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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第三部】 第一章 恋と共に
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第9話 初めてなんですの

お家デート、パート2です!

幸運の女神様の得意な料理でルキの心を掴む作戦。

さらに彼女は、一気に彼へと迫ります。

そこで……。


初めてなんですの


どうぞ

 ナナの父——テスカの屋敷にて。

 数々の()()()()を眺めながら、退屈そうに歩を動かすルキ。


「へー……どれも女の絵ばっかりだなぁ」


 立ち並ぶ絵画や壺などにはすべて、祈るように手を合わせる——ある女性の姿が描かれていた。


「——テスカ様は、故国アリヴェルを愛しておられます。ですので、女神様にまつわる財宝を今でも大事にされているのです」


 使用人の長々とした合いの手が添えられる。


「ふーん」


 次々と聞き流していた彼は、ある物の前で足を止めた。


「これは……ルミナ?」


 魔導書を抱え、片方の手を高く掲げる白い女性像。


 髪型や顔立ちに多少の違いはあれど、彼はその容姿にルミナの面影を重ね合わせていた。


「そちらは、有名な彫刻家が今は亡きアリステラ様を(かたど)ったものです。ですがまだ、()()()()なのでございます」


「未完成品ねぇ……」


 女神の伝説などに興味はなかったが、ふと気になったのは、中心にある窪みのようなもの。


 彼は吸い込まれるように見つめていた。


 ——すると。


「お待たせいたしました——」


 ノックと共に、扉を開けた使用人が声をかける。


「お料理の用意ができました。こちらへ——」


「おお! 待ってたぜ!」


 腹を空かせていた少年は、未完成の女神像に背を向け、すぐに使用人の後をついていくのだった。


 * * *


 屋敷の一室に設けられた食卓。


 二、三人ほどが囲める丸テーブルに、純白のクロスが優雅に垂れ下がっている。

 そして、その上には、窓から差し込む陽光を受けて輝く純銀の食器が、整然と並んでいた。


「へぇ……」


 すると、椅子に腰掛けていたルキが、何となしに後ろの壁へ視線を向ける。


「本物より……ずいぶん男前だなぁ」


 壁に飾られた肖像画に描かれているのは、この屋敷の主人であるテスカ。


 彼が一度会った、あの丸々とした姿はどこにもなく——まるで別人のようだった。


 先ほど案内してくれた使用人も、それに思わず笑みを漏らす。


「お嬢様も、同じことをおっしゃっていましたよ」


「やっぱそう思うよな?」


 そんな他愛ない会話を交わしていると——。


「お嬢様! そのようなことは、私どもがやりますから!」


 扉の向こうから、慌てた声が響いてくる。


「へーきへーき! このぐらい、いいんですよ!」


 続いて聞こえてきたのは、弾むような少女の声だった。


 そして。


「確かこっちのお部屋でしたね——ルキさまぁ!」


 勢いよく扉が開く。


 給仕台を転がす音を響かせながら入ってきたのは——ナナ(ラキ)だった。


 慌てふためく使用人たちと共に、ついに、鐘蓋をかぶせた料理を並べられていく。


「お待たせしました! さあ、たくさん召し上がってくださいね!」


「はは……ずいぶんご機嫌だな」


 どこか違和感を覚えながらも笑みを浮かべるルキ。


 やがて、向かいの席へと腰掛けた彼女は、早速鐘蓋を取り払った。


「おお……すげえ!」


 そこに現れたのは——。


 焼きたての香草パン。


 野菜ときのこのシチュー。


 そして、香ばしい香りを漂わせるハーブソテーの鶏肉串。


 豪勢に飾られる料理の数々に、空腹も相まったルキの期待は、一気に膨れ上がった。


「全部ナナが作ったのか⁉︎ この肉なんか、めちゃくちゃ美味そうだな!」


「うんうん! 三番街のお店で見たものを、私なりに作ってみたのよ!」


 気づけば、お嬢様言葉を忘れ、一緒になり料理に目を向ける少女。


 幸福のひと時が、今にも流れようとしていた。


 ——だが。


(女神様、なんだか様子が——)


 彼女の中には——密かに、一抹の不安が宿るのだった。


* * *


 ——ナイフとフォークが休むことなく動き、次々と姿を消していく料理たち。


「この味付け……うんめぇ!」


 どこか懐かしさを覚えながらも、ルキは一口一口を噛み締める。

 夢中になる彼の横顔は、何よりも無邪気に弾んでいた。


 すると、それを満足げな様子で見守っていたナナの内側に——本人の声が響いた。


(女神様っ! 女神様ったら!)


「むぐっ!」


 パンを齧っていた手がピタリと止まる。


(そんなに勢いよく食べてたら、私食いしん坊だと思われますわ!)


