第四話
朝に馬車で出発した徹也とヘンリーだったが、すでに日は沈みかけている。半日近く馬車で移動し、ようやく王都にたどり着いていた。
「……行きも思いましたけど、結構かかりましたね」
「そうか?他の町や村に行こうものなら、どこであろうが割とかかるぞ」
これは、徹也とヘンリーの感覚の違いであろう。ヘンリーはこの世界でこれぐらいかかるのが当たり前であると思っているが、徹也は違う。なぜなら徹也の世界には、自転車や車に電車といった、多種多様な移動手段が存在するからだ。
そのように短時間で移動できるのが普通であると感じていた徹也にとっては、馬車は遅すぎるだろう。
「もう日も落ちかけじゃないですか……。夕食までに間に合いますかね……?」
「恐らくな。急いで向かうといい。話は、その後にしよう」
「分かりました。では、また後に」
馬車を降りた徹也は、ヘンリーにそう別れを告げて走りだす。徹也は走りながら、これからのことを考えていた。
(まずは、地方の再生。生活水準を上げるために、土地と建物を修復することが先活だ。その次に、格差を縮めるために金を給付する。もちろん、貴族の財源を削ることも忘れない)
貴族の財源を削ることは、貴族の力を抑制することにも繋がる。これから先のために、ぜひやっておきたいことだと、徹也は思っていた。
(そして、それらが終われば経済を回すために娯楽施設などを作る。一応、これぐらいが筋書きになりそうだが……)
そう上手くいくとは限らないと、徹也は思う。想定外のこともあるかもしれないし、そもそも協力してくれるかも分からない。他にもプランは考えておいた方がいいだろうと、徹也は考えた。
(だが、本命はこれで良さそうだな。明日から、行動を始めよう)
徹也は、そこまで考えて明日から行動を始めることを決めた。今日はもう遅いこともあるし、ヘンリーにも説明しなくてはならない。故に徹也は、明日から行動することを決めたのだ。
そんな風に考えながら、徹也が足を進めていると、夕食を食べるところの扉が見えてきた。扉がまだ開いているところを見るに、まだ夕食は始まっていないようだ。
なんとか間に合ったと安心した徹也は、足の動きを緩めて、走るから歩くに切り替えた。そして、ゆっくりと開かれている扉を潜った。
すると、徹也の方にいくつもの視線が注がれる。当然のことだろう。徹也が王都から出て地方を見に行っていたことは、クラスメート全員が知っているのだ。それを知っていれば、当然徹也のことが気になるであろう。
だが、徹也はそのような視線など気にせずに、自分の席に向かう。徹也としては、この多くの視線を気にしても仕様がないのだ。なぜなら、対処の仕様がないから。
どうせ夕食の後、質問攻めにされるのは目に見えている。これはどうにもならないと、徹也は思っていた。
「おかえりなさい。徹也君。……どうだったの?」
徹也が自分の席に座ると、治伽がそう話しかけてきた。話しかけてきたのは治伽だったが、同じテーブルにいる優愛と舞も気になっているのか徹也の方を見てきている。
「ああ。ただいま。村は、想像以上に酷かった……。これはまず先に、村の再生から始めないと……」
「そ、そんなに酷かったの!?」
「え、衛生上の問題とかもあったのかな?」
徹也の説明に対して、舞と優愛がそれぞれ反応をみせる。優愛としては才能のこともあり、衛生面が気になったのだろう。
「本当に酷かったぞ……。草木は枯れ果ててるし、家も家と呼べるのか怪しいレベルだ。あんな惨状なら、衛生面なんて問題だらけだろ……」
徹也の言葉に、舞と優愛が息を飲んだ。そこまでの状態だとは思っていなかったのである。
すると、夕食が運ばれてきた。徹也達の前に夕食が置かれると同時に、治伽が徹也達に話しかけた。
「……取り敢えず、夕食にしましょう。詳しいことは後で聞くわ」
「そうだな。そうしよう」
徹也は治伽の言葉に頷いて、夕食の方に顔を向ける。並べられた夕食はとても美味しそうであったが、徹也はレイヒが作った食事を思い出した。
食材は天と地程の差があるはずなのに、今目の前にある料理と遜色ない程の美味しさ。やはり、店を出して経済に貢献してほしいと、徹也は改めて思った。
そして徹也は、クラスメート達と同時に夕食を食べ始めた。
余談だが、夕食を食べ終えた後はクラスメート達から徹也への質問がしばらく止まなかったとだけ記しておく。
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