第三十七話
徹也は洋助の言葉を聞いて、またも引きながらではあるが返事をした。
「あ、ああ……。別にいいけど……。でも、なんで友居よりも先に?」
徹也はそう、洋助に質問を返した。単純に気になったのだ。なぜ洋助は忠克よりも先に、徹也と戦いがっているのかが。
「大した理由じゃないさ……。ほら、さっさと構えろ。合図は望月がやってくれ」
「え、ええ……」
洋助はそう言うと、早く模擬戦を始めようとする。だが、忠克がそんな洋助に待ったをかけた。当たり前だ。順番抜かしをされたようなものだからだ。
「ちょ、ちょっと待てよ!なんかめっちゃ話が進んでるけど、俺が先に才無佐に声をかけたんだぜ!?」
「だから言っただろ。俺が先に才無佐とやると」
「ど、どうしたんだよ檜前……。なんかお前、怖いぞ……?」
忠克が見た洋助は、どこか怒っているように見えた。だから忠克は、洋助にそう告げたのである。
徹也はそんな忠克と洋助のやり取りを聞いて、ため息を吐いた。そして徹也は、剣を構えながら二人に語りかける。
「……取り敢えず、先に檜前とするよ。その後に必ず友居とする」
「ま、まあ、やってくれるならいいけどよ……」
「ああ。それでいい。ほら構えろ。全力でこい」
徹也の言葉に頷いた洋助は、すぐに剣を構えた。それに応じるように、徹也もまた剣を構える。そして、治伽の右手が挙がった。
その右手が降ろされた瞬間、徹也と洋助が動く。だが、この模擬戦の結果は一瞬であった。
徹也は《腕力上昇》を使ったが、洋助が火を剣に纏わせて突っ込んできたのである。徹也はそんな洋助に驚きながらも、自らの剣を洋助に向かって振るう。
徹也の剣と洋助の剣がぶつかり合う。すると、徹也が洋助に押されている。徹也は《腕力上昇》を使っているのにも関わらず、だ。
徹也は洋助に押し切られ、後ろによろける。これで勝負は決まったかに思われた。だが、洋助はこれで止まらなかった。
「っ!?」
なんと洋助は、徹也の胴に自らの剣を叩きつけたのだ。その衝撃で、徹也は地面を転がる。
「い、痛いっ……!」
徹也は剣を叩きつけられた胴を抑えながら、そう悶えた。そんな徹也に、徹也の周りにいた洋助以外の者が駆け寄る。
「て、徹也君!」
「大丈夫!?徹也君!」
「才無佐!おい!大丈夫かよ!?」
「あ、ああっ……。大、丈夫。ちょっと、痛いだけだっ……!」
徹也を心配して集まった者達に、徹也は自分の無事を告げる。徹也が喋ったことで、集まった者達に少しだけ安心することができた。
徹也の無事を確認した刀夜は、洋助を問い詰める。ここまでするとは思っていなかったからだ。
「いくらなんでもやり過ぎよ。あそこで追撃する必要はなかったわ」
「そうだぞ大倉。流石にやり過ぎだ」
刀夜の言葉に続けて洋助に注意をしたのは、将希だった。いつの間にか、洋助の後ろまで来ていたようだ。将希は洋助の肩を掴んで、言葉を続ける。
「訓練でここまでしなくていいだろ?これは模擬戦だぞ?」
「……甘いな。お前も、姉さんも……」
洋助はそう言い残すと、徹也と治伽、刀夜の方をチラリと見てこの場から去っていった。そんな洋助を、将希が追う。
「おい待て!はあ……。檜前が悪いな、才無佐。ちゃんと教会に行って治してもらってくれ」
「あ、ああ……。そうさせてもらう……。悪い友居。今日は戦えそうにない……」
徹也は将希にそう言葉を返すと、忠克に対して謝罪した。約束を反故にしてしまったからである。
「そんなこと気にすんな!早く治してもらってこいよ!」
徹也の言葉に対して、忠克は顔を激しく歪ませながらそう返事をした。すると、舞が手を挙げて徹也を教会まで連れて行くと申し出た。
「わ、私が徹也君を教会まで連れて行くよ!」
「私も手伝うわ。徹也君、私と舞に掴まって」
「私はクリスさんに伝えてくるわ。二人共、徹也君をお願いね?」
「「はい!」」
舞の申し出に、治伽も手伝うことを表明した。刀夜は舞と治伽に徹也を任せて、クリスに報告に向かう。
「す、すまない……」
「ううん!大丈夫だよ!それに、徹也君は何も悪くないもん!」
「とにかく、早く教会に向かいましょう。徹也君の怪我が悪化しかねないわ」
治伽と舞に支えられた徹也はそのまま訓練場を去っていき、教会に向かって歩いて行った。
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