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第三十話

 徹也がクリスに刀夜と話してから一週間程の時が過ぎた。その間に、徹也達は力をつけた。具体的には、魔法を放つことである。


 書庫で調べた結果、イメージが重要であることが分かった。そのイメージの仕方も本に載っており、風属性の刀夜と水属性の舞はその本に載っていたイメージの通りにすると、それぞれ風と水を放つことに成功した。


 それをコントロールするにはまだまだ研鑽が必要だが、出せるようになっただけでも大きな収穫である。これでまた、対策の幅が広がったからだ。


 そんな徹也達であるが、現在クリスの後に続いて歩いている。クリスから、兄が帰ってきたと伝えられたからだ。


 その時、徹也はすぐにクリスに面会させてほしいと伝えた。するとクリスは、そう言うと思っていたのですでに伝えてくれていたのだ。


 徹也は歩きながら、クリスに改めて感謝を伝えた。


「……クリスさん。その、本当にありがとうございます。ここまでしていただいて……」


「……いえ。大した事はできていないので……。兄との対話も、こうして時間は取ることはできましたが、ここからは私からは兄に何も言えません」


「……クリスさんのお兄さんは、何の大臣なんですか?」


 徹也はクリスの答えを聞いた後、クリスにそう問いかけた。クリスの兄と話す上で、何か少しでも知っておきたかったのだ。


「兄は財務大臣です。主にこの国の財政などを担当しています」


「そうなんですか……」


 財務大臣と聞いて徹也が初めに思い出したことは、この国が財政難に陥っている事実だった。徹也はこの事実が、財務大臣であるクリスの兄を悩ませているのではないかと思った。


 国の財政を担当する財務大臣にとって、財政難は一番辛いと言っても過言ではない。なので徹也は、それに協力できれば力を貸してくれるのではないかと考えた。


(俺に何ができるのかは分からないが、それが交渉材料になる可能性はある。頭に入れておこう)


「……着きました。ここです」


 徹也がそんなことを考えていると、クリスが徹也達にそう声をかけた。徹也がその方を見ると、そこには豪華な扉があった。その扉の横には、財務大臣室と書かれた掘られた木がかけられている。


 徹也達がそれを見ていると、クリスが前に出て扉をコンコンとノックした。そして、続けてこう言った。


「……兄様。クリスです。申し上げていた人達をお連れしました」


「……入れ」


 扉の中から男の声が聞こえて、クリスの言葉に対する返事が返ってきた。クリスはその返事に従い、扉を開いて中に入った。徹也達もクリスの後に続いて財務大臣室の中に入る。


 入った先には、男が椅子に座っていた。その姿は貫禄があり、徹也は少したじろいてしまう。そんな徹也達の様子を見ながら、男はクリスに話しかけた。


「……よく来たな。クリス。それで、そちらが?」


「はい。召喚によってこの世界に来られた人達です」


「それは分かっている。名は、ということだ」


 男の鋭い声に、徹也だけでなく治伽に舞、刀夜でさえも体を震わせる。顔や体つきを見る限り、男はまだ若い。だが、その若さとは思えない程の威圧感と存在感があった。


 そんな状況の中、いち早く持ち直した徹也は、その男に自己紹介をする。


「……才無佐徹也です」


 徹也の自己紹介を聞いた治伽に舞、そして刀夜もまた持ち直し、それぞれ男に自己紹介をする。


「……望月治伽です」


「こ、小早川舞……です……」


「……檜前刀夜です。この子達の教師をしています」


 一通り自己紹介を終えると、男が椅子から立ち上がった。そして男は、手を差し出して口を開く。


「そうか。私の名はヘンリー・スカーレットだ。よろしく頼む」


 その男、ヘンリーはそう名乗り、徹也達に握手を求めた。徹也達は驚きつつも、ヘンリーの握手に応じる。


「……はい。よろしくお願いします」


「「「……よろしくお願いします」」」


 徹也、そして治伽と舞と刀夜がヘンリーにそう返事をした。全員がヘンリーと握手を交わすと、ヘンリーはまた椅子に座り直して徹也達に問いかける。


「……それで?私と面会をしたいということらしいが、一体どういった理由で?」


「……ヘンリー財務大臣殿の、力を貸していただきたいのです」


「そう堅くならなくていい。ヘンリーさんで構わない。だが、そうか。私の力を貸してほしい、と……」


 ヘンリーは徹也の頼みにそう言うと、ふむと考える素振りを見せた。徹也はヘンリーの答えを、緊張しながら待つ。


 少しすると考えが纏まったのか、ヘンリーは考える素振りを止めて徹也に言葉を返した。


「なぜ、私の力を欲するのかは、まだ聞かないでおこう。先に、聞かなければいけないことがある」


 ヘンリーは徹也にそう言うと、少し間をつくってからこう言った。


「君、いや、君達は、この国の為に何ができる?」


「……この、国の為……?」


「そうだ。まさか、何も差し出さないで力を貸してもらえるとでも?私の力を君達の為に使うということは即ち、私にも君達の力を使わせろということだ。そしてそれは、君達の力をこのタレン王国の為に使うことと同義。だから問うたのだ。この国の為に何ができるのか、とな」


「っ……!」


 徹也はヘンリーのその台詞に、言葉を詰まらせた。徹也はこのような対価を要求されるのは予測していた。そして、その答えを用意していたのだ。


 だが、それにも関わらず、徹也はすぐに言葉に出すことができなかった。それだけ、ヘンリーの様子に押されたのである。


「……国の為に何もできない、しないというのなら、その申し出は受け付けない」


「ま、待ってください兄様!それは、あまりにも……!」


 ヘンリーがすぐに言葉を返せなかった徹也にそう言うと、クリスがそれに待ったをかけた。しかしヘンリーは、クリスの方に顔を向け、そんなクリスの言葉を否定する。


「非情だとでも?私はそうは思わないが?」


「し、しかし!」


「……止めてくださいクリスさん。ヘンリーさんが言っていることは、何も間違っていません。それに、大丈夫です」


「さ、才無佐君……」


 なおもヘンリーに食い下がるクリスに、徹也が手をクリスの前に出して止めに入った。クリスは徹也の言葉と行動によって、次の言葉が遮られる。すると、ヘンリーが徹也に向き直り、口を開いた。


「……ほう。そこまで言うということは、なにかできることがあるとでも?」


 徹也はクリスの前に出ていた体をヘンリーの方に向き直し、ヘンリーと向かい合う。そして、一歩前へと出て、ヘンリーに話しかけた。


読んでくださりありがとうございます!

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