第二十二話
すると、穏恵の手を中心にして円状に枯れ果てた土地が再生されていく。そんな様子を見た者は、目を見開いて驚いた。そして、周りを見渡している。
明らかに、先程とは土の質が違うのだ。それはもはや枯れ果ててなどおらず、今すぐにでも草木が生えてきそうな程に。
だが、一瞬で広げられるわけではないようだ。現に穏恵は、徐々に範囲を広げていっている。
「っ!?徹也君!クリスさん!」
穏恵が始めてから少し経った時、治伽が突然そう声を上げた。この場にいる半数以上の人間がなぜなのか分からなかったが、徹也達はそれが何なのか分かっていた。
徹也とクリスは剣を抜き、穏恵を守る体勢をとる。すると、穏恵に向かって雷が迫ってきた。クリスはその雷に反応し、魔法を放つ。剣で受け止める事もできたが、それをすると周りの者への影響が大きいと考えたからである。
「《フレイム・フィルム》」
クリスが放った魔法は、火で膜のようなものを作る防御系の魔法だった。その炎の膜は見事に向かってきていた雷を阻んだ。
だがその膜がなくなると、その向こうには多くの武装した者達がいた。それを見たクリスは、素早く他の者達に指示を飛ばす。
「目の前の賊は私が倒します!皆さんはここで待機していてください!騎士の者は周りを気を付けつつ土屋さん達を死守しなさい!」
「「は、はいっ!」」
クリスはそう言うと、賊達への方へと駆けていった。それを見送った徹也は、周りを警戒しながら思考を回す。
(クリスさんは心配ない。問題はこっちだ。奇襲に備えなければ。……しかし、道中ではなく始めてからとはな。てっきり、住民にバレたくないから道中に襲ってくる可能性が高いと思っていたが……。確実性を取ったのか?それに、襲ってきているのは明らかに騎士じゃない。ルーカス派が、どこかに依頼した?)
そこまで考えた徹也であったが、いやと考えを改める。今はここを乗り切ることが先決だからだ。それにこれは好都合でもある。
徹也は剣を鞘に納めると、背負っている袋を地面に置いてそれを開ける。そこから出てきたのは、この世界では馴染みのない武器である弓と矢筒であった。
徹也がその弓と矢筒を装備して矢を用意していると、治伽と真理が徹也の元へとやってきた。これからのことを話し合うためだ。
「徹也。どうする?穏恵、中断させる?」
「……いや。続行でいいと思う。そもそも、下手に動かない方がいい。クリスさんの方も、すぐに終わりそうだし……」
「……そこが怖いところね。さっきは雷が飛んできたし、弱いってわけじゃないはずなのに……」
治伽の言葉に、徹也は頷く。治伽の言う通り、魔法を放つことができるということは、中級クラスの魔法を扱える者がいるということだ。決して油断は出来ない。
すると、言ったそばから、剣と剣がぶつかる音が響いた。徹也達がその方を見ると、ヘンリーの護衛に付いていた騎士と後ろから現れた賊の剣が交わっている。それを見た徹也は、治伽と真理に声をかける。
「やっぱり来たか。真理は穏恵達のところに残ってくれ。治伽は俺と一緒に」
「……了解」
「分かったわ。徹也君」
治伽と真理は徹也の言葉に頷き、真理は穏恵の元へと向かった。そして徹也と治伽は周りを見渡しながら後ろの方へと向かう。後ろから来るのが一人とは考えづらいからである。
「っ!?徹也君!前と右から!私は右を!徹也君は前を!前は少し離れてるけど、レイヒさん達が危ない!」
「ああ!分かった!」
治伽にそう言われた徹也は、レイヒがいる方に向かって弓を構え、矢を引く。すると、背丈が大きい男がレイヒの前に現れ、剣に雷を纏わせて襲いかかった。
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