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第三十四話

 魔物狩りが行われた日から一週間が経った。徹也は今、治伽に舞に優愛に加え、将希に洋助、忠克と共に王都の町を歩いている。


 魔物狩りが終わった事により、徹也達は休みとお金が与えられたのだ。魔物狩りに行っていない他の生徒達も同様に、同じ日に休みとお金が与えられた。


 故に徹也達は、王都の町に出て買い物などを楽しんでいるのである。


「ねえねえ徹也君?これ、似合うかな?」


「あ、ああ。似合ってると思うぞ」


 徹也に話しかけてきたのは優愛だった。優愛は今入っている店の中にあった銀色のヘアピンをつけて、徹也にどうか尋ねた。それに対し徹也は、無難な言葉でそれに応じる。


 だが、優愛にとっては似合っていると言われて嬉しかったのか、嬉しそうな顔でそのヘアピンを髪から取った。


 すると、治伽と舞がやってきて、優愛に話しかけた。そのヘアピンが気になったからである。


「あれ?優愛ちゃん、そのヘアピンどうしたの?いいヘアピンだね」


「あ、舞ちゃん。舞ちゃんもつけてみる?」


「え、いいの?じゃあ、つけてみるね!」


 舞は優愛にそう返事をし、優愛からヘアピンを受け取りそれをつけた。そしてその後、舞は徹也の方を向いて優愛と同じように徹也に問いかける。


「……どう、かな?徹也君」


「い、いいんじゃないか?似合ってると思う……」


「そ、そうかな?ありがとう」


 徹也は優愛の時と同じように、無難な言葉を返す。もちろん、徹也は舞にも優愛にも本当に似合っているとは思っているが、余計なことを言いたくなかったのである。


 舞もまた、優愛と同じように嬉しそうにヘアピンを取った。その後、照れた顔を徹也から隠すように、治伽の方を向いてそのヘアピンを差し出す。


「は、治伽ちゃんも似合うんじゃないかな?つけてみたら?」


「そ、そう?じゃあ……」


 治伽は舞からヘアピンを受け取り、それを髪につけた。そしてそのまま徹也の方を向いて、徹也に問いかける。


「ど、どうかしら?」


「い、いいと思うぞ。似合ってる」


 徹也はまた、治伽に無難な言葉を返した。似合っていると思うのは本当のことだ。だが、余計なことを言うと近くにいる将希が気付いてしまうかもしれない。それに、単純に他のことを言うのが恥ずかしかった。


「あ、ありがとう……。徹也君」


 治伽もまた、優愛と舞と同じように嬉しそうにして徹也にそう返した。そんな治伽を見て徹也は、優愛も舞もそうだが、そんなに気に入ったのか、と思った。


「それ、くれ。買ってくる」


「「「えっ?」」」


 徹也のその言葉に、優愛に舞、治伽は驚いた。あまりにも唐突な言葉だったからだ。


「?気に入ったんだろ?三人分買ってくるから」


「え、ええ……」


 治伽は未だ動揺しながらも、徹也にヘアピンを渡した。それを受け取った徹也は、同じヘアピンを新たに二つ取ってから、会計へと向かう。


「これ、ください」


「……三つ合わせて9万タレンだ」


「……は?」


 予想外の高額な値段に、徹也は絶句した。高くても、一つ3000タレンぐらいだと思っていたのに、まさかの十倍であったからだ。


「……驚いたか?こんなもんだよ町の相場は。もっとも、王都から出ると売れやしないがな。買うのは富裕層の方々ぐらいだ。しかも、それも中々ない。あの方々が買う店は、ほとんど決まってるからな。……あんたら、召喚された勇者御一行だろ?どんな才能持ってんのか知らねえけど、さっさとこの国を救ってくれよ」


 徹也は店主の言葉を聞いて、更に驚いた。流石に、ここまで経済が疲弊しているとは思わなかったのだ。ましてやここは王都の中である。王都でもこれならば、地方は更にそうなのだろう。


 だが、さっさと救ってくれという一言には、徹也は苛立ちを覚えた。なぜ、自分達が救われることを前提に話しているのかと。


「……なら、お前はこの国を変える為になにかしたのか?」


「……あ?」


「さっさと救えなんて、身勝手なことを言うな。俺達は、お前達の国に無理やり召喚されたんだぞ。なにより、何もしていない奴に救えなどと言われる筋合いはない」


「テ、テメェ!」


 徹也の言葉に、店主は大きな声を出して怒った。そんな店主に、徹也は金を突きつける。


「……9万タレンだ。ぴったりある」


 徹也は店主にそう言うと、ヘアピンを三つ持ってそこから去っていった。そんな徹也を、店主はまだなにか言いたげな顔で見送る。


 徹也は優愛に舞、治伽の元へと戻り、購入したヘアピンを一つずつ渡した。


「ほら。買ってきたぞ」


「「「……ありがとう。徹也君」」」


 徹也からヘアピンを貰った優愛達は、全員嬉しそうな顔で受け取った。するとそこに、少し別行動をしていた将希達が合流した。


「悪い。遅くなった。……うん?そのヘアピンどうしたんだ?」


「あ、大倉君。これ?徹也君が買ってくれたんだ」


 将希のそんな問に、優愛が嬉しそうに答えた。その答えを聞いた将希は、露骨に顔を顰める。


「……才無佐が、か?」


「うん。そうだよ」


 将希は優愛に確認を取った後、鋭い目で徹也を見た。それに気付いた徹也は、将希から視線を逸して小さくため息を吐いた。


(はあ……。またか。いい加減にしてくれよ……)


 そう思った徹也は、チラリと治伽の方を見て頷いた。それに気付いた治伽もまた、徹也に頷きを返す。


「……俺、先に戻るわ」


「え!?早くね!?」


「別にいいだろ早く帰っても……」


「いや、でもよお……」


 徹也の言葉に、忠克は食い下がる。だが、徹也はこの意思を変えるつもりはなかった。


「とにかく、俺は先に帰る」


「ちょっ――」


「分かったわ。また後で」


 忠克がまた何か言う前に、治伽が徹也に返事をする。徹也はそれに頷いて、治伽達から離れて行った。


読んでくださりありがとうございます!

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