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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第三部】 第二章 鏡と共に
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第16話 新しい仲間?

ガンツの登場に困惑するラキ。

それもそのはず、彼は帝国の人間。

仲良くなどできるのでしょうか……。


新しい仲間?


どうぞ。

『どうしたの⁉︎ ラキ——』


 ガタガタと震えながら、マリラの背中にしがみつくラキ。


 その瞳に映る男に、彼女は見覚えがあった。


『——ここが新しいギルバディアかぁ……って、もう夜じゃねーか』


 長い眠りから目覚め、開口一番に文句を垂れるガンツ。


(まったく……途中で「飛ぶのがめんどくせえ」とか言って、俺を馬車代わりに使いやがって)


 俺の言葉を聞き流しながら辺りを見渡す彼は、やがて、マリラの後ろに隠れる少女に目を向ける。


『おい、カガミぃ。お前の言ってた仲間ってのは、この()()()やつのことか?』


 彼女を指差し、少し期待外れといった表情を浮かべていた。


『女じゃねーか……』


 ——すると、その声にムッとなり顔を覗かせるラキ。


『カガミさぁん! なんでこんな人連れてきたんですか⁉︎』


『あん⁉︎』


 指さす彼女だったが、鋭い目を向けられ、背を掴む手にますます力が入る。

 

(ああ……まあ、いろいろと訳ありでな)


 見かねた俺はなだめるように声をかけたが、彼女の言葉は止まらない。


『こ、こいつはバルナを襲った帝国の人間! 血も涙もない卑怯者の集まりなんですよ!』


 黒甲冑の男に向けられる、敵意に満ちた瞳。


 ——しかし、彼女の一言にガンツは青筋を立てる。


『卑怯者だぁ……? さっきから聞いてりゃ、あることないこと抜かしやがって——』


 眉間の皺を増やしながら、震える少女へと詰め寄った。


『俺はお前なんか知らねーし、女だからって容赦しねぇぞ!』


『ひぃぃぃ‼︎』


 大口を開けて言い放つガンツ。


 すると——。


『ちょっと!』


 人差し指を立てたマリラが、その野獣のような男の前に立ちはだかった。


『やめなさいよガンツ君! 怖がってるでしょう!』


『うるせぇ! 俺はただ、こいつがあんなこと言いやがるから——』


 それでも、握った拳を解かないガンツだったが、彼女は負けじと睨み返す。


『何を言ってんのよ! 女の子に暴力を振るおうとする人なんて卑怯者じゃない!』


『なっ……!』


 硬い拳をまんまと開かされた。


 やがて言葉を失った彼は、華奢な少女の前にその身を後退させる。


『んぐぐぐ……!』

 

(おいおい、仲良くしてくれよぉ……)


 言い負かされ悔しそうな表情を浮かべるガンツに、ただ震えるラキを癒すように抱擁するマリラ。

 

 また一つ増えた悩みの種に、俺がため息をついていると——。


『勘違いすんじゃねーぞ! 俺は仲良しこよしをするつもりでここに来たんじゃねぇ——』


 言うに事を欠いた彼は背中を向けた。


『俺は弟を……フラッツを、見届けるために来たんだからな!』


 あくまで俺たちと距離を置く姿勢を見せるガンツに——ラキもようやく視線を向ける。


(わかったから。今日はもう遅いし、ゆっくり休んでくれ)


『ふんっ!』


 ふわりと消え去る大きな背中。


 納得いかない様子だったが、俺は半ば強制的に彼を引っ込めた。


 どんよりとした空気に釣られたのか、マリラは申し訳なさそうに眉を顰める。


『ごめんなさいカガミさん……私、言い過ぎちゃったかしら?』


(大丈夫だ、あいつも馬鹿じゃない——)

 

