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瑠璃と百合と姫と魔女  作者: 山原くいな
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飛行機に戻ったリリィ。ラピセラは彼女を出迎えるなり、熱烈に甘やかした。


まずラピスが座席に座り、リリィを脚の間に座らせる。後ろからしっかりと両手でホールドし、自分の身体に寄りかからせる。これにより密着度は高まった。更にはこの体勢を利用して、耳元で愛を囁く。不意討ちで耳を舐めたり、やりたい放題だった。


ラピスが上半身を攻めているので、セラは下半身を攻めている。

靴を脱がせて、白いハイソックスに包まれた綺麗な脚を念入りに揉む。足の裏、ふくらはぎ、太ももと順に揉んでいき、最終的に太ももに頬擦りした。

更に脚にぎゅっと抱きついたり、ソフトタッチで撫で回したり、こちらもやりたい放題だった。


これでたまったものではないのはリリィだ。

全身が、好きな人たちに触られている。どこに意識を傾けようと好きな人を感じられて、幸せでどうにかなってしまいそうだった。


『せめて心の準備くらいはさせてほしい』

『望んでいた展開だけど、少し待ってほしい』

そんな台詞が喉まで出かかった。

しかしそれをグッと呑み込む。ここで苦言を呈して、この幸せが手から離れていったら目も当てられない。

今はただ、このぬくもりを甘受するのが吉だった。


「あふ♡ んゥ♡ んふふ♡」

「リリィ頑張ったからね。ご褒美をあげなきゃ♡」

「今だったらなんでもして差し上げますわよ♡」

「本当? じゃあねェ……」


で、リリィのリクエストが通る。


ラピスと抱き合い、そのまま座席を倒して寝転がる。そんなリリィの背中にセラがむぎゅっと抱きつく。姉妹でリリィを前後から挟む形だ。


これで更に、キャンプのときに使う大きめの毛布をかける。これにより体温や匂いなどが逃げなくなり、より強く相手を感じられる。

全身が余すことなく包まれ、リリィの幸福値は限界まで上昇した。


「♡ ♡ ♡ ♡」

「ご機嫌だね、リリィ♡」

「ですわね♡ でもこれ、わたくしたちにとってもご褒美ですわ♡」

「家に着くまではこのままね♡」

「望むところだよ♡」

「いや待ってください。途中で1回、わたくしと姉さまのポジションを交代しましょう」

「ああ、それがいいわね。そんな感じで♡」


家に帰り着くまでの約2時間、3人はイチャイチャと過ごす。いつもしているだろうというツッコみが入りそうだが、今日のは特に凄かった。


ぎゅっと抱きしめること以外は特になにもしない。相手の顔すらも見えない。

しかし純粋に、最も安心する姿勢でもある。ともすればこのまま眠ってしまいそうだった。


時間も時間なので、3人とも瞼が重くなってきたが、この幸せを手放してなるものかと耐える。

途中で1度、リリィが寝返りを打って、セラを抱きしめる体勢に変わる。


それからも同じようにイチャイチャラブラブと移動時間を過ごしていたが、しばらくして飛行機の速度が落ちてきたと体感的にわかった。そろそろ到着するようだ。


「わたくしのほうが抱きしめられてる時間短かったですわ……」

「じゃあお詫びに、今日はセラの身体を洗ってあげるわ」

「じゃあわたしも洗う♡」

「! お願いしますわ♡」


セラ的にはただ感想を述べただけのつもりだったのだが、思わぬ幸福が転がり込んできた。言ってみるものである。


飛行機の着陸を待って外に出る。いつものパターンを経て家に入った。


各々着替えを取りに行き、すぐに風呂に入る準備をする。リリィが魔法で湯を沸かし、浴室はあっという間に湯気で満たされた。


服を脱いで浴室に入る。

まずはいつも通りリリィの髪を二人で洗う。次はリリィがラピスの髪を、ラピスがセラの髪を洗う。

それが終われば身体の洗い合いだ。宣言通り、ラピスとリリィはセラを揉みくちゃにして洗った。


「──…あふふ♡」


終始だらしない声が洩れている。嬉しそうだし気持ちよさそうだ。ラピスとリリィも楽しんでやっているので、この場で損をしている人物は一人もいなかった。


ゆっくり湯船に浸かって語り合う。

記念日なのにそれらしいことができなかった。それでもこれはこれで楽しかった。魔女の存在は受け入れられるのか。受け入れられるといいな。あの聖域の保護はだいじょうぶなのか。カンナに頼んだから問題ない。ルピナスやベロニカは今夜の宿をどうするのか。シオンやダリアといった独身組のところに泊めてもらうらしい。

などなど。今日の出来事についてしか話していないのに、話題は多岐に渡った。


「──…そろそろ、出ましょうか」


リリィの合図で風呂から上がる。

魔法で一瞬で髪を乾かして、コーヒー牛乳を呷る。風呂上がりはこれだ。


歯を磨いたりといった寝る前の諸々を済ませると、どっと眠気が押し寄せてきた。

本音を言えば記念日なので、存分に愛し合いたかったのだがこの分では無理そうだ。


「……いつでもできるんだから、今日のところはお預けね♡」

「……いや、あたしが我慢してるみたいにゆわれても……」

「……眠いですわ……」


セラも限界なようなので、2階の寝室へ向かう。魔法の明かりを消して、ルームシューズを脱いでベッドに上がった。


「…………しばらくしたらウィーアさんに会いに行こうと思うんだけど……リリィ、ついてきてくれる?」

「もちろんよ。……長く生きてるけど、1度離れた街にもう1度行くなんて、初めての経験だわ」

「……緊張する?」

「してるのはラピスでしょ?」

「あは♡ バレた?」

「……いいから今日は寝なさい。いつだってあたしがついてるんだから、心配しなくていいのよ?」

「……うん、ありがとうリリィ」

「おやすみ、ラピス。セラ」

「おやすみ、リリィ。セラ」

「…………おやすみなさい」


聞こえるか聞こえないかのギリギリの声量のセラの挨拶を最後に、部屋の中で響く音はなくなった。

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