 父さんの言い分もわかっていたつもりだったが、俺はどうしても、その夢を捨てきれずにいた。


 結局は、自分から家を飛び出してしまい。夢なんて掴めないまま酒に溺れて命を失うことに——。


 本当にバカだったと思う。


 今になって、父さんが言っていたことが正しかったのだろうと思うが、もう何もかも遅かった。


 だが、親の言いなりになり、普通の生活を送ることだけが本当に正しかったのだろうか?


 ……いまだに答えは出ない。


 アリヴェルの復興のためには、ルキの存在は必要不可欠だ。


 だが、マルクはその“正解ルート”に納得していない。

 しかし、彼の言っていることは正しいと俺も思う。


 父さんの気持ちが、今少しだけわかった気がするよ。


* * *

 

 ——翌朝。


 一晩考えたが、クヨクヨしていても始まらない。

 今の俺にやれることだけを考えよう。


 目標はやはり、アリヴェル王国の復興だ。

 マルクたちも俺も、それを望んでいるからな。


 さて、早速——。


 今日もマルクとルミナは山へ行き、ルキは一人で素振りをしている。


(おい……ルキ……聞こえるか?)


「誰だ⁉︎」


 ルキは勢いよく振り返る。

 だが、当然そこには誰もいない。


「またか……一体なんだってんだ」


(落ち着け、ルキ。俺の姿は見えないと思うが——俺にはお前が見えている)


「……!」


 再び辺りを見回したルキは、ようやくこれが空耳ではないことに気づいた。


(驚くのも無理はない。でも、こうして俺の声はちゃんとお前に聞こえているはずだ)


 初めこそ戸惑っていたものの、ルキはやがて木剣を下ろし、少しだけ落ち着きを取り戻す。


「……お前、一体誰なんだ?」

 

(俺はこの世界を知る“神様”のような存在だ。今、お前には天の声が聞こえていると思ってくれたらいい)


 ——するとルキは突然、吹き出した。


「ぷっ! ……神様って、子供かよ」


 この野郎、人を子供呼ばわりしやがって

 こちとら、お前の倍の人生を歩んでんだぞ。

 何も知らねえくせに、このガキ……。


「あれ? もうどっかいったのかよ?」


 いかんいかん。

 俺としたことが、子供相手に大人気なかったな。

 ちゃんと説明せねば。


(ルキ。お前には強い戦士になり、アリヴェル王国を復興させるという使命がある。だから、あのマルクという青年に剣を習うんだ)


「マルクってやつに? なんで俺が……」


(こないだのあれ——自分で盗賊を倒したと思っているみたいだが、それは勘違いだ。マルクは強いしいいやつだ。お前が頼めば剣の稽古をつけてくれる)


「はぁ……まあ、強くはなりたいけどさ……アリヴェルなんて国、俺は聞いたことねえぞ」


 そうか。

 ルキはこの時点で、アリヴェル王国のことを知らないのか。


「それに、知らないやつの言うことは聞くなって姉ちゃんに言われてんだ……なんとかって国のことなら、他を当たんな」


 むむむ……彼を説得するには材料が足りない。

 悔しいが、ルキの考えもごもっともだ。


 俺が言葉を詰まらせていると、彼は言い放った。


「それとお前、こんなことしてよっぽど暇らしいな? 他にやることないのかよ?」


 ——なに?


「神様とか訳のわからないこと言ってないで、大人だったらちゃんと働けよ」


 ——なになに?


「透明人間みたいなこと言ってたけど、どうせ女ばっか見てんだろ、このスケベ!」


 ——プツンッ!


 俺の中で、何かが切れる音がした。


(てめえ、このガキ! 黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって! あそこに毛も生えてねえような分際で、年上に生意気な口聞くんじゃねえ!)


「なんだと、このスケベ野郎! 相手してやるから出てこいコラ!」


 ルキは木剣をブンブンと振り回す。


(出てきたくても出れねえんだよ! 仮に出ても、てめえの下手くそな剣なんて誰が当たるかボケ!)


 意味はないが、俺も負けじとルキの周りを暴れ回る。


「なんだと! ……へっ! 神様ってのは腰抜け野郎の集まりみてえだな!」


 ルキは剣を振り回すのをやめ、今度は言葉で俺を殴りつける。


(知るか! 大体、最近のガキは礼儀を知らないみたいだな……全く、親の顔が見てみたい)


 ——口にした直後、大きなミスに気づいた。


「……!」


 その言葉にピクリと反応し、涙目になって呟くルキ。


「……二人とも、もう……この世にいねえよ」


 また、やってしまった……。


 ルキの両親は、すでに亡くなっていたんだった。


 ルキたちは旧ギルバディア王国の出身。

 帝国の侵攻によって故郷を追われ、その逃亡の中で——両親ともに命を落としている。


 ……思い出させて悪かったよ、ルキ。


 すると——騒ぎを聞きつけ、ラキがやってきた。


「今度はどうしたのよ⁉︎ ルキ——」


 彼女は慌てふためき、涙する弟を慰める。


 どうやら今回も失敗のようだ……。

 感情的になった結果、ルキを傷つけてしまった。


 ダメだ……。


 何をしても、この世界でも結局、俺は何も変えられないのか?


