第四十一話
そして時は進み、村に行く日の前日。徹也は財務大臣室にいた。明日のことを話し合うためである。
その財務大臣室には、多くの者がいた。この部屋の主であるヘンリーに、その妹であるクリス。
治伽に舞に優愛もいて、教師である刀夜もいる。更に、徹也が新たに人を連れてきていた。
それは、真理に真未に穏恵だった。この三人に協力を頼んだ以上、この会議にも参加してもらうべきだと徹也は考えたのである。
「さて。では明日に向けて話し合おうか。まずは徹也君。改めて計画の概要を説明してくれ」
まずはヘンリーが、徹也に説明を促した。計画の全てを知らない者もいるし、一度整理するべきであると考えたからだ。
「はい。今回は、経済回復のために村を再興します。そのために、必要な人材を集めさせてもらいました」
徹也はそう言うと、そのメンバーの方を見た。そして、計画の説明を続ける。
「まずは土屋に、荒れ果てた土地を修復してもらいます。その後、真未に家の修復を――」
「ちょ、ちょっと待って!」
徹也の言葉を、急に優愛が遮った。徹也はそんな優愛に驚きつつも反応する。
「ど、どうした優愛?何かあったのか?」
「いやいやいや!何で双見さんのことを名前で呼んでるの!?」
「……あっ」
徹也は気づいた。治伽と舞には幼馴染であることがバレたが、優愛にはバレていなかったのである。
(や、やばい……!ミスった……!しかも、この場には……!)
そう。真未ご本人がいるのである。そしてこういう時、真未は面白がる人であるということを、徹也は知っている。
「んー?だって幼馴染だし?これぐらい普通じゃない?」
「……そうだね。私も名前で呼ばれてるし」
真未の言葉に、真理が乗っかる。そんな発言に対して、徹也は更に焦った。
「ちょ、ちょっと待っ――!」
だが、徹也の制止も空しく、真未と真理の言葉はこの場にいる全員に届いてしまった。徹也が制止の言葉を言い終わる前に、優愛が真未と真理の言葉に反応する。
「……ふーん。でも、私も名前で呼ばれてるもんね」
「「……は?」」
こんな状況の中で、優愛が更なる爆弾を投下した。その言葉に慌てた徹也であったが、時すでに遅し。優愛は畳み掛けるように、言葉を続ける。
「私だけじゃないよ。治伽ちゃんに舞ちゃんもクリスさんもそう。ね?」
「そうそう!私達も名前で呼ばれてるもん!」
「まあ、そうね……」
「私はフルネームではないですが……」
優愛の問いかけに、舞と治伽は頷いて同意の意を示した。クリスもそう言いつつ、名で呼ばれているのは事実なので、舞と治伽と同じように頷いた。すると、真未と真理の目が鋭くなる。それに応じて優愛と舞の目つきも鋭くなっていった。
そんな睨み合いを見た徹也は、諦めの境地まで来ていた。もうどうにもならないことを悟ったのである。
すると、ボーっとしている徹也に話しかけてきた人物がいた。その人物は、先程までの一連の流れに参加していなかった穏恵だった。
「さ、才無佐君……。名前で呼んでないの、もしかして私だけ……なの、かな?」
「……え?ま、まあ……そう、だな」
穏恵の問に、徹也が戸惑いながら答えた。その言葉に対して、穏恵は不満を隠せない。
それはそうだろう。穏恵以外の全員が名前で呼ばれているのに、なぜ自分だけが呼ばれていないのか。不満に思っても仕方がないといえる。
「わ、私も……。私も、名前で呼んでほしい……」
穏恵は勇気を出して、徹也にそう告げた。このままではいけないと思ったのだ。
徹也は穏恵のその言葉を受け、驚いて穏恵の方に顔を向ける。徹也が見た穏恵の顔は赤くなっていたが、徹也の目を見て真剣に頼んでいるように見えた。
(確かに、この中だと土屋だけ名前で呼んでない。土屋の方が治伽達よりも先に知り合っていたにも関わらずだしな……。土屋からすれば、納得できないか)
そう考えた徹也は、穏恵の願いに肯定の意味を込めて頷いた。穏恵からすれば、これ以上遅れを取るわけにはいかないと思っての行動であったが、それは徹也に伝わっていない。
「分かった。……穏恵。これで、いいか?」
「っ……!うんっ!徹也君……!」
徹也が穏恵を名前で呼ぶと、穏恵は嬉しそうに徹也の名前を呼び返した。そんな穏恵を見て、徹也も思わず笑みを浮かべる。
だが、徹也のその笑みはすぐに引っ込むこととなった。なぜなら、先程まで睨み合っていた両者の目が、そのまま徹也と穏恵の方に向いていたからだ。
「……徹也(君)?」
「ひっ!?」
徹也は優愛達のそんな視線に顔を青くして後ずさった。それほどまでに、優愛達の言葉が怖かったのである。
そんな徹也と優愛達の間に、治伽と刀夜が割って入った。この状況を止めるためだ。
「お、落ち着いて!これで、全員平等でしょ!?」
「そうよ!いい加減にしなさい!話が進まないでしょう!?」
治伽と刀夜の言葉を聞いた優愛達は、ハッとして徹也を睨むことを止め、バツが悪そうに視線を逸した。睨まれていた徹也は、それがなくなってあからさまにホッとする。
「はぁ……。もう、いいかな?」
ため息を吐いてそう言ったのは、ヘンリーである。ヘンリーとしても、ここまで話が止まるのは良いことではないのだ。
そんなヘンリーの言葉に、この場にいるヘンリー以外の全員が頷いた。それを見たヘンリーは、徹也に説明の続きを促す。
「よろしい。では、徹也君。もう一度説明を頼む」
読んでくださりありがとうございます!
更新が遅れて申し訳ありません!
大学にまだ慣れておらず、執筆が捗っていないのが現状です。
一ヶ月が経ち、慣れてきましたので徐々に更新していければと思います。




