第三十九話
あの後、そのまま怪我無く訓練を終えた徹也は、書庫に向かって歩いていた。もしルーカス派が襲ってくるのなら、どこになるのかを予想するためである。
その予想のためには、正確な地図が必要になる。だから徹也は、書庫に向かっているのだ。
ちなみに、治伽と舞とは別行動である。それぞれ、別の用事があったからだ。
徹也が書庫に着きその扉を開けると、いつものごとくシャーロットがいた。シャーロットは徹也に気付くと、パッと顔を明るくして徹也に近づいてくる。
「徹也様!来てくださって嬉しいです!」
「お、おう。な、なあシャーロット。俺が書庫に来るとき、必ずシャーロットもいるんだが……。シャーロットは、いつからいつまで書庫にいるんだ?」
徹也は今まで気になっていたことをシャーロットに尋ねた。徹也はこれまで、何度か書庫を訪ねているが、その全てでシャーロットと出会っているのだ。
時間も違ったりするにも関わらず、ここまで会うとは流石に偶然ではないのではないか。徹也はそう思ったのである。
「え?そうですね……。朝食の後から昼食までと、少し間が空いて夕方から夕食までですね」
「そ、そんなにいるのか!?」
「はい!本が大好きなので……」
徹也はシャーロットが書庫にいる時間を聞いて驚愕した。その時間が思った以上に長かったからである。
だが同時に、徹也はシャーロットに親近感を抱いた。徹也もまた、ラノベや漫画、アニメなどで時間を忘れて没頭していた時があったからだ。
(……懐かしいな。あの時は高校受験も終わって、大学受験まで三年あったからしてたけど……。大学受験の勉強が本格的になるにつれ、できなくなったんだよな……)
徹也は当時のことを思い出し、懐かしむ。シャーロットもまた、昔の自分の用に没頭しているのだろうと、徹也は思った。
「それで、本日はどのような用件ですか?徹也様?」
「あ、ああ。そうだ。地図を見せてほしいんだ」
「地図、ですか?分かりました。持ってきますね」
「いや待て待て!俺も行くから!あの地図、めっちゃデカかったじゃないか!」
徹也はそう言って、シャーロットを引き留めた。徹也は覚えていたのだ。前に見た地図の大きさを。
あの地図は大きくて重く、一人で運ぶのは辛い。故に徹也は、前のようにシャーロットと二人で運ぼうと考えていた。
「そ、そうですか?じゃあ、一緒に行きましょう」
「お、おう。……なんで手を出してんだ?」
シャーロットから差し出された手を見て、徹也がそう尋ねた。それに対して、シャーロットは首を傾げながら応じる。
「?手を繋いで行きたいと思ったからですが……。もしかして、駄目……でしたか?」
「い、いや。その……」
徹也はシャーロットの願いを拒否しようと口を開いたが、その続きが口から出ることはなかった。なぜなら、徹也がシャーロットの悲しそうな顔を見て、言葉を中断したからである。
徹也はこういった顔に極端に弱かった。それはシャーロットに対してだけではない。治伽や舞、優愛達であっても同じような返しになったことだろう。
徹也はため息を吐いて、差し出されたシャーロットの手を取った。そしてそのまま、徹也はシャーロットに話しかける。
「……ほら、行こうぜ」
「っ……!はいっ!」
徹也の言葉に元気よく返事をしたシャーロットは、握られた徹也の手を強く握り返す。そして徹也とシャーロットは、地図の本を取りに二人並んで歩き出した。
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