第二十九話
徹也と治伽が穏恵達の元までたどり着くと、穏恵が真理に真未、舞に支えられていた。殆どの魔力を使ってしまったからである。
「て、徹也君!怪我、怪我してない!?」
「ああ。問題ない。それより穏恵は?」
舞の心配した言葉に答えを返した徹也は、すぐに穏恵について尋ねた。徹也は自分のことよりも、穏恵のことの方が心配だったのだ。
「魔力を使いすぎて疲れてるけど、その他は何もないよ」
「……そうか。なら良かった」
徹也の問に、真理が答えた。そんな真理の答えを聞いた徹也は、安心して息を吐く。
「ほら穏恵。徹也が戻ってきたわよ」
「う、ううん……。て、徹也、君……?」
真未が穏恵に語りかけると、穏恵が反応を示した。それを見て、徹也は穏恵に話しかける。
「ああ。大丈夫か?穏恵?」
「う、うん……。徹也君達が、守ってくれたからだよ……。ありがとう……」
「それは、こっちのセリフだ。よく、この状況の中でやり遂げてくれた。お疲れ。ゆっくり休んでくれ」
徹也が微笑んで穏恵にそう伝えた。そして徹也は、穏恵の頭を右手で撫でた。穏恵は徹也のこの行動に喜び、笑顔を浮かべた。
「……徹也君も、お疲れ様」
「……おう」
穏恵の労いの言葉に、徹也が笑って応じる。そんな徹也を見た穏恵は、安心して目を閉じた。
「……それで、そっちはどうだったん?」
「そう。本当に大丈夫だったの?」
穏恵が眠った後に、真未と真理が徹也と治伽に問いかけた。真未も真理も、徹也の対策を大方知っていたので上手くいったのか気になっているのだ。
「まあ、な。少し想定外はあったが、何とかなった。それに、予想外の拾い物もあったしな」
「そうね。特訓のおかげだわ。後は、躊躇ぐらいかしら……」
「そう、だな。そこはまた、追々……」
徹也と治伽の顔が、少し険しくなる。徹也も治伽も分かっているのだ。まだ、人を殺す行為を躊躇ってしまっていることに。
「……それより、拾い物って?」
「あ、ああ。一人、賊を捕らえれた。これで更に情報を得れる可能性がある」
真理の質問に、徹也はその内容を説明した。すると、真理と真未が息を吐く。
「ホント、対策しといてよかった〜……」
「やっぱり、徹也はすごいね」
「いや、そんなことは……」
徹也は真理と真未の褒め言葉に対して否定したが、治伽が徹也の口に指を当てて止めさせた。治伽は、徹也が自分を卑下することを止めてほしかったのだ。
「十分すごいわよ。ここまで対策できていれば。だから、胸を張って?」
「……ああ。サンキュー」
治伽の言葉に、徹也は戸惑いながらも頷いた。徹也としては、自分がまだまだであると思い知ったからだ。
(今回、対策が全てハマらなかった……。実際、危ない場面もあったし……。このままじゃ駄目だ。もっと傾向と対策を徹底しないと……)
徹也はそう猛省しているが、治伽達の言う通り、徹也が傾向と対策をしていなければ死者が出ていてもおかしくなかった。今回のボスリー達は、それほどの強敵だったと言っていい。
では、それほどの強敵に勝利した徹也達は、どのような対策をしたのか。そして、徹也の対策に何が足りなかったのか。
その話をするには、約一ヶ月前の時まで遡らなければならない――。
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