第十七話
「……俺は、確かに家は好きじゃない」
「だったら――」
「でも!」
真理が一度徹也の言葉を遮ったが、徹也はそれを意に介さずに言葉を続ける。
「あいつらを、放っておけないんだ」
徹也が頭を上げてそう言うと、真理と真未は顔を顰めた。あいつらが誰のことか、すぐに分かったからである。
徹也としては、クラスメート全員のことを言ったつもりなのだが、真理と真未にはそう聞こえなかった。二人は知っていたのだ。徹也が最近、治伽達と共に行動していることを。
「……そ。まあ、徹也らしいけど」
「俺らしいってなんだよ……」
「その、放っておけないところだよ。ね?真未?」
「当たり前じゃん。徹也はずっとそうだもん」
徹也は真理と真未からどういう風に思われているのか疑問に思った。この前、治伽と舞にも同じようなことを言われたばかりだったからだ。
だが、徹也はそのことについて深くは聞かなかった。それよりも、話さなければならないことがあったからである。
「とにかく、地球に帰る手段を探すことを止める気はない。……約束もしたしな」
「……分かったよ。けど、私達が言ったこと、考えておいてね。私達は、本気だから」
「……ああ」
そんな真理の言葉を聞いた徹也は、深く頷いてそう返した。そして徹也は、今までの話を聞いて考えを巡らせる。
(真理と真未は、本当に地球に帰るつもりがないんだろうな……。なら、俺は?)
徹也は自分が本当に地球に帰りたいのかどうかを考える。確かに、家は好きではない。あのような扱いをされれば、そう思うだろう。
だが、学校は好きだった。話す人もいたし、忠克といった友達も出来たからだ。
しかし、徹也の友達は地球に帰りたいと思う人がほとんどだろう。自分達の家庭環境がおかしいだけで、他はそんなことはないはずだからである。
(治伽に舞、優愛だってそうに決まってる。みんなには、帰りたいと思える家庭があるはずなんだ。だから……だから、俺はどうしたいんだ……?)
徹也はまた、自問自答する。自分は一体、どうしたいのか。だが、どれだけ考えてもその答えは出てこない。家には帰りたくないが、地球には帰りたい。友達と別れたくないのだ。
(……いや。迷うな。このことは、後で考えればいい。まずは、地球に帰る方法を探すんだ。それは決定事項だろ)
徹也は自分にそう言い聞かせ、考えを止めた。今の徹也では、結論を出せなかったのだ。
そんな徹也を見ていた真理が、流れていた静寂を破った。
「……さっきも言ったけど、徹也には協力するから。もちろん、地球に戻る手段を探すことも。けど、私達は徹也と一緒にこの世界で生きていきたいって思ってる。それだけは、忘れないで」
「……分かってる。ちゃんと、考えておくから……。じゃあ、俺は戻るな。真未はどうする?」
真理のそんな言葉に、徹也は真剣にそう答えた。そして徹也はその場から立ち上がり、真未にこの後のことを問う。
「アタシは、ここに残る。まだ真理と話したいこともあるし」
「そうか。じゃあ、またな」
「うん。またね」
「ん。じゃあね〜」
徹也は真理と真未に別れの挨拶を済ませて、研究室から出ていった。そして、研究室の扉を閉めた徹也は、顔を下に向けて息を吐いたのだった。
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