 きつい口調で怒鳴りつつも、心配する様子を見せる彼女の脇から、ラキが不思議そうに尋ねた。


『あの人、“フラッツ”って言ってましたけど。それって確か——』


 以前、三人と旅をしている時、再会を果たしたアリヴェルの戦士。


 マルクを強く尊敬し、いつか兄に会うために一人旅を続ける彼のことを、彼女は思い出していた。


(ああ。よく覚えていたな——まさしく、そのフラッツこそが、あいつの生き別れた弟だ)


『弟……』


 ラキの中に戸惑いが生まれる。


 卑怯者と罵った彼も、想いを残し転生した今の自分と同じ気持ちなんだろうかと。


 しかし、彼女はギュッと目をつむる。


『でも……私』


 拭えない嫌悪感。


 バルナの王宮にて猛威を振るった彼の剛剣は、簡単に頭を離れてくれなかったようだ。


(なんか……ごめんな、ラキ)


 ——当然の反応だ。


 人々を恐怖に陥れた帝国の幹部。

 すぐに受け入れられないのも頷ける。


 仲間なんて簡単に言ったが、俺はまだ彼らを()()から見ていたのかもしれない……。


(わかってやってくれ。あいつのおかげで——マルクを帝国から逃がすことができたんだ)


『マルクさん……!』


 その言葉に、今度は思い出したように目を見開いた。


『そうだった! マルクさん、ここに帰ってきたんですね!』


 期待に満ちた瞳。


 だが、俺は沈むように声を落とす。


(それが……帰ってきてすぐ、また旅に出たんだ。今度はアリヴェルへ)


『ええっ⁉︎ どうして……』


 さらに戸惑うラキへ、マリラが続けた。


『フラッツ君を……探しに行ったの。ガンツ君の、最後の願いだから……』


『マルクさんまで……』


 誰もが擁護する彼への恐怖が、少しずつ薄れていく。


 しかし、次によぎるのは別の不安。


『でも……ルミナさんには——どう説明するんですか?』


 その一言に、誰も答えることができなかった。


 連れて帰る。

 

 俺が彼女に、そう約束したからだ。


(そこなんだよな……)


 重たい沈黙が流れる。


 すると——。


『はい、おしまい』


 マリラが手を叩く。


『今考えても答えは出ないわ。今日はゆっくり休みましょう』


 辺りはすっかり夜更け。

 こうして起きている者など、俺たちだけだった。


『そうですね。みんなも寝てることですし……』


 重苦しかった空気も、少しずつ夜風に溶けていく。

 

 こんな気持ちのまま考え続けたところで、きっといい答えは見つからない。

 

 だからこそ俺たちは、その続きを明日に預けることにした。


『遅くまで迎えに来てくれてありがとう。ラキももう、ゆっくり休んでね——』


 ラキは嬉しそうに頷くと、名残惜しそうに二人を見つめ、小さく手を振りながら夜空へ消えていった。


『ふふ……さて、私もそろそろ』


 さらに、こちらに別れを告げるマリラは、一人残る俺の元へと舞い寄る。


『カガミさん。明日は私も一緒に——』


(いや、大丈夫だ。ルミナには俺がちゃんと報告するよ)


 力強く答えると、マリラは少しだけ驚いたように目を丸くした。


 そして、彼女は安心したように微笑み、静かに頷く。


『うん、わかったわ。おやすみなさい——』


 ラキやマリラ、それに今回仲間になったガンツ。

 彼らはいつも俺を支えてくれる、かけがえのない仲間たちだ。


 けれど、いつまでも彼らに頼り続けてはいけない——そう強く思っていた。


 今回の戦いで、マリラの命が危険にさらされたからだ。


 当たり前のように隣にいる彼らも、永遠ではない。

 その姿が消えてしまう日が——いつか来るのかもしれない。

同じ痛みを持つ者同士なのですが、敵国の幹部だった彼は、すぐには受け入れられませんでした。

それに、仕事はまだまだ山積み。

大人を見せろカガミ!


お次は火曜日!

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