第三十四話
「二つ目の収穫は、もう一人協力してくれる人が増えたことです」
「なるほど。それで?その方は誰だ?」
「名前は知りません。ある店の店主さんですね」
徹也がそう言うと、この場にいる全員が頭に疑問符を浮かべた。なぜ、店主が協力してくれる事になったのか。それに、店主の協力がなぜ必要と考えたのか分からなかったからだ。
「……それが、どうしたというんだ?」
「その店のスペースを借りて、イベントを開こうかと。例えば……」
徹也はそう言って、舞の方をチラリと見た。そして徹也は、言葉を続ける。
「舞の【踊り】を見せたりとか、ですね」
徹也のその言葉を聞いた舞は、驚いた顔を見せてから先程とは一転して喜びの表情を浮かべた。舞はこの世界に来てから、全くと言っていいほど踊っていないのだ。大勢の前で踊れることは、舞にとって嬉しいことでしかなかった。
「て、徹也君……。ほんとに、踊れるの?」
「ん?ああ。許可が取れれば、だけどな」
「や、やったー!」
徹也のその返答に、舞は喜びを爆発させた。舞はそう叫びながら、治伽に抱きつく。治伽はそんな舞を受け止めながら、優しい笑みを浮かべていた。舞が踊りがっていたことを、よく知っていたからである。
徹也もまた、そんな光景を微笑ましく見ていた。だが、それが出来るのもきちんと許可を貰ってからの話だと分かっていた徹也は、許可をもらうためにヘンリーに話しかける。
「……どうでしょう?ある程度の経済回復につながると思うんですけど……」
「……ふむ。いいだろう。だが、それは店主と話してからだ。それに、今は村の対策を優先したいのでな」
「それはもちろんです。村の方が終わってから、もっと煮詰めていきましょう」
徹也のその言葉に、ヘンリーは頷いた。そしてヘンリーはクリスの方を向いて、訓練の進捗を尋ねる。
「クリス。訓練の方はどうだ?」
「順調です。刀夜さんの協力もあり、生徒の皆さんは着々と力を付けています。すでに中級クラスの魔物と戦う力はあると思います」
「……そういえば最近、訓練に出れてねえ……」
ヘンリーとクリスの会話を聞いていた徹也は、そう呟いた。実際、徹也は訓練に出れる時間が少ない。対策のための情報集めや、財務の書類整理などで訓練の時間を取ることが出来ていないのである。
「……確かにな。仕事をさせ過ぎだろうか……。よし。明日は訓練に顔を出して来たら良い。他の者達の成長具合も、対策につながるかもしれないからな」
「わ、分かりました」
ヘンリーの言葉に、徹也は頷いた。徹也が訓練に来るという事実に、治伽と舞は笑顔を浮かべて喜んだ。今まで徹也がいないことが多くて、少し寂しかったのである。
こうして久しぶりに徹也の訓練参加が決まったところで、今日の会議は終わりを迎えたのだった。
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