「むむ……」


 起こされるような声色に、今一度本来の目的を思い出すラキ。


 名残惜しそうにお腹を擦っていたが、頬張っていたパンを一気に飲み込み——ようやく次なる作戦へと移った。


「——うふふ、ルキさまぁ」


 ルキの隣へと椅子を進めたナナが、わざとらしく顔を背ける。


「な、なんだ……近いなぁ」


 そして、優しくつまんだパンのかけらを差し出し、色っぽい半目を彼へと向けた。


「お次は、私の焼いたパンはいかがですか? よかったら——私の指ごとペロリと舐め回してくださいねぇ」


(んなっ⁉︎)


 突然の過激発言に、ルキと()()は同時に声をあげてしまう。


「そ、そんなことできるわけねーだろ!」


(なんて破廉恥な言い方をするんですの⁉︎)


 思わぬ急接近を試みるラキ。

 さらに彼女は、赤面する彼にわざとらしく涙を拭う仕草を見せた。


「あぁ、ひどいわ。ルキさまは私のことが嫌いなんですね……わかりました。今度——ルミナさんに言いつけちゃいます」


「ルミナぁ⁉︎」


 それは、ルキにとって最も恐れる存在。


「待て待て! わかったよ……」


 恥ずかしながらも、彼女の要望を聞くことにした彼は、差し出すように顔を向けた。


「言っとくけど……ただ食べるだけだからな」


「わかってますよ! はい、あ〜ん」


(ルキ様のお顔が……!)


 だんだんと近づく彼の顔に、ナナの胸がどんどん高鳴っていく。


 しかし彼女は——ふと思い出した。


(あのパンは……さっきまで私が——)


 差し出していたのは、食べかけだったパン。


 このままでは、自分が口にしたものに、愛しの彼の口が触れてしまう。

 それはつまり——。


(まさか、このような形で⁉︎ 私まだ——初めてなんですのよ!)


 迫る唇に、彼女の興奮は絶頂を迎えていく。

 

 たかだか間接的な接吻だが、汚れを知らない生娘にとっては一大行事。


 そして、ついに彼女は、大人の階段に足をかけた。


 しかし——その瞬間。


(やっぱりだめぇぇぇ‼︎)


「うがっ!」


「むぐっ……⁉︎」


 テーブルに添えていたはずのナナの手が、ルキの口を押さえた。

 さらに、差し出していたパンを自らの口へと戻っていく。


(な、何とか守りましたわ)


「んぐぐ……なんで邪魔するのよ……!」


 振り返り、小声で呟く()()

 

 一瞬だけ——強まったナナの意識が、体の主導権を奪っていたのだ。


「もう……私までドキドキして来ちゃったじゃないの」


 高鳴る胸の鼓動は、彼女の意識にまで影響を及ぼす。


 すると。


「——ナナ!」


「はいっ!」


 背中からの呼びかけに、びくんと肩を跳ね上げるラキ。

 

 ゆっくりと振り返ると、そこには不服そうにこちらを見つめるルキの姿があった。


「……ごめん……なさい」


(ルキ様……怒ってるかしら)


 続く沈黙に肩をすぼめる彼女だったが、やがて彼は、覗き込むようにして顔を近づける。


「ナナぁ……今日のお前、まるで別人だぞ?」


 ギクリとなる少女たち。


「——えっ⁉︎ い、いや……」


(バ、バレましたわ! もうダメ……)


 どんどん小さくなり、額から滝のような冷や汗を流す。


 しかし——次の瞬間。


「どれ、熱でもあるのか」


「えっ?」


 震える少女に、ルキはそっと額を重ねた。


(はっ! はわわ——)


 突然の出来事に困惑するナナ。

 彼の顔をまともに見ることができず、震える瞳をゆっくりと伏せた。

 

 さらに、自分では押さえられない熱が込みあがり、頭の方へと昇っていく。


「ちょっと、熱いな」


(はぁはぁ……んぐぐぐ!)


 心と戦いながらも恐る恐る視線を持ち上げると、そこには真剣な面持ちの彼がいた。


 まっすぐな瞳も。

 静かな吐息も。

 固く結ばれた唇も——。


 全てが愛おしく見えてしまう。


 溢れ出した想いが熱となって、すべて彼へと伝わってしまいそうだった。


 ——すると。


 羞恥に耐え続けていた心とは裏腹に、その体が突然後ろへひっくり返った。


『ひゃぁぁぁ‼︎』


「キャア⁉︎」


 椅子から転倒し、不意をついた腰の痛みに慌てふためくナナ。

 

 耐えれないほどの熱に当てられた()()()()()が、思わず彼女の体から飛び出したのだった。

なかなかまとまらない二人の心でした笑

そしてなんと、限界を迎え飛び出してしまうラキ。

一体どうなる!?

次回!お家デート最終回!


火曜日にお待ちしておりますm(_ _)m

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