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第五話

 次の日、徹也はある女子生徒を探していた。その生徒に、協力を頼む為である。


 徹也は今日、治伽や舞とは一緒ではない。今から会いに行く少女は、一言で言えば人見知りなのである。自分が誰かを連れて行ってしまったら、向こうに迷惑をかけるだろうと、徹也は考えたのだ。


 その生徒は【農業】の才能を持っているので、王都の農場にいるはずだ。徹也は以前王都の地図を見た時に、農場の場所を把握していた。


 徹也が農場に着くと、あの村とはまるで違う耕された土地が広がっていた。


(やっぱり、すごいな。これが、【農業】の才能か)


 徹也はそう思いながら、この農場を歩く。この状態は間違いなく、彼女の成果だろう。やはり、村の発展には不可欠である。


 少し歩くと、畑で作業をしている一人の少女が見えた。後ろ姿であったが、その姿は徹也が探している少女に違いなかった。


 徹也は後ろから彼女に近づき、声をかける。


「……少しいいか?土屋」


「ふええっ!?だ、誰!?誰ですか!?」


 突然声をかけられた少女、土屋(つちや)穏恵(しずえ)は驚いて振り向き、顔を隠す。声をかけてきたのが誰か分からず、人見知りが発動したのである。


 そんな穏恵を見た徹也はため息を吐いた。穏恵はほとんどの人間に人見知りを発動する。そのほとんどが、このような反応を見せるのだ。


「俺だ。才無佐徹也だよ。だから落ち着いてくれ……」


「……ふえ?さ、才無佐君?」


 徹也がそう穏恵に語りかけると、穏恵は話しかけてきた人物が徹也であることに気づき、少し落ち着いた。穏恵のそんな様子に、徹也は少し笑みを浮かべて頷いた。


「ああ。そうだ。話すのは、久しぶりか?」


 徹也が穏恵にそう言うと、穏恵はジワリと目に涙を浮かべる。そんな穏恵の様子を見た徹也は、慌て始めた。目の前で急に泣かれれば、慌てもするだろう。


「ち、ちょっ!?ど、どうしたんだ!?」


「だ、だって本当に久しぶりで……!今まで、知らない人ばっかりですごく怖かったんだもん……!」


 穏恵の言葉に、徹也は眉を潜めた。穏恵には、話せる人が少ない。クラスメートでも、俺を含めて三人程しかいないのだ。それにも関わらず、クラスメート達から離れてこの世界の人といるのは、穏恵にとっては怖くてたまらないことだろう。


「そう、か。話せなくて、ごめん」


「ううん……。才無佐君のせいじゃないよぉ……。私が、他の人と話せないから……」


「……仕方ないだろ。それは。そう簡単に治るものじゃない」


 沈んだ表情でそう言う穏恵に、徹也は慰めの言葉をかける。だが、穏恵は徹也の慰めの言葉に対して首を横に振った。


「私に勇気がないせいだよ……。私に、勇気があれば……」


 穏恵のその言葉に、徹也は何も言うことができなかった。穏恵の気持ちは、穏恵にしか分からないからだ。


 少しの間、徹也と穏恵の間に静寂が訪れた。だが、徹也の後ろからそれを破る者がいた。


「土屋さん?えっと、そちらの人は誰かしら?」


「ふあっ!あ、あの、その……!あうう……!」


 徹也が振り向いて後ろを見ると、見慣れない女性がいた。恐らく、この農場の管理人などだろう。そして案の定、穏恵はちゃんと喋ることができていなかった。その代わりに、徹也がその女性に説明をする。


「ああ、その、友達です。少し、土屋に話したいことがあって……」


「あら、そうなの?」


「は、はいっ!そ、そうでしゅっ!」


 最後盛大に噛んだ穏恵は顔を赤くし、その女性はふふっ、と笑った。そして、その女性が徹也と穏恵に話しかける。


「話があるなら、中に入る?外よりはいいでしょう?」


「いいんですか?そうさせてもらいます。行こう。土屋」


「あ、君。ちょっと」


「はい?」


 徹也が土屋を連れて中に入ろうとしたが、徹也だけが女性に引き止められた。女性は徹也に近づいて、穏恵には聞こえない声で徹也にこう言う。


「土屋さんをお願いね?土屋さん、君には心を開いてくれているようだし……。あら?もしかして彼氏さん?」


「は!?ち、違います!土屋とは、そんな関係じゃ……!」


「そうなの?まあともかく、お願い」


 女性はそう言って、徹也から離れた。その後、土屋が徹也の方に近づいて来て、徹也に問いかける。


「な、何を話してたの……?」


 穏恵にそう問われた徹也は先程のやり取りを思い出し、少し赤くなっていた顔がまた赤くなる。また、穏恵の答えを返さないといけなかったが、本当のことを言うのは少し恥ずかしかったのだ。


「い、いや……。大したことじゃないから、気にしなくていい」


 結局、徹也は穏恵の質問をはぐらかした。穏恵は徹也の説明に疑問を持ったが、それ以上追求することはなかった。


「そ、そっか。じゃあ、行こ……?」


「お、おう」


 徹也は穏恵の言葉に顔を少し赤くしたまま頷いた。そして、徹也と穏恵は並んで建物に向かって歩いて行った。


読んでくださりありがとうございます!

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