第三十五話
治伽達から離れた徹也は、大通りを曲がり裏路地に入る。すると、徹也の後ろから誰かが着いてきていた。徹也はきちんと裏路地に入ってから、後ろを振り返る。
「……誰だ」
「……気付いたのか」
出てきたのは、タレン王国騎士団団長、ヴァン・ルーカスだった。徹也は特に驚くこともなく、ヴァンの言葉に応じる。
「いえ。誰かいるのかとは思いましたが、まさかヴァン団長だったとは……」
「……そうか」
「ええ。で、用件はなんですか?つけてきたということは、それなりの用件があるんですよね?」
徹也の問に対して、ヴァンは少し顔を険しくして、左右をチラリと見てから徹也に頷きを返した。
「ああ。重要な用件がな」
「なんですか?」
「……君には、ここで死んでもらう」
ヴァンはそう言うと腰から剣を抜いて、徹也に向かって構えた。徹也はそれを見て一歩後ろに下がったが、後ろから他の騎士達が現れた。ルーカス派の騎士達である。見ると、ヴァンの方にもルーカス派の騎士がいた。
「……どういうつもりですか?」
「言った通りだ。君にはここで死んでもらう。死んでもらわないと困る。これ以上、言うことはない」
ヴァンは徹也の問を一蹴すると、一歩、また一歩と徹也に近づいて来た。それは徹也の後ろにいる騎士も同様だった。
ジリジリと近づいてくる騎士達であったが、突如、徹也の後ろにいた騎士達が消えた。いや、落ちたと言うべきか。
「なっ!?」
これに、ヴァンは驚いた。驚いてしまった。徹也は、その一瞬の隙を見逃さなかった。
「っ!しまった!」
徹也はその隙に、落とし穴に落ちた騎士達の上を《脚力上昇》を使って飛び超える。そしてそのまま、ヴァン達から逃げた。
「くそっ!追うぞ!奴を大通りに出させるな!お前達は路地を塞ぎ、同時に【女王】達のほうにもプレッシャーをかけろ!私達は王城への最短ルートで追うぞ!奴は王城に向かうはずだ!」
「「「「は、はいっ!」」」」
だが、落とし穴はそれで終わりでは無かった。徹也は最短ルートの方にも、落とし穴を仕掛けていたのである。
「「うわぁ!」」
二人の騎士がその落とし穴に落ちてしまう。焦ったヴァンは、自分だけでも徹也を追うことを決断した。
「もういい!私一人で奴を追う!お前達も【女王】の方へ行け!」
「「りょ、了解しました!」」
ヴァンは風魔法を使い宙へ浮き、風を操って徹也を追い始めた。そして他の騎士達は、大通りへの路地を塞ぐ為駆け出す。
だが、この時点ですでに徹也の対策の術中であると気づくルーカス派の騎士は、誰一人としていなかった。
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