第九話
真未がいた部屋から出た徹也と穏恵は、そのまま工房からも出た。穏恵はこの後農場に戻らなければならないので、徹也は穏恵を農場まで送っている。
その道中、穏恵が徹也に話しかけた。地方に行くことについて、聞いておきたいことがあったからだ。
「さ、才無佐君。そういえば、私達と一緒に王都に出るのって、いつなの?」
「ん?ああ。言ってなかったな。来月になってからの予定だ。そんなすぐには行けないらしくてな」
徹也は穏恵の質問にそう返した。これは前日、ヘンリーと話して決めたことだ。
今月の間は、ヘンリーが議会の方で忙しい。もっとも、それは徹也が頼んだからでもあるのだが……。これもまた、対策の一環である。
まだ、ルーカス派との争いは終わっていない。恐らく、いや確実に、この先スカーレット派に何か仕掛けてくるだろう。その対策のために、この期間が必要なのだ。
「そ、そうなんだ。じゃあ、それまでに準備をしておけばいいんだね?」
「そうだな。まずは一つの村だけだが、そこが上手く発展すれば多くの村を変えてもらいたいと思ってる」
「う、うんっ!頑張る……!」
徹也の言葉に気合が入った穏恵は、そう意気込んだ。そして穏恵の中で一つ、徹也に頼みたいことが出来た。穏恵は伝えることを躊躇いながらも、徹也に頼み事をする。
「じ、じゃあ、村を発展させることが出来たら、わ、私とも、デ、デート……して、くれる……?」
「……え?」
穏恵のその頼み事に、徹也は真未の時と同じような感じで聞き返した。穏恵からそのような言葉が出るなんて、思ってもいなかったのだ。
そんな反応を示した徹也に、穏恵は更に言葉を重ねる。
「ま、真未ちゃんだけは、ちょっと、ずるいなって……。私も、才無佐君と……その……。駄目、かな……?」
穏恵は上目遣いで徹也にそう告げた。そんな穏恵を見た徹也は、顔を少し赤らめて穏恵から視線を逸らす。それから徹也は、穏恵に答えを返した。
「だ、駄目ってわけじゃないが……」
「ほ、ほんとっ!?やった……!約束だよっ!」
「お、おう。分かった」
徹也の答えに、穏恵はとても嬉しそうにそう反応した。それほど、真未が言った徹也とのデートが羨ましかったのだろう。だからこそ穏恵は、徹也とのデートを取り付けれて嬉しかったのだ。
徹也としても、穏恵の要望には納得だった。真未の要望に答えたのだから、穏恵の要望にも答えるべきだろうと考えたのである。
「うんっ!あ、ここまででいいよ。じゃあ、またね」
「ああ。またな」
農場の前に着くと、穏恵が徹也にそう伝えた。そしてお互いに別れを告げて、穏恵は農場の中に向かって歩き出す。
そんな穏恵を見送った徹也は、自らの職場である王城へ向かって歩き出した。
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