 神様っぽい立ち位置に移り変わり、ついに俺にも特別な何かを成し遂げられると思ったが、結果はこのザマだ。


 どんな世界に行っても、ダメなやつは何をやったってダメなんだな。


 ——結局、ルキはすぐに泣き止み、何やら心配そうにしていたラキも、やがて部屋へ戻っていった。


 かける言葉も無くなった俺は、なんとなく彼女についていき、同じように椅子へ腰掛ける。


 まあ、掛ける腰もないのだが……。


 それにしても、この家にいると妙に落ち着くな。


 初めて訪れた場所のはずなのに——なぜか、ずっと昔にもこんな時間を過ごしたことがあるような気がする。


 懐かしいというのも、少し違う。


 何か大切なものを忘れているような——そんな不思議な感覚だった。


 そんなことを考えていると、ラキがふと呟いた。


「……あの子、どうしちゃったのかしら?」


(……ごめんな、ラキ……俺のせいだ)


「え⁉︎ 誰?」


 俺はうっかりと返事をする——またやってしまった。

 だが、もはやどうでもよくなり、そのままラキに語りかける。


(ああ、俺はこの世界の神様だ。ずっとお前たちを見ていた……だが、神様稼業も全然うまくいかない)


 訳のわからない神語りにラキは驚いたが、なぜかすぐに受け入れた。


「ぷっ! ……面白い方ですね!」


(……全然疑わないんだな)


「こうして話し相手になってもらえるなら、神様でも幻でも構いませんよ……」


(そうか……まあ、今のはつまらん愚痴だと思って聞き流してくれ)


「じゃあ今度は、私の話を聞いてくれますか⁉︎」


 ラキは笑い、俺に今までの苦労を話し始めた。


 ——かつての大国、旧ギルバディア王国に住んでいたラキの過去。


 王国騎士だった父親が、押し寄せる帝国軍を止めるために命を落としたこと。


 それを機に旧ギルバディアは滅び、都を移したこと。


 そして、新たな都となる街へ母とルキの三人で逃げている途中、二人を盗賊から守るために母まで命を落としたこと。


 全て、神様である俺の知る話だったが、黙って聞いていた。


「あの子にはこれ以上、辛い思いをさせたくないんですよね。だから私、お母さんの代わりにならなくちゃって決めたんです!」


(……そうか)


 本当は陰で泣いていたりと、自分だってすごく辛いはずなのに……。


 物語の全てを知っているからこそ、目の前で力強く笑って見せる彼女に、俺は何かを教えられた気がした。


 なんとも皮肉な話だな。


(……あれ?)


 ふと外を見ると、ルキの姿がなかった。


「あの子……一体どこに?」


(ラキはここにいてくれ。俺が探してくる)


「ふふっ……お願いします、“神様”」


 ラキは微笑み、声のする方向へと会釈する。


 そして俺は、すぐにマルクのそばへ視点を瞬間移動させた。


* * *


 ——山菜を摘んでいたマルクとルミナ。

 すると程なくして、遠くから誰かが駆けてくる。


(ふっ……やはりな)

 

 ルキだった。

 

 彼もまた、知っていたのだ。


 気丈に振る舞いながらも、誰もいないところで涙を流していた姉の姿を。


 だからこそ、ルキは強くなりたいと願っていた。


 たった一人残された、大切な姉を守るために——。


 そんな彼がこうしてマルクに剣を教わりに来るのは、ある意味必然だったのだ。


「なあ、あんた……強いんだろ? 俺に剣を教えてくれよ!」


 突然の申し出にマルクは驚いていたが、ルミナは——。


「何よこの子ったら、急に生意気ね」


「なにー!」


「まあまあルミナ。滞在してる間なら僕は構わないよ」


 一時的に弟子入りを許すマルクの言葉を聞き、ルキは嬉しそうに笑う。


 よしよし。

 少し遅れたが、なんとかストーリー通りにいった。


「……」


(何か考えているみたいだが、とりあえずはルキを頼んだぞ)


 俺も嬉しくなり、マルクへと伝えた。


 だが、その瞬間——。


「今のって⁉︎」


 突然うろたえ、再び青ざめるルミナ。


 しまった。

 ルミナに聞かれていた……。


「私っ! また覗かれてるわ!」


「落ち着くんだ! ルミナ!」


 マルクが隣でなだめる。

 だが、ルミナは全く聞いていない。


 その時——。

 

「そうだぜ。誰もお前みたいなブ(・)ス(・)なんか覗かねーよ」


「……!」

 

 ルキの言葉に——その場の空気が確かに凍りついた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ——……。


 俺は恐る恐る振り向き……ルミナの顔を覗き込んだ。

 そこには、もはや“女神”の面影などなかった……。


「なんですってえぇぇぇー‼︎」


「ひっ……!」


 ドゴォォォォン——!


 山一つを吹き飛ばさんばかりの勢いで、凄まじい業火が爆発する。


(この子……本当にヒロインで合ってたよな?)


 ルミナの怒りと共に放たれた魔力が、辺り一帯を地獄の爆炎へと包み込んでいた——。


 ……やれやれ。


 こんなことで、俺はアリヴェル復興なんて本当に叶えられるのだろうか……。


 三人が爆炎に包まれる中、俺は一人、頭を抱えるのであった。

次の話にて序章、笑顔と共に編を締めさせていただきたいと思いますのでぜひ次回までお付き合いくださいね!

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― 新着の感想 ―
神様、完全に地雷踏んじゃいましたね〜 「ブス」発言で色々吹き飛ぶの笑いました! ルミナちゃんが、無双して、国の危機も救えるのでは!?笑
ブックマークつけました。本編?気になりますがどんな形であれ自分が書いた作品に関わりたいというのは激しく同意ッッ!!
2025/07/04 21:01 退会済み
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