issue#02 I I I UNDERTALE CHAPTER 01 02
……これらすべての光景の先頭に立つのは、「テラリアン」と呼ばれるこの地底人たちの中でも選りすぐりの精鋭を魚鱗の陣形に従えて、エイプハンドルが付いた特製のメタルスラッグを駆る男――「テラリアキング」だった。
この地下帝国の専制指導者は非常な矮躯でありながら、筋骨自体は異様なほどに隆々とし、並外れた存在感を放っていた。
胸元まで無造作に伸ばされた髭は銀の縁取りが入り、顎から腹にかけて堂々たる波を打つ。巌のような輪郭の顔には深い笑い皺が刻まれ、鋭いサングラスの奥からは陽気さと老獪さを帯びた視線が覗く。
肩から重ね着したレザーとデニムのベストは、アメリカのバイカーギャング「ヘルズエンジェルズ」を思わせる派手なワッペンと金属リベットで飾られ、たくましい胸板を際立たせている。
両肩には骸骨を取り囲んだデスワームという意匠のタトゥーが踊り、指や首元ではごついリングやチェーンのアクセサリーが重たい光を放っている。手には分厚い指ぬきグローブ、腰には重厚なベルトとツールバッグ――そして、油と泥にまみれたジーンズも、老練な威厳と誇りをどこかに漂わせている。
足元のウェスタンブーツには拍車が付き、インナーイヤーのイヤホンから流れる「モーターヘッド」のプレイリストに合わせて、時折ごきげんにメタルスラッグの背を蹴ってみせる。
ハーレー風のハンドルを軽々と操る彼は、エンジンの唸りにすっかり五感を同調させていた。
その全身からは、「現代に降り立ったドワーフ」とでも言うべき、土と機械油、そして無骨な自由の匂いが濃厚に立ち昇っている。
「……全体止まれェ!ここらでいい……」
テラリアキングは、しゃがれていながらも鞭の1打のように快活な声を背後の軍勢に投げかける。
*
彼は部下たちの中から特に選りすぐりを引き連れ、あえて徒歩で、蛇蠍山の灰色の大階段を、実に堂々と登り始めた。
その歩みには、分厚い着ぐるみを着て動くような窮屈さが常に付きまとっていたが、それ以上にただならぬ威圧感と、底知れぬ自信が全身から溢れている。
一方、階段の頂上では、シャカゾンビの軍団――プロディジーとハヴォックが、身体中に湿布や包帯を巻いた痛々しい姿で、恐慌寸前の表情を浮かべ、山麓を見下ろしていた。
「なんか……なんか凄いのが来たぞ!?どうすりゃいい、プロディジー!?」
「落ち着けハヴォック……!だが、ヤバさは間違いなく本物だ……!」
このまま進軍を許せば、山そのものを押し流しかねないほどの、大軍勢の唐突な到来だった。
蛇蠍山の山頂広場では即座に緊急の会議が始まり、カーディB――シャカゾンビの使い魔であるカラスにして、テラー・スクワッドの暫定頭首――が中心となって応対の手筈を整えようとする。
「相手は地底人のテラリアンだ!しかも、ボスのテラリアキング本人が来てやがる。ヤツには顔が効くから俺が行く!お前らはすべての兵器をスタンバらせとけ!……一応な!」
そして、ライフルの銃口を傲慢に揺らしながら灰色の大階段を登り詰めてきたテラリアキングの一団に向かい、カーディBがただならぬ声で呼びかけた。
「……なんだお前、地底人っ!ボスは今、作戦中でいらっしゃらないぞ!?」
「おぉい、つれないな、カーディBィ……!このあとすぐ『ありがとうございます、テラリアキング様』とむせび泣くことになるのによ――」
テラリアキングはいかつい笑みを浮かべつつも、どこか底知れぬ声色で、滞空するカラスの威嚇に応じる。
そのまま彼は、配下に威勢よく声をかけた。
「――見せてやれ!今日はお前らに鑑定してほしいモンがあってやってきたのさ!」
ちょうどその時、階段を上がりきった部下たちが、2人がかりで担いできた白い石棺を、広場の中央へと恭しく据え置いた。
蓋が“すりこぎ”を擦るような鈍い音を立てて開かれると、濃縮された防虫剤の匂いが一気に辺りへと広がる。
(あっ、この匂いは『ヘヤマモルン』だ……!……うちでも使ってる)
なじみのある刺激臭に思わずクチバシをそらしつつも、カーディBは閉じかけた片目で、しっかりと棺の中身を見極めようとする。
紫のビロードに丁重に包まれたその中身――それは呪物とも、宝物とも、あるいは貴重な漢方薬とも見紛うほどの荘厳さと重みを湛え、そこへ珍蔵されていた。
やがて明らかになってきたのは、バラバラになった古い人骨と、それをかつて覆っていたであろう洋風甲冑の残骸の質感だ。
どれも大きな焦げ跡にまみれていたが、ただひとつ、“特別”な存在だけが原形をとどめている。
それは、全体に青く仄かな光を宿して、傷跡のペイントが斜めがけに3本走った骸骨……すなわち、この歴史がかった
白骨死体の正体とはまぎれもなく――
「…………!ボスゥッッッ!!!」
カーディBは声を裏返らせ、絶句した。




